人口構造激変が日本の新たなチャンス、新しいライフデザインの入口に。

「暮らしをデザインする」19 (Oct. 2026)

2026年10月02日 / 『CRI』2026年10月号掲載

エッセイ

目次

わが国では、50代以上人口が2025年に50.3%、2026年に50.9%となり、遂に半数を超えました。(総務省統計局人口推計2025年1月/2026年7月より) 

この超高齢社会で語られるのは、社会保障費増大、介護、年金生活の苦しさなどです。では、本当にそういう面だけなのでしょうか。

現在、旅行観光といえばインバウンド一色です。しかしながら、観光庁の統計では、2025年の旅行消費総額のうちのインバウンドが25.1%に対し、日本人の国内消費が74.9%を占め、そのうち年代別にみると50代以上で45.7%に上ります。2025年にインバウンドは消費金額で9.5兆円でしたが、日本人の50代以上(50+)は12.9兆円に達しています。実は50代以上(50+)旅行消費は日本経済に大きなプラスをもたらすと報道されたインバウンドを大きく凌駕し、かつ一貫して右肩上がりです。

それは、リタイアないしセミリタイアで時間ができ、子供の独立で子育てに家計を割かれることがなくなり、時間もお金も自分たちのために使えるようになったからです。とりわけ子育ておよび仕事を終えた女性が元気です。また、一般にシニアと呼ばれる世代ですが、当研究所の全国男女40-70代の調査では、「シニアと呼ばれて自分のことだと思う」は50代でなんと14.7%、60代でも27.4%に過ぎません。一方、「何歳になっても若々しく、前向きな意識を保ち続ける大人でありたい」は84.4%と、いわゆるシニアとはかなり違う感覚で「新しい大人」と呼ぶ新たな意識が行動を生んでいます。

実はここに日本経済の大きな機会があります。50代からは、家族旅行を卒業して「夫婦二人旅」「仲間旅」「母娘旅」「大人のひとり旅」「3世代旅」などが始まります。とりわけ「女性の仲間旅」は活発で、「大人のひとり旅」は静かなブームです。「夫婦二人旅」は夫婦ともにお金を使っても良い、と思っているようです。また、現在急増しているのが旅と稼ぎを兼ねた「リゾートバイト」です。

さらに、「自分も楽しみつつ、地震や災害などの“被災地の支援になるような旅行観光”をしたい」は68.2%、「そこで働く若者や女性にプラスになるのであれば旅行観光や飲食をしたい」は71.6%、「食や文化など、これからは“地域の文化を育てるような旅行”をしたい」も64.3%、と高い。いずれもインバウンドには期待すべくもないことであり、熊本地震応援のような旅行観光もしたい、と答えているわけです。

インバウンドはその国や国同士の事情で大きく左右されますが、国内旅行客は安定的です。全国の観光ビジネスや自治体がこれをうまくとらえれば、持続的な成長が期待できます。さらに、東京一極集中の反転のカギもこの50代以上(50+)が握っているといえます。

この先には、様々なリゾート開発や二地域居住、季節移住、また温泉シェアハウス、多地域リゾートバイトライフなど、多くの新しいライフスタイルも生まれ、ライフデザインが広がります。地域の交流人口・関係人口の増大にも貢献するでしょう。まさに人生100年時代の日本の未来の大きなチャンスが広がっているのです。

阪本 節郎さかもと せつお

人生100年時代 未来ビジョン研究所 所長
1975年早稲田大学商学部卒。(株)博報堂入社。プロモーション企画実務、研究開発に従事の後、企業のソーシャルマーケティング開発を推進。2000年エルダービジネス推進室、2011年新しい大人文化研究所を設立。さらに、2019年独立し当研究所を創設、現在、所長。
著書:『50歳を超えたらもう年をとらない46の法則』(講談社+α新書)『シニアマーケティングはなぜうまくいかないのか~新しい大人消費が日本を動かす』(日本経済新聞出版社、韓国版・台湾版発刊)他。