DXで変わる場所と時間
2023年11月30日 / 『CRI』2023年12月号掲載
目次
デジタル技術を活用して業務やビジネスモデルを変革し企業価値を高めるための取り組み、DX(デジタルトランスフォーメーション)は近年様々な分野で社会の変容を感じ取れるレベルまで進捗している。
こうした潮流の先にどのような社会・都市が実現されるのか、また個人の暮らしはどう変化していくのか、その可能性について、暮らしの場である建築・都市のDXに対する国の推進する方向性や整備状況、また現在先行して実装や実験を行っている事例の確認を行いレポートする。
1. デジタル技術を活用した社会の方向性と未来像
現在、デジタル分野の技術革新が経済活動の基盤として、あるいは主に人手不足に起因する様々な社会的課題への解決策として大きな役割を果たしている。今後こうした先端技術の実装が更に進捗していくと将来はどのような社会が築かれるのか、政府は目指す未来の社会像として「Society5.0」(※1)を提示している。
「Society5.0」はサイバー空間とフィジカル空間の高度な融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会と定義されている。そこでは社会のあらゆる要素をデジタルツイン(※2)として構築し、サイバー空間上で再構成したものをフィジカル空間に反映することで社会を変革していくことが謳われている。デジタルツインをはじめとするデジタル化が進むことにより以下のようなメリットが生まれる。
●AIやロボットを活用する基盤が整い効率化・省力化が進むことで、より競争力を生む創造的な分野に 集中して人的資源を分配することが可能となる。
●研究や開発において高度なシミュレーションを仮想空間で安価に、高頻度で行うことができる。フィードバックもデジタル化することで他の行程とシームレスな連携が期待できる。
●独自のデータアセットをオープンデータやビッグデータなど外部のデータと連携させることで、より高付加価値のイノベーション創出が期待できる。
現在、政府によるスーパーシティ構想の提示や各地におけるスマートシティへの取り組みなどが行われている。またこれらのプロジェクトが先導することで、地方都市が直面する少子高齢化や人口減少などの課題に対しデジタル技術の活用で解決を目指す、「デジタル田園都市構想」の進捗が図られている。このように、「Society5.0」実現に向けて様々なプロジェクトが進行中であり、将来地域や都市、暮らしの在り方が大きく変容する可能性がある。
※1 Society5.0とは政府の主導する未来社会のコンセプト。狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会 (Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続く、次世代の社会を意味する。「先端技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れ、イノベーションから新たな価値が創造されることにより、誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる人間中心の社会」を目指す。
※2 デジタルツインとはフィジカル空間にある情報をIoT技術等により高精度なデジタルデータとして取り込み、サイバー空間で再現したもの。
2. 建築・都市のDX推進のためのプラットフォーム
デジタル化を推進する上で、デジタルデータのメリットを活かすと共に、将来に向けて拡張性を確保するためには、内外の様々なデータと連携が容易な構造が求められる。そのため共通の基盤となるプラットフォームが必要となる。建築・都市のDXで必要とされる地理空間情報については国土交通省により「BIM」「PLATEAU」「不動産ID」の整備が進められている。建築物の形状、材質、施工方法といったデータは「建築BIM」、都市空間における建築物や道路の配置に関わるデータは「PLATEAU」が対応することで、建物内からエリア・都市スケールまでシームレスに再現した高精細な三次元の空間データとなる。これに土地・建物の位置を特定する「不動産ID」を組み合わせ、各種のオープンデータや各社の持つ内部データと連携させることでフィジカル空間を反映させたサイバー空間、デジタルツインの構築が可能となる。また、一体として活用する以外に、企業や自治体独自のシステムに必要としている要素をそれぞれのプラットフォームから取り込むことで高度化を図れることも期待できる。
