ラーメン構造とは?防音性や耐震性、壁式構造との違いについて解説

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マンションでよく採用される構造のひとつに、柱と梁で建物を支える「ラーメン構造」があります。名前は知っていても、具体的な特徴やほかの構造形式との違いが分からない方も多いのではないでしょうか。 今回は、ラーメン構造の概要やメリット・デメリット、ほかの構造形式との違いなどを解説します。記事の後半では、ラーメン構造の見分け方やよくある質問・回答についても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

 

ラーメン構造とは、垂直に設置する「柱」と水平に設置する「梁」を組み合わせ、建物全体を支える構造のことです。ラーメン(Rahmen)には、ドイツ語で「枠」や「額縁」という意味があります。柱と梁で枠組みを作る構造であることから、ラーメン構造と名付けられました。

 

ラーメン構造では、柱と梁の接合部分を溶接などで強く固定(剛接合)するため、一定の耐震性を確保できるのが特徴です。鉄筋コンクリート造などの中高層マンションや公共建築物を中心に、多様な建物で採用されています。

 

 

 

建物に用いられる構造形式には、ラーメン構造以外に「トラス構造」や「壁式構造」があります。このうち、マンションでよく採用されているのは、ラーメン構造と壁式構造です。

 

壁式構造では、4方向の壁・床・天井で空間を構成します。「面」で建物を支えるため、ラーメン構造よりも地震に強い特徴があります。

 

ただし、面で支える分、ラーメン構造よりも建物が重くなってしまうため、壁式構造は5階程度までの低層マンションに採用されるのが一般的です。また、壁式構造の建物は、1960~1970年代に旧耐震基準に基づき建てられたものが多く、近年ではラーメン構造が採用されやすい傾向にあります。

 

トラス構造は、部材同士の接合部分をピンやボルトで固定し、複数の三角形を構成する構造です。力が加わっても変形しにくいメリットがあり、ドーム球場の屋根や橋などの大型建築物に多く採用されています。

 

 

 

ここでは、ラーメン構造の3つのメリットを紹介します。

 

 

 

ラーメン構造は、柱と梁だけで建物を支えられるため、補強を目的とした壁がいりません。また、窓や扉の位置も自由に決められます。

 

結果として、設計の自由度が高くなり、広い空間を確保したり、大きな窓を設置したりしやすいメリットがあります。同じ間取りの部屋でも、ラーメン構造を用いた部屋は広く感じやすいでしょう。

 

 

 

剛接合により柱と梁が一体化するため、地震の横揺れにある程度耐えられるのも、ラーメン構造のメリットです。

 

ただし、建物の耐震性は、地盤の状況や部材の大きさといった構造以外の要素にも左右されます。また、それぞれの建物は、設計段階で「どの程度の地震に耐えられるようにするか」を考えて建てられています。

 

そのため、建物の耐震性は個別に判断することが大切です。

 

 

 

ラーメン構造では、基本的に柱と梁で建物を支えているため、壁を取り外しても柱や梁に影響が出にくく、部屋の間取りを比較的簡単に変えられます。

 

したがって、リビングと隣の部屋の壁を取り払って広い空間を作る、といったリノベーションも可能です。将来的にリノベーションする可能性がある場合は、ラーメン構造を選んでおくと良いかもしれません。

 

 

続いて、ラーメン構造のデメリットも見てみましょう。

 

 

 

ラーメン構造では、建物の枠組みとなる柱や梁が張り出し、室内に凹凸ができてしまいます。建物全体を支えるためには、柱や梁を太くして強度を高める必要があり、より凹凸が目立ちやすくなるでしょう。

 

また、凹凸によって家具の配置が難しくなり、デッドスペースが生まれることもあります。

 

 

 

太い柱や梁を用いる場合は材料費が高くなるなど、ラーメン構造はほかの構造形式よりも建築コストが高くなりやすいものです。

 

ラーメン構造には、梁が天井の下に突き出す一般的な工法のほかに、梁を上階の床側に出す「逆梁工法」や、逆梁工法の柱と梁を屋外にずらす「逆梁アウトフレーム工法」といった工法があります。

