賃貸マンションの家賃はなぜ急騰している? これからも上がり続けるのか

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人気YouTubeチャンネル「東京不動産マニア」などで都心の不動産情報を発信する一心エステート代表・高田一洋さんに、マンションの家賃急騰の理由や、今後の見通しなどを聞きました。

――マンションの賃料はなぜ高騰しているのでしょうか?

 

高田一洋さん(以下、高田):いくつか理由があると思いますが、ひとつはマンション価格の上昇です。不動産投資では、取得価格に対して一定の利回りを確保する必要がありますから、物件価格が上昇すればその分、賃料も引き上げなければ経営が成り立ちません。

 

もうひとつの理由は金利です。これまで十数年にわたってマンション価格が上がってきたにもかかわらず、顕著な賃料上昇が見られるようになったのは、金利が上がり始めた2024年頃からです。利回りだけを考慮すれば賃料は価格と連動するはずですが、実際の賃料の推移を見ると金利やインフレ率と連動しています。

高田一洋さんプロフィール

▲高田一洋さん。大学卒業後、コンサルティング会社に4年、不動産事業を展開するリストグループに10年在籍。在職中に東京都心の高額不動産の売買・賃貸仲介の実績を重ね、2021年に都心6区を中心に扱う不動産会社の一心エステートを創業。著書に『住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術 不動産は「リセール指数」で買いなさい』『マンション売却の錬金術「マンションを売りたい」と思ったら最初に読む本』 X:@Takada_Issin YouTubeチャンネル:たかちゃん不動産

――賃貸住宅の需要が上がっているということもあるのでしょうか?

 

高田:そうですね。たとえば、2024年の東京都の転入超過数は約8万人ですが、この年の東京都の新築マンションの供給数は1万戸強です。当然、戸建てや中古住宅に住む方もいるわけですが、新築住宅の供給数は年々減少しており、人口の流入に全く追いついていません。

住民基本台帳人口移動報告 2024年(令和6年)結果

▲2023年・2024年に転入超過だった都道府県は一都三県と大阪府、福岡県のみ
出典:総務省「住民基本台帳人口移動報告 2024年(令和6年)結果」より

――流入過多となっているのは首都圏や大阪府、福岡県に限られていますが、その他のエリアでは賃料の上昇は見られないのでしょうか?

 

高田:マンション価格の高騰と同様に、賃料も全国一律で上がっているわけではありません。ただ、人口が減少している都道府県であっても、局所的に需要が高まっているエリアはあり、流入過多となっている都道府県に限らず、賃料が上昇している地域も見られます。

 

反対に、たとえば首都圏であっても、すべてのエリアで賃料上昇が見られるわけではありません。北は大宮、東は千葉、西は吉祥寺、南は横浜あたりまでが、ひとつの目安という感覚です。

 

コロナ禍で一時期、戸建てや郊外の需要が高まりましたが、足元では都心回帰の動きが顕著になっています。共働き世帯が増えたことで、夫婦それぞれの通勤利便性や移動時間を重視する傾向が強まり、職住近接のニーズが改めて高まっています。

 

 

――賃料は、価格よりも金利やインフレ率と連動しているということですが、価格と連動しにくい理由は?

 

高田:主に日本の借地借家法に起因します。同法では賃料の値上げ自体が禁止されているわけではありませんが、値上げには「正当な理由」が必要とされています。正当な理由としては、土地や建物に対する租税負担の増加や不動産価格・賃料相場の上昇などが挙げられます。

 

実際、近年の賃料上昇については、このうち「租税負担の増加」に影響する固定資産税の評価替えが、一定の影響を与えている可能性もあります。評価替えとは、固定資産税評価額(土地や家屋の価値)を3年に一度見直す制度で、直近では2024年に実施されました。

 

不動産価格の上昇も正当な理由になり得ますが、これまで価格に連動するように賃料が上がってこなかった理由としては、こうした法制度だけでなく、日本特有の慣習も挙げられると思います。日本は約30年にわたってデフレが続いてきたため「家賃は上がらないもの」という認識が根強く、実際に家賃を上げると入居者が決まりにくいという事情もありました。

 

逆に言えば、家賃は「下がりにくい」という特性もあります。建物は基本的に経年によって価値を落としていくものであり、実際に取引価格も下落していきますが、住んでいる間に家賃が下がっていく物件は多くありません。

高田一洋さん「借り手市場の日本とは異なり、オーナーの意思が反映されやすい米国などでは、家賃は価格と連動するように上昇している」

▲借り手市場の日本とは異なり、オーナーの意思が反映されやすい米国などでは、家賃は価格と連動するように上昇しているそうだ

――法律やこれまでの慣習というのは依然としてあるものだと思いますが、それでも顕著な賃料の上昇が見られているということは、それを凌駕するほどの価格上昇やインフレが見られるということでしょうか?

