高齢者と超高齢者

〜長寿社会(その1)〜

2026年10月02日 / 『CRI』2026年10月号掲載

外部寄稿

目次

最新のデータによると、65歳以上の高齢化率は29.6%で過去最高となった。
人口の7%で高齢化社会、14%で高齢社会、21%になると超高齢社会といわれているが、それをはるかに超えている。
今の日本は、「超々高齢社会」とでも言うべきなのかもしれない。

1. 高齢者の定義

高齢者に厳密な定義はない。時代や国によっても変わり、同じ国内でも使い分けが行われている。

日本では、一般的には65歳以上を高齢者とすることが多く、公的年金や介護保険制度は65歳を区切りとしており、医療制度では65〜74歳を前期高齢者、75歳以降を後期高齢者としている。一方、自動車免許更新の際の高齢者講習は70歳以上が対象で、「高年齢者雇用安定法」では、高齢者ではなく高年齢者だが、55歳以上が対象となり、65歳までは就業機会の確保が義務化され、70歳までが努力義務とされている。また、サービス付き高齢者住宅への入居は、原則60歳以上となっている。

このように高齢者の範囲は制度によって違いがあるものの、国や自治体の統計や報告書では、65歳という区切りが高齢化を測る指標となっている。これは、1956年と1959年の国際連合の報告書(The ageing of populations and its economic and social implications)が契機だと言われている。ただし、国連は65歳以上を高齢者と明確に定義したわけではなく、当時の欧米諸国の人口構造を比較する際の指標として使用したものが後に普及していった。日本でも、1960年の国勢調査では60歳以上を老年人口として集計していたが、1965年の国勢調査からは65歳以上を老年人口として集計している。

1960年の日本の平均寿命は、男性65.3年、女性70.2年である。65歳という年齢は、男性の平均寿命と重なっていたが、現在は平均寿命も男性 81.4年、女性 87.3年と15年以上も延びており、65歳以上を高齢者とすることに異論もでている。また、内閣府が行っている高齢者の意識調査においても、65~69歳では8割の人は自分を高齢者だと感じていない。高齢者だと感じるのは、75~79歳では3分の2、80歳以上では8割程度になるという結果が示されている(内閣府:平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査)。

こうした時代の変化を受けて、日本老年学会と日本老年医学会は高齢者の定義に関する検討を行い、2017年に65〜74歳を「准高齢者」、75歳以上を「高齢者」、さらに90歳以上を「超高齢者」とすることを提言している。背景には、寿命が延びたというだけではなく、健康状態や歩行速度をはじめとした身体機能が向上したことがある。要するに10歳程度若返って、元気な高齢者が増えてきたということだ。

高齢者の新しい定義として、平均余命が15年を下回る年齢とする指標も国連で示されている(World Population Ageing 2019)。現在の日本では、2025年の簡易生命表から算出すると、男性72歳、女性77歳程度であることがわかる。この指標は、時代や地域によって異なるので時系列比較には向かないが、高齢者の健康状態を比較する時には都合がよく、65歳という固定された数値よりも先進国の人々の実感には近いかもしれない。

2. 人口動向と高齢化の推移をみてみよう

1920年から2020年までの人口の推移と2070年までの将来推計を(図1)に示した。

65歳以上の高齢者数は、これまで一貫して上昇してきたことがわかる。1920年に294万人、1955年に476万人に増え、1990年には1,489万人、2025年は3,653万人へと増加してきた。2043年に 3,953万人でピークになり、その後は減少することが予測されている。

高齢化率(65歳以上人口の割合)は、1920年から1955年までは、5%前後を推移していたが、1970年に高齢化社会とされる7%を超え、1994年に高齢社会とされる14%を超え、さらに2025年は29.4%となっている。そして、高齢者の数が減少に転じても、総人口の減少スピードが速いため、高齢化率は上昇を続け、2070年は38.7%になると予測されている。欧米に比べると7%から14%に移行する高齢化のスピードが2倍から5倍程度速かったことが知られている。これは、長寿化と少子化が同時に進行したことに理由がある。

