持続可能な集住を考える 第1回

防犯・防災の観点から

2024年03月29日 / 『CRI』2024年4月号掲載

CRI REPORT

目次

 昨年2023年は、関東大震災発生から100年という節目の年であった。首都圏に未曾有の被害をもたらしたこの関東大震災は、
その後の我が国の防災対策を考える出発点になったといわれている。現代の私たちは、常にこれらの大規模災害のリスクと
隣り合わせで生活を営んでいるが、日々の生活の中ではそのリスクを忘れがちである。

 都心部のマンションでは、賃貸や分譲といった所有形態に関わらず、隣に住んでいる人が誰なのかを知らないケースも少なくない。
また、住人の入れ替わりもたびたび起こるため、誰が住人で、誰がそうでないのかの区別がつかないことも少なくない。
そのような中で、もし災害が起こったらどのようになってしまうのだろうか。地震だけでなく、毎年のように起こっている異常気象で
何らかの被害を受けた時、日頃面識もない人と共助や自助の効果を発揮するのは難しい。

 本レポートでは2回にわたり、住人・住民が主体となって、「自助・共助」を最大限に生かしマンション運営をしている築20年を超える分譲マンションの事例を分析し、今後ほかのマンションでも応用できる取り組みを考察する。
また、これをきっかけに「集まって住むこと」の意味についても考えを深めたいと思う。

 第1回の本稿では、防犯・防災の観点から、第2回(次号)では、その他コミュニティの観点からそれぞれ考察する。

居住者が主体的にマンション運営を進める事例から考える 集まって住むこと │ 防犯・防災の観点から

●背景

 「ソフィアステイシア」(以下、ステイシア)は、2003年2月に竣工した、横須賀市内にある大規模マンションである。
このマンションが立地する「よこすか海辺ニュータウン」は、東京湾に面した公有水面埋立事業の埋立地で、大規模高層マンション、
神奈川県立保健福祉大学、横須賀商工会議所、大規模商業施設、企業・団体・協同組合、横須賀魚市場、横須賀東部漁業協同組合などが
進出し、横須賀市立うみかぜ公園や海辺つり公園なども整備されている。
 これら全域が標高2~3mの低平地であり、津波や高潮リスクの他、地震動の増幅、液状化、地盤沈下などの埋立地特有の
リスクを抱えているエリアである。

●仕組みづくり・組織化へとつづく最初の一歩は何だったのか?

 ステイシアでは、一斉入居から間もない頃に、自転車・バイクの盗難、車上荒らし、空巣などの被害が連続して起こった。
当時、近隣マンションでも同様の犯罪被害が多発しており、警察署には、住人同士がお互いに顔も名前もわからず、不審者が
敷地内に侵入しても、不法侵入者なのか見分けがつけられないことを指摘された。この一連の被害をきっかけに、「防犯」という
キーワードで、住人同士が団結を図った。その後、ソフィアステイシア管理組合(のちに法人化される)の設立総会が開催され、
第1期理事会が発足し、その諮問機関として防犯委員会及び防災委員会が設置された。

 まず、住人同士が顔と名前を憶えて挨拶ができる環境を整えるためブロック別に班編成をし、住民交流会を開催した。
その際に横須賀警察署による防犯講習会も企画し、犯罪被害事例、犯行手口、主な侵入ルートや被害防止策などを学んだ。
それと同時に、マンション敷地内では「あいさつ運動」や「声掛け運動」を開始した。防犯委員会は、持続的に防犯対策を
実施するために『防犯の手引き』を作成し、全戸配布を行った。

【POINT 1】
 入居初期段階で、住人同士が交流できるきっかけがあった。

【POINT 2】
 「防犯」という自分ごと化しやすいキーワードで一致団結し、行動を起こせば「自分や家族が安心して暮らすことができる」と
住人がイメージすることができて、行動に移せた。