 

高田:「デフレを脱却した」という認識が社会全体に広がってきたということでしょう。不動産だけでなく、マンションの管理費や修繕費、食料品、エネルギー価格など、ありとあらゆるものの値段が上がっている中で、家賃だけそのままというわけにはいきません。

 

ただやはり、借地借家法は借主の保護を重視した法律であるため、家賃の値上げに同意しない借主を無理に退去させることは基本的にできず、値上げする場合も更新時や再募集時が一般的です。そのため価格と家賃の上昇率には乖離があり、家賃の上昇には遅効性があります。

 

 

――今後も家賃の高騰は続きそうなのでしょうか?

 

高田:すべてのエリアでということではありませんが、これまで上がってきたエリアは今後もほぼ確実に上昇すると思います。インフレが継続していることに加え、都心部については流入過多が続くと見られるからです。局所的には2025年と同等、あるいはそれを上回るペースで上がっていくことになるのではないでしょうか。

 

また、首都圏などでは「定期借家」が増加しています。先ほど、日本の借地借家法は借主保護を重視する法律だと申し上げましたが、定期借家契約に限ってはオーナー(家主)の意思が反映されやすい契約形態です。定期借家は契約の更新ができませんが、再契約が可能です。

 

更新と再契約の違いは、家賃の値上げなどに入居者が合意できなければ退去を求められること。これによりオーナーは家賃を上げやすくなります。

首都圏の定期借家の掲載物件シェアは2022年から2025年までの3年間で2倍ほどに

▲首都圏の定期借家の掲載物件シェアは2022年から2025年までの3年間で2倍ほどに
出典:LIFULL「増えているってホント?「定期借家物件」の最新動向をLIFULL HOME'Sが調査」より

定期借家の掲載賃料は3年間で1割前後上昇している

▲定期借家の掲載賃料は3年間で1割前後上昇している
出典:LIFULL「増えているってホント?「定期借家物件」の最新動向をLIFULL HOME'Sが調査」より

――分譲価格も賃貸価格も上がっているという現状がありますが、これからの時代に持ち家と賃貸はどちらがお得だと考えますか?

 

高田:家賃も価格も上がっているエリアでいえば、完全に「持ち家」でしょうね。持ち家であれば、価格の上昇は歓迎すべきものです。1億円で購入したものが、3年後、4年後に1億2,000万円になるならば得するというのは当然です。

 

一方で地価が下がり続けているようなエリアや、今後その見込みのあるエリアにおける購入は「消費」に近いので、この限りではありません。取得価格の大部分を建物の価格が占める場合は、将来的に資産価値が大きく低減してしまいますからね。

 

 

――ライフスタイルや価値観などによる違いもあると思いますが、たとえば定期的に住み替えていきたいという方にとっては賃貸住宅が向いているのでしょうか?

 

高田:個人的には、定期的に住み替えていきたいと考えている方にこそ持ち家をおすすめしたいですね。流通性も資産性もあるマンションを選んでいけば、売却しやすく、売却益によってより良い物件に住み替えていくことも可能です。売買にかかる諸費用を考慮すると、一定の売却益が出る必要がありますから、選ぶべき物件はやはり都心部やそれに準ずるエリアになってくるでしょう。

高田一洋さん「基本的には都心部の持ち家がおすすめだが、家賃を経費計上できる経営者やフリーランス個人事業主の場合は「賃貸」という選択肢も検討したい」

▲基本的には都心部の持ち家がおすすめだが、家賃を経費計上できる経営者やフリーランス個人事業主の場合は「賃貸」という選択肢も検討したい

 

WRITER

亀梨 奈美
不動産ジャーナリスト。不動産専門誌の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

X:@namikamenashi

おまけのQ&A

Q.借主はオーナーからの値上げ通告を拒否することはできるのでしょうか?
A.高田:家賃の値上げは借主とオーナーの合意のもとに成り立つので、拒否することはできます。ただし、裁判で家賃の値上げが相当とされた場合は、請求時にさかのぼって従前の賃料との差額を支払わなければなりません。値上げ通告に納得できなければ、まずは当事者間で話し合いの場を持つことが大切です。なお、合意に至らないという理由で賃料を支払わないと、賃貸借契約が解除されるおそれがあります。借主が相当と考える額の賃料を提供したにもかかわらず、オーナーがその受領を拒否した場合は、法務局に供託することで賃料を支払ったものと扱われます。