国土交通省 石坂住宅局長に聞く これからの住宅・マンション政策
2023年12月26日 / 『CRI』2024年1月号掲載
目次
国土交通省では、「誰もが安心して暮らせる多様な住まいの確保」や「住宅・建築物におけるカーボンニュートラルの実現」を
はじめとする住宅政策を推進しており、令和6年度予算・令和5年度補正予算や、検討会・ワーキング等で、現下の課題に対応した
政策の方向性が示されています。一方、マンション政策については、マンション政策検討会(今後のマンション政策のあり方に
関する検討会)で示された方向性に基づき、マンションの管理のあり方に関するワーキンググループで施策の具体化の検討が進むと
ともに、マンションの建替え等の円滑化に向けて、区分所有法の約20年ぶりの大改正が行われる見通しとなっています。
このような情勢の中で2024年を迎えるに当たって、国土交通省住宅局長石坂聡氏と長谷工コーポレーション代表取締役社長
池上一夫、取締役執行役員吉村直子が、これからの住宅・マンション政策について、意見を交わしました。
●2024年の住宅政策のポイントについて
池上: 新しい年を迎えるに当たり、はじめに、これからの住宅政策について伺います。2024年は次の住生活基本計画に向けた
準備がスタートする時期かと思います。少子・高齢化対策や、脱炭素社会の実現のほか、災害への備え、既存ストックの有効活用、
DXの推進などの施策がある中で、2024年の住宅政策のポイントをお話いただけますか。
石坂:まず少子化の話がありますが、そもそもの問題として若者の皆さんが将来に希望が持てる社会じゃないといけない。
我が国の経済が良くなる、将来に夢があると思わないと、安心して子育てできないという気持ちがわからなくもないと思います。
家を持ちたい人は持てるようにしなきゃいけない。その一方で、家を持つことが困難な方については、公的賃貸住宅や民間の
セーフティネット住宅といった形で幅広く対応していきたいと思います。住生活基本計画ももっと変えた方がいいと思っています。
今、住宅セーフティネット制度の見直しに向けた検討を、厚生労働省と法務省とで合同で有識者検討会を設置し、連携して進めて
います。住宅のメンテナンス・リフォームなど住まいそのものの改善に加えて、住宅を巡るいろいろなサービス、さらには生活
そのもののサービスも包括的にやったらいいのではと考えています。URも最近では団地の再生・再編の中で建替えの余剰地を
福祉施設や病院など福祉拠点化したり、空き店舗の活用などをしています。地域づくりとして、今ある住宅を住宅そのものだけ
じゃない活かし方もあるんじゃないかと思っています。
また、例えば住生活基本計画の中に面積水準として、最低居住面積水準というのがあります。我が国では戦後、住宅の数が足りない
時代から、そのあとウサギ小屋と批判された時代があって、そこから面積を追い求めてきたと思うのですが、現代は多様な住まい方
があり、家族の形も変わってきているので、面積基準を目標とすることに違和感もあります。ここは賛否両論あると思いますが、
大胆に見直してもいいのではないかと思っています。
池上:私たちは住まいと暮らしの創造企業グループとして、マンションの建設から販売、管理、修繕まで一貫して行っています。
そして、暮らしの中での提案として、夏祭りや打ち水大作戦など、住民の皆さんが参加できるイベントも企画しています。
また、住宅価格が高騰する中で、面積を絞る動きが顕著ですが、面積だけでなく家族形態やライフスタイルの変化に対応した空間の
ボリュームを重視した住まいづくりという発想もあるのではないかと考えています。
●住宅セーフティネット制度検討の方向について
吉村: 住宅セーフティネット法の見直しについてですが、現在の住宅セーフティネット法では住宅確保要配慮者の住宅確保という
点に注目し、いろいろな施策が実施されていると思います。先ほどの局長のお話にありましたように、安心して住宅を求められる、
あるいは借りられる社会を作ろうとすると、賃貸住宅市場に関する諸施策の見直しの議論が挙がってこようかと思います。
住宅確保要配慮者と定義付けられている方のみならず、さらに幅広い方が安心して手頃な費用で借りられる賃貸住宅が増えれば、
暮らしにもっと夢が広がるのではないかと思っているところです。今、民間の不動産企業でも賃貸住宅の供給にはかなり力を入れて
います。
石坂:住宅セーフティネット政策の中で最大の難関は家賃だと思うのですが、家賃を社会保障の一つにできるかと言われると、
国民の皆さんの合意という面で極めて難しいと思っています。一方で、住宅セーフティネット政策として何もしないということは
