建ぺい率と容積率は、どちらも「その土地に希望の建物を建てられるか」を左右する重要な要素です。しかし、「建ぺい率という言葉を聞いたことはあるけど、正確な意味がよく分からない」「建ぺい率と容積率にはどのような違いがあるのだろう」と思っている方もいるのではないでしょうか。 そこで本記事では、建ぺい率と容積率の定義や目的、計算方法を分かりやすく解説します。建ぺい率・容積率が緩和されるケースも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
建ぺい率とは? 目的と計算式
▲画像:編集部作成
建ぺい率とは、敷地面積に対して、建物を真上から見たときの建築面積(水平投影面積)がどのくらいの割合を占めているかを示す数値です。
ここでいう建築面積とは、単に1階部分の床面積を指すわけではありません。建物を真上から見たときの水平投影面積をもとに算出されるものです。つまり、2階以上に1階よりも張り出した階がある場合、最も床面積が広い階が基準になります。ただし、張り出し部分の扱いにはルールがあり、出幅や法令上の扱いによって建築面積に算入されない場合があるので注意が必要です。詳しくは設計段階で建築士などに相談しましょう。
また、建ぺい率には上限があり、敷地いっぱいに建物を建てられるわけではない点にも注意が必要です。上限は自治体が定める「用途地域」の種類によって異なります。
◇建ぺい率を定める目的は?
建ぺい率を定める主な目的は、敷地内に一定の空地を確保することです。建物の建築面積に上限を設けることで、隣り合う建物同士の間に適度な空間が生まれ、風通しや日当たりを確保しやすくなります。
また、建ぺい率は快適な住環境を守るだけでなく、防災面でも重要な役割を果たします。建物同士の間隔が適度に保たれていれば、万一火災が発生した際に隣接する建物への延焼を防ぎやすくなるだけでなく、避難経路の確保にもつながるのです。
さらに、建ぺい率によって建物の規模や密度をコントロールすることは、美しい街並みづくりにもつながります。敷地いっぱいに建物が建つのを防ぐことで圧迫感の少ない、ゆとりある街並みが形成され、良好な住環境を維持しやすくなるのです。
◇建ぺい率を求める計算式と具体的な計算例
建ぺい率を求める計算式は以下のとおりです。
建ぺい率の計算式
建築面積÷敷地面積×100
敷地面積が100平方メートルで1階の床面積が40平方メートル、2階が60平方メートル(2階が最も広い階)の建物の場合、建築面積は60平方メートルとなり、建ぺい率は60%です。
なお、建ぺい率の異なる2つの土地に建物がまたがる場合は、それぞれの敷地ごとに建築面積の上限を計算した上で合算し、敷地全体の面積で割って建ぺい率を求めます(加重平均)。
建築可能な面積の上限を知りたい場合は、以下の計算式で算出可能です。
建ぺい率に基づいた建築可能な建築面積の求め方
敷地面積×建ぺい率=建築可能な建築面積
敷地面積が100平方メートルで建ぺい率が60%の土地であれば、建築面積の上限は60平方メートルです。
容積率とは? 目的と計算式
▲画像:編集部作成
容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合です。延べ床面積とは、建物の各階の床面積を合計した面積のことです。たとえば、2階建ての建物であれば、1階と2階の床面積の合計が延べ床面積となります。つまり、容積率が高いほど敷地に対して大きな延べ床面積を確保できるため、建物の階数を増やしやすくなるということです。
建ぺい率と同様、容積率にも自治体が定める用途地域の種類によって上限が設けられています。またこの上限に加えて、土地に面している道路の幅が12メートル未満の場合はさらに制限がかかることに注意が必要です。この場合、道路幅員による容積率を計算し、用途地域による制限と比べて厳しいほうが適用されます。
◇容積率を定める目的は?
