マンションと都市の防災・減災(その2)

〜災害対策を強化したマンションの取り組み〜

2024年10月31日 / 『CRI』2024年11月号掲載

CRI REPORT

目次

 南海トラフ地震や首都直下型地震等の巨大地震の発生や、地球温暖化に伴う気候変動の影響による大雨や暴風、川の氾濫や
土砂崩れといった災害が懸念されており、分譲マンションにおいてもそういった災害への対策が必要である。分譲マンションは、
築年数、建物の形状、立地等、特性や抱える悩みはそれぞれ異なるが、特性を捉え適切な対策を取ることにより、安全性が高まる
だけでなく、資産価値の向上にもつながる。

 水害を教訓にして防災性能を強化した川沿いのタワーマンション、合意形成の工夫により耐震改修に至った旧耐震のマンション、
耐震性のない集会室棟のみの部分建替えを実現した大規模団地、それぞれ特性が異なる分譲マンションが、どのようなプロセスを
経て、防災・減災の対策を講じていったのか。

 9月号の「マンションと都市の防災・減災」では、法や行政、民間による災害への対応やその経緯について全体像を記載したが、
本稿では、分譲マンションの災害対策の具体的な取り組みについて、3つの事例を特集する。

水害を教訓にして防災性能を強化したタワーマンション

●ブリリアタワー聖蹟桜ヶ丘ブルーミングレジデンスと防災

 多摩市最高層となる33階建て520戸、2022年竣工のタワーマンションである「ブリリアタワー聖蹟桜ヶ丘ブルーミング
レジデンス」は、駅の北側のショッピングセンターを経て、北側に多摩川が隣接する「多摩市聖蹟桜ヶ丘北地区土地区画整理事業」
区域内に立地する。スーパー堤防に準ずる盛土の上に免震構造を採用した災害に強いタワーマンションプロジェクトを進めていた
ところ、2019年の台風19号により、世田谷、川崎などの多摩川流域の一部で水害が発生したため、電気設備を地下から2階へ設置
するなど、対策を講じた計画に変更し、更に災害への対策を強化した。地震に対する備えに加えて、浸水対策について目を引く点が
大きく分けて三つある。

 一つ目は盛土。スーパー堤防に準じた1/30の傾斜を採用することで、一般の堤防に比べて決壊に強い堤防となる盛土を土地区画
整理事業と同時に実施している。

 二つ目は設置位置。水害に備えて、給水ポンプや受水槽は嵩上げして地上に設置し、電気室や非常用発電機など電気設備は
浸水リスクの低い2階に設置している。1、2階にはエントランスや駐輪場など共用施設などが入り、住戸はより安全な3階以上と
している。また、停電時には72時間対応の非常用発電機により、増圧ポンプで各階に給水ができ、非常用エレベーターも稼働する。

 三つ目は地域防災。多摩市との協定により指定緊急避難場所として、多摩市内の河川を対象に避難指示が発令された場合、
マンション2階の駐輪場を24時間有人管理の防災センターの警備員が開放し、地域住民が一時避難できる。また、広場状の公開空地
には、地域で共用できるかまどベンチやマンホールトイレといった防災備品を整備している。

●2019年台風19号による多摩川の水害とその後の対策

 2019年の台風19号により、多摩川流域のタワーマンションでは停電被害が発生するなど、一部で甚大な被害が発生した。
これを受けて本物件の事業主は「災害から逃げないこと」を前提に基本設計からやり直した。洪水ハザードマップにおける
最大浸水深が0.5m~3.0mであることを考慮して、前述の通り地下1階の電気室、非常用発電機などは2階に位置を変更した。
また、受水槽・給水ポンプは、地下1階から地上1階に変更したうえ周辺地盤より90cm嵩上げした。

 台風19号をきっかけに国土交通省・経済産業省は「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」を策定し、水害に対する
安全基準を提示したが、その中で本物件も先進的な事例として紹介されている。そして、2021年6月に国土交通省から技術的助言が
発出された。浸水リスクのある地域の住宅・老人ホーム等において、地階等に電気室を設けることが可能だが地上に設置する場合、
容積率の緩和許可が適用できることとなった。

