都市の暮らしやすさNo.1のまち「佐賀県佐賀市」

〜コンパクトシティとして街なか再生が進む都市〜

2024年02月06日 / 『CRI』2024年2月号掲載

変わるまち・未来に続くまち

目次

 自然に囲まれたのびやかな風土と独自の文化的蓄積を持ちながら、博多まで特急で37分という利便性をあわせ持つ佐賀。
2000年代には、大型商業施設が郊外に相次いで立地し、中心市街地は衰退が進んでいた。
そんな佐賀市が、民間調査「成長可能性都市ランキング」(2017年)で「都市の暮らしやすさ」部門の第1位となり、近年は、
街なか再生に向けた官民の取り組みとともに、中心市街地の人口が回復し、まちの賑わいが復活しつつある。
 今回は、暮らしやすさNo.1の県庁所在都市「佐賀市」の魅力についてレポートする。

大型店の郊外立地による中心市街地の危機的状況からスタートしたコンパクトなまちづくり

 佐賀県の県庁所在地である佐賀市は、人口約23万人。2005年と2007年に周辺7町村と合併して面積は約4倍に拡大したが、
人口は九州の県庁所在都市の中で最も少なく、人口減少と高齢化が進む地方都市である。一方、福岡市とは市域が隣接し、佐賀・
福岡の両市の中心部の間は、鉄道(特急)と高速バスがそれぞれ15~30分程度の間隔で運行されている。JR佐賀駅から博多駅間の
所要時間は特急で35〜40分であり、通勤も十分可能な位置関係である。佐賀市は、豊かな田園風景、縦横無尽に走るクリーク、
歴史や文化を継承する城下町といった特性を持ちながら、大都市に近接し利便性を兼ね備えた都市である。

 佐賀市では、2000年~2006年頃、都市計画の規制が緩やかだった郊外への大型商業施設の立地が相次ぎ、中心部では商業店舗が
撤退して、中心市街地の活力の低下が進んでいた。そこで、2005年、「佐賀市中心市街地活性化基本計画」の策定を機に、市は
拡散した都市機能の中心市街地への集約によるコンパクトなまちづくりに着手。2011年には「佐賀市街なか再生計画」を策定し、
中心市街地の中でもかつて賑わいの中心だったエリアを「4核構想エリア」として、人の流れを街なかに誘導する取り組みを
開始した。空き店舗率が3割を超えた中心部の空き地を活用して、「芝生の原っぱ」化し、読書スペース、小休憩所等の機能を
持ったデザインコンテナを設置した「わいわい‼コンテナ」プロジェクトによって、街なかの回遊性が向上し、徐々に周辺への
波及効果が生まれていった。寂れたアーケードとなっていた呉服元町には、コンテナやリノベーションによるカフェやコワーキングスペース、シェアオフィスなどが出店するようになった。

様々な街なか再生プロジェクトによってみえてきた中心市街地の人口回復とまちの賑わいの復活

 2015年には、4核構想エリアと佐賀駅を結ぶシンボルロード「中央大通り」の再生のための実践的なプログラム「佐賀市中央大通り
再生計画」を策定。2018年には「佐賀市中央大通りトータルデザイン」により道路空間や沿道建築物等のデザインガイドラインを定めるとともに、これに基づく沿道建築物等の整備を進めるための補助制度が創設された。

 中央大通りは、耐震改修促進法に基づく避難路として指定され、それによって耐震診断が義務付けられた沿道建築物の解体が
進みつつあり、市では、中央大通り沿線の民間投資喚起策として、2022年度から新たな補助制度も創設している。こうした重点的な
支援措置や、中央大通りの未来ビジョンで示した土地利用方針等により、空き店舗をリノベーションした新たな店舗の立地など、
中央大通りの街並みにも変化が起き始めている。

