2025年問題が問うもの

~家じまい「実家」をたたむ時代~

2025年08月06日 / 『CRI』2025年8月号掲載

CRI'S FOCUS

目次

団塊世代が全て75歳を超え、人口の18%が後期高齢者となることで起こる諸問題について、2025年問題と言われている。2025年は日本の高齢化時代における転換期であると同時に、高齢者自身にとってもこれからのライフステージを見直す時期でもある。今月は住み替え(高齢者施設へ入居する、利便性の良い場所へ住み替えるなど)で起こる家の売却・解体、家具の処分などの「家じまい」※の実態についてみていく。


※持家を整理・処分すること。高齢者が自分自身の終活として行う場合や、親が亡くなったり施設に入居したりすることで空き家になった実家を子が片付ける「実家じまい」も合わせて「家じまい」と称す。

【1】 管理されない空き家問題

持家を所有する親が高齢化して亡くなる、施設に入るなどによる「空き家」が増加している。総務省の公表によると、全国の空き家は過去最多の900万戸に達し、住宅総数に占める割合も13.8%と過去最多となっている(総務省「2023年住宅・土地統計調査の速報集計」より)。子が相続はしたものの、住む予定がない・活用方法もないなど、そのまま放置されるケースも増えており、管理されない空き家が増加。特に都市部へ人口が流出することにより、地方で空き家の増加し易い状況となっている。管理されない空き家は景観や治安の悪化、倒壊の危険も伴い問題視されている。

【2】 繋がりの希薄化がもたらすゴミ屋敷問題

環境省の2023年調査によると、1741市区町村のうち、約38%がゴミ屋敷事案を認知しており、そのうちの多くが、高齢者世帯で発生している。ゴミ屋敷化する主な原因としては
❶ 心身の衰え・・・・・高齢化により身体的・気力的に掃除やゴミ出しが困難になる。
❷ 認知機能の低下・・・認知症によりゴミとそれ以外の区別がつかず、片付けができない。
であるが、周囲とのコミュニケーションが希薄化すると住居内の状況が気づかれにくいことが、さらにこの問題を深刻化させている。ゴミ屋敷化は専有部の衛生上の問題だけでなく、マンション全体の資産価値の低下を招く結果になりかねない。

【3】 「相続」を理由とした売却の増加

LIFULL HOME’Sの調査によれば「相続」を理由とした売却査定への依頼が増加している。3年間で「相続」を理由とした売却査定依頼の件数(2022年の件数を100とした場合)は、全国で2.23倍であるが、東北2.74倍、九州・沖縄2.57倍、北海道2.37倍となっている。65歳以上の8割以上が持家に居住していることや、今後高齢者の単身世帯の増加が見込まれることから、「相続」を理由としない売却の増加も想定される。ライフスタイルの変化を見込んだ早期の「家じまい」の検討が「空き家」「ゴミ屋敷」の発生を防ぐ一つの解決策になってくるだろう。