●災害時の実害を想定した総合防災訓練

 ステイシアでは、想定される災害の内容を変えて毎年実践的な総合防災訓練を行っている。「災害から命を守る」という理念の下、
この場所で実際に発生しうる災害を想定し、その災害が起こった時マンション内で何が起きるのか、どのような被害が想定されるか
をシミュレーションできるような内容となっている。また、この総合防災訓練の実施要領は、毎回半年ほどの時間を費やして作成
される。その理由は、災害が発生してから被害軽減のために対処できることはそう多くはなく、災害発生前の備えと対策が、被害を
軽減させる上で重要だということを住人が理解しているからである。『住民共助の防災読本:ソフィアステイシア危機管理
マニュアル』の裏表紙に記載されている防災大原則には、「安全と安心はなんら努力もしない人たちに天から降ってくるものでは
ありません。安全と安心な暮らしは自ら努力して、皆で力を合わせてつかみ取るものです」と書かれている。

【POINT 3】
 この総合防災訓練は、具体的な危機に遭遇した場面を想定して、非常時に「死なない・大怪我を負わない」ための身体で覚える
実践的な訓練である。

●「生命重視」の理念が住人に浸透

 「命より大事な個人情報などない」という合言葉で、賃貸入居者を含む全世帯の96%が提出済みの居住者台帳をステイシア自治会
が管理している。この居住者台帳には、世帯ごと、個人ごとに、氏名、生年月日、血液型、診療履歴、既往症と残存障害、
かかりつけ病院や常用薬、禁忌薬、緊急連絡先、災害時帰宅困難者に該当するか否か等が記載されている。これにより独居高齢者
や災害時要援護者を自主防災会が把握し、要援護対象者ごとに近隣の避難支援者を複数名指名している。
 過去には、深夜に独居高齢者が重度の熱中症に罹り、自治会役員と救急隊の連携により救命された事例もある。

【POINT 4】
   極めて高い個人のプライバシー情報を収集できる背景には、ステイシア自治会や管理組合、役員等と住人との間で信頼関係が
成り立っているからである。

●感染症に対する備え

 横須賀という場所柄もあり、住人の中には、在日米海軍横須賀基地所属の軍人やアジア地域へ出張の多い民間企業の社員・
技術者等が多く住んでいる。
 2008年、南アジア地域を中心に流行した高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)が急拡大した際に、このウイルスが侵入した場合に
備え、『住民共助の防災読本:ソフィアステイシア危機管理マニュアル』を発刊し、全戸配布を行っている。
 また、この冊子配布に合わせて班別防災講習会を開催し、医療用マスク、アルコール消毒薬、アルコール除菌シートなどの備蓄と
感染症予防対策の啓発が行われた。
 2020年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しても、感染症対策チームが結成され、生活支援班(*1)
設置も行われた。生活支援班は、感染者が出た世帯の買物代行やゴミ出し代行を行い、感染者とその家族を自宅内隔離とすることで、
共同利用する場所の多いマンション内での二次感染を予防した。

【 POINT 5】
 予め様々なことを想定された上で、マニュアルを作成しているため、災害が起こった際に、住人一人ひとりが自ら考え行動する
ことができ初動が早い。

*1 「ソフィアステイシア自主防災会の組織編制とそれぞれの機能」の「生活支援班」参照

●地域との連携

 次号で詳しく取り上げるが、よこすか海辺ニュータウン地区には、ステイシアと同時期に開発された大規模高層マンションが
6物件ある。それぞれのマンションには、管理組合と自治会が存在し、その大規模高層マンション7団体(1,855世帯・約6,000人
居住)で「よこすか海辺ニュータウン連合自治会」を結成している。この連合自治会加盟のマンション自治会は、地区社会福祉
協議会の正会員でもある。そのほかに、まちづくり協議会、民生委員・児童委員協議会、PTA連絡協議会があり、それらすべての
発足にあたっては、ステイシアが発起人となり、会則の起草や会員募集、設立総会の開催等を先導してきた。

●ソフィアステイシアの特異性

●管理組合の理事会役員の選任は、多くのマンションでは、輪番制が採用されている。しかし、ステイシアでは、第1期理事会から
立候補制が採用され、運営されている。

●長年にわたり自治体のコンサルティング業務に携わっていたプロフェッショナルな住人が中心人物として存在し、その人物を
取り巻く人々も建築・設備の有資格者や消防職員、自衛官、看護師等の極めて専門性の高い人々が結集している。

