マンションの耐久性は構造で変わる?耐用年数と寿命の関係性も紹介

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中古マンションの購入を検討してはいるものの、耐久性が不安だという方も多いのではないでしょうか。鉄筋コンクリート造のマンションの寿命は、100年以上といわれることもありますが、建物の構造やメンテナンスの状況などによって大きく異なります。 そこで本記事では、マンションの耐久性を決める、鉄筋コンクリート造などの各種構造の特徴のほか、耐用年数と寿命の関係性、寿命を決める要素などを解説します。耐久性の高い中古マンションを購入するポイントを把握したい方は、ぜひ参考にしてください。

一般的にマンションは、鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートで作られているため、木造住宅よりも耐久性が高いことが特徴です。法定耐用年数を比べてみても、鉄筋コンクリートのマンションが47年、木造住宅が22年と、2倍以上の差があります。ただし、木造住宅でも「長期優良住宅」は、適切にメンテナンスを行なえば100年程度の寿命があるとされています。

 

マンションは建物そのものの強度が高いため、地震や台風などの被害が木造住宅よりも抑えられるでしょう。また、木造住宅は火災に弱いですが、マンションで使われている鉄筋コンクリートは燃えないだけでなく、温度上昇による強度変化もありません。さらに、コンクリートは遮音性が高いため、生活するうえでの防音という点でもマンションは木造住宅より優れています。

 

 

 

一口にマンションといっても、大きく「RC造」「S造」「SRC造」の3つに分かれています。それぞれの特徴と耐久性を解説します。

 

 

 

RC造とは鉄筋コンクリート造のことで「RC」は「Reinforced Concrete」の略です。多くのマンションで導入されている工法で、型枠と呼ばれる仮設の枠の中に鉄筋を組み、そこへコンクリートを流し込んで固めます。

 

鉄筋は引っ張られる力に強いものの、さびやすく熱に弱い点が特徴です。一方で、コンクリートは圧縮に強い反面、引っ張られる力には弱い点が特徴です。RC造では鉄筋をコンクリートで保護することで、鉄筋をさびや熱から守るとともに、引っ張られる力に弱いという特性をもつコンクリートを、鉄筋の特性がカバーしています。お互いの弱点を補うことで、建物の耐久性を高めることが可能です。

 

RC造は、おもに中低層マンションで導入されていますが、最近ではコンクリートの軽量化などにより、タワーマンションでも導入されているケースがあります。

 

RC造のメリットは、防音性、耐火性、耐震性、断熱性に優れている点です。また、気密性が高い点もメリットで、冬は暖かく過ごせますが、湿気がこもりやすい、結露が発生しやすいなどのデメリットも抱えています。

 

 

 

S造とは鉄骨造のことで「S」は「Steel」を意味します。柱やはりなどに鉄骨を用いる工法で、RC造やSRC造とは異なり骨組みにコンクリートを使わないため、軽量さとしなやかさが特徴です。工場や店舗のほか、小規模な住宅やアパートなどで多く採用されています。

 

S造の種類は、鉄骨の厚さが6mm未満の軽量鉄骨造と、6mm以上の重量鉄骨造の2つで、軽量鉄骨造は2階建て以下の建物に、重量鉄骨造は3階建て以上の建物に使われます。

 

軽量鉄骨造のメリットは、コストを抑えやすい点や工期を短くできる点で、重量鉄骨造のメリットは、柱が太く本数を減らせることから、広い空間を作れる点です。

 

一方で、S造の骨組みは鉄骨で丈夫ですが、コンクリートを使わないため、RC造やSRC造と比較して耐久性がやや劣ります。また、防音性、耐火性、耐震性もRC造、SRC造のほうが優れているでしょう。

 

 

 

SRC造とは鉄骨鉄筋コンクリート造のことで、SRCは「Steel Reinforced Concrete」の略称です。鉄筋コンクリート造の芯に鉄骨を入れたものを指します。

 

SRC造はRC造よりも細い柱で強度を高くでき、軽量化も可能であるため、高層ビルやタワーマンションなど、大規模な建物で用いられるケースが多い工法です。

 

SRC造のメリットは、RC造の丈夫さに加えて、S造のしなやかさも併せ持っている点です。しなやかさによって地震のエネルギーを吸収できるため、耐震性に優れます。耐火性や防音性はRC造と大きく変わりません。SRC造のデメリットは、RC造よりもコストがかかり、工期も長くなる点です。

 

 

建物などの固定資産には、法定耐用年数が定められており、RC造・SRC造であるマンションは47年、木造住宅は22年です。

 