容積率を定める主な目的は、建ぺい率と同様に通風・日照の確保や防火対策、景観を保護することです。また、「適切な人口密度を維持し、快適な住環境を守る」「建築物の密度を規制し、道路などの公共施設とのバランスを保つ」という役割も挙げられます。
もし容積率の制限がなければ、敷地に対して延べ床面積の大きい建物を建てやすくなり、結果として多くの人が一つの地域に集中することになります。一見すると土地を有効活用できるように思えますが、人口が過度に集中すると道路の混雑、上下水道への負担、電力消費の増加などにつながり、かえって暮らしにくい環境を招きかねません。
そのため、容積率によって建物の規模を適切にコントロールし、人口密度と都市活動を支えるインフラや公園、公共施設などの受け入れ能力とのバランスをとることが重要となります。こうした制限により、無理のない市街地形成や快適な住環境の維持につながるのです。
◇容積率を求める計算式と具体的な計算例
容積率を求める計算式は以下のとおりです。
〈容積率の計算式〉
延べ床面積÷敷地面積×100
容積率から建築可能な延べ床面積の上限を知りたい場合は、以下の計算式で算出できます。
〈容積率に基づいた建築可能な延べ床面積の求め方〉
敷地面積×容積率=建築可能な延べ床面積
たとえば、敷地面積が100平方メートルで容積率が150%の場合、建築可能な延べ床面積の上限は150平方メートルです。
また、道路幅員による容積率の計算式は以下のとおりです。なお、低減係数は住居地域では一般的に0.4ですが、0.6の地域もあります。
〈道路幅員による容積率の計算式〉
道路幅員×低減係数×100
たとえば、道路幅員が4.5メートル、低減係数が0.4の場合の容積率は4.5×0.4×100=180%です。この場合、用途地域による容積率の制限が180%よりも高い地域でも、道路幅員から計算された180%が適用されます。
建ぺい率と容積率の比較
あらためて、建ぺい率と容積率を表で比較します。
| 建ぺい率 | 容積率 | |
|---|---|---|
| 対象 | 建築面積 | 延べ床面積 |
| 目的 | 建物の規模や密度のコントロール 快適な住環境の維持 |
人口のコントロール 快適な住環境の維持 |
| 計算式 | 建築面積÷敷地面積×100 | 延べ床面積÷敷地面積×100 |
| 具体例 | 100平方メートルの土地 建ぺい率60%、容積率200%の場合 建築可能な建築面積の上限は60平方メートル |
100平方メートルの土地 建ぺい率60%、容積率200%の場合 建築可能な延べ床面積の上限は200平方メートル |
建ぺい率・容積率と用途地域
▲画像提供:PIXTA
次に、前述した「用途地域」について説明します。用途地域とは都市計画法で土地の利用目的が定められている地域のことです。
都市計画法では、地域を都市計画区域・都市計画区域外・準都市計画区域の3つに分けています。さらに、都市計画区域は市街化区域・市街化調整区域・非線引区域の3つに、市街化区域は防火対策など用途によって21の地域地区に分けられます。用途地域はこの21の地域地区の一つです。
用途地域は「第一種住居地域」「商業地域」など、全部で13種類あります。
| 用途地域 | 建ぺい率(%) | 容積率(%) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 第一種低層住居専用地域 | 30/40/50/60 | 50/60/80/100/150/200 | 高さが10~12メートルに制限された住宅 50平方メートルまでの小型店舗を含む |
| 第二種低層住居専用地域 | 30/40/50/60 | 50/60/80/100/150/200 | コンビニなど150平方メートルまでの小型店舗を含 |
| 田園住居地域 | 30/40/50/60 | 50/60/80/100/150/200 | 農業と調和した低層住宅の環境を守るための地域 |
| 第一種中高層住居専用地域 | 30/40/50/60 | 100/150/200/300/400/500 | 500平方メートルまでの店舗を含む |
| 第二種中高層住居専用地域 | 30/40/50/60 | 100/150/200/300/400/500 | 1500平方メートルまでの中規模店舗を含む |
| 第一種住居地域 | 50/60/80 | 100/150/200/300/400/500 | 3000平方メートルまでの商業施設を含む |
| 第二種住居地域 | 50/60/80 | 100/150/200/300/400/500 | 1万平方メートルまでの商業施設を含む |
| 準住居地域 | 50/60/80 | 100/150/200/300/400/500 | 道路や自動車関連施設の利便性を重視した地域 |
| 近隣商業地域 | 60/80 | 100/150/200/300/400/500 | 近隣住民の利便性を重視し、準住居地域よりも制限を緩和 |
| 商業地域 | 80 | 200/300/400/500/600/700/800/900/1000/1100/1200/1300 | 商業施設が集まることを目的とした地域 |
| 準工業地域 | 50/60/80 | 100/150/200/300/400/500 | 軽工業の工場などのための立地 住居なども含む |
| 工業地域 | 50/60 | 100/150/200/300/400 | 大規模な工場を含む 住居も建てられる |
| 工業専用地域 | 30/40/50/60 | 100/150/200/300/400 | 住宅は建てられない |
敷地が2つの用途地域にまたがっている場合は、それぞれの面積の割合に応じて按分して建ぺい率などを計算します。
また、用途地域によって周辺の環境も異なります。たとえば、小さな店舗しか建てられない第一種低層住居専用地域では静かな環境に、商業地域はにぎやかで利便性の高い環境になりやすいでしょう。土地を購入する際には、どのような用途地域であるかを確認することも大切です。