●企画提案者が実施責任者であり、そこで起こった結果責任も背負う覚悟で取り組んでいる。

●管理組合や自治会の理事・監事、役員等の人数は約50人で、月間の拘束時間も長時間であるが、全てボランティアで成り立って
いる。

●管理組合や自治会の理事・監事、役員等は、輪番制ではないため、役員会が適性のある住人をみつけるとヘッドハンティングし、
次世代に継承している。

●「住民共助の防災読本:ソフィアステイシア危機管理マニュアル」 の中身

 マニュアルは、主に自然災害対策編、防火対策編、事件・事故・急病対策編、感染症対策編と4つのパートに分けられている。

 自然災害対策編では、活断層型地震の具体的事例やプレート境界型地震の具体的事例、気象災害など過去にどのような経緯で
災害が発生したのかが説明されている。その後、災害が起こる前にやるべき備え、災害が起こった時の初期対応等が詳細に記されて
いる。

 防火対策編では、専有住戸からの火災防止と出火時の対応、共用部での火災防止と出火時の対応、近隣で大規模な火災が発生した
時の対応等について記されている。

 事件・事故・急病対策編では、犯罪者を寄せ付けない「地域防犯力」を高めるための防犯まちづくりや子どもの通学路及び
下校後のあそび場周辺の見守り、海辺ニュータウン地区における交通危険箇所や高齢者等を狙った悪質商法の手口、孤独死・
熱中症の防止についてなど、多岐にわたる内容が記載されている。

 感染症対策編では、感染症とは何かの説明からはじまり、社会に与える影響や20世紀以降に発生したウイルス感染症、細菌感染症、寄生虫等感染症の内容と被害状況等が詳しく書かれている。また、感染予防の方法や感染時の対処方法も記載されている。

 このマニュアルは、2008年に発刊され、その後改訂が行われ現在に至る。

 以上のように、住人が「何のために」、「何をしなければいけないのか」ということが明確に記載されており、自分ごととしやすい内容となっている。

●ソフィアステイシア自主防災会の組織編成とそれぞれの機能

 ステイシアには、『住民共助の防災読本:ソフィアステイシア危機管理マニュアル』とは別に、よこすか海辺ニュータウン
ソフィアステイシア地区防災計画が策定されている。この地区防災計画の特徴は、周辺地域で過去に発生した、または今後
発生し得る自然災害を洗い出し、その災害での被害の最大値を予測し、①災害発生前に行うべきこと、②災害発生直後の行動、
③危機がいったん沈静化した後の行動などを誰が、何を、いつ行うべきかについて記述されている。

 ソフィアステイシア自主防災会の組織編成は、災害対策本部の傘下に次の10班が設置されている。

避難誘導班
災害対策本部と無線機を通じて常時情報共有を行い、災害発生直後の初動対応から在宅避難生活の維持までを予め班分けされた
班単位で実施する。

情報班
公的情報(気象庁や行政等)やマンション内の被害情報、近隣被害情報などを収集し、災害対策本部及び各避難誘導班長と情報の
共有を行う。また、マンション最上階から望遠鏡で津波監視を行い、潮位変化を通報する。

消火班
災害対策本部や避難誘導班から出火の通報を受け、初期消火を行うとともに消防署と連携をする。消火完了後は、設備復旧班に
合流する。

救助班
災害対策本部や避難誘導班から傷病者の発生通報を受け、救助に当たり傷病者を救護班に引き継ぐ。救助が全て完了後は、救護班に合流し、重症者は医療機関に搬送する。

救護班
マンション内の安全な場所に応急救護所を開設し、傷病者に必要な応急救護を行い、重症者は災害医療拠点病院に搬送する。
応急救護や看護が全て完了後は、衛生管理班に合流する。

設備復旧班
マンション内の建物・設備・共用空間等の被害状況を確認・点検し、危険除去及び応急復旧を行う。また、危険箇所への立ち入り
禁止措置を行う。この班は、マンションの復旧が概ね完了するまで体制を維持する。

警備班
災害発生日の日没前に、避難誘導班員の支援を得てパトロールチームを複数編成する。主な目的は、「被災地荒らし」の敷地内
侵入を防止することである。この班は、全電源・セキュリティシステムが完全に復旧するまでは警備体制を維持する。

