浴槽は、ほぼ毎日使用する場所であり、人の皮脂や髪の毛などがたまりやすい場所といえます。汚れの多くはこすると簡単に落とせますが、掃除が甘くなると頑固な汚れが付くかもしれないので、適切な掃除を行なうのが重要です。

湯垢（皮脂汚れ）

湯垢とは、人の剥がれ落ちた皮膚が原因の汚れで、角質汚れともいいます。これが最もつきやすいのは、お湯をためた浴槽上部の水面部分で、ザラザラとした感触が特徴です。人の垢や皮脂は酸性であり、アルカリ性の洗剤や重曹で中和することで汚れが落としやすくなります。

水垢

水垢は、水道水に含まれているカルシウムやマグネシウムをはじめとしたミネラル分が付着することで発生します。表面に付着した水滴が蒸発し、ミネラル分だけが残って、白いアルカリ性の水垢ができます。これを落とすには、酸性の洗剤がおすすめです。

なお、表面がガラス質でできているホーロー浴槽以外は、水垢が付きにくいものです。ただし、浴槽の色が黒い場合には白い水垢が目立ちやすく、気になる方もいるかもしれません。

せっけんカス

せっけんカスは、せっけんと水道水に含まれるミネラル分や人間の体から出る汚れなどが反応したあとに残る汚れです。せっけんカスは大きく分けると2種類あり、「金属せっけん」と「酸性せっけん」があります。

金属せっけんは、せっけんと水道水のミネラル分が反応することでできるせっけんカスです。せっけんは油脂が原料なので、同じ性質を持つ石油製品である洗面器や椅子、シャンプーボトルなどにも付着しやすい特性があります。

酸性せっけんは基本的に白い汚れで、汗や湯垢（皮脂汚れ）などの汚れに対して、せっけんの成分が不足しているときに発生します。ぬるっとしていてベタつく手触りが特徴です。

なお、一般的に浴槽内でせっけんを使う機会は少なく、せっけんカスも付きにくいものですが、蓋を開けたままの浴槽や、浴槽内でもせっけん類を使用するユニットバスには、付着する可能性があります。

カビ（赤カビ・黒カビ）

せっけんカスやすすぎ残したシャンプー類を放置していると、赤カビや黒カビが発生する可能性があります。

赤カビは「ロドトルラ」という酵母菌であり、厳密にはカビではありません。カビのように直接人体に悪影響を及ぼすことはないものの、繁殖力が高いため、人体に無害だからといって放置するのは避けましょう。空気中に漂っているロドトルラは水分とともに広がり、浴槽のふちや壁面、床面などをピンク色に変色させます。

また、赤カビは放置すると黒カビの原因になり、浴槽と壁の隙間を埋めるゴムパッキン部分、あるいはコーキング部分ともいいますが、そこに付きやすいでしょう。ゴムパッキンに黒カビが入り込むと落としにくいため、早めの掃除が大切です。

髪の毛

抜け落ちた髪の毛が排水口から流れると、排水管（排水パイプ）やヘアキャッチャーにからみつきます。髪の毛は雑菌のエサになるだけでなく、排水口が詰まる原因にもなります。放置していると悪臭やぬめりも発生するため、こまめに掃除をしましょう。

色素沈着

色素沈着の原因は大きく4つあります。

• 追い焚き配管内の緑青
• 追い焚き配管内や水道管の赤サビ
• 湯垢を長期間放置し酸化したもの
• 入浴剤の色移り

追い焚き配管内の緑青とは、青サビとも呼ばれるように、サビの一種です。配管から溶け出る銅イオンと、人間の体やせっけんから出る脂肪酸が反応することで発生します。

追い焚き配管や水道管内の茶色の変色は赤サビによるものです。こちらも、配管の金属部分が空気中の酸素と結び付いて化学反応を起こすために発生します。

また、湯垢がついた状態を長く放置することで浴槽にくすんだ赤色のシミを作ります。湯垢は皮脂汚れなので、放置すると酸化して浴槽を変色させるでしょう。

そして、入浴剤も浴槽を変色させる要因のひとつで、入浴剤に使われる着色料が残りやすいといえます。

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浴槽は、汚れ部分を重曹粉末とメッシュクロスでこすり洗いし、水で流しましょう。入浴後は汚れがゆるんで掃除がしやすくなるため、乾いていれば、一度シャワーで全体を濡らすと掃除がラクになります。また、お風呂場の壁も重曹でのこすり洗いができます。浴槽を洗うなら、壁も一緒に掃除するとよいでしょう。

