「選ぶだけ」で理想のリノベーションが叶う「ユアリノベ」。その利点や、サービス立ち上げの背景にある、クジラ・矢野浩一代表の家族の幸せにつながる「本気の家づくりをサポートしたい」という思いに迫ります。
大切な家を「なんとなく」で決めてほしくない
「中古マンションを購入し、間取りも含めてリノベーションする「中古リノベ」。こちらは一からすべてをつくる注文住宅に比べ、コストを圧縮できる利点がある。しかし、その手段はまだ十分に認知されていません」。そう語るのは、大阪を中心にワンストップリノベーション事業を手掛けるクジラ株式会社の矢野浩一代表取締役。望む家づくりをリーズナブルに実現できる方法があるにも関わらず、それを知らないため多くの人が「自分の叶えたい家づくり」を諦めてしまっている現状があるといいます。
新築の注文住宅は、施主の思うままに間取りや内装デザイン、細かな仕様まで追求できるのが魅力。とはいえ予算が嵩むため、そもそも家づくりの選択肢から除外している人も多いかもしれません。
そんな中、近年では中古マンションを購入し、間取りも含めてリノベーションする「中古リノベ」で理想の住まいを実現する人が増えてきています。
「家づくりに対して積極的な方、感度高く情報を集めている方にとって中古リノベは当たり前の選択肢ですが、一部の都市を除いては認知度が低く、まだまだ一般的とはいえないでしょう。特に地方部では先輩や同級生が家を買ったから『私たちもそろそろ』といった形で、20代のうちから“なんとなく”マイホームを考え始めるケースも多いと思います。ただ、資金の都合で凝った注文住宅は難しいため、建売住宅か手頃なマンションになる。そこに『こんな家にしたい!』という強い意志はあまり含まれていません」(矢野さん、以下同)
「選ぶ」だけで理想の住まいをイメージ。新サービス「ユアリノベ」
もちろん建売住宅やマンションでも、自分の暮らしにフィットする物件に巡り合えないわけではありません。しかし、中古リノベという手法を知れば「予算内で」「理想の家」をつくるための選択肢はさらに広がります。その可能性を閉ざしたくないと、矢野さんは言います。
「そのためには、家づくりの“入り口部分”の難易度を低くして入りやすくすることで、より多くの人に最初の一歩を踏み出していただけると思っています。その一歩を後押しするためのサービスとして生まれたのが『ユアリノベ』です」
▲ユアリノベは、マンション探しからリノベーションの設計・工事、住宅ローンの申し込みまで一括でサポートするワンストップ型リノベーションサービス。クジラと長谷工リフォームの共同企画として2020年にスタートし、物件仲介やプランニング、設計をクジラが、工事やアフターサービスを長谷工が担う。
「最大の特徴は『カスタムオーダー形式』で、手軽に理想の住まいを実現できること。専用のWebサイトで『お好みのライフスタイル』や『デザイン』などを選んでいくだけで、つくりたい家のイメージを膨らませ、おおよその予算の目星もつけることができます」
たとえばライフスタイルなら「HOBBY(趣味が中心の暮らし)」「WORK(仕事に集中したい)」「DANRAN(家族との団らんを大切にしたい)」などの選択肢が、デザインでは「アメリカンヴィンテージ」「和モダン」「ナチュラル」「北欧」といった選択肢が用意されている。これらの選択肢から好みのものをチョイスしていくだけで、「自分の理想の家」が「どの程度の金額でできるか」が分かり、簡易的なローンのシミュレーションもその場でしてくれます。
「最初にここまで家の概要や予算のことが分かれば、お問い合わせのハードルも下がります。お問い合わせいただいた後はクジラのスタッフが有人で対応し、さらに細かなご希望も含めて詰めていくことになりますが、ここまでくればイメージがさらに具体化し、施主さん側も家づくりに対して前のめりになってくれるはず。そんなふうに、自分の家づくりに対して『なんとなく』ではなく、『本気で』取り組む人を少しでも増やしたいと考えています」
「本気の家づくり」は「家族の幸せ」につながる
矢野さんがこうも「本気の家づくり」を強調するのは、住まいが人に及ぼす影響の大きさを実感しているから。
「クジラはリノベーションの事業を始めて10年になりますが、これまでの経験上、家づくりに本気な家族ほど仲が良く、幸せそうな印象があります。家族一人ひとりのことを考えてつくられた家で暮らしていれば、そうそう不仲になんてならないと思うんです。お子さんの生活習慣が変わったというのも良く聞きます。リノベをした後にリビングで過ごすようになったとか、ランドセルを置く棚を作ったらきちんとしまうようになったとか。住まいは子どもの人格形成にも関係してきますし、人や社会への影響がとてつもなく大きい。だからこそ、多くの人に家づくりに本気になってもらいたいですし、専門家に丸投げするのではなく施主さん側も積極的に関わってほしいと考えています」
▲クジラが手掛けたリノベーション事例。パントリーや造作のTVボードによって隠したい物を隠し、アートや花瓶などお気に入りの雑貨をより魅力的にさせる家に。
クジラでは、施主を完全なる“お客さん”ではなく、ともに理想の住まいをつくり上げる“チームの一員”として捉えています。いくら家づくりのプロフェッショナルが素晴らしい提案をしたとしても、実際に暮らす人の目線がそこになければ本当に住み良い家にはならないからです。
「リノベーションや注文住宅などの家づくりは、“売買契約”ではなく“請負契約”になります。つまり、単純に物を買って終わりという話ではない。施主さんも一緒に自分の家について考え、より良い意思決定をするために勉強しなくてはいけない部分も多いんです。正直、しんどいと思います。でも、正解がないものを理想に近づけていくためには、それくらい強い思いがなければ難しい。
もちろん、そうした施主さんの思いには僕らも本気で応えなくてはいけません。クジラでは1人の営業担当者が窓口としてつくのではなく、設計、施工、管理スタッフなど、リノベーションに関わる全員がお客様に寄り添います。それぞれの立場から意見やアイデアを出し合い、施主さんも含めたチーム総出で理想の家をつくっていきたいんです」
▲クジラで働くスタッフ。スタッフの8割が平成生まれという、業界においては若さあふれる会社。
そうした「施主の本気」を喚起するためにも、まずはそもそも理想の家づくりを諦めている人たちに「中古リノベ」という選択肢を認知してもらう必要があります。
「そのためにも、どんどんユアリノベの事例を増やしていかなくてはいけませんね」と語る矢野さん。理想の実現に向け、まずは自身が本気で取り組んでいく ――そんな決意が垣間見えました。
取材・文/榎並紀行
WRITER
編集者・ライター。編集プロダクション「やじろべえ」代表。住まい・暮らし系のメディア、グルメ、旅行、ビジネス、マネー系の取材記事・インタビュー記事などを手がけている。X:@noriyukienami