首都圏・近畿圏 分譲マンション市場動向
2026年08月07日 / 『CRI』2026年8月号掲載
目次
首都圏市場の総括
供給の小規模化が継続 新規供給戸数は前年同期比0.8%減少
首都圏における新規供給戸数は646件7,989戸であった。前年同期(662件8,053戸)に対し、新規供給件数は2.4%減少、新規供給戸数は0.8%減(図表1)。
10戸未満が構成比65.6%と、前年同期(65.9%)に引き続き高い比率となった。1回当たりの供給戸数の平均値は12.4戸と、小規模供給が続いている。
第1期発売開始物件は91件2,599戸、1回当たりの供給戸数の平均値は28.6戸となり、前年同期(83件2,642戸)と比べ物件数は増加したものの、供給戸数ならびに1回当たりの供給戸数の平均値は減少した(図表2)。
都内23区で前年同期比減 一方、都下・神奈川・千葉では同比増
地域別の供給状況をみると、前年同期を上回ったのは都下、川崎市、その他神奈川、さいたま市、その他千葉であった。一方、都内23区では新規供給戸数、構成比ともに前年同期を下回り、新規供給戸数は2,684戸、構成比33.6%(前年同期2,964戸・36.8%)にとどまった。山手エリアの減少幅が大きかった。一方、下町エリアでは新規供給戸数は微減となったものの、第1期発売開始物件の供給戸数は20件454戸と、前年同期の14件242戸を大きく上回り、地域別で最多となった。
都下では、第1期発売開始物件が前年同期の18件431戸から10件260戸へと減少したものの、2025年末に第1期発売を開始した複数の大規模物件の継続新規供給が、新規供給戸数の増加を後押しした。
また、神奈川県および千葉県では大規模超高層物件の供給が寄与し、新規供給戸数を押し上げた(図表3)。
都内23区以外の地域で大規模超高層物件の構成比が拡大
総戸数200戸以上の大規模物件による新規供給戸数は4,035戸となり、前年同期(3,111戸)を上回った。新規供給戸数全体に占める構成比も50.5%と、前年同期の38.6%から大きく拡大している。
さらに、総戸数200戸以上かつ20階以上の大規模超高層物件による新規供給戸数は2,184戸となり、前年同期(1,689戸)を上回ったほか、全体に占める構成比も27.3%と前年同期を大きく上回った(図表4)。
こうした大規模超高層物件の供給増加は都内23区以外で顕著にみられ、特に神奈川県ではその構成比は前年同期5.9%から22.4%へ、千葉県では同比25.5%から48.1%へと大幅に拡大した。これらのエリアを中心とした大規模超高層物件の供給拡大が、平均価格上昇の一因となっている。
大規模超高層物件の構成比拡大を背景に分譲単価・平均価格ともに上昇
首都圏全体の分譲単価は前年比8.8%上昇の1,514千円/㎡、平均価格は同比10.4%上昇の1億135万円。大規模超高層物件の構成比が拡大した影響もあり、平均価格・分譲単価ともに前年を上回った。
地域別に商品内容をみると、都内23区の分譲単価は前年比5.5%上昇の2,226千円/㎡、平均面積は64.02㎡で同比0.8%縮小し、平均価格は同比4.7%上昇の1億4,249万円となった。
都内23区を除く地域においては、神奈川県、千葉県で新規供給された大規模超高層物件の影響を受け、分譲単価は前年比16.1%上昇の1,149千円/㎡、平均面積は68.45㎡で前年比2.5%拡大、平均価格は同比19.0%上昇の7,864万円となった(図表5)(図表6)。
全体の新規供給戸数が絞り込まれる中、各地域では駅に近い大規模超高層再開発物件など、価格面でも突出した物件が売り出されることによって、平均価格を押し上げる要因となっている。一方で、新規供給戸数を価格帯別にみると、平均価格から受ける印象とは異なる状況がみられる。超高層物件を除く19階以下の住戸のうち、埼玉県および千葉県では、6,000万円以下の住戸が全体の60%前後を占め、その他神奈川においても6,000万円以下の住戸は40%程度を占めている(図表7)。
2026年上半期においても4,000万円台から5,000万円台の手の届きやすい価格帯の住戸は一定数供給されている。
時間をかけて販売する姿勢のもと、分譲中戸数は増加
首都圏では初月販売率は64.8%で前年同期(66.6%)を下回り、3年連続で70%を下回った。
2026年6月末の分譲中戸数は6,389戸で2025年6月末より363戸増加した。完成在庫は3,983戸で2025年6月末より462戸増加し、分譲中戸数は3年連続、完成在庫は2年連続で前年同月末を上回った(図表8)。