先にお伝えしたように、浴槽は水垢やせっけんカスが付きにくい場所ですが、万が一付いた場合は次の方法で落とせます。

キッチンペーパーをクエン酸水で湿らせ、水垢の上にパックのように貼り付けます。パックした状態で10分程度置き、外してから掃除用スポンジでこすりましょう。最後に水で洗い流したら掃除完了です。
なお、クエン酸水（濃度1％）は水200mlに、クエン酸を小さじ1/2の割合で溶かせば作れます。

浴槽内部の色素沈着にはいくつか種類があります。以下では、それぞれの色素沈着に適した掃除方法をご紹介いたします。

サビによる色素沈着にはクエン酸

緑青や赤サビ由来の色素沈着にはクエン酸が効果的です。色素沈着をしている箇所がつかるように浴槽に水をため、クエン酸1カップを溶かします。

ただし、浴槽にクエン酸水を貯める際は、追い焚き配管（風呂釜）の穴に入らない程度の水位を守ることが大事です。クエン酸水が追い焚き配管内に入ると、すでに配管内に付着している緑青がクエン酸によって溶け出してきます。配管より上をクエン酸で掃除するなら、クエン酸水で濡らしたキッチンペーパーでパックする方法が適切です。

なお、長時間つけ置きするとサビの原因にもなるため、つけ置きは30分以内にしましょう。時間がたったら水を抜き、色素沈着が気になる部分をメッシュクロスでこすります。

湯垢による色素沈着には重曹

湯垢が原因の色素沈着には重曹が効果的です。毎日の浴槽のお手入れと同様、濡らした浴槽を重曹粉末でこすり洗いしましょう。それでも色が落ちない場合は、クレンザーを使用してこすり洗いをします。

入浴剤の色移りは汚れの内容に合わせて洗剤を選ぶ

入浴剤の着色料汚れは、せっけんを使うか重曹粉末に少し水分を含ませクレンザーにしたものを使ってこすり洗いします。薬草やハーブ湯の場合、茶色の汚れが付く場合があり、せっけんでこすっても落ちなければ、過炭酸ナトリウムを入れたお湯を浴槽にためて追い焚きします。

まず、循環口が1つ穴でも2つ穴の場合でも、循環口の上まで水を張ってから、過炭酸ナトリウム（2カップ）を入れて軽くかき混ぜます。

次に、配管内に過炭酸ナトリウムを循環させます。お風呂の温度を最高に設定し、追い焚きをします。このときに、お風呂場の桶屋椅子などの小物も浴槽に入れておくとまとめてきれいにできるため、一緒に掃除をしてみましょう。1時間つけ置きした後、再度追い焚きを行ないゆるんだ汚れを流します。最後に新たに水を張って再度追い焚きをして水を捨てれば完了です。この作業がすすぎとなって、配管内の洗剤が洗い流されます。

循環口が2つ穴の場合は、最後の仕上げとして水圧を上げたシャワーの水を上下の穴から入れて洗剤を洗い流しましょう。

浴槽側の排水口は、排水栓と排水コアから構成されているため、掃除の前に分解をしておきましょう。部品を分解したら、排水コアにからまっている髪の毛やごみを取り除きます。次に、使い古した歯ブラシで排水栓の蓋の裏や、排水コアの細かい部分を丁寧にこすり洗いします。最後に、取り外した部品を再び排水口に戻したら完了です。なお、排水栓がゴム栓タイプのものも掃除方法は同様です。

重曹はやさしい成分ではありますが、使用するにあたっていくつか注意しなければならない点があります。使用する際には、以下のポイントを押さえたうえで使うようにしましょう。

重曹が使える素材か確認する

重曹を使用する前に、ご自身のお風呂の素材を確認してから使うようにしましょう。ひのきや大理石などの天然素材に重曹を使うと、変色してしまう恐れがあります。

強くこすらない

粉末状態の重曹は、研磨効果があるので、強くこすり過ぎると浴槽を傷付ける恐れがあります。そのため、浴槽をこする際には、やわらかいメッシュクロスでやさしくこすりましょう。

浴槽の汚れを防ぎ、掃除を簡単に済ませるためには、毎日のお手入れが重要です。入浴直後は、洗剤を付けずとも汚れが落ちやすい状態です。メッシュクロスでこすり洗いを行ない、シャワーですぐに流しましょう。なお、汚れが流れ落ちるタイプの洗剤は成分が強いため、肌に付いてしまうと危険です。掃除の際は、すすぎ残しがないように注意する必要があります。

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