ただし、法定耐用年数は、あくまでも税法上の減価償却期間を示すものです。つまり、法定耐用年数は建物の税法上の資産価値がなくなるまでの年数であり、法定耐用年数が過ぎたからといって、建物が寿命を迎えるわけではありません。

 

例えば、ニューヨークにあるエンパイアステートビルは1931年に完成していますが、90年以上たった2024年時点でも現役のビルとして使われています。

 

また、国土交通省の資料によると、RC造とSRC造の実際の耐久性は120年と算定されています。実際に取り壊されたRC造マンションの平均寿命は68年のため、法定耐用年数よりも十分な耐久性があることが分かるでしょう。

 

 

 

マンションの平均寿命は68年ですが、あくまで平均値であり、実際は建物によって年数に開きがあります。ここでは、マンションの寿命を決める要素を解説します。

 

 

 

耐震基準は1981年から大きく変わっています。旧耐震基準では、震度5強程度の地震で建物が崩壊しないことが求められていましたが、新耐震基準では、震度6強から7の地震で倒壊しないことが必要です。

 

1981年5月以前に建てられたマンションは旧耐震基準によって建てられており、大地震で倒壊するおそれがあるため、政府および各自治体は耐震改修工事を奨励しています。

 

しかし、耐震改修工事を行なうには多額の費用がかかります。しかも、耐震改修工事は倒壊を防ぐことが主目的で、現行基準と同等の耐震性が確保できるとは限りません。さらに、改修により増設される鉄骨の筋交いなどが目立つ場合もあり、改修工事に踏み切れず解体されるケースがあります。

 

 

 

マンションは、メンテナンスが十分にできていれば、100年以上維持できるといわれています。適切なメンテナンスとしては、外壁の塗装や屋上の防水処理、配管の修繕などが必要です。前出の国土交通省の資料でも、外装仕上げによってRC造の耐用年数が150年になるとされています。

 

メンテナンスを適切に行なうには、長期計画が必要です。国土交通省は全国のマンション管理組合に対し、長期修繕計画を作って計画的に修繕するよう奨励しています。しかし、マンションによっては長期修繕計画が作られておらず、不具合が発生するまで修繕が行なわれていない建物もあるのも事実です。十分なメンテナンスを受けられなかったマンションの寿命は、平均寿命よりも短くなる可能性が高いでしょう。

 

 

 

マンションは、配管やコンクリートの質で寿命が短くなる場合があります。

 

特に、築50年以上の物件は、配管が埋まっていたり天井裏を通っていたりするケースが多く、配管の取り替え工事が困難です。配管の寿命は30~40年とされており、配管の取り替え工事ができない場合は、最終的に建て替えや取り壊しになるでしょう。

 

また、築50年前後のマンションは、現在よりもコンクリートの質が劣ります。さらに、鉄筋の量など工法そのものが異なるため、耐震性などの耐久性が劣る場合があるでしょう。

 

 

 

中古マンションを購入するのであれば、できるだけ耐久性の高いものを選びたいところです。ここでは、耐久性の高い中古マンションを購入するポイントを、5つ解説します。

 

 

 

1つ目は、定期的なメンテナンスが行なわれているかどうかです。前述のように、マンションはメンテナンスが行き届いていれば寿命が延びます。

 

購入を検討している中古マンションの階段の手すりや柵など、鉄製品にさびがないかを確認しましょう。また、貯水槽は年に1回、設置者か管理者が点検して検査結果を保健所に報告する義務があるため、検査が適正に行なわれているかを確認することも大切です。

 

 

 

2つ目は、コンクリートの状況です。通常、コンクリートは強アルカリ性ですが、経年劣化によって水や二酸化炭素がコンクリートに侵入して徐々に中性化し、中の鉄筋がさびやすくなります。そして、さびた鉄筋は膨張し、コンクリートのひび割れを起こします。コンクリートのひび割れは、鉄筋のさびをさらに加速させるほか、コンクリート自体の表面剥離を引き起こすなど、建物全体の劣化を招くことになるでしょう。

 

コンクリートの状況を確認するには、建物の外からコンクリートにひび割れがないかを確認しましょう。また、塗装の剥がれやひび割れもコンクリートの中性化を引き起こす原因となるため、塗装状態のチェックも大切です。

 

鉄筋コンクリートの耐久性は、以下の記事でも詳しく解説しています。さらに詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

 

環境に優しい材料へ進化。コンクリートって何?