〈Interview〉建築・都市のDXに係る国土交通省の取り組み
国土交通省 政策統括官付 情報活用推進課長 矢吹 周平 氏
我が国では今後、生産人口の減少により過去にないほどの労働力不足が到来することが懸念されています。このまま放置すると社会全体の経済活動の停滞・縮小が長期的に継続することで、生活を維持していくことに必須なサービスに人材を投入する必要に迫られ、競争力を生み出す成長分野への人材投入が困難となる可能性があります。
このため、社会のあらゆる分野でデジタル化を推進し、様々な業務の効率化・省力化を進める必要があります。また高精細なデジタルツインを早期に社会実装することにより、デジタル・サイバー空間における各種シミュレーションを活用し、リアル・フィジカル空間におけるベストなソリューションを模索することも可能となります。国土交通省では土地や建物といった我が国の貴重な財産や資産に紐づく情報も多く取り扱っているため、この領域で官民一体となり建築・都市のDXを推進していくことにより建築や都市の進化に寄与できると考えています。
直近の政府の方針でも6月に閣議決定した「新しい資本主義の加速」として建築・都市のDXへの取り組みを明記し、その実行計画の中で建築物の形状、材質、施工方法に関する3次元データ「BIM」、都市空間における建築物や道路の配置に関する3次元モデル「PLATEAU」、土地や建物に関する固有の識別番号「不動産ID」の活用を重点的に進めると定めています。この「BIM」「PLATEAU」「不動産ID」は地理空間情報を活用していく上で基盤となるプラットフォームであり、一体として整備を進めています。その現在位置と将来目標についてはロードマップを作成しており、2025年にユースケースを横展開し、2028年の本格普及を目指して整備と推進を進めています。
「BIM」については2025年度に「BIM」よる建築確認の開始を予定しています。建築確認は提出側も受理側も煩雑で労力を要する手続きが必要です。この制度に「BIM」が紐づくことにより省力化が図れることはお互いに大きなメリットとなります。合わせて設計から維持管理のステージまで一貫して同じデータを同じルールで管理していくことで全体の合理化も図れます。また、素材や施工方法のデータを内包していることにより、建築から維持管理にどれくらいのCO₂が排出されるかの測定に活用できます。国際的に温暖化対策の一環としてエンボディドカーボンが注目されており、その対応のため不可欠なデータとなります。
「PLATEAU」は各自治体による整備を支援しています。参加している自治体は、2023年4月時点では127都市ですが、2025年に500都市を目指して推進しています。「PLATEAU」により3D化した都市モデルにより街づくりへ活用する事例もあります。例えば岐阜県岐阜市では建物の設置や人流の変化などをシミュレーションすることでウォーカブルな街並みの整備を図っています。さらに最近では地下埋設物を「PLATEAU」で再現することで、特に再開発事業における地下の状況の把握、管理業務の効率化についても取り組んでいます。
「不動産ID」は2022年3月にルールガイドラインを策定し、2023年5月に官民連携協議会を立ち上げた上で取り組みを進めています。2025年度から全自治体分の「不動産ID」を提供し社会実装を行うべく整備を続けると共に、試作版を用いた民間・自治体におけるユースケースの実証を行っています。不動産業だけでなく、物流や保険など土地や建物に関わる業種から関心が高く、例えば配達先の所在地を一意に特定できることで、住所データの不整合を補正する労力を省くことができます。この「不動産ID」については政府がベース・レジストリとして位置付けており、不動産関連情報のデータ連携のキーとして利用できるよう整備を進めています。
以上3つのプラットフォームの整備状況や動向についてお話ししましたが、重要なことはデジタルデータであることにより様々な組み合わせが可能となる点です。国土交通省では国土地理情報をオープンデータ化しそれぞれのプラットフォームと連携を可能とすることでイノベーションの創出を促し、新ビジネスや海外展開なども支援していきたいと考えています。
