少子化の時代
2025年09月04日 / 『CRI』2025年9月号掲載
目次
厚生労働省から公表された「2024年人口動態統計」によると、出生数は68万6,061人で、前年の72万7,288人から4万1,227人減少し、合計特殊出生率も同様に低下。出生数は昭和24年の269万6,638人をピークに、昭和50年以降は減少と増加を繰り返しながら減少傾向が続いており、少子化に歯止めがかからない。こうした中で、保育現場にも変化が訪れている。
【1】 受け皿(供給)の拡大と利用者(需要)の縮小
女性就業率(25歳から44歳)は年々上昇しており、これに伴い待機児童の増加が社会問題となったことから、その対応策として保育所等は増加を加速させ2013年には約240.9万人だった受け皿量を2024年には約321.9万人と約81万人増加させた。
しかしながら2020年の約284.2万人をピークに申込者数は減少し、女性の就業率が上昇し続けているのに反し、未だに回復していない。主因は少子化が進行する中での保育施設等の過剰建設、新型コロナ感染拡大により感染リスクを懸念した保護者が保育所の利用を控えたり入所申請を見送ったり登園自粛が要請されたりしたこと、保護者の2年間の育休延長に伴う0、1歳児の園児不足が挙げられる。また在宅勤務やテレワークの普及により家庭での育児が可能となったことで、一次的に保育所の必要性が低下したことも影響した。受け皿の拡大と利用者の縮小により、2017年には2万6,081人いた待機児童は2024年には2,567人と1/10以下に減少した。
【2】 利用者減少による保育所等の定員割れが進行
少子化の進行による子供の減少で、幼稚園や保育園の需要が縮小し、都市部では依然として施設の需要が高いが、地方や一部都市では過剰感が顕著となっている。2020年と2024年の「保育所等における都道府県別の定員充足率(利用児童数÷定員)」では和歌山県を除く全都道府県でマイナスとなっており、山形県の▲約8%を筆頭に栃木県、福井県、山梨県、鳥取県、徳島県、愛媛県、長崎県、鹿児島県など、地方で▲6%以上減少した。
定員に満たないことに加え保育士の処遇改善による固定費増額により、経営難に陥った施設では統廃合や閉鎖を余儀なくされるケースも出始めている。保育所等は「足りない」から「余る」時代へ変わりつつあるが、比較的交通至便な場所にあり、今後「利活用」や土地の供給も想定されることから、各自治体の待機児童や保育所等の定員充足率の動向に注目していきたい。

