泣き虫の社長

 息子の結婚式から戻り、着替えをすませ、妻が入れたお茶を飲んでいる間、私の頭を離れない顔があった。息子の会社の社長である。式の間、その人はずっと泣いていた。 こんなにうれしい日はない。式の直前に会うと、社長はそう言い、目頭を押さえた。極端に無口で、病弱で、気の弱い息子を、「でもこの子はとてもいい目をしている」と就職を引き受けてくれた人。息子もその期待に応え、10年間その工場で頑張っている。 式では、高校を途中でやめた息子側の列席者は、新婦と比べうんと少なかった。だが、私はとても幸福だった。たったひとりの祝福が、何十人の祝福に匹敵することを、この武骨でやさしい社長が教えてくれたからだ。 何だか嬉しそう、と向かいの妻が笑った。

クリックでスキップ