あってはならない。半歩前進でも、やれることを実現するために、有識者検討会を設置して検討を進めています。
まず第一に、賃貸住宅への入居を断られないようにする市場環境を進めることが必要です。高齢者、障がい者、子育て世帯、
外国人が普通に入居を断られてしまう。大家さんにも断る理由があって、高齢者であれば亡くなった時に残置物があったり、
借家権が相続されて解約できず次の方を入れられないとか、事故物件のリスク、家賃滞納の不安を感じています。そこを社会全体で
サポートする仕組みができないかと思っています。居住支援法人という仕組みを前回の住宅セーフティネット制度の改正で創設
しました。厚生労働省とも連携し、入居前支援から入居中のサポートまで社会福祉法人やNPOの方々にやっていただく取組みを
拡げ、こういった方々が要配慮者を見守れば、例えば金銭トラブルになった時もその方々が入ってくださることで大家さんも安心
です。そういった取組みを幅広く普及させて、高齢者だけでなく、非常に増えてきている単身者の方が安心して住まいを探せる
ようにしたいと考えています。
第二に、もう一歩進めて、生活困窮者、ホームレス、障がい者、刑務所から出所された方々なども含め、ゆるやかなサポートが
付いた住宅を提供できないか。大家さんの了解が得られれば、サポート付の住宅として、住宅を提供してもらう取組みを進めたいと
思っています。その場合、サブリース型もあるでしょうし、居住支援法人と連携するタイプもあると思います。あるいは、公営住宅を
活用する方法もあると思います。
家賃の話はなかなか難しいのですが、まずはこういう方向で住宅セーフティネット政策を進めて行きたいと思っています。
現在のセーフティネット登録住宅は、家賃が高いというご指摘もいただいています。現在のセーフティネット登録住宅は原則25㎡
以上としていますが、その面積基準を緩和する検討が必要ではないか、とも考えています。
持ち家に暮らす方から、そうした住宅に困っている方まで幅広く対応していこうと思っています。
吉村: これから日本では単身世帯が急増していくので、住宅とサービスをセットで提供するという考え方はより必要になってくる
のではないかと思っています。居住支援法人や居住支援協議会などが信頼できる法人として間に入ることで、サービス事業者と
住宅会社、自治体などがコンソーシアムを組んで事業を進めることも考えられるのではないでしょうか。生活保護などの公的扶助の
制度だけに頼るのではなく、誰もが安心して住める住宅を容易にみつけられること、また住み慣れた地域や住宅で長く暮らせる社会
が当たり前になればいいと思います。
●住宅団地の再生について
石坂:マンション政策も重要な課題ですが、郊外の分譲戸建団地も難しい課題と思っています。コミュニティづくりや空き家改修
の支援、規制緩和もやればいいと思いますが、公共でできることは限定的です。スーパーが撤退して買物難民になったり、通勤通学
需要がなくなって電車やバスも減便という話です。高齢化の進行により空き家も多発しています。これらが大きな課題となってきて
何とかしなきゃいけないと思っています。
池上:戸建てとマンションでは権利関係も異なるので一長一短ありますよね。戸建ては権利関係が完結しているので、自分の好きな
ように改築や売却ができますが、マンションは区分所有なのでそうはいかない。建物の老朽化と居住者の高齢化、管理会社の
人手不足や担当者の高齢化は「三つの老い」と言われていますし、いざ大規模修繕をしようと思っても賃貸に出されている住戸が
多く、管理運営の難しさがあります。また資金的に困難という場合も多く、マンションの方が深刻な問題もあります。
石坂:マンションは管理不全になると深刻な問題となります。一方、戸建ては沢山あってどこも手を付けられない。これだけ沢山
あると、皆さんが売りに出すとマーケットが成り立たなくなります。新たな需要に期待しなければいけないわけです。
●マンション政策検討会で示された方向性に基づくマンションの管理のあり方について
石坂:今マンションの第三者管理の検討ワーキング(注)を作って議論を始めています。今は家族の形が変わってきているだけで
なく、地域のコミュニティの形も変わり、消防団・自治会・PTAなどによるコミュニティの存続が危ぶまれています。マンション
管理組合の役員もグループコミュニティですが、それ自体も危ぶまれるケースはあると思います。私も、あまり人付き合いが得意な
方じゃないので、意外とコミュニティって難しくて苦手な人も多いと思うのです。皆さん働いていると曜日が合わない、理事会も
開けない、総会に来ないみたいなこともあると思うので、皆さんが第三者管理者方式で同意していただけるならプロに任せるという