生活支援班
災害発生後、6時間以内に編成し、高層階に居住する高齢者や災害弱者等の生活支援を実施する。帰宅困難者世帯の園児・児童
及び津波被災世帯の居住者を高層階の共用施設に開設する臨時避難所で保護し、給食・給水、災害用トイレ等の生活支援を行う。
マンションでの生活が概ね平時に戻るまでこの体制を維持する。また、中学生・高校生からなるジュニアレスキュー隊は生活支援班の傘下に入る。

衛生管理班
津波漂着がれき等の危険物除去や消毒を実施後、敷地内に災害用大型トイレ及びマンホールトイレを設置する。また、感染症防止の
観点から衛生管理を行う。この班は、担当任務を終えた他の班を吸収・合併し、概ね平時の生活に戻るまで体制を維持する。

給食給水班
災害発生後、6時間以内に受水タンク前に臨時給水所を開設し、応急給水活動を行う。また、津波漂着がれき等の除去及び
消毒完了後に、敷地内の芝生広場に共同炊事設備を設置する。
給食活動は、原則として芝生広場で行う。また、高層階の高齢者や災害弱者等に関しては、ジュニアレスキュー隊の支援を得て、
飲食物を自宅まで配達する。給食給水班は、概ね平時の生活に戻るまで体制を維持する。

 以上、10班と災害対策本部で、災害発生時に他の班と情報を共有し連携し合うことで、住人が自律的に行動できる組織を編成
している。また、これらは地区防災計画にも記載されている。

●他のマンションでも取り入れられる取り組み

 本稿で事例として取り上げたステイシアは、「専門家」の結集するマンションであるが、その取り組みは地道な努力で
成り立っている。明確な目標を掲げ、住人への丁寧な説明や情報共有を行い、住人の賛同と協力を得ながら進められている。

 入居当初に多発した不法侵入被害から住人の防犯意識が高まり、それがきっかけで始めた「あいさつ運動」等は、どこのマンション
でも容易に取り入れられることである。挨拶を交わすうちに、顔見知りになり、マンション内の困りごと等の話題が上がれば、
そこから次のステップへ進める可能性も出てくる。

 コミュニティは、作ろうと思って作れるものではない。だからといって、常に自然発生的に形成されるものでもない。
小さなきっかけを丁寧に育てることで相互の信頼関係が生まれ、いざというときに助け合える仲間となれる。

 ステイシアの取材を通してわかったことは、住人一人ひとりがお客様ではなく、当事者意識を持って具体的な行動に移すという
ことである。これは、防災だけに限った話ではなく「あいさつ」も同じである。

変化する生活スタイルと 新たなコミュニティ形成の必要性

 地域やマンションに、熱意と行動力を持った市民・住人ばかりが必ずいるとは限らない。また近年、生活スタイルや家族の形態は
急速に変化しており、2拠点・多拠点生活を謳歌する人々も少なからず存在する。少子高齢化社会が進展する中で、今後もより生活
スタイルや家族のあり方は変化していくだろう。そのような中で、マンション管理においても、これまでのように属人的な管理の
あり方だけしか選べない社会では、それらに対応することは難しくなるだろう。

 また、それぞれのマンションの置かれている状況は、築年数や立地、規模によっても大きく異なり、より多様な選択肢が必要に
なるだろう。

 比較的新しい多くのマンションでは、マンション管理組合の役員任期は、1~2年の輪番制が採用されている。この事実を
踏まえた上で、マンション開発事業者は鍵の引渡しを行う前に、また管理会社は毎年契約が巻きなおされる理事会等で、マンション
区分所有者に管理組合のあり方や防災の知識を伝えるサービスを作り出す必要があるのではないか。

 特に、マンション区分所有者には入居前の鍵の引渡し時に、他の住人とともに自らマンションを運営していかなければならない
立場であるということを認識してもらう必要がある。賃貸居住の時のように、マンション内での不具合や問題が発生すれば大家や
管理会社に連絡をすれば問題が解決するというわけではない。

 マンションの管理業務を外部専門家に委託する第三者管理方式もある。この方式を利用するメリットは、区分所有者の組合運営に
絡む負担が軽減されることや、専門家に任せることで適正な管理ができるという点などが挙げられている。一方で、管理費の増加や
住民交流の減少、外部専門家による利益相反行為等(*2)を注意点として指摘する声もある。これら留意事項に関しては、
国土交通省のワーキンググループで現在「外部専門家の活用ガイドライン」の改訂に向けた検討がなされている(*3)

