2025年問題が問うもの
2025年07月01日 / 『CRI』2025年7月号掲載
目次
団塊世代が全て75歳を超え、人口の18%が後期高齢者となることで起こる諸問題について、2025年問題といわれている。先月号では団塊世代から子供世代である団塊ジュニア世代への不動産相続について触れたが、今月は高齢者が高齢者へ相続する「老々相続」について見ていく。
1 被相続人の年齢の構成比
被相続人の高齢化が進んでおり、相続による若年世代への資産移転が進みにくい状況となっている。平成元年(1989年)には80歳以上の高齢者が被相続人となった相続は約39%であったが、平成28年(2016年)には約70%にまで増加した。被相続人の高齢化に伴い、相続人の年齢も50歳台以上が想定される比率が増加し、相続する側もされる側も高齢者の「老々相続」は今や日本の一般的な相続となった。また、被相続人が高齢である場合、殆どが配偶者も高齢であることから、次の二次相続が発生する時期が早いと考えている。二次相続の場合は、一次相続よりも法定相続人の数が少なくなり、また配偶者に対して与えられていた様々な税制優遇が適用できなくなるため、手続きがより複雑化するだけでなく、相続税が一次相続の時より高くなる可能性がある。高齢化比率の高い地方だけでなく、高齢者人口の多い都市部においても「老々相続」は増加が見込まれ、今後も注視が必要である。
2 「老々相続」の陰に潜む空き家問題
高齢者の相続人が自宅等の不動産を相続しても、既に相続人が自身で住宅を取得していたり、老人ホーム等の高齢者住宅に転居している場合には、相続不動産が空き家となる可能性が高い。国土交通省による平成26年(2014年)の空家実態調査によると、空き家となった住宅を取得した経緯として「相続して取得」という回答が半数を超えている。高齢の相続人は認知症や健康上の都合から、相続手続きが困難となる場合もあり空き家が増加する一因にもなっている。空き家の存在は、景観や治安の悪化だけでなく、老朽化による倒壊被害の可能性もある。団塊世代・団塊ジュニア世代が多く住む都市部においても、今後分譲マンションの空き家が増加することにより、管理体制・資産性保全への影響が懸念される。