 

このような工法の活用により、デメリットである柱や梁の凹凸はなくせますが、追加コストもかかるでしょう。

 

 

 

ラーメン構造で建築する建物は、壁の厚さに制限がないため、壁が薄くなっているケースがあります。

 

壁が薄いと広い空間を確保しやすい一方で、マンションのような居住目的の建物の場合、人によっては防音性の低さがストレスになるかもしれません。

 

 

 

不動産広告や物件情報には、ほとんどの場合、その建物の構造形式までは記載されていません。構造を見分けたいときには、以下の方法を参考にしてください。

 

 

 

間取り図で柱や梁の形を確認できるときには、ラーメン構造であると考えられます。一方、右の図のように室内がすっきりとしているなら、壁式構造の可能性があるでしょう。

 

ただし、ラーメン構造でも、間取り図には柱や梁の形が描かれていないケースもあります。その場合は、間取り図内に柱自体があるかどうかを確認すると良いでしょう。

 

 

 

建築基準法および建築基準法施行令では、一定基準を満たさない限り、壁式構造の建物は5階以下でなければならないと定められています。

 

したがって、6階以上の中高層マンションでは、ラーメン構造が採用されている可能性が高いです。また、本記事の前半で述べたとおり、壁式構造はラーメン構造よりも重量が大きいため、タワーマンションでは採用されません。

 

 

最後に、ラーメン構造でよくある質問と回答を紹介します。

 

 

 

マンションの防音性は、構造形式だけでは判断できません。

 

たしかに、壁が薄ければ音は響きやすくなります。しかし、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の建物であれば、比較的に壁が薄いラーメン構造でも、生活音が気にならないレベルの高い防音性が期待できます。

 

また、防音性能の高い床や窓などを採用している場合は、部屋全体の防音性がより高まるでしょう。そのため、マンションの防音性を判断する際は、マンション全体の構造形式のほか、各箇所の防音対策をチェックすることがポイントです。

 

 

 

木造と鉄骨造では用いる部材が異なり、それによって建物の性質にも違いが生まれます。

 

木材を組み合わせて建築する木造は、木の温かみがある点や、開放感のある間取りを作りやすい点がメリットです。その反面、火災のリスクが高く大規模建築が難しいことや、建物の高さに制限があることがデメリットとなるでしょう。

 

一方、鉄骨を組み合わせて建築する鉄骨造は、火災や地震の横揺れに強く、大きな建物を建てやすいのが特徴です。また、鉄骨は金属のため、シロアリ被害がほとんどありません。

 

ただし、鉄骨造は木造と比較すると、断熱性が低いというデメリットがあります。前述した防音性のように、どのような断熱対策が施されているかをチェックしましょう。

 

 

 

世界遺産に登録された東京・上野の「国立西洋美術館本館」は、ラーメン構造の代表的建築物として知られています。建築家のル・コルビュジエによって設計された美術館で、大きな窓や広々とした空間設計が特徴です。

 

 

建物に用いられる構造形式には、ラーメン構造・トラス構造・壁式構造などがあり、特にマンションでは、ラーメン構造と壁式構造が多く採用されています。ラーメン構造は6階以上の中高層マンションやタワーマンション、壁式構造は低層マンションで採用されるのが一般的です。

 

また、ラーメン構造には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット •    間取り・デザインの自由度が高い
•    耐震性が高い
•    リノベーションがしやすい
デメリット •    梁や柱で室内に凹凸が生じる
•    ほかの構造に比べ、コストが高い
•    壁が薄い場合、隣室の物音が聞こえやすい

ただし、耐震性や防音性は、構造形式だけでは決まりません。マンションを購入する際には、構造形式以外の要素も含めて確認し、快適に生活を送れる物件を選びましょう。

 

▶︎関連リンク:マンションの防音性について。壁や床も「音」の発生の鍵を握ります

監修者

高槻 翔太

<保有資格>

  • 宅地建物取引士
  • FP技能士2級
  • 日商簿記2級

<プロフィール>

不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。売買や駐車場の活用、リフォームの提案などに従事。不動産・金融特化のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。