花と緑のプロ・日比谷花壇に聞く快適ベランダガーデニングの極意

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日比谷花壇

観葉植物に囲まれた生活には憧れるけれど、メンテナンスや虫の発生が心配…。そんな、ベランダガーデニングの悩み事をプロが解決。マンションにおけるグリーンライフ成功の秘訣を聞きました。

取材・文:稲生京子 撮影:石原麻里絵(fort)

――庭のトータルデザインからメンテナンスをお任せできる年間管理パッケージ、インテリアグリーンのサブスクなど、暮らし方に応じた多彩なメニューが揃う、日比谷花壇の庭設計・メンテナンスサービス「ウェルネ」。サービスを始めるきっかけについて教えてください。

▲創業150年を超える花と緑のプロフェッショナル企業・日比谷花壇には、庭づくりを多角的に支える精鋭が揃う。(右から)空間演出を得意とするクリエイティブデザイナー芹田博幸さん。「ウェルネ」を管掌するB2B事業部の部長を務める長尾悠太さん。樹木医・1級造園施工管理技士の資格を持つ保坂悠平さん。

日比谷花壇「ウェルネ」公式サイト

長尾さん(以下、敬称略):法人クライアントへの庭関連サービスはずっと展開していたんですが、不動産住宅市場が活発になった2016年頃を境に、個人のお客様から庭づくりに関するご要望の声を多くいただくようになりました。サービスのレベルを維持しながらどこまでできるだろうかと模索していたところ、コロナ禍に突入しました。働き方や家時間が大きく変化したことが後押しとなり、2022年2月、本格的に個人宅向けのサービスをスタートしました。

 

――実際には、どのような依頼が多いですか?

 

長尾:新築やリノベーションに際して理想の庭をつくりたいという方ですね。マンションにお住まいの方ですと、室内グリーンのサブスクレンタルやベランダの空間と植栽を合わせてデザインするなど、インテリアとグリーンをコーディネートして楽しみたいというお話をよくいただきます。

 

 

――庭やベランダに求めるものが以前とは変わったと感じますか?

 

芹田さん(以下、敬称略):家の外と中との連動性・連続性が求められていますね。ベランダも、室内とシームレスにつながってリビング化してきた。ベランダが「緑のある生活空間」として認識され始めているようです。
保坂さん(以下、敬称略):以前は、室内に置くのは小さめの観葉植物が主流でしたが、最近は室内でも数メートルあるような大鉢に人気があり市場でも枯渇しているほどです。庭でいうシンボルツリーのような存在を室内でも楽しみたい、と。グリーンを求めるテンションが高まっているのかなという印象はあります。

長尾:戸建ての事例ですが、以前保坂が手がけたリノベーション案件でとても印象に残っている庭があるんです。通常の庭というのはフェンスなどで「囲う」ことから始めるんですが、そこはもともとの鬱蒼とした外構をすべて取り払ってオープンガーデンにしたんです。

保坂:綺麗に色の出る宿根草をたくさん使った花壇をつくって。後に、庭をきっかけにして近所の方々との交流が広がったと伺って嬉しかったですね。
長尾:景観としての閉じた庭ではなく、居室や外のコミュニティとつながる空間、そこで過ごす空間として捉えられる方が増えているなというのは強く感じますね。

 

 

――ベランダガーデニングの悩みといえば「水」と「虫」だと思うのですが。

 

保坂:そうですね。プランター植えの植物は、地植えに比べてどうしても乾きやすい。要するに「視界に入る」が「手をかける」につながるので、ベランダに出る目的をつくってあげるといいと思います。朝食やお気に入りの椅子での気分転換など、ベランダで過ごすついでに植物に水をあげるという動き。あとは、自動灌水も手軽に取り入れられるので、ものぐささんにはおすすめです。

「虫」は水やりとつながっている部分が大きくて、プランターの受け皿に水が溜まったままだと虫やニオイが発生しやすくなります。こまめに捨てることを心がけてください。あとは、土を使わないハイドロカルチャー(水耕栽培)にするのもおすすめ。クリアな容器を使えば水の量も一目瞭然で水枯れ&やりすぎの心配もありませんし、洗って何度も再利用できるので古い土の処理に迷うこともない。マンションでのグリーンライフに最適な選択といえるかもしれません。室内グリーンをすべて水耕栽培でコーディネートしたいというようなご要望も、「ウェルネ」のプランに落とし込んでご案内できます。

 

――マンションのベランダは「共用部」なので、できることが限られるというのもベランダガーデニングの悩みのひとつです。

 

芹田:避難ハッチの上を避けることは前提として、ウッドデッキや芝生を敷くことは可能なケースもありますので、管理規約を確認すると良いでしょう。トラブルが発生しないよう、管理人の方と相談した上でのご提案も可能です。
長尾:そうしたルールを知っているという点もプロに任せていただく大きなメリットですね。大規模修繕の時期をヒアリングするなど、起こりうるトラブルを先読みし、お伝えした上で提案しています。

芹田:風の影響を受けやすいマンションのベランダでは、設置面の大きい角型プランターが倒れにくくておすすめです。隣室との隔板は避難用のものですので、前に物を置かないようご注意ください。

 

 

――マンションでのグリーンライフを楽しむ上で必要な心構えは?

 

保坂:インテリアコーディネーターさんと一緒に家づくりを考えるとすごく楽しいのと同じように、グリーンのプロと「どんな緑空間にしようか」と考えていくと、住まいの楽しみ方がぐっと広がると思います。
芹田:庭もベランダも植物だけでは完成しませんので、家具や照明を含めてトータルでのご提案をさせていただくことがほとんど。光の当て方一つで、夜のベランダという空間が見違えるように変わりますよ。

▲ウエディング装花、店舗及びオンラインショップでのフラワーギフト、カジュアルフラワーの販売、BtoB、お葬式サービスや地域創生まで幅広く事業を展開する日比谷花壇。花柄グラフィックを活用した企業コラボなどにも積極的に取り組んでいる。

保坂:「グリーンをひと鉢買ったら家で過ごすのが楽しくなった」と、次のグリーンをお求めに来られるお客様はとても多いんです。ただ、放任しすぎても過保護すぎても良くないのが植物。「買って置いて終わり」ではなく、コミュニケーションをとるように付き合っていくことが大切です。でも、失敗しながら経験を積む過程を楽しめる方ばかりではないですよね。出来るだけ自宅のベランダ環境に合った植栽選びからスタートして、少しずつ試してみてほしいと思います。そして植物の具合が悪くなった時には、それが病気なのか水不足なのか根腐れなのか、正確な判断の上で適切な処置をする。植物と長く楽しく付き合っていただくために我々がいますので、プロを上手に使って、グリーンを楽しんでいただけたら嬉しいです。