コンパクトなマンションでも快適に暮らすには? “スペパ”発想の設計と住まい方

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――都市部を中心にマンション価格や家賃の高騰が続いています。予算を抑えつつ利便性の高いエリアに住みたい共働き世帯や単身世帯にとって、好立地に立つスペースパフォーマンスの良い物件、いわゆる“スペパ”の高いマンションは現実的な選択肢になり得ると思いますが、実際のところ、都市部では「スペースの限られたマンション」が増えているのでしょうか?

 

秋山行雄さん(以下、秋山):そうですね。特に、土地面積が限られ、価格も高騰している都市部では、専有面積の限られたマンションが増加傾向にあると考えられます。コンパクトな住居は「駅近など利便性の高い好立地に‬住みたい、でも予算は抑えたい」というニーズに応えられるものですし、少人数世帯や共働き世帯の増加によって、「広い住居ではなく、掃除等の家事負担が軽減されるコンパク‬トな空間」をあえて望む傾向も強くなっている印象です。また、インテリアの観点では、家具や家電製品の小型化、多機能化により、限られた空間でも快適に暮らせるようになってきていると感じます。‬

オープンハウスへの取材記事の画像

▲秋山行雄さん。オープンハウス・ディベロップメント マンション開発事業部 首都圏プロジェクト推進部 部長※所属・肩書きは取材当時(2025年12月)のもの

――こうした傾向を踏まえ、オープンハウスグループとしてコンパクトなマンションの開発に注力する動きなどはありますか?

 

秋山:当社としてコンパクトを特別に推すような動きはありません。それよりもオープンハウスグループがこだわっているのは、やはり「好立地」。当社のお客さまの場合は、まずは立地重視で「この場所に住みたい」が優先順位の上位にあり、結果的に広さを少しだけ妥協する形でコンパクトを選ぶ方が多いと認識しています。

 

 

――確かに、少人数の世帯であればそこまでの広さは不要かもしれません。それよりも好立地による利便性や資産性をとるのは、合理的な判断と言えそうです。

 

秋山:おっしゃる通り、合理的な考え方をされる方が多いですね。ちなみに、2025年に首都圏で当社が供給したマンションは平均で約54m2。間取りは2LDKが最も多く、全体の半数ほどとなっています。当社として「コンパクト」の定義があるわけではありませんが、社内ではこの平均を下回る30m2~40m2の1LDK~2LDK程度がコンパクトという認識ですね。また、最近では60m2の3LDK、40m2台の2LDKという需要が多いと感じてます。

 

 

――限られた面積でも「過不足ない暮らし」を実現するための、間取りや設計のポイントがあれば教えてください。

 

秋山:まず、空間設計のポイントは、廊下などの動線部分をなるべくコンパクトに計画すること。また、階段下や天井付近に収納を設け‬るなど、デッドスペースをうまく活用することが挙げられます。さらに、収納付きのベッドや、天板を広げることでサイズ調整可能な伸長式のバタフライテーブルなど、‬フレキシブルに利用できる家具を採用し、空間を有効活用することも意識したいところです。

オープンハウスへの取材記事の画像

▲お客さまがコスト面に慎重になる場合も、マンション全体の統一性と、満足度やその後の暮らしなども考慮し、安価な建具などへの変更を提案することはほとんどないという

もう一つ、「住まい方」という視点で言うと、広さに制約があるからこそ、本当に必要な物だけを厳選するという‬“ミニマリストアプローチ”も、過不足ない暮らしを実現するポイントではないかと思います。‬

 

 

――空間の有効活用のお話がありました。限られた空間のパフォーマンス“スペパ”を最大限に高めるために採用したい、建具や設備、レイ‬アウトなどはありますか?

 

秋山:可動間仕切り扉といった、フレキシブルに利用できる建具を採用するのが効果的です。限られた空間の中でも可動間仕切りを使えば個室にしたり、大きなリビングとして活用したり、必要に応じて大きさや用途を変更することができます。それから、キッチンやバスルームといった設備についても、必要最低限の大きさにすること。たとえば、数年前までは3口コンロが主流でした‬が、時短調理家電がトレンドの今、同時に3口を使用して料理をする方は意外と少なく、2‬口コンロでコンパクトなキッチンでも十分というお客さまも多いです。‬

 

また、「狭い」と感じさせない工夫については、内装窓といった建材を使用して光を最‬大限に取り入れることや、ペニンシュラ型のキッチンを採用し開放感を与えるといったことが挙げられます。