労働供給不足による様々な制約を緩和するため、国土交通省は、建築・都市のDXを加速化していきます。そのためにデータを整備し、オープンにできるものはオープンに、そしてそのデータを運用しやすい基盤を整備していきます。
〈Column〉不動産IDが加速させる不動産DX
LIFULL HOME’S事業本部
情報審査グループ長
宮廻 優子 氏
不動産ファンド推進事業部
2022年国土交通省不動産IDルール検討会構成員
松坂 維大 氏
株式会社LIFULLは自社の運営する不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」における募集終了物件の非掲載処理を「不動産ID」による照合を活用し一括で行う、新しい仕組みづくりの実用化にむけた検証を行っている。これは、国土交通省が推進する「不動産IDを活用したモデル事業」に採択されており、同社ではおとり広告撲滅の加速、不動産業界のDX促進を図っている。
同社LIFULL HOME’S事業本部 情報審査グループ長の宮廻氏に伺ったところ、「500万件の物件情報が載せられているLIFULL HOME’Sの情報メンテナンスを、不動産IDで照合し一括で行うことで迅速に漏れなく行うことが期待できる。おとり広告を排除した、より正確で価値の高い情報をユーザーに提供していきたい」とその狙いを語った。
また「不動産ID」が不動産業界全体に及ぼす効果について尋ねると、同社不動産ファンド推進事業部の松坂氏は「事業者間データ連携の効率化」を挙げた。現状、会社ごとに保持するデータを一元的に運用するために位置情報の突合を行う必要があり、非効率で誤差も生じやすいことが課題となっている。「不動産ID」による照合が実現するとこの課題の解消が図れると共に、必要となるデータの出所が異なっていても連携が容易となり、より価値の高いデータとすることが期待できる。さらに、会社や役所の手続きも「不動産ID」による連携で一元化を図ることで省力化が図れる。デジタルツインやVRと組み合わせることにより、全てオンラインで完結する環境の整備も期待できる。
最後に、将来「不動産ID」をはじめとするDXを推進する様々なプラットフォームの整備が進んでいき、様々な情報がオープンに連携されると、不動産・住宅情報の担い手はどのような役割が期待されるのか尋ねると、松坂氏は「全ての情報が解放されても、ユーザーが最適な選択を迅速に行うことは難しい。個々のユーザーのニーズにマッチする不動産を見つけ出すサポートを、人間のジャッジメントとAIのサポートで可能にする。そのインターフェースの役割が重要となるのではないか」と語った。
3. プラットフォーム整備の効果
デジタルツインをはじめとするデジタル化推進により建築・都市のDXを図ることが期待されている。デジタルデータであることで、それぞれの分野の先進的なテクノロジーと連携させ、その分野においてDXを加速させることが考えられる。例えば自動運転車両を挙げると、車両側が運転のイニシアチブをとるレベル3以上の段階においては、センサーや制御、AI、通信技術と共に、ルート選定のベースとなる現実の状況をリアルタイムに反映させた地図データに加え、現実における目的地や経由地を地図上の空間で特定させるための仕組みも必要となる。すでに先行して社会実装の試験を行っている企業や自治体は、試験を行う範囲の詳細な地図などデジタルツイン環境を用意して実施している状況である。将来的に高精密な3D地図として「PLATEAU」、地図上の地点特定のための「不動産ID」の整備がすすみ、必要とされる要素をプラットフォームから得られるようになると、システム構築のコストが下がり、社会実装のハードルが下がることでより広範囲で展開できる可能性がある。
また、企業や自治体の独自のデータやオープンデータについて、「不動産ID」を介してデジタルツイン環境に連結させることも可能となる。街づくりでの使用シーンを想定すると、人流データなどオープンデータや企業や自治体の独自データと「PLATEAU」で人の導線の設計を行う、「PLATEAU」「BIM」の持つ建築物の構造や属性データを反映させ、メタバースなどXRテクノロジーを用いて景観の確認やテストを行うなど、高度なシミュレーションを行うことができる(図表1)。