次に、75歳以上についても見ておきたい。75歳以上の後期高齢者の人口は、1920年に73万人、1955年に139万人、1990年に597万人、2025年に2,155万人へと急増している。ピークは2055年頃となり、65歳以上人口のピークよりも10年以上遅れてあらわれる。後期高齢化率(75歳以上人口の割合)は、2000年に7.1%、2020年に14.7%をマークし、2060年代には25%を超える予想である。

3. 高齢者を年齢階層で詳しくみてみよう

人生100年時代を前提とするならば、これからの時代を読み解くために、高齢者を65歳以上で一括りにするのではなく、年齢階級による違いを見ていくことが必要だろう。自治体の報告書では、高齢化率というざっくりした指標しか示されていないことが多い。前期高齢者と後期高齢者の区分はよく使われているが、75〜100歳まで25年もある。後期高齢者をさらに詳しく分析した方がよさそうである。

80代、90代でも自立した生活を送り、元気な方が増えているものの、年齢が上がるとともに自立度や体力が低下するのは必然であろう。前期高齢者では、健康で就業している人も多く、元気な方が多い。後期高齢者になると年を重ねるごとに、日常のサポートや介護が必要な方が増えてくる。90歳以上の超高齢者になると、サポートやケアが欠かせない人が大半になってくる。

要介護認定の割合を年齢階級別にみてみると(図2)、65〜70歳は、要介護認定を受けているのはわずかに3%で、残りの97%は受けていない。

75~79歳では1割、80~84歳では2割である。85~89歳になると約半数が要介護認定を受け、90歳以上では7割以上となる。日常生活の大部分に介助が必要な、要介護3以上をみると、80代後半で15%、90歳以上では3割と倍増する。認知症や要介護3以上になると、1人暮らしが難しくなり、施設入所せざるを得ないケースも増えてくる。

続いて、年齢階級別に世帯の種類の割合を男女別にみてみよう(図3)。

男性は全ての年齢階級で夫婦のみの世帯の割合が高く、続いて、夫婦と子供、あるいは片親と子供の世帯となる。90歳以上では、老人ホームなどの施設の割合が2割程度となるが、女性に比べて寿命が短いこともあり、6割以上は家族と同居していることが読み取れる。一方、女性は、年齢が上昇するにつれて、夫に先立たれて夫婦のみの世帯の割合が低下し、単独世帯と施設入所の割合が高まっていく。特に、90歳以上では施設が37%を占め、施設需要が極めて高いことがうかがえる。

住宅の所有関係についてみてみたい(図4)。

ここでは、個人単位ではなく、世帯主の年齢でみることにする。単独世帯と複数人世帯(核家族、三世代、その他の世帯を全て含めている)とに分けて示している。この集計においては国勢調査で90歳以上を表章していないため、85歳以上の値が見かけ上多くなっているが、世帯数は、団塊世代を含む70~74歳で数が多く、年齢が高くなると逓減する。65歳以上の世帯主の場合、複数人世帯では約9割、単独世帯においても3分の2が持家となっている。

複数人世帯は、人口構成の影響で世帯主70~74歳の世帯が多く、夫婦世帯において夫の死亡によって女性が単身化することが要因の一つとなり、年齢が上がると世帯数が減少していく。持家率は、どの年齢階層も9割を少し下回る程度で大きくは変わらない。

単独世帯の場合、複数人世帯と比べると全ての年齢階層において持家率が低い。特に、世帯主年齢が65〜69歳では、3割が民営借家となっている。この1951〜1955年生まれは、未婚や離別が増え始めた世代である。彼らは、家族で持家に暮らしていた高齢者が配偶者との死別によって単身化するという、従来の居住歴を辿るのではなく、単身のまま高齢化して民営借家での居住を継続する可能性が高い。

4. 超高齢化の進み方は地域別に異なっている

90歳以上は、重度の要介護者、施設入所者の割合が増えるため、社会や地域で高齢者の生活を支える必要性が高まってくる。そうした90歳以上の超高齢者について、過去と未来の変化を地域別にみてみよう。1990年から2010年までの20年間の変化と、2020年から2040年までの20年間の推計を比較する。

