ポスト万博の再起動に向けて動き始めた大阪・関西の経済

2026年03月03日 / 『CRI』2026年3月号掲載

外部寄稿

目次

2025年10月13日に会期を終えた大阪・関西万博。
2026年の年があけ、関西では次の時代にむけた街の動きが活発になっている。アジア太平洋研究所の推計では、関西の実質GRP(域内総生産)成長率は2025年度+1.1%で2026年度には+0.9%と鈍化することが予測されている。トランプ関税の影響、日中関係の悪化など、経済環境が厳しい中、万博のレガシーを活かしながらも次の成長戦略の方向性を描き出す必要がある。

1. 大阪・関西万博による「くらし」の変化

四方を海で囲まれた湾岸部の埋め立て地での開催であったため、交通アクセスが最大の課題と言われていた。来場手段として7割が地下鉄を選択しており、事前想定を13ポイント上回った。自家用車は2割、駅シャトルバスなどが1割、船舶は0.2%とアクセスの地下鉄への集中が目立つ。(「大阪・関西万博 来場者輸送実績報告書」2025/12 来場者輸送対策協議会)地下鉄では2025年8月1日に発生した電気系統のトラブルで1.1万人が帰宅困難者になった。多様なアクセスが必要だ。
今後、会場になった夢洲は今後IRの開業や万博会場の跡地開発で年間3,000万人が訪問する国際的なエンターテイメント拠点を目指す。JR桜島線の延伸や京阪電気鉄道の中之島線の延伸が、どのタイミングで実現するかがポイントとなる。
当初、期待されていた「空飛ぶクルマ」の運航は機体の不良のためデモ飛行にとどまった。現況でも空港から市内への移動や、観光遊覧でヘリコプターが活用されているが、電気を動力とする「空飛ぶクルマ」は整備がより簡単で機材が少なくて済む、騒音がなく、離発着スペースもとらないため、もし実用化されれば都市部での空中移動という選択肢が増える。「自転車感覚でぐるぐる回る」という表現は誤解をまねくが、将来的には、ヘリコプター移動が置き換えられ、観光やビジネス利用での利便性は高まる。
タクシー不足が懸念され国内初の24時間・府内全域運行を許可された「ライドシェア」は、府内中心部315台中、稼働率は2割弱程度と低迷した。(日経2025年10/11)
1970年の大阪万博では鉄道駅での「自動改札」が普及、「動く歩道の設置」「車両での冷房の普及」などの目に見える生活の変化があった。今回の大阪・関西万博では「改札のクレジットカード決済」「通勤電車などでの有料の座席指定サービス普及」などの変化が目立っている。
大阪メトロの改札で実験が始まっている「顔認証」については、利用率は低く普及にはまだ時間がかかりそうだ。
万博を契機に会場外でも文化イベントが活況を示していた。大阪市美術館の「国宝展」をはじめ、京都、奈良でも国宝・重要文化財に関する展示物が集結。万博会期末には「文楽」が36日間のロングラン公演を行った。海外からのお客様への対応として、スマートフォンなどで日本語・英語の字幕を表示することができる「字幕アプリ」の導入や、英語を交えた解説映像の上映を行い、大阪独自の文化コンテンツのアピールを行った。

2. 2026年 関西の街の動き・経済の動き

2026年の関西の街の動き・経済の動きを整理してみよう。
(日本経済新聞 地方経済面関西経済2025年12月27日の記事をベースに株式会社 ANALOGが補足し作成)

1月

・「髙島屋堺店」営業終了(7日)

大阪府下堺市の中心である堺東駅前に1964年に開業した百貨店。ピーク時には300億円あった売上げは直近では103億円まで落ち込んでいた。
跡地には南海電鉄が生活密着型のショッピングセンター「HiViE(ヒビエ)堺東」を開業する。

・「心斎橋OPA」閉店(12日)

大阪市内、御堂側の一等地で1994年に開業。「ダイエー」の中内功が「パルコ」の創業者である増田通二をスカウトして立ち上げた都市型のファッションビル。かつては「東のマルキュー、西のオーパ」とも呼ばれ2000年代前半の関西のギャル文化を牽引した。若者の街アメリカ村にも近く、御堂筋に面しているなど立地的には申し分ないが、インバウンド対応ができていない。現在の運営母体であるイオングループは都市型の商業施設を縮小し、郊外型の店舗に注力する方針のため閉店が決まった。所有者であるユナイテッド・アーバン投資法人(UUR)は、約431億円で本館を売却する契約を締結したと発表している。