 

 

 

3つ目は、配管のメンテナンスと素材です。前述のように、マンションの配管は30~40年が寿命とされており、寿命とともに取り替えが必要になります。築年数が古いマンションの場合、配管の管理状況を確認しましょう。

 

給排水の配管は、メッキ鋼管よりも塩化ビニール管やステンレス鋼管のほうがさびにくく、寿命も延びます。特にステンレス鋼管は、パッキンのメンテナンスを行なえば半永久的に使えるとされています。可能であれば配管の素材も確認しましょう。

 

 

 

4つ目は、管理体制が整っているかどうかです。マンションでは12~15年を目安に、外壁塗装や屋上防水などの大規模修繕を行なうことが一般的です。築年数に応じた長期修繕計画を作成している物件は、管理体制が整っていると判断できるでしょう。

 

また、修繕は毎月の積立金で行ない、1回の大規模修繕での1戸当たりの負担は約100万~120万円とされています。この資金がきちんと積み立てられているかもポイントの一つです。短期的な滞納はあるかもしれませんが、長期的な滞納が多い場合は、管理体制がずさんなだけでなく、修繕資金が不足する事態になるおそれがあるためです。

 

物理的に耐用年数に到達した場合は、入居者負担で建て替えるケースもあります。しかし、資金の捻出が難しいことや、所有者の5分の4以上の賛成が必要になることなどから、それほど積極的には行なわれていません。

 

 

 

5つ目は、住宅性能評価書の確認です。住宅性能評価書とは、第三者機関が建物の性能を等級や数値などで評価したものです。第三者機関は国土交通大臣に登録されており、全国共通のルールで公平に評価します。

 

第三者が公平な視点でマンションを評価するため、住宅性能評価書を確認することで、劣化の状況も把握しやすいでしょう。住宅性能評価書の具体的な調査項目や内容は、以下の表を参考にしてください。

評価項目 調査内容
構造の安定 地震や風、積雪などによる倒壊のしにくさや損傷の受けにくさを評価
火災時の安全 火事が起きたときの燃え広がりにくさや避難のしやすさ、延焼のしにくさなどを評価
劣化の軽減 柱や土台などの劣化の進行を遅らせるための対策、RC造の場合は、セメントの種類や品質などコンクリートがもろくならないための対策を評価
維持管理・更新への配慮 配管の点検や清掃、補修のしやすさ、共同住宅は配水管の更新工事のしやすさなどを評価
温熱環境・エネルギー消費量 壁や窓などの断熱や、冷暖房・換気・給湯・照明設備などの省エネルギー性を評価
空気環境 シックハウスの原因となる、接着剤を使用している建材の使用状況を評価(オプションでホルムアルデヒドなど化学物質の濃度測定も可能)
光・視環境 窓がどの方向にどのくらいの大きさで設けられているかを評価
音環境(新築のみ) 上下・隣の住戸への音の伝わりにくさを評価
高齢者等への配慮 高齢者や障害者などが暮らしやすくなるようなバリアフリー設備の評価
防犯対策 ドアや窓などの侵入防止対策を評価

 

また、2022年4月には「マンション管理適正評価制度」が施行され、マンションの管理状態がより確認しやすくなりました。

 

 

一般的にマンションはRC造またはSRC造で作られているため、木造建物と比べて耐久性などに優れます。建物には法定耐用年数が定められており、RC造・SRC造のマンションは47年とされていますが、あくまで税法上決められた年数で、実際の寿命は100年以上といわれることもあります。

 

しかし、メンテナンス不足のほか、配管やコンクリートの質などによって寿命が短くなるマンションは少なくありません。建物全体が劣化したり、配管が交換できなくなったりした場合は建て替えざるを得ないためです。

 

したがって、耐久性の高い中古マンションを購入したい場合は、メンテナンス状況のほか、配管やコンクリートの状況、管理体制、住宅性能評価書などをしっかりチェックしましょう。マンションは一度購入すると簡単に処分できないため、購入前には納得のいくまで物件の状態を確かめることが大切です。

 

 

▶関連リンク:環境に優しい材料へ進化。コンクリートって何?

       「マンション管理計画認定制度」と何が違う?「マンション管理適正評価制度」とは。

       マンションの耐用年数とは?寿命との違いや長く住める建物の選び方

監修者

高槻 翔太

<保有資格>

  • 宅地建物取引士
  • FP技能士2級
  • 日商簿記2級

<プロフィール>

不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。売買や駐車場の活用、リフォームの提案などに従事。不動産・金融特化のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。