特集

2022.12.16

マンションの平均価格と平均面積の50年史をインフォグラフィックで解説

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マンションの平均価格と平均面積の50年史

分譲戸数が激増した1970年代から現在まで。長谷工総合研究所 常務取締役の酒造豊さん監修のもと、首都圏のマンションの半世紀を振り返ります。

※所属会社・役職は取材当時のものです。

文:山下紫陽 インフォグラフィック制作:カーツメディアワークス

 

「マンションに住む」。従来の「家に住む」という価値観に変革が訪れたのは第1次オイルショック後の1973年のことでした。以降全国のマンションの分譲戸数が15万戸を超え増加の一途を辿り、1970年代後半以降には東京への通勤圏にある首都圏の各都市へのマンション供給が増えていきました。そしてバブル景気下の1987年にはマンション価格はぐんと上昇。バブル崩壊直前の1990年には、平均価格が6123万円にまで高騰しています。一方、平均面積は緩やかに拡大し、1990年には65.54㎡となりました。

首都圏マンションの平均価格と平均面積の推移
世代に変化

当時は住宅金融公庫が最も低金利で、しかも固定であったが、借入限度額が設定されていたため、足りない分を都市銀行等の民間金融機関から借り入れるのが一般的だった。また、住宅金融公庫も当初は5.5%から始まるが、これは「ステップ返済」という二段階金利のもので、6年目からの金利は+0.5%の6.0%という組み立てになっていた。

ところが1991年にバブルが崩壊すると、マンションの供給数は86年の4万戸台から2万5000戸台にまで激減。平均価格も4000万円台まで下がりました。一方、景気後退期を脱した94年あたりからはバブル経済の崩壊もあって、土地の供給が増加。都心部でのマンション供給が増加し、かつ一戸あたりの平均面積が拡大するものの価格は安定する状況が継続しました。加えて商品企画面でも様々な工夫が行われ、住宅すごろくで“賃貸アパートからマンションに移り住み、最後は戸建住宅へ”と言っていたのが、マンションを終の棲家にしていいという人が増えてきたという意識の変化もあったようです。

1995~2005年は8万戸前後の大量供給が続き、価格・面積ともに大きな変動はありませんでしたが、2008年のリーマンショックをきっかけに一挙に激減したのが供給戸数です。これにはリーマンショックによってデベロッパーが淘汰され、供給構造そのものが変化したという事情がありました。

日銀がマイナス金利政策の採用を発表した2016年には、平均価格が5490万円まで上昇、一方で平均面積は69.22㎡に縮小。超低金利の中、女性活躍推進法の制定(2015年)などの影響もあり、「共働きのパワーカップルのマンション購入」という流れが加速しました。この層には2019年の消費税増税の影響はほとんどなく、2021年には平均面積が縮小する一方で、価格は6260万円と過去最高を記録するまでに。共働きパワーカップルを中心に都心部の高価格だが利便性の良い物件を購入しており、彼らがマンション市場を支えているという状況はまだまだ続きそうです。

WRITER

山下紫陽
ライター / 編集者。オンラインメディア、会員誌やフリーペーパーなどで、建築、アート、カルチャー、ライフスタイル全般の記事の執筆やインタビューなどを行っている。デザイン関係のトークイベントなどでファシリテーターを務めることも。

おまけのQ&A

Q.若い世代が都心の高額物件を購入できているのは、共働きのパワーカップルが増えたことだけが理由でしょうか。
A.これは私見ではありますが、バブル期に遠隔地のマンションを購入した親世代が、「多少無理をしてでもマンションは立地の良い物件を買った方が良い」と助言し、場合によっては援助もしているということがあるのではないか。高く売れる物件を買っておけば、次に買える物件も高くなりますから。
Q.これからのマンションの課題は。
A.今後は築40年を超えるマンションの建て替え問題が多く出てきます。住民には若い方も高齢者の方もいらっしゃるので、世代間の意識統一を図っていくということも大事です。現在のところ、旧耐震基準のマンションが103万ある中で、既に建て替わっているのはまだ3万弱。ただ、これからは建て替えずに竣工から100年経過しても住めるマンションを目指していくべきでしょう。長谷工では2022年以降全マンションのZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を目指していますが、新築についての省エネ対応は必須。そうでなければ中古になった時に差がつくでしょう。
Q.超高齢化社会において、マンションに期待されるものは。
A.高齢になってもマンション生活は何かと便利だし住みやすい。本当は自分のライフステージに応じて住み替えていくのが理想です。子育て中は70㎡が必要でも、それが終われば50㎡くらいのところに移り、いよいよとなったら高齢者向けのマンションへ、と住み替えていけるのがベスト。一方で、単身で暮らしている高齢者の数が増えるにつれ、建て替えの際に相続人が確定できないような問題も生じてくるでしょう。これはマンション管理の部分の役割になってくる気がします。