のはあると思いますし、いろんな選択肢があっていいのではないかと思います。
マンションで揉め事やトラブルが起こったり、大規模修繕をやるとかやらないとかやっている間に伸び伸びになって、結果的に
タイミングを逃してマンションが悪い状態になってしまうことがあるのであれば、区分所有者にとって不利となるので、ちゃんと
管理してもらってマンションを常に良い状態にしておくということが大事です。いろいろなチェックの仕組みがいるのかも
知れませんが、マンションがきちんと管理されていればマンションの価値も保たれるのではないか。そうなって欲しいですよね。
注 外部専門家等の活用のあり方に関するワーキンググループ
池上:そういった第三者管理の実績が積み上がってくれば、管理に対する意識も変わってきますよね。自分のマンションは、管理が
しっかりしていて、履歴もきちんと残っているから、中古で売り出した時に他のマンションと比べて高く売れるはずだと。
石坂:はい、そう思います。目先の間取りとお値段だけじゃなくて、きちんとした管理履歴があるところを買った方がいいですよ、
ということで、管理計画認定制度もスタートしています。
修繕積立金もちゃんと積み立てているかどうか、大規模修繕もやったことがあれば、ちゃんとしているのだなということで、
そこは見て欲しいですよね。
池上:私どもは管理・リフォーム・仲介の事業を展開しています。しかし、各事業のデータはそれぞれの会社内でしか共有されて
おらず、あるマンションの中古物件が売り出された時、その取引の詳細や重要事項は仲介の会社には記録されていますが、管理や
リフォームの会社には伝わっていないという状況となっていました。
そこで私たちはDXも活用し、横断的にデータ利用できる仕組みを構築しているところです。これにより、各事業の連携が
スムーズになり、お客様により良いサービスを提供できるようになります。
石坂:いつも先進的な取り組みをしていただきありがとうございます。感謝しています。自分のマンションが他のマンションより
高く売れるとか、自分の資産の価値が高まる・維持されると思っていただければ、お客様からのニーズも高まるのでは
ないでしょうか。
吉村:住宅の戸籍簿、履歴書やカルテが一緒になったようなものですね。
●マンションの建替えの円滑化に向けた環境整備や事業手法について
石坂:現在、区分所有法制の見直しの検討が法務省の審議会で行われていて、今度の通常国会に区分所有法の改正案が提出される
予定です。不在の区分所有者の扱いとか、建替えなどの決議の割合の見直しが行われる見込みですが、区分所有法の見直しだけでは
まだ不十分で、やはり世の中の実態と合っていない面があると思うのですよね。ゴールは決してここではなくて、今後も社会の状況に
合わせて変えていかなきゃならないと思います。マンション管理適正化法とマンション建替円滑化法は3年前に改正しましたが、
区分所有法の改正法施行にあわせて、マンション法の再改正も見据えて、必要な検討を平行して進めていきます。
池上:私たちは日本全国でマンションの建替えを40数件お手伝いしていますが、マンションの建替えは以前に比べハードルが高く
なっています。昔は、余分な床面積を売って、お金を払わずに新しいマンションに引っ越せるような建替えが多かったのですが、
今はそういうケースはほとんどありません。多少の金銭負担してもいいと言う人はいますが、中には既存不適格という問題を抱えた
マンションもたくさんあります。これが原因で、古くなったマンションの建替えが進まない。昔から課題としてありますが、
既存不適格のマンションにも何らかの優遇措置は検討できないか。既得権という言葉が適切かどうかわかりませんが、それに近い
もので対応できないでしょうか。
石坂:近隣への影響がありますよね。近隣の人からみれば、既存不適格ということで特別扱いするのはけしからんという思いが
あると思います。総合設計制度などいろいろな規制緩和措置を用意していますが、日影規制などの形態規制の緩和が不十分だと
言う声もあるのは事実だと思います。
池上:今、建設しているマンションは設備も良くなりましたし、施工精度もいいので、適切に修繕や設備の更新をしていけば
100年持つと言われています。一方で、築年数が経過し、老朽化が進んでいるマンションを、救っていかないといけないと思って
います。
吉村:脱炭素社会、カーボンニュートラルの実現を目指すと言われている中で、建築物省エネ法が改正されたことなどもあり、
新築住宅の分野ではZEH住宅などが一層増えてくるのだと思いますが、既存住宅に関してはストックも多く、すべての住宅で