 また、台風19号を受けて、国、東京都、神奈川県、多摩川流域の市区が連携し、社会経済被害の最小化を目指した「多摩川緊急
治水対策プロジェクト」が進められている。台風19号は災害をもたらしただけではなく、教訓と対策も残しマンションや周辺環境を
より安全に進化させたともいえる。

●エリアマネジメントと川の空間利用

 本物件と同じ区画整理事業区域内で建設中の17階建て分譲マンションである「ブリリア聖蹟桜ヶ丘ブルーミングテラス」との間に
位置する商業施設「サクテラスモール」が2023年12月開業した。以前は駅からの人の流れはショッピングセンターで止まっていたが、
ショッピングセンターを抜ける歩道橋が整備され、多摩川の河川敷まで人の流れができる歩行者回遊軸(親水軸)が完成した。
これにより、以前は本物件の敷地により分断されていた駅と多摩川の河川敷間のアクセスが容易になり、広大な水辺空間を気軽に
親しめる地域になった。また、河川敷へ下りられる階段やスロープ、芝生広場のほか、キッチンカーの停車スペース、歩行者と自転車の
動線分離による安全な歩行空間が整備され、周囲は無電柱化で開放的な空間となった。今では、若いファミリーや高校生カップルが
河川敷で談話していたり、小さい子供が自転車の練習をしていたりと、賑わいが生まれている。

 聖蹟桜ヶ丘では、2020年3月、多摩市が「聖蹟桜ヶ丘かわまちづくり計画」(※)を国土交通省に登録し、多摩川河川敷の有効活用の
検討が始まった。河川敷へのアクセス向上などのハードの整備のほか「せいせきカワマチ」と愛称をつけロゴマークを制定、

市民編集型地域雑誌「セイセキZINE」を発行、地域情報共有や意見交換の場として「聖蹟桜ヶ丘かわまちづくり協議会」を
設立、河川敷の利用ガイドラインを制定、社会実験や回遊イベントを実施した。

 2023年9月に事業主と電鉄会社、地元商店会連合会は、駅周辺と多摩川河川敷の有効活用を目的とした実務組織「一般社団法人
聖蹟桜ヶ丘エリアマネジメント」を設立。多摩川河川敷をはじめとする公共空間の活用や、地域の情報発信、コミュニティの場づくり等に取り組んでいる。

 今年の3月には多摩川河川敷のマルシェイベントで、飲食店、古着、古本、花、雑貨、アパレルショップが約40店舗出店し、
ワークショップのほか、映画の屋外上映や移動式のメリーゴーランド、ラッパーによるライブが開催された。
また、サクテラスモールに入るアウトドアフィットネスクラブにより、ヨガやピラティス、サップなどの多摩川を活かした過ごし方
が提案されている。

 こうした一連の取り組みが評価され、事業主の東京建物と東栄住宅が「日本不動産学会長賞」を受賞することとなった。
受賞理由は、聖蹟桜ヶ丘北地区における土地区画整理事業と分譲マンション等開発事業での「地域防災の向上」、ZEHや公開空地広場
の整備による「自然再興の促進」、エリアマネジメント設立等による「賑わい創出」の実現となっている。

※ 国土交通省の河川敷を有効活用する「かわまちづくり」という制度があり、水管理・国土保全局が、その地域ならではの
まちの価値を高める活動を支援している。地域の歴史や文化、人々の生活とのつながりなど、水辺にはその地域特有の資源が
眠っており、水辺はその使い方によって新たな価値を生み出す可能性を秘めていると捉え、現在、全国264ヵ所まで広がっている。

ブリリアタワー聖蹟桜ヶ丘ブルーミングレジデンス  物件概要
所在地:東京都多摩市関戸1丁目
●最寄駅:京王線「聖蹟桜ヶ丘」駅より徒歩5分
構造規模:RC造、33階
●総戸数:520戸
●竣工:2022年9月
事業主:東京建物、東栄住宅、京王電鉄、伊藤忠都市開発

