加速する人口減少と高齢化進行のリアル2024(その1)
2025年07月01日 / 『CRI』2025年7月号掲載
目次
日本の総人口を長期で見ると、1億人を超えたのは1967年で、今から57年前となる。それ以降、2005年に減少に転じる以外は増加が継続し、2008年に1億2,808万人のピークを迎えるが、2011年以降14年連続減少し、2024年には1億2,380万人となった。これは1990年の日本の総人とほぼ同水準(1億2,361万人)で、日本の総人口が約34年前の水準に戻ったことを示している (図表1)。
今月のクローズUPでは2024年人口推計(総務省)公表の結果から、日本が直面している人口問題について1990年との比較を交えて読み解いていく。
~1990年を振り返る~
1990年はバブル経済の絶頂期である一方、崩壊の兆しも見え始めていた時期で、年初37,000円台だった日経平均株価は年末には23,848円まで下落し、年間の下落幅では過去最大を示した。世界的には前年のベルリンの壁崩壊によるドイツ統一などが進行し、またイラクによるクウェート侵攻など湾岸危機も発生するなど、世界情勢が不安定になりつつある時期であった。
1. 加速する人口減少と高齢化
1. 増減要因別にみる地域間格差
総務省が4月14日に公表した「人口推計(2024年10月1日現在)」によると、日本の総人口は1億2,380万人で14年連続減少した。前年より55万人減少し、ほぼ鳥取県と同規模の人口が減少したことになる。要因別増減では、自然減が顕著であり、第2次ベビーブーム期(1971~1974年)以降、減少傾向が継続。2024年の出生児数は71万7,000人で前年に比べ4万1,000人の減少となった。社会増減(入国者数−出国者数)では出国者数が385万3,000人に対し、入国者数が419万3,000人で34万人の社会増加となった。
都道府県別の人口では東京都が1,417万8,000人と最も多く、東京都が全国人口の11.5%を占め、東京都の一極集中の傾向は継続。最も人口が少ないのは鳥取県で53万1,000人だった。都道府県別の増減率では、東京都・埼玉県のみが増加し、45道府県は減少した (図表2)。
自然増減と社会増減の状況を都道府県別にみると、社会増加している都県は数多く散見されるものの、多くの道県で社会増加を上回る自然減少が起こっており、日本全体の人口減少を招いている。
都市部においては「社会増加+緩やかな自然減少」であるのに対し、東北・四国地方を中心に、地方では「社会減少+自然減少」の進行が顕著である (図表3)。
2. 東京都以外で増加に転じた埼玉県の人口動態
3大都市圏※別人口は首都圏が3,698万6,000人、名古屋圏が1,108万6,000人、大阪圏が1,789万9,000人であり、合計すると6,579万2,000人で日本の総人口の53%を占める。3大都市圏においても人口減少しているものの、人口割合では2003年に50%を記録した以降上昇し続け、大都市圏への人口集中が顕著である。首都圏でも、東京都以外の県はコロナ禍以降、人口減少が継続していたが、2024年調査では埼玉県の人口がプラスに転じた。埼玉県の人口動態にどのような変化が生じたのか、確認していきたい。
※首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)、名古屋圏(愛知県、岐阜県、 三重県)、大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)
① 首都圏各都県の人口増減
首都圏各都県の人口増減を要因別に見ると、いずれの都県も自然減少・社会増加の傾向が確認できるが、変化幅では埼玉県の社会増加が東京都に次いで大きい。東京都心部に通勤しやすい近郊地域での住宅供給の増加や都内の住宅価格の高騰の影響などが、自然減少を上回る社会増加に繋がった (図表4)。
② 埼玉県の社会増加は東京都からの子育て世代と高齢者が寄与