自治体への影響を見るために、都道府県別に90歳以上の人口増加率をグラフ化したのが(図5)である。

1990年は、第0世代※が65〜94歳で、2010年には85〜114歳になる。この20年間に、増加率が高かったのは、島根、長野、富山、新潟、山梨、鳥取といった地方圏であり、反対に数値が低いのは、埼玉、大阪、愛知、東京、千葉、神奈川といった大都市圏であった。

2020年から2040年の推計をみてみよう。2020年は、第1世代が、65〜94歳にあたる。この20年間の人口増加率について、上位の都道府県をみると、奈良、埼玉、千葉、京都、神奈川、大阪となっている。反対に、増加率が低い順に、山形、鹿児島、福島、島根、岩手となる。

2010年と2040年を比べると、超高齢者の増加率の高い地域が反転している。つまり、団塊世代が90歳を迎える2040年に、超高齢者が増加して介護や医療がひっ迫する可能性が高いのは大都市圏であることがわかる。東京都は、2030年頃までゆるやかな人口増加が見込まれているため、90歳以上の増加率は下から11番目と低い。しかし、人口規模が大きいため、20万人から44万人へと24万人増加することが予測されている。

2020年から2040年にかけての高齢者数の増減パターンを地図化した(図6)。

上記で確認した通り、90歳以上については全ての都道府県で増加となる。ただし、その増加数以上に89歳以下の高齢者が減少すると、高齢者全体の数は減少となる(A)。減少数が多い順に、秋田、山口、新潟、山形、高知と続き、これらの県は若年世代の減少に加えて高齢者も減少する。次に、89歳以下の減少数より90歳以上の増加が多い場合は、高齢者全体は増加するが(B)、その中身は超高齢者の増加によるもので、静岡、京都、群馬、広島、北海道などである。次に、89歳以下と90歳以上共に増加するが、90歳以上の増加数が卓越しているのが(C)、茨城、福岡、大阪、兵庫などである。最後に、90歳以上よりも89歳以下の増加数が多いのは(D)、沖縄、東京、神奈川、滋賀、愛知の5都県となる。

前期高齢者が増える場合は、地域の担い手となる可能性もあるだろうが、89歳以下の高齢者の減少は、若年層の減少もあわせて、高齢者を支える地域の人材の確保が難しくなることを示している。

超高齢社会が進むと、介護需要が高まり、施設や介護の担い手の不足が心配されている。高齢期の暮らしを支えるには、施設・居住系サービスと在宅サービスを最適にして、地域の特性を踏まえた住宅と施設のあり方を考えることが大切だろう。そのためにも、高齢者というレッテルではなく、解像度をあげて高齢期の中身をみていく必要がある。それには、年齢階級の違いを丁寧にみること、さらに同じ高齢者でも世代による違いが与える影響を読み解くことだろう。

※第0世代:1896~1925年生まれ(地方圏の大家族世代)
 第1世代:1926~1955年生まれ(きょうだい数が多く、地方から都市へ移動し、郊外に住宅を形成した世代)
 第2世代:1956~1985年生まれ(きょうだい数が2人程度で、都市圏郊外生まれが増加し、非婚化が進んだ世代)

松本 真澄まつもと ますみ

東京都立大学大学院 都市環境科学研究科 助教、日本女子大学非常勤講師
日本女子大学住居学科卒業。専門は、住居学・ハウジング。戦後の計画住宅地・団地をフィールドに、高齢者、女性、単身者の視点から住まい方の変化について調査研究を行っている。主な共著に、『奇跡の団地阿佐ヶ谷住宅』(王国社)、『多摩ニュータウン物語』(鹿島出版会)、『四谷コーポラス 日本初の民間分譲マンション1956-2017』(鹿島出版会)など。東京都住宅政策審議会、神奈川県住宅政策懇話会などの委員を務める。