マンションの修繕積立金とは?相場や工事費高騰などの値上がり要因も解説

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修繕積立金は、マンションの大規模修繕工事を行ない、安全安心な住環境や資産価値を保つために必要です。修繕積立金は、値上がりの傾向があります。この記事では、修繕積立金の算出方法や値上がりの要因を解説します。

 

マンションの修繕積立金とは、分譲マンションにおける共用部分の大規模修繕工事を行なう目的で、所有者全員が負担する積立金のことです。共用部分とは、特定の入居者に限らず、全員が日常的に使用する以下のような場所・設備の総称となります。

 

・屋根
・外壁
・エントランス
・エレベーター など

 

 

 

マンションの安全安心な住環境や資産価値を維持するためには、修繕工事が必要です。ただ、マンションの外壁のような共用部分の工事は、例えば「12年に1回」のような長い周期のなかで計画・実施されることが多くなります。

 

こうした十数年に1度の工事の場合、規模や費用がそれなりに大きくなります。一方で、入居者にとって、例えば「十数年ごとに工事費用を100万円払う」といったことになると大きな負担になるでしょう。

 

こうした負担や資金不足で必要な修繕工事ができなくなる問題を防ぐために、多くのマンションでは、修繕積立金を計画的に積み立てることが一般的です。

 

 

 

修繕積立金の金額は、マンションの分譲事業者が作成する「長期修繕計画」に基づき決定するのが一般的です。長期修繕計画は、国土交通省が公開する「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」に記載された方法で作られます。

 

なお、このガイドラインでは、19の項目をおもな「推定修繕工事項目、修繕周期等の設定内容」として挙げています。国土交通省が収集した長期修繕計画で計画された修繕工事費の割合の内訳は、以下のグラフのとおりです。

 

マンションの修繕積立金は、長期修繕計画に沿って行なわれる大規模修繕工事に備えて積み立てられるものです。これに対して管理費は、共用部分の維持管理に使う費用の総称です。一般的には、以下のようなものが該当します。

 

・マンション管理人の人件費
・管理組合の運営費
・マンションの設備点検費用
・共用部分の清掃費用
・共用部分の水道光熱費
・共用部分に使う電球などの消耗品費 など

 

 

マンションの修繕積立金には、大きく分けて以下の2種類があります。

 

・【均等積立方式】長期修繕計画で計画された修繕工事費の累計額を、計画期間のなかで均等に積み立てるもの。安定的な積立が可能。
・【段階増額積立方式】当初の積立額を抑えたうえで、段階的に積立額を値上げしていくもの。管理する資金が均等積立方式と比べて低くなることが多い。

 

ただし、購入時にまとまった金額を修繕積立基金として徴収したり、修繕時に一時金の借り入れ・徴収をしたりする方式を導入するマンションもあります。

 

 

国土交通省のガイドラインでは、購入予定者・所有者・管理組合のために「修繕積立金の額の目安」を示しています。

 

 

 

マンション修繕積立金の額は、各マンションのニーズや修繕状況などによって変動します。

 

そのため、ガイドラインでは、各マンションの修繕積立金にばらつきが生じやすいことを踏まえて、算出した目安額が、国土交通省の幅広く収集した事例の平均値に収まる幅になるように、前提となる以下のポイントを最初に示しています。

 

1.    主として、区分所有者が自ら住む住居専用マンションを対象とする
2.    長期修繕計画におおむね沿って作成された長期修繕計画の366事例を収集・分析する
3.    長期修繕計画の計画期間全体に必要な修繕工事費の総額を、当該期間で積み立てる場合の専有面積当たりの月額単価として示す
▶出典:マンションの修繕積立金に関するガイドライン(国土交通省)

 

そのうえで、長期修繕計画の期間全体における修繕積立金の平均額は、以下の式で算出されます。

 

《計画期間全体における修繕積立金の平均額(円/㎡・月)》
・Z=(A+B+C)÷X÷Y

 

《上記の式で使った項目》
・A:計画期間当初における修繕積立金の残高(円)
・B:計画期間全体で集める修繕積立金の総額(円)
・C:計画期間全体における専用使用料等からの繰入額の総額(円)
・X:マンションの総専有床面積(㎡)
・Y:長期修繕計画の計画期間(ヵ月)
・Z:計画期間全体における修繕積立金の平均額(円/㎡・月)

 

 

マンション修繕積立金の目安額(適正額)は、機械式駐車場があるかどうかで異なります。

 

まず、国土交通省のガイドラインでは、長期修繕計画の期間全体における修繕積立金の平均額の目安(機械式駐車場を除いた場合)として、以下の金額を公開しています。

そして、機械式駐車場があるマンションの場合、以下の式で算出した数字が加算されます。

 

