2009年11月10日


   長谷工コミュニティは、「『住みながら耐震化』を実現する既存マンションの総合的延命化プロセス」提案で、国土交通省が5日に発表した平成21年度第2回長期優良住宅先導的モデル事業公募(募集期間:平成21年7月15日~8月25日)において、「既存住宅等の改修」部門のモデル事業に採択されました。マンション共用部分の改修における、事業対象を特定しない汎用性のあるシステム提案としては初の採択となります。

   「『住みながら耐震化』を実現する既存マンションの総合的延命化プロセス」は、新耐震基準(※1)を満たさない既存マンションを対象に、居住者の生活や共用廊下の通行等にも影響を及ぼさない"住みながら耐震化"工事を行う、長期耐用化対策を支援するシステムです。
   本システムでは、既存マンションの修繕計画をふまえた長期利用計画と、新たに開発されたより低廉で費用対効果の高い改修工法を併せて提案します。今回の採択により、国の補助金を与条件として事業計画を立案できることになり、改修に向けた管理組合の合意形成が容易になるものと考えています。(※2)
    なお、長谷工グループでは、平成20年度第1回長期優良住宅先導的モデル事業公募(募集期間:平成20年4月11日~5月12日)「住宅の新築(共同住宅)」部門にて、長谷工コーポレーションによる2事業が採択されており、今後は新築・既存の両面で、マンションの長期耐用化を図っていくことになります。

(※1)1981年の建築基準法改正により定められた現行の耐震基準
(※2)事業年度毎、事業毎に補助額の上限があります


【本事業の概要】
システム提案:『住みながら耐震化』を実現する既存マンションの総合的延命化プロセス
    本事業は、建物及び運営の総合診断長期耐用化対策を、合わせて提供するパッケージ事業として構築しました。事業着手にあたり、まず、修繕履歴や既存の修繕計画を踏まえ、マンションの現況と長期利用の可能性を総合診断(第Ⅰ段階)します。その診断結果に基づいて、通常の計画修繕で対応すべき対象と、新たに耐震改修・躯体保護のために必要となる長期耐用化対策(第Ⅱ段階)とに仕分けて実施する、二段階の構成となっています。

【背景】
    新耐震基準を満たさないマンションは、分譲だけでも約100万戸あるとみられます。これらのマンションをこの先も長く使用するのであれば、地震災害への備えとして新耐震基準を満たすよう改修する必要があります。しかし、従来の耐震改修は大がかりになりがちで、資金負担が大きいことに加え、工事中の住生活への影響や、耐震補強による建物外観の変化も少なくありません(※3)。このため、管理組合の合意を形成しにくく(※4)、分譲マンションの耐震改修は進んでいないのが現状です。
    また、そのマンションはあとどれだけ使えるかといった、耐用可能性の情報がなく、長期利用への明確なビジョンを持てないことも、まとまった費用を要する耐震改修に踏み切れない要因とされています。

(※3)耐震改修には、①耐震補強②制震補強③免震補強の三つの工法があります。マンションでは、相対的に費用が低廉で工期も短い①耐震補強が多く採用されます。しかし、柱や梁に炭素繊維シートや鋼板を巻き付ける補強は専有部にも工事が及ぶため、住生活への影響が大きくなります。また、鉄骨ブレースなどの斜材や外付けフレームによる補強は、工事後の建物外観への影響が大きくなる上に、それぞれが個人財産である特定の住戸の居住性が損なわれるおそれがあります。
(※4)耐震改修は共用部分の変更となるため、一般に区分所有者数の3/4以上の賛成が必要となります。

【本事業の特徴】
(1)長期利用の可能性を判定し、必要となる対策を方向づける総合診断
    修繕履歴と建物現況に基づいて長期利用の可能性を判定し、建物及び運営の両面からマンション利用の長期ビジョンを提案するとともに、これに対応した長期耐用化対策や今後の長期修繕計画を編成します。営業目的の形式的な検査や対処療法的な施工立案を排し、30年間で20万戸の大規模修繕実績を持つ長谷工グループの技術とノウハウに立脚したマンションの長寿命化対策を提供いたします。
(2)総合診断に基づく長期耐用化対策:
    長期耐用化対策は、①既存のそで壁付柱を活用した耐震補強(「住みながら」耐震改修)と、② 鉄筋コンクリートの改修と耐用年数の延長(中性化抑止と鉄筋保護)の2つを基本メニューとしています。

(a)既存のそで壁付柱を活用した耐震補強(「住みながら」耐震改修).........耐震補強工法
    そで壁付柱の共用部側に補強鉄筋と高接着性の特殊ポリマーセメントモルタルを施工し、数㎝の壁厚増で効果的な補強が得られる耐震補強工法です。
専用部に工事が及ばないうえに、大掛かりな重機や足場を必要としないため、「住みながら」の施工が可能となります。従来の工法に比べ低コストの補強を実現できることに加え、工事後の建物外観への影響や共用空間の使い勝手の変化も最小に止めることができます。
そで壁付き柱の耐震補強前
耐震補強後 張り出し部が耐震補強部分

(b) 鉄筋コンクリートの改修と耐用年数の延長(中性化抑止と鉄筋保護).........耐用年数の延長工法
    建物の経年劣化に対応し、部位ごとに適切な対策を施して、鉄筋が腐食(発錆)する原因となるコンクリートの中性化を抑止し耐用年数を延長させる工法です。
    中性化し鉄筋の腐食が進行した部位では、亜硝酸系イオンにより鉄筋表面を保護し、中性化の進行がみられる部位とともに、防錆効果のある特殊ポリマーセメントモルタルを塗布します。さらに、躯体全体を外部からのコンクリート劣化因子の侵入を長期にわたり防ぐ高耐久性複合塗料で塗装します。
    (a)(b)の対策は、ともに実施の時期を大規模修繕工事と連動させ、その一部として施工することで、生活保全と費用の両面で、居住者負担をさらに軽減できます。

部位ごとの中性化診断により適用対策を判定する (イメージ写真)

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