工法の変更と補償の仕組みで合意形成に至った耐震改修

●古河松原マンションの初期の取り組み

 世田谷区にある「古河松原マンション」(14階148戸)は、1971年竣工の旧耐震基準の高層建築物である。1999年からの
大規模修繕の一環で簡易的に耐震診断を行った結果、マンションの中層階より下の部分で耐震性を満たさないことが判明し、
2001年に1階部分に鉄骨ブレースを入れる耐震改修工事を応急的に実施した。

●条例施行と2回目の耐震診断

 2011年4月、東京都は震災時の救助活動や復興時の物流を担う道路を「特定緊急輸送道路」に指定し、2012年4月にその沿道建築物
の耐震診断の実施を義務化する条例(※)を施行、耐震診断や耐震改修などへの助成制度も設けた。本物件に面した甲州街道が「特定緊急輸送道路」に指定され耐震診断が義務化されたことから、東日本大震災による耐震化への住民の意識の高まりもあり、
2012年に2回目の耐震診断を実施。助成金を活用し精密診断を実施し、耐震補強が必要と判明した。
しかし、専門家からは、建物の外側だけで補強する方法は難しく、「住戸内に影響を及ぼす補強方法しかない」と結論づけられ、
耐震改修について区分所有者の合意が得られず検討は停滞した。2013年に耐震改修は保留のまま、大規模修繕を実施することと
なった。

※ 「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」は、緊急輸送道路が震災時の救急救命活動の生命線となり、
復旧・復興の大動脈の役割を担うが、緊急輸送道路の沿道建築物のうち1棟でも倒壊し道路を閉塞してしまうと、緊急輸送道路の
通行機能を失わせ、広範囲に大きな影響を与えることから、沿道の耐震化を推進するため制定された。旧耐震建築物の耐震診断の
結果、耐震性能を満たしていない場合には、耐震改修等の実施に努め、耐震診断や改修を実施した際は、その内容を知事に報告する
こととなるが、違反した場合は、建物名称の公表、罰金、過料がある。

●3回目の耐震診断と具体化

 2016年9月に管理組合は、「東京都防災・建築まちづくりセンター」に相談し、専門家を無償で派遣する「耐震化アドバイザー制度」
を活用し、耐震化アドバイザーが紹介された。

 理事会と耐震改修委員会は「特定の住戸内に影響を及ぼす補強案では合意が得られないので、それ以外の方法」すなわち建物の
外側で補強する提案をアドバイザーに要望したが、本物件は、①雁行している建物形状から補強材も雁行させることは困難なこと、
②SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造の躯体となるため補強材との接合工事が溶接を伴う大掛かりになること、③PC(プレキャスト
コンクリート)板の耐力を見込めない外壁となるため補強材の接合が困難といった課題があり、要望の実現が困難であった。

 しかし、アドバイザーは、3回目の耐震診断を実施して前回の診断を見直し、それらの課題を解決する「建物の外側にアウト
フレームの構造体を取り付けて補強する」案を提案した。地盤面から15mの深さまで杭を10本打ち、補強材となるSRC造の
アウトフレームと鉄骨造のブレース(筋交い型の補強材)を取り付けるものである。理事会と耐震改修委員会はその案の採用を
検討する方針を固めた。

●補償の仕組みづくりと合意形成

 アドバイザーの提案した工法では、建物の外側に取り付けたアウトフレーム構造体が室内から見える住戸、つまり景観が変わる
住戸が11戸あると判明。耐震改修工事の実施そのものに対する反対はなかったが、該当住戸からは圧迫感や防犯上の問題、日陰に
なるといった不安や心配、不公平感が出てきた。室内からの見え方が分かるCG画像や建物全体が分かる模型にて、見え方の変化に
納得してもらう一方、資産価値がどう変動するのか、専門家の助言や国土交通省のガイドラインを参考にし、個別に面談して内容を
詰めていき、どのような補償がなしえるか、理事会と耐震改修委員会は検討を重ねた。
 また、住みながらの工事のため、バルコニーや躯体のはつり工事など工事中の騒音や振動の影響があると予想される住戸が30戸あった。不動産鑑定士などの専門家の試算に、精神的な負担や騒音・振動がひどいときにはホテルに仮住まいができる費用なども
考慮した補償額を個別に提示、交渉し歩み寄っていった。
 補償金については、当該住戸以外の区分所有者が面積換算で平等に負担、「特別修繕積立金」として10年かけて積み立てるスキーム
が作られた。
 こうして、2018年12月、臨時総会で100%全員の合意を得て耐震改修工事の実施が決議された。