プラットフォームの整備が進むことで、多様なユースケースが派生すると考える。ユースケースで将来像を提示できることで、現在法律や慣習などの制限により実現が難しい分野でも、各分野のDXも広く深く進展する可能性が高まると考える。
4. デジタル技術先行実装の状況
建築・都市のDXを加速させる要素として、プラットフォームの位置づけと整備状況を確認したが、一方でそれと組み合わせ得る各分野のテクノロジーの一例をみていきたい。
交通の分野では、2023年4月にドライバーの介入を必要としないレベル4自動運転の社会実装を可能とする道路交通法の改正が施行され、一般道を用いた走行実験も各地で行われていることから今後加速的な拡大が予測される。自動運転を物流に活用しドライバー不足の問題の解決を図る動きもある。スタートアップ企業により高速道路など幹線道路で自動運転トラックが検討されており、大手運輸会社では、既に実装が進んでいる倉庫の自動化やドローンの活用と組み合わせることで、物流の効率化を大きく進めようとする試みも行われている。
街づくりの分野では「PLATEAU」のユースケース創出が進展しており、例えば建築物が自治体の市街地における景観にどのように影響するのかシミュレーションを行える「景観まちづくり支援ツール」が開発されている。またVRを組み合わせることで、街区デザインのシミュレーションに市民が参加しやすい環境が整備されることで双方向性の街づくりが促進された事例もある。VRやXRとデジタルツインの組み合わせは観光の領域でも広く活用されており、意思決定段階の旅行客に対し、地域の魅力をより詳細に伝えることができることで、来訪などの行動につながることを狙いとしている。同時に観光客の行動データを収集、分析しプラットフォーム化することで、観光地の店主や行政側が効率的かつ高度な顧客対応が図られるよう観光DXを推進する自治体もみられるなど各地で様々な試みが行われている。
その他、防災分野では災害シミュレーションにデジタルツインを活用することによる被害予測の高度化、不動産分野でも開発から販売までデジタル技術による効率化が図られるなど幅広い領域でデジタル技術を活用したDXが進展している(図表2)。現在、様々な取り組みが始まり、広がりの可能性を模索しながら推進を図る段階ではあるが、建築・都市DXの基盤となるプラットフォーム群の整備が進むと横展開や深化が進み、それぞれが連鎖することで大きな変化を生み出す可能性がある。
〈Column〉DXを連鎖させ地域振興を図る取り組み事例
長野県塩尻市
産業振興事業部 先端産業振興室
室長
太田 幸一 氏
一般財団法人 塩尻市振興公社
DXまちづくり事業部
シニアマネージャー
荻上 真功 氏
首都圏や近畿圏といった大都市圏と比較すると、地方都市は少子高齢化の影響を受けやすく、働き手、担い手不足に起因する諸問題の解決は喫緊の課題となっている。その状況の中、数々の先進的な試みにより地域DXを推進することで注目を集めている塩尻市の取り組みについて紹介する。
長野県塩尻市は長野県の中央、中信地区に位置。街道の交差する交通の要衝であったが、近年は他の地方都市同様に郊外化が進んでいた。そこで塩尻市では地域公共交通計画に加え、デジタル技術による革新的な都市機能の実装を目指すDX戦略を策定、MaaSを地域DXのリーディングプロジェクトに位置付けモビリティ関連の各種取り組みを積極的に展開している。その具体的な施策として、中心市街地の交通を担っていた市営のコミュニティバスを、AIによるルート選定を行うオンデマンドバスに置き換えを進めている。また、運転手の高齢化による担い手不足に対する解決のためバスの自動運転化に着目した。現在レベル4を目指した自動運転バスの実証実験を公道にて行っている段階で、2025年の社会実装を目指しているという。
なぜ塩尻市でこのような先進的な取り組みが可能だったのか?話を伺った塩尻市産業振興事業部先端産業振興室室長の太田氏は「KADO」と「官民協業」を挙げた。「KADO」とは元々はパートタイムの求人が少ない地方都市において、子育てや介護などで時間に制約がある人でも安心して働ける仕組みとして2010年に組織された。やがて企業や自治体からのバックオフィス業務などを行う中でデジタル技術にたいするリスキリングが進み、現在オンデマンドバスのオペレーションやDX関連の実証実験のサポートを担当するに至った。そして「KADO」が自動運転制御用の高精度3次元地図データの作成を請負ったことにより、自動運転の技術を持つ企業との官民協業体制構築のきっかけとなったという。その官民協業体制について太田氏は「官民協業の基本は公共と民間がそれぞれ得意分野で役割を担うことにある。公共セクターは直接地域住民の課題やニーズを聞き、収益を挟まずに目的達成が可能であることが強み。そこにテクノロジーや優れた技術を持つ民間企業の力を借りることで大きな地域インパクトを出す事業が実現できる。もちろん企業は将来の収益につながることが重要なので、塩尻市をテストベットとして開発した技術を横展開できるよう支援をしている。」と語る。