 

ちなみに、近年のトレンドとして、あえて浴槽を設けないシャワーユニットや、除湿器・‬加湿器が不要となる壁タイルや空調設備なども登場しています。スペースパフォーマンスを高めるうえでは、こういったものを導入するのも一つの手ではないでしょうか。

オープンハウスの内装窓を用いた室内画像

▲近年、人気が高まっている内装窓。空間を広く見せると同時に、別々の部屋にいても家族の存在を感じることができる
画像提供:オープンハウス・ディベロップメント

オープンハウスのペニンシュラキッチンの画像

▲リビングやダイニングとの一体感が生まれるペニンシュラキッチン
画像提供:オープンハウス・ディベロップメント

――確かに、今の3口コンロのお話に代表されるように、住まいに求める機能や設備は家電の進化などによっても変わっていきます。マンションを選ぶ側も、今の自分たちの暮らしに何が必要なのかを踏まえて、空間をどのように使うことがベストかを考えたいですね。

 

秋山:そうですね。特に、「無駄なく、心地よく暮らす」というコンパクトなライフスタイルを志向する場合、住む方に‬よって「無駄な部分」は異なります。そこはやはり、ご自身と家族の優先順位を明確にする必要があるのかなと思います。

 

なお、当社では「オーダーシステム」を採用しており、住む方に‬合わせた間取りをご提案する取り組みを実施しています。たとえば「収納部分を大きく確保したい」「収納部分はミニマムにして、居室面積を確保したい」といった正反対の希望の場合も、お客さまごとにオリジナルの提案をすることが可能です。

 

 

――オーダーシステムでは、施主の方からどのような要望があるのでしょうか? 限られた空間の中で試行錯誤された事例があれば教えてください。

 

秋山:1LDKのコンパクトな住戸で、「書斎・収納・猫ちゃんが遊ぶスペース」のすべてを取り入れたいというご要望をいただいたことがあります。プランニングに苦労しましたが、書斎と収納に関しては、ベッドが置けるスペースを確保しつつ、本棚とデスク一体型の造作収納を製作することでクリアしています。また、‬猫ステップは本棚とつながりを持たせて配置し、デスクと同材を使用することで、統一感のあるデザインを意識しました。‬

オープンハウスのオーダーシステムの室内画像

▲本棚と造作キャットウオークを組み合わせることで、空間を有効利用
画像提供:オープンハウス・ディベロップメント

――コンパクトでも工夫次第で、望む要素を取り入れることができるんですね。

 

秋山:もちろん予算との兼ね合いもありますし、限度はあります。また、近年は住宅価格の高騰を受け、以前のコストではできないことも増えてきました。それでも少しでも理想の暮らしに近づけるため、譲れないポイントを絞って相談に来られるお客さまが増えた印象があります。

 

われわれとしては、マンションの基本設計の中に、これまでお客さまから頂いた要望を盛り込み、ブラッシュアップしてきました。今後もお客さまとの対話を重ねながら、デベロッパーとして住まいに求められるものを追求していきたいですね。

オープンハウスへの取材記事の画像

▲「好立地物件」にこだわるオープンハウスグループだが、需要の高い立地の獲得は用地仕入れに携わる人材の量とスピード感が支えているそうだ

取材・文:榎並紀行 撮影:岩田慶(fort)

 

WRITER

榎並紀行
編集者・ライター。編集プロダクション「やじろべえ」代表。住まい・暮らし系のメディア、グルメ、旅行、ビジネス、マネー系の取材記事・インタビュー記事などを手がけている。X:@noriyukienami

おまけのQ&A

Q.オープンハウスグループには、2024年11月に発表された「INNOVACIA」(イノベイシア)と「INNOVAS」(イノバス)という2つのマンションブランドがありますね。今後このブランドはどのように発展していくのでしょうか。
A.秋山:もともと「オープンレジデンシア」というマンションブランドがあり、お客さまから「名称が少々長い」というお声を頂いていたことと、次の事業を伸ばしていく局面に向けてオープンレジデンシアをイノバスに改めたという背景があります。イノバスがスマートさや合理性を追求する一方、イノベイシアは革新性とラグジュアリーさにこだわっており、第1号として『イノベイシア恵比寿』を建設中です(入居は2026年9月下旬ごろ)。グループ最高峰のマンションブランドとして立地もこだわり抜いています。