最近注目のIoT家電。遠隔操作できる便利な家電や、離れて暮らす家族の安否確認に役立つものまで、その種類はさまざまです。IoT家電を導入するメリットや注意点を専門家が解説します。
【プロフィール情報】
大岩 俊之(家電コンサルタント)
大学卒業後、ITエンジニアからメーカー営業に転身、電子部品メーカー、半導体商社、パソコンメーカーなどの法人営業を経験。自身の家電好きとパソコンメーカーでの営業、店頭での接客販売経験を活かし、家電コンサルタントとなる。「家電の達人」としてTBSやメーテレ、東海テレビなどに出演。その他セミナーや講演、研修の講師としても活躍中。
最近注目のIoT家電は?
――最近注目されているIoT家電や人気のIoT家電には、おおまかにどのようなものがありますか?
大岩 俊之(以下、大岩):最近注目されているIoT家電の一つに、既存の壁のスイッチに取り付けて照明などを遠隔操作でオン・オフできる「スマートスイッチ」があります。また、似たようなものですが、従来のコンセントに差し込むだけで家電のオン・オフを操作できる「スマートプラグ」も普及しています。どちらも家電そのものがIoT対応していなくても、スマートフォンを使って遠隔操作が可能なものです。
――物理的にスイッチをオン・オフするものが人気ということですね。他にはどのようなものがありますか?
大岩:アプリを使って操作するエアコンやロボット掃除機はここ数年人気です。他にも、体重や体脂肪率、筋肉量などを測定し、スマートフォンと連携して健康管理をサポートするスマート体重計といった、ヘルスケアに特化したIoT家電も注目されていますね。特に健康管理系のIoT家電は、遠方で一人暮らしをする高齢の親の健康を管理する目的で使用するケースもあるようです。また、冷蔵庫の開け閉めをチェックできるIoT対応の冷蔵庫を、遠方の親の安否や生活状況を把握する手段として活用している人もいます。
IoT家電を導入すると起こる日常の変化
――IoT家電の導入は、日常生活にどう影響しますか?
大岩:時間を有効活用できるようになり、生活の質が大きく変わると思います。たとえば、内部にセンサーやカメラを搭載した食材管理ができるIoT冷蔵庫があれば、わざわざ直接冷蔵庫の中を確認しなくても、買い物先で必要なものをその場で確認することが可能です。また、IoT搭載エアコンならスマートフォンを使って出先から自宅のエアコンをつけることができ、帰宅時に部屋の温度が適温になるように調整できます。
他にも、食品を登録しておくことで賞味期限が近くなるとアラートしてくれたり適したメニューレシピを提示してくれたりする調理家電や、洗剤がなくなると自動でECサイトに注文してくれる洗濯機などもあります。こういったIoT家電を活用することで、細かい生活の質が大幅にアップするでしょう。
――IoT家電は具体的にどういった人におすすめなのでしょうか。
大岩:家電の種類にもよりますが、IoT家電は個別のニーズに対応しやすいので、特に一人暮らしの方におすすめだと言えます。もちろん一人暮らしでなくても便利に活用できますが、家族が多い家庭では、それぞれの使い方について意見のすり合わせが必要になるかもしれません。
「これは便利!」と大岩氏が感動したおすすめのIoT家電
――実際に使用していて感動したIoT家電はありますか?
大岩:やはり遠隔操作できるエアコンですね。夏の暑い日に出先からクーラーをつけて、帰宅時に適温になるようにしておくと「最高」です。
――「一人暮らしの時にこれがあったら便利だな」と思うIoT家電はありますか?
大岩:一人暮らしなら、自分が家にいない間に掃除をしてくれるロボット掃除機が便利だと思います。他にも、起床時間を登録しておいて時間になると照明がつくものや、電気を消し忘れて外出してしまった時に遠隔操作で消灯できるものは、一人暮らしだと便利に感じやすいのではないでしょうか。
また、すべての家電のリモコンをスマートフォン一つに集約すれば、一人暮らしがいっそう快適になると思います。
IoT家電を購入する前に注意すべきポイントや失敗しやすい点
――IoT家電を購入するときの注意点はありますか?
大岩:まず確認しておくべきことは、家にWi-Fiがあるかどうかです。IoT家電はWi-Fi接続が必須なので、家にWi-Fiがなく、インターネット通信をスマートフォンのデータ無制限プランや使い放題プランなどでまかなっている場合、IoT家電の接続ができません。IoT家電を購入する際は、まず自宅にWi-Fiを導入しましょう。
――失敗しやすいポイントはありますか?