 一方、佐賀駅周辺では、大型商業施設が2018年に閉店したが、2024年に開催される国民スポーツ大会を契機として、そのメイン
会場となるSAGAサンライズパークの整備と駅前広場・駅周辺道路の整備を連動させ、民間開発との連携も図りながら、佐賀を象徴
する高質な空間を創出する「佐賀駅周辺整備事業」が進められている。まちの顔にふさわしい公共空間を整備することによって、
佐賀駅周辺の人の流れを街なかに誘導し、中心市街地全体の賑わい再生につなげることが意図されている。駅前広場は、駐車場と
タクシープールによる「車中心」の広場から、休憩できるベンチやイベントスペースを設けた「人が中心」の広場に再整備され、
佐賀駅とSAGAサンライズパークを結ぶ市道は、道路の車線数を4→2車線に減らして歩道が拡幅されている。

 佐賀駅の高架下には、全面リニューアルによる新たな商業施設「サガハツ」が昨年4月に開業し、佐賀の魅力を発信し(さが発)、
佐賀に初めての魅力をつくる(さが初)14店舗がオープンした。メインストリート、路地、側道、広場などのまちの要素を高架下に
インストールし、周辺エリアとシームレスにつなげることで、忘れ去られた高架下空間が新たなまちの結節点として再生している。

 佐賀市の中心市街地では、近年、このように様々な街なか再生プロジェクトの成果が目にみえるようになってきた。佐賀市全体の
人口は2007年から2022年の15年間で3%減少した一方で、中心市街地では、この15年間で人口が4%増加しており、街なか居住が
進んできている。2020~22年はコロナ禍による影響もみられたが、現在は土地取引が再び増加しており、「ここ何年か止まっていた
のが動き出した感がある」(佐賀市経済部中心市街地振興室)とのこと。昨年7月1日時点の基準地価は、旧佐賀市(※)の区域が
全用途平均で前年比5.1%上昇し、東京23区や三大都市圏の平均を上回る伸び率となった。

旧佐賀市:2005年の合併前の佐賀市

〈コラム〉さがクリークネットの活動

 佐賀市の中心部にはクリークと呼ばれる水路が網の目のように張り巡らされている。佐賀平野を縦横に走るクリークの総延長は
2,000km以上におよび、「晴れたら干ばつ、降れば洪水」といわれる低平地、佐賀城下町の生活用水・農業用水の確保や雨水の貯留・
排水、舟運や防衛といった機能を持つ水路として使われてきた。
 クリークは佐賀の大切な地域資源であるが、近年はそのほとんどが有効に活用されない状態となっていた中で、行政、企業、大学、
自治会、市民などのメンバーがゆるやかに集まった「さがクリークネット」の活動が2015年にスタートした。カヤックや和船体験、
クリークマルシェ、水辺で乾杯、クリークウォークなどの「活用」と、環境レクチャー、水路清掃フェスなどの「保全」を両立しながら、「水と寄り添う暮らしを楽しもう」(川﨑康広代表)というこの活動は、2023年、日本建築士会連合会のまちづくり大賞を受賞。
この地で脈々と息づいてきた、クリークと共にある暮らしの文化を市民が実感し、このまちに住んでよかったという幸福度を感じる
こうした活動によって、地域が持続的に発展し、魅力のある豊かなまちをつくっていくのだろう。

あとがき

 佐賀市では、中心市街地の衰退が長らく続いてきたが、街なか再生に向けた官民の継続的な取り組みによって、少しずつ成果が
みえるようになり、まちの賑わいが復活してきた。また、中心部の商業地の地価が下がったことでマンションが立地しやすくなり、
結果として中心市街地の居住人口が回復し、街なか再生に寄与した点も見逃せない。人口減少、少子・高齢化の進展、デジタル技術の
進展や、コロナ禍等の社会環境の変化の中で、日常生活の利便性と生活コストの安さで優る地方の県庁所在地や中核市での居住
ニーズが注目されている。その中でも、大都市に近接し、利便性も兼ね備えた豊かな田園都市、佐賀市で進んでいる集約型で
暮らしやすいまちづくりの動向をこれからも見守っていきたい。

(青木)