【防災の基本】マンションで必要な防災対策とは?地震・災害に備える方法を紹介

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マンションは堅牢で地震などの自然災害に強くできていますが、災害時にはマンション特有の問題が発生することがあります。近年、マンションは在宅避難が推奨されていますが、ライフラインが断絶した場合には問題が大きく、防災対策が欠かせません。 この記事では、マンションにおける災害発生時の対処方法や、必要な備えについて紹介します。少しでも被害を少なくするために、防災対策に取り組みましょう。併せて、マンションのなかでも地震に強い免震構造マンションについても紹介します。

 

日本は有数の地震多発地帯であり、いつ大きな地震が起こるか分かりません。

 

防災対策の基本として、まずは大きな地震が発生した際の対処方法ややるべきことを紹介します。慌てず適切な行動ができるよう、覚えておきましょう。

 

 

 

大きな地震が起きたら、揺れにより家具が転倒・落下したり、ガラスが割れたりしてケガをする危険性が高くなります。まず自分の身の安全を第一に考え、身を守る行動を取りましょう。

 

特に危険なのが、落下物が頭に当たってしまうことです。テーブルなどの下に隠れる、クッションで頭を覆うなどの行動を取って、身を守ってください。隠れる場所がない場合には、比較的落下物リスクの少ない玄関に避難し、窓ガラスのそばはガラスの破片が飛び散る危険があるため、できるだけ離れるようにしましょう。

 

揺れを感じた時に、反射的に倒れそうな電化製品や家具を支えようとする人もいますが、大変危険です。倒れてきた時に下敷きになってしまうおそれもあるため、倒れるものがない場所に移動しましょう。

 

エレベーターの使用中に地震が起きた場合には、速やかに全階のボタンを押し、停止した階で降りるようにします。閉じ込められたら、非常ボタンで外部と連絡してください。

 

 

 

大きな揺れが収まったら、まず火の始末をしましょう。ガスの供給は強い揺れの発生により自動的に遮断されるケースが多くなっていますが、火を使用していたときは必ず消火を確認し、元栓を閉めてください。もし出火してしまった場合は、落ち着いて初期消火を行ないます。

 

火元の確認が済んだら、次に避難経路を確保しましょう。マンションでは、大きな揺れで玄関やドアの枠が歪んでしまい、ドアの開閉ができず外に出られなくなることがあります。初回の揺れでは開閉ができても、それ以降の揺れで開かなくなることもあるため、ドアなどはしばらく開けておいてください。

 

 

 

マンションは基本的に災害に強い構造のため、地震などの災害が発生しても、在宅避難が一般的です。マンションの外に出るほうが危険な場合があるため、注意しましょう。

 

建物の被害が大きく、自宅にいるほうが危険と感じられる場合には避難してください。ラジオや防災無線、自治体の防災アプリなどを利用して、災害の規模や周囲の情報などを確認しましょう。火災などの二次災害を防止するため、避難する際には電気のブレーカーを落として、ガスの元栓も閉めてから出るようにしてください。

 

 

 

マンションは構造上強度があり、地震や災害で建物自体が大きな被害を受けるリスクは高くありません。しかし、マンション特有の被害が発生することがあるため、注意や対策が必要です。

 

マンション特有の被害はおもに以下3つになります。それぞれ詳しく紹介します。
1.    高層階で揺れが大きくなる
2.    高層階からの移動が困難になることがある
3.    衛生面の問題が発生する

 

 

 

マンションは構造上、高層階ほど揺れが大きくなります。低層階に比べて、震度は1~2程度大きく感じられるでしょう。低層階では室内の被害がなくても、高層階では家具の転倒が発生することも珍しくありません。

 

特に、マグニチュードが大きく震源が浅い地震では、2~3秒以上の周期で揺れる長周期地震動が起こりやすくなります。震源から距離があり震度が小さくても大きく揺れ、家具が大きく移動したり室内が破損したりするおそれがあるでしょう。

 

 

 

マンション高層階からの移動は、エレベーターの利用が多いです。災害で停電しエレベーターが利用できなくなると、階段を使用しなくてはならず、高層階からの移動は大きな負担となるでしょう。特にタワーマンションの高層階は、地上に出るのが難しいといわれるほどです。

 

災害で断水した場合には、給水車を利用して水を確保しなければなりません。エレベーターが停止しているなか、重い水を持っての移動はさらに困難になるでしょう。個人で水などを備蓄しておくなどの対策が必要です。

 

 

 

