住宅ローン控除の還付金はどのくらい?計算方法や必要な手続きを解説

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住宅ローン控除とは、要件を満たすことで一定金額が所得税や住民税から控除される制度です。制度自体は知っていても、還付金がどのくらいになるか具体的な計算方法や手続きは知らない方も多いのではないでしょうか。

住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んで自分が住むための住宅を新築・購入・増改築した場合に受けられる控除です。正式には「住宅借入金等特別控除」と呼ばれています。

 

住宅ローン控除を受けるにはいくつかの要件を満たすことが必要です。要件を満たしていれば、年末のローン残高の0.7%が最大13年間(中古住宅の場合は最大10年間)、所得税や住民税から控除されます。

 

 

先述のとおり、住宅ローン控除を受けるには、いくつかの要件を満たさなければなりません。おもな要件を以下に挙げてみます。

 

・控除を受ける年の所得が2,000万円以下
・年末時点で借入期間が10年以上残っている
・引き渡しまたは工事完了から6ヵ月以内に入居
・住宅の床面積が50平方メートル以上
・中古住宅の場合、1982年以降の建築または現在の耐震基準を満たしている
・新築・買取再販住宅で2024年以降に建築確認を受ける場合は、省エネ基準を満たしている

 

2023年末までに新築の建築確認を受けており、控除を受ける年の所得が1,000万円以下の場合は、床面積の要件は40平方メートル以上でクリアできます。

 

1982年より前に建築されている住宅を購入した場合は、現行の耐震基準を満たしていることを証明する書類が必要です。

 

省エネ基準への適合は、2023年までに入居した場合は必須ではありませんでしたが、2024年以降に建築確認を受ける場合は新築住宅・買取再販住宅で必須となりました。中古住宅では、2024年以降入居でも必須ではありません。ちなみに、買取再販住宅とは不動産会社が中古住宅をリフォームして販売している住宅のことです。

 

 

 

住宅ローン控除が受けられる場合、どのくらいの金額が戻ってくるのでしょうか。控除される金額の上限や、還付金の計算方法を解説します。

 

 

 

住宅ローン控除で戻ってくるお金には上限があります。それは、住宅の環境性能によって借入限度額に上限があるからです。借入限度額の上限を下記の表にまとめました。

新築・中古の別 環境性能 借入限度額 1年間の最大控除可能額 控除期間
2022年・2023年入居 2024年・2025年入居 2022年・2023年入居 2024年・2025年入居
新築住宅・買取再販住宅 長期優良住宅・低炭素住宅 5,000万円 4,500万円 35万円 31万5,000円 13年
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 3,500万円 31万5,000円 24万5,000円
省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円 28万円 21万円
その他の住宅 3,000万円 2,000万円 21万円 14万円
中古住宅 長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅 3,000万円 21万円 10年
その他の住宅 2,000万円 14万円

住宅ローン控除の年間の最大控除可能額は、借入限度額に0.7%を乗じたものです。なお、上記表の金額などは税制改正で変更されることもあるため、最新情報を確認するようにしましょう。

 

 

 

住宅ローン控除の還付金を計算する方法は以下のとおりです。

1.住宅区分別の最大控除可能額を確認
2.年末時点の住宅ローン残高×0.7%を計算
3.所得税額の計算
4.1、2のうち小さいほうの金額を3で算出した所得税額から控除

住宅ローン控除額が所得税額を上回り、控除できるはずの額を控除しきれなかった場合には、住民税からも控除される仕組みです。ただし、住民税の控除についても上限があるため、必要に応じて確認すると良いでしょう。なお、会社員などの場合は毎月の給与から所得税が天引きされているため、納め過ぎた分は確定申告によって還付されます。

 

 

 

住宅ローン控除で還付金を受け取る方法は、1回目と2回目以降で手続き方法や必要書類が異なります。それぞれの手続き方法や、手続きを忘れた場合の扱いを解説します。

 

 

 

1回目の手続きは、必要書類を作成・準備し、入居した翌年の確定申告の期間中に税務署へ提出することになります。会社員など、普段確定申告をしない場合でも初回だけは確定申告をしなければなりません。確定申告は基本的に2月16日から3月15日までの間に行ないます。確定申告の流れは以下のとおりです。

 

1.必要な書類の準備
2.確定申告書の作成
3.書類の提出

 

必要な書類は住宅の条件によって異なりますが、共通して必要な書類には以下が挙げられます。

 

・確定申告書
・住宅借入金等特別控除額の計算明細書
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
・登記事項証明書
・工事請負契約書または売買契約書の写し

 

「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」は、住宅ローンを借りている金融機関から毎年送られてきます。

 