大岩:海外製の安価なIoT家電を購入すると、説明書やアプリ操作が分かりにくいことがあります。操作が複雑だとIoT家電の機能を十分に使いこなせない可能性もあるので、海外製のIoT家電を購入するときは慎重に検討してください。
また、IoT家電購入時には、ある程度IoTに関して下調べしておくことが望ましいですね。知識がないと導入時のWi-Fi接続からつまずいてしまい、そもそも導入することができない可能性があります。
――予想外の失敗としては他にどのようなことが考えられるでしょうか?
大岩:憧れてIoT家電を買ってみたものの、生活スタイルや家族構成に合わず使わなくなってしまったというケースは意外と多いと思います。IoT家電自体、実際に使用している人はまだ10~15%程度だといわれていることからも、IoT家電の機能と実際の生活にはミスマッチが起こっていて、まだIoT家電が私たちの実生活に追いついていないと言えるでしょう。
スマートスピーカーのおすすめしたい使い方
――スマートスピーカーもIoT家電の一つですが、他のIoT家電と連携させてより効果的に使うコツはありますか?
大岩:日常のルーティンをアクションとして登録しておくと、とても便利です。たとえば、スマートスピーカーに「おはよう」と一言言うだけでカーテンが開き、今日の天気を教えてくれて、コーヒーメーカーの電源が入ってテレビがつく、といった感じですね。より「使いこなしている感」が出るのではないでしょうか。
また、こういった日常のルーティンを便利化することは、高齢者や障がいのある方の日常生活を助けることにもつながると言えます。
――ルーティンの便利化以外には何があるでしょうか?
大岩:最近はスピーカー性能の優れたスマートスピーカーも増えています。サブスクサービスと連携させることで、スマートスピーカーに声をかけるだけで好きな音楽をよい音質で聴くことができます。
高齢者やITが苦手な人向けのIoT家電
――高齢者やITが苦手な人が最初に導入するIoT家電としておすすめのものはなんでしょう?
大岩:やはりリモコンを一つに集約するのが取り入れやすく、かつ便利だと思います。
――たとえばどのような家電のリモコンを一つにまとめるといいですか?
大岩:テレビやエアコン、照明、加湿器、空気清浄機など、身近な家電のリモコンが一つにまとまると、IoTの導入を実感しやすいのではないでしょうか。もちろん、その場合もWi-Fiは必須です。Wi-Fiの導入はIoT家電導入のファーストステップと言えます。
セキュリティやプライバシーの面で気をつけるべき点
――IoT家電はインターネット通信を介するため、「生活に密着したデータが盗まれるのでは」と不安な人も多いと思います。セキュリティやプライバシーの面で気をつけるべきことはありますか?
大岩:まず、初期設定のパスワードは必ず変更することです。また、「ファームウェア」のアップデート(更新)は定期的に行ってください。アップデートを自動で処理する仕様だと手間が不要なのでおすすめです。
――IoT家電とは異なりますが、IoT家電を管理・コントロールするスマートフォンのセキュリティも重要になるでしょうか。
大岩:重要ですね。たとえば、家の鍵をスマートフォンで操作するスマートキーにしている場合、スマートフォンを落としたり無くしたりすると一大事です。また、落とさない・無くさないだけではなく、スマートフォンのWi-Fiのセキュリティにも気を配る必要があります。セキュリティが脆弱(ぜいじゃく)なWi-Fiを使用していると、そこからIoT家電が収集した生活に密着したデータを盗み見られてしまう可能性があります。
他にも、カメラが搭載されているタイプのIoT家電がWi-Fi経由で乗っ取られ、盗撮に悪用されるケースなども考えられます。これを防ぐためには、Wi-Fiのセキュリティを強固なものにしたり、家電を使用しないときはレンズを隠したりするなどの工夫が必要です。
今後のIoT家電における展望
――大岩さんは今後のIoT家電にどのようなことを期待しますか?
大岩:簡単に言うと、いちいち手で直接触れなくてもすべて自動で動くようになると便利だと思います。たとえば、帰宅すると虹彩認証や指紋認証で玄関の鍵が開いて、気温や体温に応じてエアコンが自動でついて、といったイメージです。
また、AI技術の進化によって、よりパーソナライズされた動作ができるようになると期待しています。家族が複数人いても個々のルーティンに合わせて照明を操作したり、室温を調整したり、そういったことも今後はできるようになるのではないでしょうか。
――他にも期待できる進化はありますか?
大岩:最近はコンタクトレンズにセンサーのようなものを搭載して、涙の成分から病気の早期発見や健康状態をチェックするスマートコンタクトレンズの研究も進んでいます。将来的には直接チップを埋め込んで管理する、というようなこともあるかもしれません。
他にも、新築の家に太陽光パネルを設置するケースが増えています。これにより電力を買う必要がなくなり、電力を自らまかないながら生活のすべてがIoT化したスマートハウスも実現可能になるのではないでしょうか。
今後もIoT家電は進化を続け、私たちの身近な生活の質を向上させ、より効率化してくれることを楽しみにしています。
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