2026年上半期は供給の小分け化・小規模化が進む中、初月販売率も低下傾向にある。近年、初月販売率や竣工までの進捗率を従来ほど重視しない販売姿勢の強まりもうかがえる。市場の価格上昇や原価上昇に見合った価格設定において最適な販売時期を見極め、時間をかける供給施策となっているとみられ、供給の小分け化ならびに販売期間の長期化、第1期発売開始物件においては、着工から発売までの期間の長期化、または発売開始から竣工までの短期化などの傾向につながっている可能性がある。
定期借地権マンション新規供給戸数は増加
(株)不動産経済研究所によると、本誌CRIの集計対象外である定期借地権マンションの新規供給戸数は886戸で、前年同期(634戸)を上回った。所有権マンションの新規供給戸数と合わせると首都圏における分譲マンション市場全体での新規供給戸数は8,875戸となり、前年同期(8,687戸)を2.2%上回った。首都圏での価格上昇などの影響を受け、定期借地権マンションの新規供給戸数は増加傾向にあるとみられる。
また、北関東(茨城県・栃木県・群馬県)では2026年は6月末現在、茨城県や群馬県で大規模物件の第1期発売が開始されており、2026年年間では前年(1,132戸(株)不動産経済研究所2025年全国マンション市場動向より)を上回る新規供給戸数となる可能性がある。
近畿圏市場の総括
新規供給戸数は7,329戸 前年同期比を3年連続で上回る
近畿圏における新規供給戸数は612件7,329戸。前年同期(551件7,063戸)に対し、新規供給件数は11.1%増加、新規供給戸数は3.8%増加した(図表9)。
うちワンルームマンションは14件1,489戸で、全体に占める構成比は20.3%となり、前年同期(26件1,971戸、構成比27.9%)を戸数・構成比ともに下回った(図表10)。
ワンルームマンションを除くと598件5,840戸で、前年同期(525件5,092戸)を上回っている。
1回当たりの供給規模別の供給状況をみると、10戸未満の構成比は74.9%で、前年同期(70.1%)を上回り高水準となった。1回当たりの供給戸数の平均値は12.0戸と、小規模供給の傾向が継続している。第1期発売開始物件は87件4,199戸で、前年同期(100件4,261戸)を件数・戸数ともに下回った(図表11)。
総戸数200戸以上の大規模物件による新規供給戸数は1,736戸、前年同期(1,501戸)を上回った。全体に占める構成比も23.7%で、前年同期(21.3%)を上回った。さらに、大規模超高層物件は841戸となり、前年同期(612戸)を上回ったほか、全体に占める構成比も、11.5%と前年同期(8.7%)を上回った(図表12)。
大阪市・北摂・東大阪・南大阪・ 一部外周地域で前年同期を上回る
地域別の供給状況をみると、主要地域では大阪市・北摂・東大阪・南大阪の新規供給戸数が前年同期を上回った。特に東大阪では、大規模物件を含む複数の第1期発売開始物件が寄与し、前年同期比79.1%増と大きく上回った。
大阪市の新規供給戸数は前年同期比15.5%増の2,773戸。ワンルームマンションを除く新規供給戸数も1,446戸と、前年同期(1,263戸)を上回った。
外周地域では、その他兵庫において加古川市で複数の第1期発売開始物件が供給されたことから、新規供給戸数は前年同期を大きく上回った(図表13)。
分譲単価は上昇するも平均面積縮小で平均価格は低下
近畿圏では、ワンルームマンションを除くと、分譲単価は前年比2.2%上昇の978千円/㎡。平均面積は同比4.3%縮小の63.34㎡、平均価格は同比2.2%低下し、6,193万円となった。単価上昇に対応して住戸面積を縮小し、価格を抑制する動きがみられ、特に大阪市、北摂、京都市、滋賀県で平均面積が縮小し、平均価格も前年を下回った(図表14)(図表15)。
1LDK・2LDKの供給比率が上昇しており、大阪市では前年46.3%→51.6%、北摂で同21.5%→29.5%、京都市で同34.7%→48.6%、滋賀県で同17.7%→33.0%となった。
なお、ワンルームマンションを含む近畿圏全体の分譲単価は前年比2.8%上昇の980千円/㎡。平均面積は同比0.5%縮小の55.62㎡、平均価格は同比2.3%上昇の5,453万円となった。
時間をかけて販売する姿勢のもと、分譲中戸数は増加
近畿圏全体の初月販売率は71.7%で前年同期(77.1%)から5.4ポイント低下した。ワンルームマンションを除くと69.5%となり、前年同期(72.5%)から3.0ポイント低下した。