●工事の実施と成果

 本物件の耐震改修工事は、2019年3月に着工し、翌2020年の2月に完成したが、工事後のアンケート調査では「耐震補強が
できたことで安心して暮らせる」「思っていたほどの圧迫感がない」といった高評価の回答が多かった。
 建物形状の雁行という難題を解決しながらも見た目に配慮した耐震改修をすることで、耐震改修前に比べて若い家族の入居が
増加した。このことは、合意形成に加え資産価値の向上に寄与することとなった。
 また、耐震改修には合意形成が最も重要となるが、眺望や工事など影響の大きい住戸には、金銭的に補償する仕組みを形成し、
影響について模型やCGなどを用いて丁寧に説明したことが合意形成に結びつき、本件の成功の要因となった。不公平感や不満の
解消が合意形成への近道で、金銭的な補償も一つの手段として有効といえる。

古河松原マンション  物件概要
所在地:東京都世田谷区松原3丁目
●最寄駅:京王線「下高井戸」駅より徒歩3分
構造規模:SRC造、14階
●総戸数:148戸
●竣工:1971年3月
●耐震改修施工:長谷工コーポレーション
●耐震改修竣工:2020年2月

耐震性のない建物の部分建替えを実現した大規模団地

●洋光台南第一住宅の将来像の検討

 1971年竣工の「洋光台南第一住宅」は、5階建、39棟、総戸数696戸の日本住宅公団が分譲した大規模団地である。隣には
「洋光台南第二住宅」34棟、797戸がある。駅から近い立地ながら、日当たりがよいのが印象的で、広く安全な歩道空間があり、
公園が多いので子育てしやすく、少し足を延ばせば海もあり自然環境がよい。敷地の中の中央広場に高さ約40mの給水塔があり、
その基壇部に集会所・管理事務所が付随していた。旧集会所は2階建てで土足禁止、高齢者には階段が危険で使い勝手が悪かった。

 団地の将来像、グランドデザインを検討する中、2016年の「団地の再生を考えるアンケート報告書」において、7割が『ずっと
住み続けていたい』としているが、『建物の将来的な建替え』については5割以上が反対したため、管理組合は建替えが困難と
結論付け、建物の長寿命化が本団地の方針となった。

●給水塔解体と集会所建替えの合意形成

 本件は旧耐震マンションであることから、2000年に横浜市の耐震診断を受けたところ、ピロティのある住宅棟は、耐震性に
問題があったため、市の助成制度を活用し耐震補強を実施したものの、それ以外の住宅棟は、柱と梁の代わりに耐力壁で建物の
荷重を支える壁式構造であったこともあり、図面診断とコア抜きもしたが問題がないとされた。

 ところが、2017年にあらためて調査を行ったところ、集会所と給水塔の耐震性不足が判明、大地震による倒壊の危険性が明らかに
なった。2018年2月の臨時総会で解体を決議、予てから集会所の課題を解消しもっと活用してコミュニティを活性化したいという
流れもあり、「解体して建て替えるなら、徹底的にしっかりしたものを作ろう」という意思決定がなされた。様々な人の意見を
聞いて議論し、理想の集会所を検討する中、デザインや機能にこだわり木造化も取り入れられ、集会所の建替えは検討の俎上に
載ったものの、集会所の設置場所が問題となった。給水塔は基礎が大きく撤去が難しいので、元の場所ではなく中央広場の北側に
集会所を建てる案が作成され、目の前に建つ住宅棟の住民の強い反対があったが、2019年6月の通常総会ではその案で決議された。