・機械式駐車場がある場合の加算額= 機械式駐車場の1台あたり月額の修繕工事費×台数÷マンションの総専有床面積(㎡)

 

上記の式の「機械式駐車場の1台あたり月額の修繕工事費」には、国土交通省のガイドラインに記載されている以下の数字が入ります。

ただし、駐車場の使用料・修繕工事費・維持管理費を、修繕積立金・管理費と分けて経理処理するなど、駐車場の使用料から機械式駐車場の修繕工事費を賄おうとする場合は、上記の金額の加算は不要です。詳細は、国土交通省のガイドラインを確認してください。

 

 

 

国土交通省の「平成30年度 マンション総合調査」では、平成11年度~平成25年度における月/戸当たりの修繕積立金の差を以下のグラフで公開しています。

平成11年度の段階で7,378円だった月/戸当たりの修繕積立金の平均額は、平成25年度には10,783円まで上がっています。ただ、この調査結果は、平成25年度と少し古い情報です。近年では、さまざまなメディアやニュースで、修繕積立金が「数倍になることもある」という報道も出てきています。

 

 

 

マンションの修繕積立金は、区分所有者のニーズ・工事単価・設備の仕様・立地などのさまざまな要因で変動します。そのため、算出結果が適正額に収まっていない場合も、ただちに「不適切」と断定できるものではありません。

 

 

 

マンションの修繕積立金は、以下の要因で値上がりすることがあります。

 

 

 

マンションの販売促進のために、開発業者が修繕積立金の初期設定額を低く抑えたケースなどが該当します。修繕積立金が安すぎる物件は、あとで修繕積立金の値上げや高額な一時金が必要になることがあるため、注意しましょう。

 

 

 

段階増額積立方式の場合、修繕積立金が徐々に値上がりすることになります。値上がりを避けたい場合は、段階増額積立方式ではないマンションを選ぶことも一つの手段かもしれません。

 

 

 

大規模修繕工事に使用する材料費など、工事費用の高騰も修繕積立金が値上がりする要因の一つです。特に近年は、建築資材の高騰に加えて、人手不足による人件費の上昇などの要因から修繕コストが上昇し、修繕積立金の値上がりも起こりやすくなっています。

 

 

 

マンションの修繕や管理は、すべて計画どおりに実施できるとは限りません。例えば、近年では入居者の高齢化にともない、スロープや手すりの設置といったバリアフリー化が必要なマンションも多くなりました。

 

また、大型台風などの自然災害の影響でマンションの外壁や設備が損傷したり、管理組合側で想定していなかった排水管の腐食が発覚したりした場合などは、計画外の修繕工事をすることになり、修繕積立金が減少・不足することもあるでしょう。

 

 

 

最後に、マンションの修繕積立金でよくある質問とその答えを紹介します。

 

 

 

マンションが老朽化すれば、修繕にかかる費用も増えることになります。そのため、マンション購入時点の修繕積立金は、基本的に、新築よりも中古マンションのほうが高いです。

 

 

 

修繕積立金を滞納した場合、管理会社から電話や書面などで督促の連絡が入ります。督促が来ても修繕積立金を払わずにいた場合、管理会社は裁判所に支払督促を申し立てるかもしれません。

 

裁判所で承認された支払督促に対して2週間以内の異議申し立てがない場合、支払督促の仮執行が宣言され、ただちに強制執行を受けることがあります。また、長期の滞納によって、マンションの部屋が競売にかけられる可能性もあります。

 

 

 

修繕積立金は、将来の大規模修繕工事に備える大切なお金です。マンションを売却する場合も、一度納入した修繕積立金は返金されません。

 

ただし、マンションの建替えをする場合、管理組合は法律上の消滅をし、解散をすることになります。この場合、各入居者の負担割合に応じて修繕積立金の清算が行なわれます。

 

 

修繕積立金は、マンションの資産価値を左右する大切な要素の一つです。また、計画に基づく大規模修繕を実施し、安全安心な住環境を維持するうえでも積立を行なうことが重要です。

 

マンション修繕積立金の適正額・相場は、国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を使って算出や見極めを行ないます。ただ、近年では、建築資材の高騰や人手不足による人件費の上昇などの要因で値上がり傾向にあります。

 

また、購入時に修繕積立金が低いマンションも、あとで値上がりする可能性が高いため注意しましょう。

 

▶関連リンク:中古マンションの価格は「管理」の良し悪しで変わる? 新評価制度を取材した。

       マンションのメンテナンス時期や寿命、費用について詳しく解説

監修者

高槻 翔太

<保有資格>

  • 宅地建物取引士
  • FP技能士2級
  • 日商簿記2級

<プロフィール>

不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。売買や駐車場の活用、リフォームの提案などに従事。不動産・金融特化のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。