人口構造激変と新しい大人のライフスタイル
2025年07月01日 / 『CRI』2025年7月号掲載
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2025年、日本は人口構造激変の節目の年です。50代以上人口が全人口の50.3%となり、遂に全人口の半数を超えました(総務省統計局人口推計2025年1月より算出)。15歳以上人口では、56.6%です。同時に、団塊世代と団塊ジュニア世代というわが国二大人口ボリュームゾーンが全て50代以上となりました。
下のグラフは50歳を中央軸とした1920年から2110年のわが国の人口構造の推移です。2025年はターニングポイントで、従来は20・30代が中心でしたが、これからは50代以上がボリュームゾーンの社会です。
これはデジタル化・AI化と並行して、同レベルのインパクトをもたらす劇的変化です。高齢者・シニアが増えて要介護者も増大という印象も与えがちですが、そうでしょうか。
従来の高齢者は50歳を過ぎたら「人生下り坂で、あとは余生」でした。しかしながら、当研究所の40-70代の全国調査では「これから自分なりのライフスタイルを創りたい」が80.3%に達しました。会社生活からの卒業、子供の独立などで「これから自分なりのライフスタイルを創りたい」と思う大きな意識変化です。「シニア」という固定観念でなく、先行き感のある「50+」です。ファミリーから「ひとり」「夫婦二人」「仲間」へシフトし、家族も「3世代」です。現在、社会全体の最大ボリューム世帯は「単身世帯」となり、30・40代でもDINKS子無し世帯は珍しくありません。その意味では、「新しい大人のライフスタイル」が社会的に広がる可能性があります。ヨーロッパは伝統的に大人文化の社会のためブランドものや高級スポーツカーもあるわけです。
一般に、高齢者のリフォームは「階段の手すり」や「風呂場の滑り止め」「段差の解消」などですが、ある住宅メーカーでは50+の建替えに合わせた住宅商品として、「平屋」にして、「仲間や子供家族が集まれる家」や「趣味を楽しめる家」などライフスタイル提案をし、資料請求が数多くの住宅商品の中でNo.1になったそうです。また、別の住設メーカーはリフォームで「音楽を楽しめる家」や「キャットタワーのある家」を提案し、大人気だったとされます。
小さな子供がいたときには子供優先でできなかった夢を実現させて、「新しい大人のライフスタイル」を創る。それは、30・40代のより若い大人世代にも響き、「これからの人生100年の自分なりの希望を持つ」ということにもなるのではないかと思います。

人生100年時代 未来ビジョン研究所 所長
1975年早稲田大学商学部卒。(株)博報堂入社。プロモーション企画実務、研究開発に従事の後、企業のソーシャルマーケティング開発を推進。2000年エルダービジネス推進室、2011年新しい大人文化研究所を設立。さらに、2019年独立し当研究所を創設、現在、所長。
著書:『50歳を超えたらもう年をとらない46の法則』(講談社+α新書)『シニアマーケティングはなぜうまくいかないのか~新しい大人消費が日本を動かす』(日本経済新聞出版社、韓国版・台湾版発刊)他。
