少子化の時代

~地方自治体の住宅支援~

2025年10月31日 / 『CRI』2025年11月号掲載

CRI'S FOCUS

目次

少子化問題は今や全国的な問題であり、各行政とも様々な対策を講じているものの、成果に結びついているとは言い難い。そんな中で、生活の基盤ともいえる住宅支援策を軸に少子化対策を展開し成果を上げてきた自治体がみられる。今月号はそうした自治体の試みについて紹介したい。

【1】 10年でこどもの人口が増加した町村

2010年と2020年で3歳まで、5歳までの人口を比較したところ、全国926町村の内、10年で3歳までの人口が増えたのは73町村(7.9%)、5歳までの人口が増えたのは92町村(9.9%)にとどまった。また合計特殊出生率が県平均より高かったのは、いずれも地方の自治体であり、地方の健闘が確認できた(図表1)(図表2)

【2】 各町村の住宅支援策

1.岡山県奈義町

2012年に「子育て応援宣言」を発表し、町民と行政が一体となって少子化対策を推進。2019年に合計特殊出生率が2.95となり「奇跡のまち」とも言われた。具体的な住宅支援としては2台分の駐車場を含む月額5万円の家賃の町営賃貸住宅(グリーンビレッジ)を整備し若い夫婦の定住を促進。

2.茨城県境町

子育て世帯向けの町営住宅に25年間住み続けると、土地と建物が無償譲渡される制度を導入。家賃は月額5~6万円台と安価で、固定資産税も不要なため、募集戸数以上の応募がみられる。PFI※を活用することにより町の財政負担ゼロであることも特徴。

3.青森県六戸町

定住促進新築住宅建設補助金として、六戸町に3年以上定住する目的で新築住宅を建設する人に対し、建設費の一部を負担、上限は50万円で夫婦共に40歳未満の場合10万円が加算される。また、若者定住支援補助金として夫婦共に40歳未満で町内の民間賃貸住宅に住む場合、月額2万円を上限として補助し、この補助は最長24ヵ月活用できる。
いずれも住宅支援が単なる住まいの提供にとどまらず、それぞれの自治体の事情に合わせた支援策を講じ、安心して子育てできる環境づくりをも提供することで、こども人口の減少に対処している。
※PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)の略で民間の資金 やノウハウを活用して公共施設の整備や運営を行う手法。