マシンガンズ滝沢さんに聞く【後編】ゴミをなるべく出さない生活とは?

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マシンガンズ滝沢秀一さん

お笑い芸人で、ごみ清掃員でもあるマシンガンズ滝沢秀一さん。すぐに実践できる正しいごみ出しのポイントや、ご自身も実践する「ごみを出さない生活」について伺いました。

取材・文:榎並紀行(やじろべえ) 撮影:ホリバトシタカ

――前回はマンションのごみ集積所のきれいな使い方についてお話を伺いましたが、今回は正しい分別方法など、ごみ全般のことについてお聞きしたいと思います。

 

滝沢:分かりました。でも、その前にいわゆる「ごみ」って何種類あるかご存知ですか?

 

――7種類とか8種類くらいでしょうか?

 

滝沢:講演会などで同じことを聞いても、やはりそうお答えになる人が多いです。でも、じつはこの世には2種類のごみしかありません。「燃えるごみ」と「燃えないごみ」だけです。じゃあ、たとえばビンや缶やペットボトル、古紙などは何かというと、資源。よく「資源ごみ」という言い方をしますが、資源は「ごみ」ではありません。

▲滝沢秀一さん。お笑いコンビ「マシンガンズ」のツッコミ担当。2023年『THE SECOND 〜漫才トーナメント〜』準優勝。2012年からはごみ収集会社の収集作業員としても働き始め、現在も芸人と兼業。『このゴミは収集できません』『ゴミ清掃員の日常』など、ごみに関する著作も多数

Twitter:@takizawa0914

――確かに、普通に「資源ごみ」という言葉を使っていますが、リサイクルできるものに対して「ごみ」と呼ぶのはヘンですね。

 

滝沢:ごみは最終処分場という施設に送られますが、そこでの処理方法は「ごみを燃やした灰を埋めるか」「燃えないごみを砕いて埋めるか」の2種類しかありません。それ以外のペットボトルなどの資源はリサイクルされるため、最終処分場には行かないんですよ。

 

2021年に福岡県の柳川市が指定のごみ袋の表記を「燃やすごみ」から「燃やすしかないごみ」に変えて話題になりましたが、あれは「がんばって分別をしたけど、これだけは燃やすしかないごみ」という意味のネーミング。つまり、今は普通に「燃やすごみ」として捨てられているもののなかに、じつは資源になるものがたくさんあるということなんです。

 

――たとえば、どんなものが挙げられますか?

 

滝沢:代表的なのは「紙」ですね。たとえば封筒やカレンダー、お菓子の箱など。こういうものって、ビリビリに破いて可燃ごみとして捨ててしまいませんか? でも、これらは「雑紙」といって、リサイクルが可能です。不用な紙袋などにまとめておき、ある程度の量が溜まったら古紙の日に出すと、資源として回収されるんです。

 

可燃ごみとして出せば最終処分場で燃やされて灰になるだけですが、分別をすれば真逆の結果になる。雑紙を分別するだけで、世の中の大部分のごみが減りますよ。まずは、このことを知っていただくのが大事だと思います。

 

――分別って、普段あまり意識していない人からすると面倒なイメージもありますが、雑紙を分けておくくらいならすぐに実践できそうです。

 

滝沢:そうですね。まずはそうした、簡単にできることから始めればいいんじゃないでしょうか。ある程度の分別をしていくと、かえってごみ出しの手間が減ることに気づくと思います。だって、ごみの量自体が減るわけですからね。ごみ袋の数も減って経済的ですし、そのうち「ごみをいかに減らすか」という思考に変わっていく。今月はこれだけ減らせたと、達成感を得られるようになっていくと思いますよ。

 

――滝沢さんはごみを減らすために、どんなことをやっていますか?

 

滝沢:僕はコンポストなどもやっていますが、いきなりそこに手をつけるのはハードルが高いと思います。おすすめは、野菜の切れ端などを捨てる前に乾燥させることですかね。干し網などを使って、1日くらいベランダに吊るしておくんです。すると、野菜から水分が抜けて質量が減る。臭いも出なくなるし、虫も湧かなくなるのでいいですよ。分別の次の段階として、おすすめです。

――次に「資源」を出す時の注意点についてお伺いします。たとえば、ペットボトルはキャップを取り、ラベルを剥がしてから回収ボックスに入れることが推奨されていますが、これを守らないとどうなるのでしょうか?

 

滝沢:ラベルやキャップを取ってないものが多いと「リサイクルのランク」が下がってしまう可能性があります。リサイクルと一言でいってもランクがあって、最もランクが高いのは、いわゆる水平リサイクル。つまり、ペットボトルをペットボトルとして再生するというものです。ランクが落ちてしまうとプラスチックの形を変えて、別のものにリサイクルされます。たとえば、洋服やネクタイに生まれ変わったとしても、それらって結局、最終的にはごみになってしまいますよね。

 

要は、きれいなものはきれいなものからしかリサイクルされないということです。だから、回収ボックスのなかにラベルやキャップが付いたままのペットボトルが混在していた場合、我々のような清掃員が手作業ではじいたりもするのですが、限界はありますからね。

 

――ペットボトルの中身が残っていてもダメなのでしょうか?

 

滝沢:ペットボトルだけではなく、ビンも缶も、プラスチックの容器もすべてそうですね。たとえば瓶詰めのジャムや豆板醤などが中で固まってしまったやつを、そのまま資源ボックスに入れる人がいるんですけど、あれも回収先で、手作業で取り出している人がいるんですよ。できればご家庭で不要な布などを使って中身を取り出し、水ですすいでから出してほしいですね。

 

――中身が残った状態で資源に出すくらいなら、可燃ごみや不燃ごみとして出したほうがいい場合もありますか?