省エネ性能を向上させるというのは大きな困難を伴うと思うのです。
石坂:既存については、今年度の補正予算を含め、住宅の省エネリフォームへの支援を強化していますので商品化を進めて
いただくとありがたく思います。マンションは戸建てに比べればエネルギー消費量は少ないですが、やはり老朽化の問題ですよね。
建替えの制度も区分所有法が見直されますが、現実には、ほぼ100%に近い形で同意を取っていただいているのだと思うのです
よね。建替え決議の要件が緩和されたから「さぁいけるぞ」というよりは、緩和によって建替えに対する心のハードルが下がると
いうことの方が大きいのかも知れません。そういう意味では、建替えをするなら、応援はさせていただくということについては
これまでと変わらないですし、再開発という手法を使っていただければ、公共の応援もできるのだと思います。多様な出口、
建替えだけじゃなくて敷地売却という制度を作りましたけれども、さらに、全部リノベーションとか建物敷地売却とかいろいろ
出口を用意するのかなと思っていまして、建替えでなくてそのものを売ってしまうというのもあるかも知れませんね。
吉村:建替えを議論する時に、若年層や中年層であれば、居住期間も長くなるので、資産価値の維持・向上に関心があります。
ところが、高齢者層は「余生も短いのだから、このままでいい」と言う人もいて、世代間の意見対立が生じやすいということが
あります。例えば、建替えに消極的な高齢者には高齢者向けの安心住宅などに引っ越してもらうための何らかのインセンティブを
提示して住み替えを促す。そして、若年・中年層が中心になって建替えの計画をスピーディに進められるようにするなどの方法は
考えられないでしょうか。居住者同士の世代間の意見対立はかなり深刻な問題で、これを解決しないと合意形成は容易ではない
ように思います。
石坂:都市再生住宅みたいですね。密集市街地の整備と同様に、建替え事業の受け皿住宅として、従前居住者が低廉な家賃で入居
できる賃貸住宅をつくるみたいな。
吉村:建替え問題で議論が紛糾しているマンションの80代や90代の高齢者に対しては、サポート住宅や高齢者向けの住宅に
安心して移行できるような仕組みをつくって、その住み替え先を民間企業で用意する。そうした移行の仕組みや住み替え先の整備
に対して何らかの公的支援をしていただけるのであれば、建替え問題に揺れるマンション住民にいろいろな選択肢を提示すること
ができ、解決策を見出しやすくなるかもしれません。
石坂:都市再生住宅を作っていろんなマンションで使いまわしていくというのはあるかも。あちこちで建替えのプロジェクトが
あるのだったら、そういうものを用意しておいて、そこに移っていただく。ただ受け皿のボリュームの問題があるかも知れません。
あるいは、敷地売却制度とは違った建物敷地売却制度というのを新しく作って、建物と敷地をセットでみんなで売っちゃえばいい
じゃないというのはありますよね。
池上:小規模で老朽化しているマンションはなかなか単独で建替えが難しいケースが多いので、そんな手法や支援が拡充されて
いくことに期待したいです。
●マンションの木造化や長寿命化などの新たな取り組み
石坂:建替えが必要なマンションもありますが、大半のマンションは長持ちするものですから、リノベーションをするなど、
マンションをちょっと直す長寿命化工事をして、快適に長く暮らせるようにすることも進めていきたいと思います。
池上:これからは新築だけではなくて、古いものを活かしてリノベーションして性能を上げた住宅にも絶対的にニーズがあると
思っています。そういうことで建物を長寿命化していく。それは十分あると思います。マンションの建築時期によって、旧耐震基準の
ものは耐震補強しなければいけないという問題がありますし、当時の施工技術もありますので、築年数によってはもう建替えるしか
ないものもありますが、1980年代以降に建てられたマンションの多くは、設備も更新しやすくなっているので、リノベーションを
することにより住み続けていけるのではないかと思います。
そこで、当社では、昔、自社で施工したある企業の社宅を買い取り、フルリノベーションして全部で36戸の賃貸事業にする
プロジェクトを実施し、9月に竣工しました。
市川市本行徳に完成したこの賃貸マンションでは、CO₂の排出を実質ゼロ(運用時)とすることも実現しています。
石坂:本当に挑戦的な取り組みをしていただいて素晴らしいですよね。ありがとうございます。やって見せるというのは
大事ですよね。こんなに変わるのだ、こんなやり方があるのだと。先日は、浦安で最上階を木造にした賃貸マンションも
見せていただいたのですが、凄くチャレンジングな取り組みに驚きました。