埼玉県の人口増加は主に東京都からの転入によるもので、25~34歳の結婚・持ち家取得・子育てなどのライフステージの変化を伴う世代と60歳以上でその傾向が顕著である。このように埼玉県の人口増加は、東京都との間での移動が大きな要因と考えられ、特に子育て世代や高齢者の転入が人口増加に寄与している。埼玉県は都内に比べて住宅価格が安いことから、持ち家を取得しようとする子育て世代の受け皿となっている一方で、通学・就業などにあたる20~24歳の若年層の40%程度が東京都へ転出しており、埼玉県と東京都間の年齢の違いによる人口移動の実態が確認できた (図表5)。
2. 34年前に戻る日本の総人口とその変化
1. 増え続ける外国人
日本人人口が減少の一途を辿っている一方、外国人人口は増加し続けている。統計が遡ることができる1975年のデータでは外国人人口は69万人で、総人口の0.6%に過ぎなかった。2024年の総人口は1990年とほぼ同水準であるが、外国人の数とその比率には大きな違いがある。2024年には外国人の居住者数が、350万人となり34年前の3.9倍に増加し、人口に占める割合も2.8%まで上昇した※。背景には少子高齢化による労働力不足や、国際化の進展による外国人の受け入れ政策(留学生・技能実習生・特定技能制度の導入などのような在留資格の整備など)が影響しており、こうした面からも日本社会の多様化がうかがえる。都道府県別で外国人の転出入をみると、多くの府県で転出超過であるが、東京都・神奈川県・埼玉県では外国人の転入超過がみられ、外国人においても首都圏への人口集中の状況が確認された (図表6)。
※外国人の人口は2019年の287万人(総人口比2.3%)であったが、コロナ禍により2021年には270万人(総人口比2.1%)に減少した。その後、増加に転じ2023年には332万人(総人口比2.7%)まで増加。2024年は2023年を上回る人口となった(住民基本台帳より)。
2. 縮む生産年齢人口と維持される労働人口
2024年の総人口とほぼ同水準の1990年の生産年齢人口(15~64歳)の人口・人口割合を比較すると、人口は1,217万人減少、人口割合は10ポイント低下しており、生産年齢人口の縮小が顕著である。一方で1990年の労働力率は63.3%(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)、2024年も63.3%でほぼ横ばい。横ばいを維持したのは女性や高齢者層が労働市場に参加した他、外国人労働者の受け入れ拡大も一因と考えられる。しかし、人口動態の推計から、今後も労働力の主となる生産年齢人口の増加は望めないことから、IT・DX技術を駆使した「生産性の向上」、女性や高齢者・外国人登用による「多様な人材の活用」がさらに強く求められる。そのための企業による働き方改革や福利厚生制度の見直しの推進は、労働力確保の重要な条件にもなってこよう (図表7)。
3. 止まらない少子化
2025年4月1日現在におけるこどもの数(15歳未満)は前年に比べ、35万人少ない1,366万人で、1982年から44年連続の減少となった。1950年には総人口の3分の1を超えていたが、第1次ベビーブーム期(1947~1949年)後の出生児数の減少を反映し、1970年には23.9%まで低下した。その後、第2次ベビーブーム期(1971~1974年)の出生児数の増加により1974年には24.4%まで上昇したものの、1975年から再び低下を続け、2025年には11.1%※と過去最低となった (図表8)。
1990年と2024年を比較すると、出生数は53万人と大幅に減少し、人口1,000人当たりの出生率も4.3ポイント下降したことに加え、女性の平均初婚年齢も3歳上昇し、婚姻数も大幅に減少。婚姻件数の減少、晩婚化、婚姻した夫婦間での少子化の継続が、人口減少をさらに加速させている (図表9)。
コラム
過去最高を更新した高齢者数と高齢者割合
本データには75歳以上年齢に団塊世代の一番下の世代(2024年現在74歳)が入っていない。74歳は181万人であることから、来年に公表される人口動態の調査では、さらに高齢者数の増加と高齢化割合が進行することになるだろう。高齢化の進行は地方を主として人口減少を招き、地方自治体の存続の危機を招くなど深刻な影響を及ぼしている。
地価動向と人口増減
北海道富良野市は国内外からの観光需要が高く、外国人居住者の増加が著しい。外国人居住者の人数は2021年比較で2.2倍に、地価公示は2.4倍と短期間で大きく伸びた。
鈴木貴子