非常用電源が備わっていないマンションでは、停電が発生するとマンションの給排水ポンプが動かなくなります。そのため、停電時にはトイレの水が流せません。

 

また、電気が使用できる場合でも、災害発生時には排水管の安全確認が必要です。排水管の破損に気付かずに排水すると、下の階で汚水が流出するおそれもあるため、大地震が発生した際には水やトイレの使用が禁止されます。

 

排水管の安全確認が取れるまでには時間を要するため、長期間にわたり不便な生活を強いられることになるでしょう。

 

大きな地震が発生した場合、外部に仮設トイレが設置されるのが一般的です。しかし、エレベーターが動いていない場合には、トイレのために階段で行き来するのも大変なため、自宅に用意した簡易トイレを使用せざるを得なくなるでしょう。

 

 

 

マンションでの防災対策は、マンション特有の問題に対処できるように備えることが大切です。以下から個人ができる備えや、そのポイントを紹介します。

 

 

 

地震は高層階になるほど大きく揺れ、家具や家電が転倒・落下することでケガをするリスクが高くなります。家具が倒れても被害が最小限となるように、配置を工夫しましょう。転倒リスクの高い家具には、固定金具や突っ張り器具などを利用した転倒防止対策が有効です。

 

特に就寝中は無防備になるため、寝室には家具を置かないか、倒れても影響がない範囲に配置してください。落下の可能性があるペンダント照明やインテリア小物についても対策が必要です。

 

食器棚などは、転倒防止対策をしていても揺れにより扉が開き、収納物が飛び出してしまう危険があります。棚に滑り止めを貼ったり、飛び出し防止ストッパーを設置したりしておくとよいでしょう。窓や扉のガラス部分には、ガラス飛散防止フィルムを貼っておくと安心です。

 

 

 

災害が発生した際の、避難経路の確認をしておきましょう。

 

マンションは建築基準法により2ヵ所以上の避難経路を用意しなければならないと定められており、階段のほか、バルコニーに避難ハッチが備わっています。玄関や階段が使用できないときは、避難ハッチから下の階に降りる必要があるため、避難ハッチの部分には物品を置かないようにしましょう。

 

なお、避難ハッチは全戸に設置してあるとは限りません。11階以上では避難ハッチが設置されておらず、スプリンクラー設置などの火災対策がされていることが一般的です。自分の住む階では、どの部屋のバルコニーに避難ハッチがあるのかを把握しておきましょう。

 

各戸のバルコニーの仕切り板も、災害時には破って避難経路として利用するため、周囲は空けておいてください。避難経路上に障害物が置いてある場合には、管理組合に相談しましょう。

 

また、火災が起きた場合には初期消火が重要です。マンションでは消火器が廊下などに設置されているので、使い方と併せて設置場所を確認しておきましょう。

 

 

 

災害時には、ライフラインが断絶することも少なくありません。

 

自宅避難を原則としているマンションでは、少なくとも1週間分の飲料水や食料品、簡易トイレを備蓄しておきましょう。飲料水の備蓄量目安は、1日1人3Lです。

 

 

 

災害時には、電気やガスが使えなくても簡単な調理ができるカセットコンロや、水が不要な紙皿や紙コップ、ラップなどがあると便利です。

 

非常時には、懐中電灯やラジオ、電池、携帯電話の充電器なども必要になります。避難時に備えて、非常用持ち出し袋を用意して取り出しやすいところに保管しておいてください。災害時に必要なものがセットで販売されている非常持ち出しセットも活用するとよいでしょう。

 

食料品や飲料水などは、いざ災害が発生した時に飲食できないと意味がありません。そこで、日頃から少し多めの在庫を持ち、賞味期限が切れる前に消費して買い足すことを繰り返す、ローリングストックがおすすめです。災害時にも食べ慣れた味を楽しめるうえ、備えていた非常食の期限が過ぎてしまうことも防止できます。

 

また、おむつや生理用品など、日用品の備蓄も日頃から行なっておきましょう。

 

 

 

万が一の災害に備え、地震保険への加入がおすすめです。地震保険は火災保険に付帯させて加入するもので、単体では加入できません。

 

マンションの場合、専有部分と家財については個人で加入します。地震保険の補償額は火災保険の保険金額の30~50%(※)に限られるものの、生活の再建には十分に活用できるでしょう。

 

共用部分の地震保険は管理組合で加入しますが、加入率は半数程度にとどまっています。

 