池上:集合住宅を木造化するのは非常に難しかったのですが、当社では、2014年から木造化に取り組んできました。最初は試行錯誤しながら大規模マンションの共用棟の2階建ての木造化からスタートして実績を積み、いよいよ住棟も木造化しようということで、浦安市当代島で、最上階の住棟を国産材で木造化しました。これは、木造在来工法の戸建てを施工しているグループ会社の細田工務店が持っている技術を活用したものです。木は柔らかさや断熱性能に優れ、気候変動や山林の保全にもマッチした建材と思っているので、いつか集合住宅も木造で実現したいという思いがありました。現在は、目黒で7階建ての賃貸マンションの上4層を木造化するプロジェクトを進めています。
石坂:浦安を見させてもらって、確かに工務店のノウハウも併せ持ったということで、まるで戸建ての家の中にいるような居心地の良い空間でした。これまでのマンションの知見に加えて、木造ならではのコラボレーションというのでしょうか。中に入ってみると皆さん驚くのではないかと思います。
池上:木造の建物は、RC造と比べて上下階の音の問題が大きいです。RC造は重いから遮音性が良いのですが、木造は音が響きやすい。このため、多摩の技術研究所で木造専門の実験棟を作り、そこで床の遮音性能を繰り返し実施することにより、RC造と同等のレベルになるように開発しました。浦安のマンションは最上階だけ木造で、床はRC造だから音は気になりませんが、目黒のマンションは4層木造となるので、新しい床を使います。
また、木造のマンションは、RC造と比べて耐久性が低く評価されることも問題です。当社施工で住宅性能評価を取らない分譲マンションは皆無です。集合住宅を供給する以上は、木造でもRC造と同じ性能のものを供給する使命があると思っていますが、住宅棟を木造にすると住宅性能評価のランクが落ちてしまうのがネックです。
石坂:木造が評価をとりにくいということであれば、我々も検討しなければいけないですね。
今言っていただいたメンテナンスもしっかりやっていただいて、これまでのマンションの実績もございますし、その辺は我々の方で検討させていただければと思います。
そういう意味でいえば住宅性能表示制度が戸建て住宅やアパートしか想定していなかったのが理由かもしれませんね。マンションを想定したものにはなっていないということですね。これだけいろいろなことにチャレンジしていただいているのですから、我々もチャレンジしないといけないですよね。
●より良い住まい・住生活の実現に向けた住宅・マンション産業の取り組みへの期待
池上:最後に私どもへの期待についてお話いただけますでしょうか。
石坂:6月に多摩ニュータウンの御社のマンションミュージアムで、マンションの歴史を拝見し、これまでの我が国のマンションをリードしていただいたのだなと改めて思いました。 研修の施設も見ましたし、実際いろいろな機械とかスイッチとか操作をしてみて、こうして我々の暮らしは安全安心に支えられているのだなと。それがあってこその住まいなのだなと改めてありがたいと思った次第です。
また、新しいことにチャレンジしていただき、私どもも勉強させていただいています。 外壁やバルコニー手摺への太陽光発電設備の設置なんかも。そういうこと一つとっても革命的なことですよね。
今まではZEHとかマンションでは無理だと言われていたものも、技術革新でいろんなことが変わっていくと感じたところです。
池上・吉村:本日はありがとうございました。2024年もどうぞよろしくお願いいたします。
池上一夫(いけがみ・かずお)
1957(昭和32)年生まれ。1980年早稲田大学理工学部建築学科卒業、長谷川工務店(現長谷工コーポレーション)入社。2008年執行役員、2009年執行役員 設計部門エンジニアリング事業部長、2011年取締役執行役員、2014年取締役常務執行役員、2017年取締役専務執行役員、2020年4月より現職。
石坂 聡(いしざか・さとし)
1967(昭和42)年生まれ。1989年東京大学工学部都市工学科卒業、建設省入省。兵庫県庁、都市局、道路局、与野市役所(現さいたま市)、厚生労働省を経て2002年から住宅局で現在に至る。2018年住宅総合整備課長、2019年市街地建築課長、2020年住宅生産課長、2021年大臣官房審議官(住宅局担当)、2023年7月より現職。
吉村直子(よしむら・なおこ)
1967(昭和42)年生まれ。1992年奈良女子大学大学院家政学研究科住環境学専攻修了、長谷工コーポレーション入社。1994年長谷工総合研究所に出向。2019年長谷工総合研究所取締役主席研究員(現任)、2023年6月より現職。