確定申告書の作成は、国税庁のWebサイト「確定申告書等作成コーナー」から行なえます。また、インターネットを利用して、税金に関する手続きが行なえるe-Taxからでも確定申告書は作成可能です。

 

確定申告書を作成したら、居住する地域を管轄する税務署へ書類を提出します。提出方法は持参・郵送・e-Taxの3つです。e-Taxはオンラインで手続きが行なえるため便利ですが、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」など紙の書類は郵送する必要があるため注意しましょう。

 

 

 

会社員など勤務先で年末調整ができるのであれば、2回目以降は確定申告ではなく年末調整で手続きが可能です。個人事業主など年末調整をしない場合は2回目以降も確定申告が必要で、必要書類は「確定申告書」と「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」です。
年末調整の場合は「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」および「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」を勤務先へ提出します。「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」は金融機関から「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」は税務署から送られてきます。

 

 

 

会社員など基本的に確定申告の必要がない人が、初年度の住宅ローン控除の手続きを忘れていた場合には、5年以内であればあとからでも還付申告を行なえます。この「5年以内」というのは住居に入居した次の1月1日から5年以内です。

 

ただし、確定申告を済ませたあとで、住宅ローン控除の手続きをしていなかったことに気付いた場合は、気付いた時期によって扱いが異なります。気付いた時期が確定申告期限内であれば、確定申告書の再提出が可能です。

 

一方で、気付いた時期が確定申告期限後の場合は、住宅ローン控除の手続きを行なうことは難しくなります。確定申告では計算ミスなどがあった際に「更正の請求」という訂正が可能ですが、住宅ローン控除は更正の請求の対象外だからです。

 

残された手続きとして「更正の請求の嘆願」が可能ですが、認められる可能性は低いとされています。

 

 

 

住宅ローン控除で還付金が戻るタイミングを解説します。個人事業主(確定申告)の場合、所得税から控除される分は確定申告手続き完了から1~2ヵ月程度で指定した銀行口座に振り込まれます。確定申告にe-Taxを使ったときは少し短くなり3週間程度で振り込まれるようです。

 

給与所得者(年末調整)は、手続きが10月から11月にかけて行なわれ、還付金は12月または1月の給与と一緒に支払われます。

 

所得税では控除しきれず住民税から控除があるケースでは、翌年の住民税から差し引かれます。

 

 

住宅ローン控除の手続きをしたものの、思ったよりも還付金が少なかったと思われた方もいるかもしれません。還付金が少なすぎる原因にはどのようなものがあるのでしょうか。おもな原因を2つ紹介します。

 

 

 

ひとつは還付上限を超えていることが考えられます。例えば、住宅ローン残高が借入限度額を超えているケースです。既存住宅購入のため住宅ローンを4,000万円借り入れて、年末時点での住宅ローン残高が3,500万円だったとします。既存住宅における省エネ基準適合住宅に2024年に入居する場合の借入上限額は3,000万円で、最大控除可能額は3,000万×0.7%=21万円です。超過した残高は控除の対象外になることを押さえておく必要があります。

 

また、所得税が住宅ローン残高の0.7%より少ない場合も、還付金が少なすぎると感じてしまうかもしれません。先ほどの控除額が21万円の例で考えてみましょう。このケースで所得税が仮に15万円だとすると、所得税から控除されて還付されるのは15万円だけです。残った21万-15万=6万円は住民税から控除されます。住民税からの控除については、次の項目で解説します。

 

 

 

もうひとつは住民税から控除されているため、少ないと感じてしまうケースです。所得税から控除しきれなかった還付金は、翌年の住民税から控除されます。所得税のように差額が還付されるわけではないため、還付金が少ないように感じられることもあるでしょう。しかし、毎年6月に送られてくる住民税決定通知書を確認すると、住宅ローン控除分が反映されて住民税が少なくなっているはずです。

 

ただし、住民税の控除にも上限があり、上限を超えた分は控除が受けられなくなります。上限は「所得税の課税所得金額等の5%(上限9万7,500円)」または「所得税で控除しきれなかった金額」のいずれか低いほうです。つまり、住民税からの控除は最大でも9万7,500円となり、この額を超えた分は控除されません。

 

 

■まとめ

今回は、住宅ローン控除の制度や受けるための要件、手続き方法などを紹介しました。住宅ローン控除の具体的な内容を把握しておくことで、手続きであわてることもなくなり、具体的な節税金額も予想できるでしょう。

ただし、制度が改正されることもあるため、実際に利用する際は最新情報を確認することが大切です。

 

 

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監修者

高槻 翔太

<保有資格>

  • 宅地建物取引士
  • FP技能士2級
  • 日商簿記2級

<プロフィール>

不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。売買や駐車場の活用、リフォームの提案などに従事。不動産・金融特化のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。