大阪市内、御堂側の一等地で1994年に開業。「ダイエー」の中内功が「パルコ」の創業者である増田通二をスカウトして立ち上げた都市型のファッションビル。かつては「東のマルキュー、西のオーパ」とも呼ばれ2000年代前半の関西のギャル文化を牽引した。若者の街アメリカ村にも近く、御堂筋に面しているなど立地的には申し分ないが、インバウンド対応ができていない。現在の運営母体であるイオングループは都市型の商業施設を縮小し、郊外型の店舗に注力する方針のため閉店が決まった。所有者であるユナイテッド・アーバン投資法人(UUR)は、約431億円で本館を売却する契約を締結したと発表している。

・「KDDI堺データセンター」稼働

シャープ堺工場跡地にデータセンターを稼働。年度内にはソフトバンクも工場跡にデータセンターを稼働させる。データセンターは今後の都市開発のキーワードになる。

3月

・京都市宿泊税引き上げ ※最高1泊1万円(1日)

・「帝国ホテル京都」開業 京都祇園(5日)

国の登録有形文化財かつ歴史的風致形成建造物である「弥栄会館(やさかかいかん)」。建物の外壁や外壁タイル・テコラッタの保存&再利用と、銅板屋根や飾り物金を復元することによって、約90年前の風景が蘇る造りになる。全55室。最上位スイートは1泊300万円。

・「東映太秦映画村」第1期エリア改装オープン(28日)

名称を「太秦映画村(英語表記:UZUMASA KYOTO VILLAGE)」へ変更。
リニューアルでは、「江戸時代の京へ、迷い込む」を新たなコンセプトに掲げ、20代・30代を中心とした大人の来場者も楽しめる「大人の没入体験パーク」として生まれ変わる。今後3年かけてリニューアルを続ける。「東映太秦映画村」の2024年度の来場者数は約51万7,000人。最盛期の1982年度と比べると、5分の1程度に減っている。全面改装後は年100万人の来場を目標にするという。

・大和ハウス工業、住友電設を完全子会社化(中旬)

大和ハウスは住宅メーカーのイメージが強いが、データセンターなど事業施設の建設が利益を牽引する。データセンターや半導体関連工場の開発という需要を貪欲に取り込む。

・シャープ、大阪市中央区堺筋本町へ本社移転(月内)

堺工場においていた本社を大阪市内の堺筋本町JTBビルへ移転。社員の通勤の便の向上を図る。堺工場は売却され、データセンターとして活用される。

・「南大阪創世首長会議」立ち上げ(年度内)

大阪府南部の堺市、藤井寺市、泉佐野市など15市7町村が地域の活性化や社会課題の解決に取り組むための組織。大阪商工会議所と官民で連携していく。外国人観光客(インバウンド)の周遊促進や各地の食文化のPRなどが当面のテーマになる見通し。域内の公共交通機関の確保も課題。

・「カペラ京都」開業(春開業予定)

京阪・祇園四条駅から徒歩約4分、「番組⼩学校」として1869(明治2)年に開校した元新道⼩学校跡地に、ラグジュアリーホテル「カペラ京都」を新築。シンガポールに本社を置く「カペラホテルグループ」のフラッグシップホテルとなる。日本初進出。地上4階、地下2階建、全89室。
NTT都市開発が、京都市東⼭区において開発を進めていた「元新道⼩学校跡地活⽤計画」の一環。同プロジェクトは、学校跡地にホテルを新築し、宮川町歌舞練場を建て替え、地域施設と⼀体でまちづくりに貢献する。

・舞洲2期区域(大阪・関西万博跡地)開発事業者の公募開始 (春頃)

夢洲地区、大阪・関西万博跡地について、マスタープランに基づいた開発事業者の公募が予定されている。先述した交通アクセスの整備と共に、持続性を持った「魅力ある」都市機能の集約が実現できるかが課題となる。

・「髙島屋泉北店」売り場改装

街開きから60年たった「泉北ニュータウン」(堺市など)は2025年11月の近畿大学医学部・病院の移転を機に大阪府、南海電気鉄道、都市再生機構の官民による再生計画が進んでいる。公的住宅の統廃合で企業誘致の敷地を創出し、医療・ヘルスケア関連企業を誘致する。
病院の従業員は約3,000人、外来患者数は1日平均2,300人、医学部の学生数は2026年開設の看護学部を含めて1,000人を超す。髙島屋は新たに増えた流動者向けの食関連を強化、また閉店する堺店の人気テナントを導入する。

4月

・星野リゾート「奈良監獄ミュージアム」奈良市 オープン (27日)

「旧奈良監獄」(1908年)は、明治政府によって計画された五大監獄のうち、唯一現存する建築物。当ミュージアムは、第三寮や看守所など、当時の状態を残した「保存エリア」に加え、3つの展示棟、また、カフェとショップが併設された「展示エリア」に分かれている。