マンションが地震保険に未加入の場合、地震の被害を受けた際に共用部分の修繕がなされないリスクがあります。加入状況について管理組合に確認し、未加入であれば総会などで加入を検討するよう提案してみましょう。

 

▶(※)参照:一般社団法人 日本損害保険協会「みんなで支える安心地震保険」

 

 

 

大きな災害の発生時には携帯電話や加入電話が使用できない可能性があり、外出中の家族と連絡を取るのが困難になります。家族間で話し合い、非常時の連絡方法を決めておきましょう。

 

災害で電話が利用できないときの連絡方法には、災害用伝言ダイヤル(171)や携帯電話会社が提供している災害用伝言板があります。また、電話はかかりにくくてもインターネット接続なら使えることもあるため、メールやSNSを通じて連絡できるようにしておくとよいでしょう。

 

自宅が危険な場合には避難する可能性もあるため、最寄りの避難所や家族の集合場所について共有しておくことも大切です。

 

マンションの損害保険について詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。

 

 

在宅避難が原則となるマンションでは、被災した際にはマンション全体での対策や居住者同士の助け合いが必要です。

 

マンション内の人との連絡や物資の運搬などは、協力して行なわなければなりません。当事者意識を持ち、マンション全体の防災計画やマニュアルを確認しておきましょう。

 

防災訓練などにも積極的に参加すれば、防災に対する意識が高まるうえ、居住者同士のつながりを形成できるメリットもあります。災害発生時はもちろん、復興時にも居住者の合意形成が必要になるため、普段から意思疎通を図っておくことが大切です。

 

 

 

災害対策として、地震に強い免震マンションを選択することも有効です。

 

地震で被災したマンションは、資産価値が下がります。震災に耐えるマンションを選ぶことは、安全だけではなく資産も守ることにもつながると覚えておきましょう。

 

 

 

マンションは、建築基準法の規制により耐震性が確保されています。1981年5月31日までの旧耐震基準では震度5強程度の地震でも崩壊しないように、6月1日以降の新耐震基準では震度6強~7程度の地震でも倒壊しないように作られています。

 

耐震性の判断基準となる「耐震等級」は3段階で示されますが、等級が同等でも、地震の際の揺れ方はマンションの構造によりさまざまです。

 

地震に対応できる構造には、耐震構造・制震構造・免震構造の3種類があります。

 

 

耐震構造:建物の柱や梁を丈夫なものにして、建物自体の強度を高めた構造です。強い揺れに対する強度はあるものの、直接揺れが建物に伝わるため、室内の損傷は大きくなります。

 

制振構造:耐震構造にプラスして、地震のエネルギーを吸収する制振装置(ダンパーなど)を用いて揺れを軽減する構造です。耐震構造よりも揺れの軽減効果は高くなります。

 

免震構造:地盤と建物の間に免震装置を挟むことで、建物に揺れを伝わらないようにする構造です。地盤が速く揺れても、免震装置を挟んだ建物はゆっくりと揺れるため、室内に甚大な損傷はもたらしません。

 

上記のように、免震構造は建物に揺れを伝えないため、耐震構造や、制震構造に比べると、少ない被害で済む構造といえるでしょう。

 

 

 

地震などの災害に強いマンションを選ぶ際には、構造だけではなく共用部分や専有部分の防災性能をチェックすることも大切です。

 

長谷工のマンションでは、以下のような防災への配慮を行なっています。

 

共用部分:地震時管制運転エレベーター、非常用飲料水生成システムや簡易トイレなどの防災設備、防災備蓄倉庫の整備
専有部分:ドアの対震枠や耐震ラッチ、ユニットバスの固定など

 

防災に配慮されたマンションを選ぶことで、災害発生時にも安心して生活できるでしょう。

 

 

マンションの防災対策では、停電や給排水設備の破損などによって生じるマンション特有の問題を把握したうえで、必要な備えを行なっておかなければなりません。マンションの場合、基本的には在宅避難が推奨されているため、飲食物や生活用品など1週間程度分の物資を備蓄しておきましょう。

 

また、災害から身を守るためには、避難経路の確保や室内の危険性を減らすことも大切です。転倒する可能性がある家具を固定し、安全な場所を確保しましょう。併せて、マンションにおける防災の取り組みや防災設備なども確認しておくと安心です。

 

 

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監修者

高槻 翔太

<保有資格>

  • 宅地建物取引士
  • FP技能士2級
  • 日商簿記2級

<プロフィール>

不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。売買や駐車場の活用、リフォームの提案などに従事。不動産・金融特化のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。