少子化の時代

~「廃校」を「地域の資産」に 新たな役割を担う学び舎~

2025年10月01日 / 『CRI』2025年10月号掲載

CRI'S FOCUS

目次

【1】増加する「廃校」

少子化と人口減少、自治体の合併を背景に、過去20年間(2004~2023年度)で約8,850校の公立小中高校が廃校となった。このうち小学校が5,799校と全体の6割以上を占めており、最初に少子化の影響が小学校に現れ、今後は次第に中学校や高校の廃校が増加すると見込まれる。2010年から2020年の10年間で各年代の人口が約10%減少していることからも、この傾向は今後も続くと考えられる(図表1)〈参考〉

【2】 地域の「資産」への再生

廃校は全国の至るところで増加しているが、その多くは「地域の資産」として再活用されており、地域や立地の特性に応じた多様なリノベーションをすることで、新たな役割を担っている。具体的な事例としては、体育館やグラウンドなどを活用した社会体育施設、介護施設などの社会福祉施設、公民館や図書館などの社会教育施設といった公共性の高い施設への転用のほか、近年では、オフィス・工場などの企業や法人等の施設、宿泊施設、商業施設、体験型観光施設など、多様な目的を持つ複合施設へのリノベーションも進んでいる。これらの再活用は、使われなくなった廃校に新たな価値を付加するだけでなく、雇用の創出、地域コミュニティの維持・活性化、新たな人流の創出にも貢献している(図表2)

しかし、全ての廃校が再活用されているわけではなく、これまでに廃校となった約8,850校のうち、リノベーションされ再活用されたのは約70%にとどまり、残り30%はそのまま放置されている。今後も過疎化が進む地方だけでなく、人口減少や少子化により都市部においても廃校の増加が見込まれるが、廃校となった施設に地域性に応じた利活用をいかに施すのか、リノベーションされた施設をどのように持続的に維持・運営していくのかが重要な課題となってくるだろう。