・「エアウォーター」中央区南船場、「コクヨ」東成区がグラングリーン大阪に本社移転

いずれも本社ビルからの移転。跡地は売却される予定。

・「ルクアサウス」開業、「大丸梅田店」売り場縮小(上旬)

JR大阪駅南側の「サウスゲートビルディング」が、2025年末より大規模リニューアル。
テナントの百貨店「大丸梅田店」の10階~15階が、近隣の商業施設「ルクア大阪」の新館「ルクアサウス」となる。インバウンド客に支えられた都心部の百貨店の商業環境も厳しい。「大丸梅田店」は現在中国からのインバウンド客の減少に苦しんでいる。都市商業のよりシビアなターゲット設定が必要。

5月

・大阪市、特区民泊の新規受付停止(29日)

全国の特区民泊の9割が大阪市に集中。近隣トラブルなど社会問題化しているため、一旦「特区民泊」の受入を停止する。

・「クボタ」大阪市浪速区 グラングリーン大阪に本社移転(月内)

難波駅に近い本社跡地ではアリーナなどの再開発が計画されている。グラングリーン大阪には市内の企業の本社移転が続いている。

・「大阪松竹座」劇場の興行終了(月内)

道頓堀地区にはかつて劇場が軒を並べていた。歌舞伎の興行などの拠点がなくなることで大阪の劇場文化の地盤沈下が進むことを惜しむ声も多い。

6月

・「THE GATE HOTEL大阪 by HULIC」(15日)

大阪市中央区南船場。心斎橋エリアの新たなランドマークとして店舗・宿泊施設・事務所の複合施設を一体開発している 「(仮称)心斎橋プロジェクト」内の高層階(16階~28階)。

・ホテル「星のや奈良監獄」開業(25日)

4月に開業する「奈良監獄ミュージアム」に併設する。重要文化財である旧監獄を活用したラグジュアリーホテル。

7月

・ユネスコ世界遺産委員会で「飛鳥藤原の宮郷」選定に期待

高松塚古墳(明日香村)や石舞台古墳(同村)、藤原宮跡(橿原市)など飛鳥時代の遺跡計19資産。選定されれば世界に向けての価値の発信が強化される。奈良地区では伝統・歴史を活かした観光開発が進んでいるので選定されれば追い風となる。

・電通関西オフィス グラングリーン大阪に移転

秋頃

・ホテル「コートヤード・バイ・マリオット京都駅」開業

JR東海がJR京都駅東口で展開している「(仮称)京都駅東部複合型拠点整備プロジェクト」(2028年開業予定)の一環。地域一帯が生まれ変わる。

年度内

・「淀屋橋ゲートタワー」開業(2025年12月竣工)

地上29階建の高層オフィスビル計画。淀屋橋駅に直結した新しいランドマーク。2025年5月に竣工した「淀屋橋ステーションワン」(地上31階建)と対比して「ツインタワー」「ゲートビル」とも通称されている。2つのビルは新しい御堂筋のシンボルとなる。

3. 今後の展望~お祭りの後の世界

今回は2026年の直近の動きを簡単に整理した。大阪・関西万博という楽しかったお祭りは終了した。観光ばかりが話題になっているが、今後の大きな都市戦略のテーマとしては、政府が打ち出している「広域リージョン連携」に対応した「関西広域地方計画」が動きはじめている。2026年6月頃に計画決定され、今後10年間の取り組みの指針となる。
例えば、播磨~けいはんな を「イノベーション東西軸」と位置づけて研究開発のクラスター化することや、スタートアップ支援など行政区域を越えた広域連携プロジェクトが掲げられている。
また従来黒子的な存在だった「データセンター」が人工知能ブームによって、都市への隣接性も重視されるようになり、道路や倉庫などの「物流」と並ぶ「情報」の動脈として都市計画の中で重要なポイントとなる。
機会があれば、そのあたりをにらんだ中長期の視点で関西の戦略と動きを紹介したい。

佐野 嘉彦さの よしひこ

株式会社 ANALOG

略歴
1978年 関西大学社会学部卒 市場調査会社に入社
1984年~マーケティング企画会社設立に参画
以降20数年にわたって下記領域のマーケティング業務に携わる
①小売業のマーケティングのための生活者調査企画分析
②商業施設店舗コンセプト作成戦略策定
③店舗コンセプトにそったテナント計画策定
④都市開発プロジェクトのPR計画・実施サポート
⑤商品企画のためのマーケティング戦略策定
2007年7月に株式会社 ANALOGを設立