 しかし、管理組合の理事会内で議論となり、再検討したところ、別の工法により現実的な費用で基礎撤去が可能となることが
判明し、元々集会所のあった位置に建築する変更案を2020年2月の臨時総会で再決議した。理事会と外部専門家で構成する
審査委員会を設置、設計・施工の一括提案を受け付けるデザインビルド方式を採用、最高評価を得た設計者と施工業者のチームを
発注先として選定、2020年9月に着工した。竣工したのは2021年3月と、団地が竣工した1971年3月から、ちょうど50年の節目と
なった。

●建替え後の木造集会所

 完成した集会所は、連続折れ屋根と浮屋根によるリズミカルで複雑な形状で、延べ床444㎡の木造平屋建て。出入口は9ヵ所、
中央のフリースペースを囲むように11の小さな部屋が隙間なく並べられ、可動式の引き戸で仕切り用途に応じて自由な利用が
できる。団地内の防災拠点として活用するため、学校施設等と同水準の「耐震等級2」とし、床を二重構造として、床から温風・
冷風を送る「床放射冷暖房システム」も採用している。漫画や書籍を揃えたコーナーや小上がり、飲食を伴う懇親会等に利用できる
スペースなど多様な空間があり、コミュニティ形成に活用されている。団地のシンボルは、給水塔から防災拠点となる木造集会所へ
生まれ変わった。

 そして、「洋光台南第一住宅集会所・管理事務所」は、2021年には「令和三年度 木材利用優良施設コンクール」で「優秀賞」を
受賞、2022年には「ウッドデザイン賞 2022」を受賞した。
 2024年には、隣の「洋光台南第二住宅」と協同で大規模団地の再生に向けた検討を進めており、国土交通省の「マンションストック
長寿命化等モデル事業」の先導的再生モデルタイプ(計画支援)として採択された。

 団地の部分建替えは、震災により団地の一部の棟のみが損傷したケースを除いて、全国的にもめずらしい。部分建替えであれば、
全棟を建て替えなくても耐震性に問題のある一部のみを建て替えることで、その他は長寿命化を選択できる。本件は、住宅棟ではなく
集会所ではあるが、一部建替えのモデルケースといえる。また、カーボンニュートラルの実現に向け木造化が注目されており、木造の
共用棟は、新築分譲マンションにおいてはみられるが、築50年の団地においては非常に先進的な取り組みといえる。

洋光台南第一住宅  物件概要
●所在地:神奈川県横浜市磯子区洋光台5丁目
●最寄駅:JR根岸線「洋光台」駅より徒歩5分
●構造規模:RC造、5階
●総戸数:696戸
●竣工:1971年3月
●集会室 施工:ナイス
●集会室 設計:スタジオ・クハラ・ヤギ
●集会室 竣工:2021年3月

まとめ

 災害の多い日本列島に住む限り、被災の可能性からは逃れられない。しかし、十分に対策が講じられたマンションに住むことは、
それ自体が防災となる。
 川に近いマンションであれば、水害に対する備えが必要であるが、日常的には広い河川空間を活用することで、水辺や緑の豊かな
自然環境を享受することができる。築年数が経過したマンションでも、様々な工夫によって、マンションの安全性を向上すると共に、
長寿命化の道を開き全体の資産性を高めることができる。
 このように、マンションは、状況に合わせて適切な防災対策をすることで、災害に強い安全・安心な住宅にすることができ、
その地域の価値を高めることができる。3つの事例が示しているように、これらの防災対策がコミュニティ形成に及ぶこともあり、
コミュニティ形成が防災・減災・レジリエンスへとつながっていくこともある。
 都市における災害の被害は、点ではなく面となり大規模になることも考えられる。マンションが、地域の防災インフラとしての
機能を持つことになれば、都市の災害被害の最小化に貢献できる。そういった観点からも、マンションの防災対策は重要で、災害時の
マンションの役割は大きいものと考える。

(佐藤貴之)Takayuki_Sato@haseko.co.jp