涙の星に住む人々

林さんちの助丸君が亡くなりました。帰りの電車を降りた最寄りの駅で小野さんに声をかけられ、私は思わず、えっと声を挙げた。助丸君は15歳の柴犬だ。そして小野さんと私も、3歳と6歳の柴の飼い主である。川べりを散歩する70歳の林さんと助丸君の姿が目に浮かぶ。林さんが助丸君に合わせているのか、その逆なのか、あまりにもゆっくりした「ふたり」の歩の運びに「思索しながら歩くソクラテスとプラトン」と言う人がいた。つらいですね、と私がポツリと言う。この星は残酷な事も多いけれど、多様な愛にも満ちている。そして愛が満ちているから、涙だってこんなに溢れるのだと私はいつも思う。林さんの家の前を通ると、玄関脇の犬舎の前の花瓶で、一輪の花が風に揺れていた

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