 

滝沢:そうですね。たとえば、弁当などの容器って中華系のおかずが多いと、洗ってもなかなか油がとれません。洗剤でごしごしやるのが大変なのであれば、もう可燃ごみとして捨ててしまっていいと思います。やはり、一番大事なのは生活です。分別がストレスになって生活に支障をきたすくらいなら、「できる範囲」で全く問題ないんじゃないかと。

――雑にごみを出すと環境に負荷がかかるだけでなく、ごみを回収してくれる清掃員の方々にも危険が及ぶと聞いたことがあります。

 

滝沢:最近よく話題になっているのは、可燃ごみに含まれていたリチウムイオン電池が発火して、ごみ収集車が燃えてしまうケースです。実際、友人の車も何度も燃えていますし、僕らからすると本当に怖いんです。

 

リチウムイオン電池って、少し圧迫されると火が出ます。清掃車に入れた時にすぐ火が出れば対処のしようもあるんですけど、圧迫された数十分後に発火したりするのでタチが悪いんですよ。仮に清掃車の真ん中のほうで発火したら、もうアウトですね。

 

――なぜ、可燃ごみのなかに電池が混在してしまうのでしょうか?

 

滝沢:最近は充電式の製品が増えて、その多くにリチウムイオン電池が使われています。たとえば、携帯扇風機。あれって外側がプラスチックだったりするので、「燃えるだろう」と、そのまま可燃ごみとして捨ててしまうのだと思います。あとは、ワイヤレスイヤホンや電子たばこなども小さいので「これくらい大丈夫だろう」となるのか、よく可燃ごみに含まれているのを見かけますね。

 

電池でいえば、ボタン電池などを使用後にとりあえず箱などに入れておく人がいると思いますが、あれも結構危ないです。電池同士がぶつかって電流が発生すると、バーンと爆発することがありますから。必ず、セロハンテープなどを貼るなどして絶縁したほうがいいですね。

 

――他に「危険なごみ出し」の事例はありますか?

 

滝沢:危険の角度が少し異なりますが、ごみから個人情報を特定されてしまう危険性があります。僕がごみ清掃員を始めた頃は携帯電話の請求書に契約者の名前や電話番号まで記載されていて、ゾっとしました。それで、すぐにシュレッダーを買いましたよ。

 

それから、意外と盲点なのがレシート。よく、レシートを財布に入れておいて、ある程度まとまった量になってから捨てる人がいますよね。それ、めちゃくちゃ危険です。元空き巣が手口を書いた本を読んだことがあるんですけど、コンビニのレシートには情報が詰まっているそうです。それも数枚のレシートがあると「この人はいつも21時くらいに最寄りのコンビニに寄っているから、おそらくそれ以前の時間は不在だろう」と、行動パターンを推測されてしまうんです。

 

――怖いですね。レシートはこまめに捨てるか、シュレッダーにかけたほうがいいと。

 

滝沢:そうですね。あとは、シュレッダーにかけられない個人情報が漏れてしまうごみもあります。たとえば小学生の子どもの上履きって、名前が書いてあるじゃないですか。ああいうのも、そのまま捨てずに名前の部分だけ切り取って、生ごみの中に混ぜて捨てたりするのがいいと思います。

 

一回出したごみって、そのあとに確認しにいくことがないじゃないですか。だから、誰かに持ち去られていても気づかないんですよね。そうしたことも想定して、生活が丸分かりにならないように十分注意したほうがいいと思います。

――正しいごみ出しは地球環境のためだけでなく、清掃員の方や自身を守ることにもつながるということが、よく分かりました。

 

滝沢:そうなんですよ。あとは、ごみ出しのルールを守ることも大事なんですけど、やはり僕はそもそも「ごみをあまり出さないように暮らす」ことを意識してほしいなと思います。たとえば、先ほどお話しした雑紙を分別することもそうですし、日々の買い物もそう。世の中には簡単に買えるけど、捨てることが難しいものがたくさんあります。ですから、ものを買う時には同時に「捨てる時のこと」も考えてみてほしいですね。

 

アメリカには「ラストロングの精神」という考え方があります。要は、愛しているものを最後まで使おうという意味。ですから、ものを買う時には「最後まで愛せるかな」と考えてみることが大事なんです。適当に買ったものって、やはり適当に捨てられてしまいますから。本当に気に入ったものを買うという意識づけが、ごみを減らす第一歩なんじゃないかと思います。

 

前編記事「マシンガンズ滝沢さんに聞く【前編】マンションのごみ集積所、どうすればきれいになりますか?」を読む

 

WRITER

榎並紀行
編集者・ライター。編集プロダクション「やじろべえ」代表。住まい・暮らし系のメディア、グルメ、旅行、ビジネス、マネー系の取材記事・インタビュー記事などを手がけている。 X:@noriyukienami

おまけのQ&A

Q.古紙の日に出してはいけないのはどんな紙?
A.靴や鞄などに詰められた緩衝材ですね。これには「昇華転写紙」というリサイクルできない紙が使われていることが多いです。少量でも古紙のなかに混入してしまうと、大量の再生紙が使えない「損紙」になってしまいます。昇華転写紙かどうかを見分けるのは難しいため、緩衝材は古紙の日ではなく「燃やすごみ」の日に出してください。