現在、塩尻市ではこの自動運転をはじめとするMaaSや「KADO」の取り組みにより培ったネットワークや共創のノウハウを生かし革新的な都市機能を創出する地域DX拠点として「core塩尻」を整備、塩尻市振興公社により運営されている。共創に携わる企業のサテライトオフィス、産官学民の交流も可能なコワーキングスペースを備えると共に、地域住民が自由に入れる共創スペースを設けている。産官学民交流によるシナジー効果を狙っている。
この一連の活動について、太田氏は「塩尻市の目指す都市像である田園都市構想、市街地の便利な暮らしと農村集落の豊かな暮らしの両立を常に念頭に置き、コンパクトシティプラスネットワークのコンセプトからブレることなく行っている」と語った。
塩尻市で官民協業により培われた先端技術は、プラットフォームの整備とともに各地でDXを加速させる要素となると予測される。同時に塩尻市の取り組み方も、地域DXを達成するためのモデルケースとして注目していきたい。
5. 暮らしはどのようにかわるのか
様々な分野でデジタル技術の活用が進んだ先に、どのような社会が望まれているのか。「令和5年版国土交通白書」(2023年)の中で、国民意識調査としてデジタル化を通じて実現を図る未来型のライフスタイルについてアンケートを行っている。それによると、回答全体では安心・安全、環境配慮、仕事の効率化に対する項目に高い関心がある。一方、10代の回答をみると、「テレワークやデジタル仮想空間(メタバース等)の活用により物理的な移動を伴う出勤や買い物を余儀なくされる機会が減少し、自由な時間が増え、住む場所を個人の嗜好に合わせて選べる暮らし」が全体の回答59.75に対し76.9%と17.2ポイント高かった(図表3)。
また、デジタル化を通じて実現を図る2050年の新たな社会像に対する回答も、「バーチャル空間の充実により、物理的な障害に制約されず活躍できる社会」が全体の55.0%に対し10代は78.8%と23.8ポイント高い結果となった(図表4)。
今後経済活動の主役となる10代はデジタル化による社会の変化に対し受容性があり、DXの進展により各地域の生活圏で利便性が確保され、サイバー空間を通した発信や参画が進むことで、分散型社会への気運が高まることも考えられる。
次にプラットフォームや諸制度の整備が進み様々なデータが連携された未来ではどんな世界となるのか想像してみた。住宅を選ぶシーンでは、AIの進化により個人の嗜好を様々なレコードから読み取って言語化し、場所や建物のデータと照合させることで候補となる住戸とのマッチングが図れる。VRを使用した仮想空間における室内の確認が進んでいるが、「PLATEAU」の整備が進むことで駅から自宅へのアプローチや周辺の商業施設への買い物など生活圏を含めたシミュレーションをシームレスに行うことができるようになる。また中古住宅においては「BIM」「不動産ID」を組み合わせることで構造やメンテナンス履歴の確認を行い、物件選択に役立てることが期待される。都市計画の分野では、「PLATEAU」「BIM」を活用したシミュレーションにより、ウォーカブルで魅力のある街並みの計画が容易となる。自動運転やドローン宅配により利便施設の配置が変わる他、自動運転車両の駐車場やドローンの発着場など新しいビジネス創出も想像できる。
最後に、不動産業界もデジタル化によりデータのオープン化や国民のデジタルスキルの向上が進むことで情報の不均衡が是正されより消費者・利用者がイニシアチブを握る構造に変容を促す可能性がある。多くの情報により学習したAIによる物件と購入希望者間の精度の高いマッチング、より個人の思考に沿った住宅をAIと「BIM」の連携により設計するなど、革新的な技術の融合が業界の構造を変容させていくと思われる。
(関口栄輝) Sakaki_Sekiguchi@haseko.co.jp