近畿圏全体の2026年6月末の分譲中戸数は3,245戸で2025年6月末より697戸増加、完成在庫は1,622戸で2025年6月末より323戸増加し、いずれも4年ぶりに前年同月末を上回った(図表16)。
首都圏と同様に供給の小分け化・小規模化が進む中、初月販売率も低下傾向にある。近年は初月販売率や竣工までの進捗率を従来ほど重視しない販売姿勢の強まりがみられ、市場の価格上昇や原価上昇に見合った価格設定のもと、最適な販売時期を見極める供給施策となっているとみられる。そうした供給施策の変化が、供給の小分け化や販売期間の長期化につながっている可能性がある。
定期借地権マンション新規供給戸数は前年同期を上回る
(株)不動産経済研究所によると、本誌CRIで集計対象外としている定期借地権マンションの供給戸数は487戸で、前年同期(308戸)を上回った。所有権マンションの新規供給戸数と合わせると近畿圏における分譲マンション市場全体での新規供給戸数は7,816戸となり、前年同期(7,371戸)から6.0%増となった。近畿圏における定期借地権マンションは、大阪市をはじめ、高利便性立地を中心に供給が行われている。
〈2026年下半期の見通し〉
分譲マンションの着工動向と供給材料の見通し
2026年1~5月の分譲マンション着工戸数は、首都圏で1万8,161戸、前年同期比5.7%減、近畿圏では7,429戸で同比24.0%減だった。
首都圏では東京都で前年同期比40.3%減少。近畿圏においては、大阪府で同比36.7%減少(図表17)(図表18)。
ただし、昨今は販売開始時期の後ろ倒しが進んでいることから、足元の着工戸数減少が直ちに2026年下半期の供給戸数に与える影響は限定的と考えられる。
2026年の新規供給については、2024年・2025年着工分が中心になると考えられる。両年着工分のうち、発売済みプロジェクトの未供給戸数は首都圏で約1万戸。同様に近畿圏では約6,000戸。未発売プロジェクトは、首都圏ではワンルームマンションと推定される戸数を除いて約5万4,000戸程度、近畿圏ではワンルームマンションを合わせ約2万2,000戸程度の規模となる見通し。以上から、2026年下半期の分譲マンションの供給材料(定期借地権マンションを含む)は、首都圏では約6万4,000戸、近畿圏では2万8,000戸存在すると推察する。
下半期の首都圏は1万4,000戸台、近畿圏は9,000戸前後と見込む
首都圏の2026年下半期見通しに関しては、都内23区、埼玉県などで大規模物件の販売開始が予定されている。一方で、これまでみてきた価格上昇下における供給施策の傾向などもあり、供給拡大は限定的となる見通しである。年間では年初予測2万3,500戸としていたが、上半期実績が想定を下回ったこともあり、年間予測を2万2,500戸へ下方修正する。2026年下半期の新規供給戸数は前年同期をやや上回る1万4,000戸台と見込む(図表19)。
近畿圏の2026年下半期に関しては、主要地域および外周地域ともに大規模物件の供給が複数予定されている。一方で、2025年の新規供給戸数を押し上げたワンルームマンションについては、2024年および2025年の着工戸数が抑制的であったことから、2026年の供給戸数は前年を下回る見通しである。その結果、近畿圏全体では前年下半期を下回る供給水準になると予測した。
よって、2026年下半期の新規供給戸数は9,000戸前後と予測した。これは前年下半期を1,000戸程度下回る水準である。年間では年初予測通り16,000戸と見込んだ(図表20)。
販売状況の見通し
首都圏・近畿圏ともに初月販売率は前年を下回る水準となったものの、駅近や都心部など利便性の高い立地を中心に販売は引き続き底堅く推移している。2026年下半期においても、同様の傾向となると考えられる(図表21)(図表22)。
また、物件価格の上昇や住宅ローン金利の先高観を背景に、購入を前倒しする意向の高まりがみられる一方で、住宅取得に伴う負担増への警戒感から、物件比較や検討期間の長期化が進んでいる。他方、供給側に関しても、価格上昇を背景に時間をかけて販売する姿勢を強めており、市場全体としては販売の長期化傾向も続く可能性が高い。
こうした中、竣工後も販売が継続される物件は今後も一定程度増加するものとみられる。竣工後販売物件については、購入検討者が実物を確認したうえで購入判断を行えることに加え、契約から入居までの期間が短いことから、金利や価格変動に関する不確実性を抑えやすいという特徴がある。こうした点は、住宅取得を検討する層の安心感や納得感の向上につながる側面もあると考えられる。





