建ぺい率が緩和されるケース
マンションでも、一定の条件を満たす場合には建ぺい率が緩和されることがあります。建ぺい率が緩和されることで建築可能な面積が広がり、建物の計画の自由度が高まります。ただし、適用条件は建築基準法や自治体の条例によって異なるため、個別の計画ごとに確認が必要です。
◇角地緩和
まず挙げられるケースは角地の場合です。角地とは、2つの道路が交差する角にある敷地のことです。敷地が角地に該当し、特定行政庁が定めた条件を満たしていれば建ぺい率が10%加算されます。
ただし、敷地が道路の角にあるからといって必ず角地緩和が適用されるとは限りません。条件としては、まずそれぞれの道路に敷地が2メートル以上接している必要があります。それに加えて、特定行政庁が定める「建築基準法施行細則」を満たすことも必要です。細則の内容は自治体で異なります。「敷地の外周の3分の1以上が道路に接していること」「道路が交わる角度が120度未満であること」などを条件として定めている自治体もあるため、注意してください。
◇耐火準耐火建築物に対する緩和
「防火地域」や「準防火地域」に指定されているエリアでは火災時の延焼を防ぐため、建物に一定の耐火性能が求められます。こうしたエリアで「耐火建築物等」「準耐火建築物等」に該当する建物を建てる場合、建ぺい率が緩和されるケースがあります。
具体的には、防火地域内にある耐火建築物等は、指定建ぺい率が80%の地域を除き、建ぺい率を10%上乗せすることが可能です。また、準防火地域内にある耐火建築物等、準耐火建築物等についても同じく建ぺい率が10%緩和されます。
さらに、前述の角地緩和(+10%)とこの耐火・準耐火建築物緩和(+10%)は併用も可能です。両方の条件を満たせば、建ぺい率が合計で20%加算されることもあります。
◇2つの道路に挟まれた敷地に対する緩和
敷地が2つの道路に挟まれている場合も、角地緩和と同じように建ぺい率が10%加算されることがあります。
条件としては、まず2つの道路それぞれに敷地が2メートル以上接していなければなりません。これに加えて「幅員がそれぞれ8メートル以上の道路に挟まれた敷地で、道路境界線相互の間隔が35メートルを超えないもの」など、特定行政庁が定める「建築基準法施行細則」を満たす必要があります。
容積率が緩和されるケース
容積率を計算する際、要件を満たす部分については容積率の算定対象となる延べ床面積から除外できる場合があります。これにより、実質的に容積率の制限が緩和され、建物全体の計画に余裕が生まれます。
延べ床面積から除外される代表例は、ベランダやバルコニー、ロフト(小屋裏物置等)、地下室、駐車場などですが、なかでも地下室や駐車場についてはかなり細かい要件があります。要件を満たさない場合は容積率への算入対象となるため、容積率緩和を目的とする場合、設計ダイン会で建築士等に詳細を確認するようにしましょう。
ベランダやバルコニーは建物の外壁から2メートルまでは計算の対象外になります。
ロフトについては、天井高が1.4メートル以下、直下階の床面積の2分の1未満であれば算定対象外です。ただし、自治体によって細かい条件が設定されていることもあるため、事前の確認をおすすめします。
地下室は、「住宅用途であること」「室内の高さの3分の1以上が地下にあること」「天井が地上から1メートルを超えていないこと」などの条件を満たしていれば、延べ床面積の3分の1までが計算対象外になります。
他にも、駐車場は延べ床面積の5分の1までが容積率の計算対象外です。ただし、駐車場に屋根がない場合はそもそも建築物とは見なされず建築面積には含まれません。
さらに、幅員が15メートル以上ある特定道路から70メートル以内に敷地があり、前面道路が6メートル以上12メートル未満の場合は容積率が緩和される特例もあります。
容積率が緩和される主なケースを表にまとめましたので、参考にしてください。
| 容積率の計算に算入されない部分 | 緩和の条件 |
|---|---|
| 吹き抜け | 特になし |
| マンションの共用部分 | 特になし |
| 宅配ボックス | 特になし |
| ベランダ・バルコニー | 建物の外壁から2メートルまで |
| ロフト | 直下階の床面積の2分の1まで(その他細かな条件が設定されていることがあるため注意) |
| 地下室 | 住宅用途 高さの3分の1以上が地下にある 天井が地上よりも1メートルを超えていない 延べ床面積の3分の1まで |
| 駐車場 | 延べ床面積の5分の1まで |
建ぺい率・容積率の調べ方
▲画像提供:PIXTA
建ぺい率・容積率を調べる確実な方法は、市役所などの都市計画課や建築課といった都市計画や建築を担当している部署に問い合わせることです。また、自治体によってはWebサイトで建ぺい率などが記された地図が公開されているケースもあります。
また、売り出されている土地や建物の建ぺい率などを調べたい場合は、その土地や建物を取り扱う不動産会社に問い合わせたり、広告をチェックしたりする方法もあります。
まとめ
建ぺい率は敷地面積に対する建築面積の割合、容積率は敷地面積に対する延べ床面積の割合です。どちらもマンションの建物規模や住環境、都市計画に関わる重要な指標であり、用途地域などに応じて上限が定められています。マンションの購入を検討する際や資産価値を理解する上でも、建ぺい率・容積率の基本的な考え方を知っておくことが大切です。
監修者
杉山 明熙(すぎやま めいき)
<保有資格>
- 宅地建物取引士
- 2級ファイナンシャル・プランニング技能士
- 賃貸不動産経営管理士
<プロフィール>
元不動産営業のWebライター。12年間の営業経験を活かし、大手メディアや不動産会社のオウンドメディアで住まい・不動産投資分野の記事を多数執筆。業界経験者ならではの視点から実情を伝え、「不動産業界をもっと身近に」をモットーに活動中。
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