 管理委託費用内のサービスだけを求める管理組合もあれば、そうではない組合もあるのではないか。つまり、従来の方式か、
第三者管理方式の2択ではなく、管理会社が組合運営を伴走し、必要な情報を提供する個別のオプションサービスが存在しても
よいのではないだろうか。管理会社は従来の管理委託費用内のサービス提供だけではなく、管理組合ごとに特化したオプション
サービスを提供することも大切ではないだろうか。そうすれば、それらを利用しながら防災対策やその他のコミュニティ形成、
他マンションとの連携についてもやってみたい管理組合はあるのではないか。

 筆者は昨年秋、ある大学院の学生たちと「昔のような地域の絆(コミュニティ)は復活するのか?」といった対話を行う機会が
あった。そこでの彼らの意見は、下記のようなものだった。

 “地域の絆を感じて育った感覚はなく、その必要性も感じていない。その地域の絆が復活するかどうかを問う前に、今後「地域」が今までのような形で存続できるのかということを問わなければならないのではないか。日本中で消えゆく地域が出てくる中で、
その消えゆく「地域」に残りたいと願う人びとと、その「地域」はもう終わりにして次の段階へ進みたいと考える人びととの間で
断裂が起こる。このような少し先の未来に起こりそうな事象に対して、今のような「地域」の形を存続できるのかどうかを
問わなければならないと感じている。

*2 国土交通省「今後のマンション政策のあり方に関する検討会とりまとめ 令和5年8月」
 外部専門家等の活用のあり方に関するワーキンググループ 第1回開催資料「資料4 管理業者が管理者となる管理形態の
現状等について」

*3 第5回(令和6年3月26日)で「外部専門家の活用ガイドライン」改訂案のとりまとめが行われる予定となっている。 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000141.html

参考文献
ソフィアステイシア20年史編集委員会(2023)
『よこすか海辺ニュータウン ソフィアステイシア20年史』

よこすか海辺ニュータウンソフィアステイシア自主防災会(2011年改訂版)
『住民共助の防災読本:ソフィアステイシア危機管理マニュアル』

一般社団法人マンション防災協会(MALCA)機関紙(2023/6/30第10号)『マンション防災の眼』
「地区防災計画」策定によるマンションの危機管理P21-26

今回インタビューした方
株式会社日本LCM総合研究所
代表取締役(防災士)
安部 俊一 氏
一般社団法人マンション防災協会副理事長
よこすか海辺ニュータウン地域運営協議会会長
「ソフィアステイシア」管理組合第1期、第2期理事長
「ソフィアステイシア」自治会第1~4期会長
元よこすか海辺ニュータウン連合自治会会長

ソフィアステイシア  物件概要
●所在地:神奈川県横須賀市平成町1-5-3
●最寄駅:京浜急行鉄道本線「県立大学駅」より徒歩8分
●構造規模:RC造、地上14階建、免震構造
●総戸数:309戸
●専有面積:71.73㎡~105.47㎡
●竣工:2003年2月

あとがき

 集まって住むということにおいても人びとの生活スタイルや意識・感覚は、捉え方が急速に変化してきている。この「地域」の
部分を「マンション」に置き換えても同じことがいえるのではないだろうか。そこに住む人の意識や感覚が変わり始めている現在、
今までの形にこだわる必要があるのか否かも含め、考え直す時期にきているのではないか。
 これまでのように、強い結束力で動かす方法のコミュニティしか選べないのではなく、個々人がきちんと知識を携え、平時は
ゆるいつながりで繋がったり、繋がらなかったりすることが許容されるような、またデジタルツールを活用したコミュニティの
あり方を模索する必要もあるだろう。実際に、第三者管理方式を採用しているマンションでは、そのような取り組みが出始めている。
集まって住むということの持続可能な方法を模索するために、マンション開発事業者や管理会社の果たす役割は大きい。もちろん、
その中心は区分所有者・住人であることには変わりはないが、彼らに知見を提供し、伴走し、自律を促すことも必要なのではない
だろうか。住生活総合事業者として、マンション開発業者や管理会社は、この点においてもより一層進化する可能性があるだろう。

                           (豊田可奈子)Kanako_Toyoda@haseko.co.jp