整理収納アドバイザーのやまがたあやこ氏に、玄関収納の悩みを解決するコツを伺いました 。記事では玄関収納のよくある悩みや見直す際のポイント、散らかりやすい玄関の特徴などについて詳しく解説しています。玄関をスッキリさせ、快適な毎日を送るためのヒントが満載です。
【プロフィール情報】
やまがたあやこ(時短家事、整理収納アドバイザー)
掃除がラクな部屋をつくるプロ、時短家事の専門家。著書「掃除の苦労を9割へらす本」。掃除がラクな部屋をつくる“部屋力。アップメソッド”を学べるオンライン完結型スクールを主催。「家事の時間を、自由時間に変える。」をかかげ、共働きやワンオペ家事育児の苦労をなくし、豊かな時間を創出するために活動している。時短家事のアイデアを「時短家事 大百科 カジコレ」やSNSで発信。
玄関収納において多いお悩みは?
――玄関は「おうちの顔」ともいわれる大切な場所ですが、収納に関するお悩み相談で一番多いものは何でしょうか?
やまがたあやこ(以下、やまがた):一番多いのは、やはり「収納スペースが足りない」というご相談です。家族全員の靴が入りきらない、ブーツや長靴のようなかさばる物が多くて下駄箱がパンパン、などの声をよく聞きます。
収納しきれない靴や物が玄関に散乱していると、結果的に「玄関がごちゃついて見える」という悩みにつながるのです。ごちゃついた玄関は生活感があるので、「おしゃれにしたいのにスッキリしない」という不満に変わります。
――実際、収納スペースが足りないときはどうしたらいいのでしょうか?
やまがた:玄関は、靴以外にも傘や子どもの外遊びグッズなどの物が集まりやすい場所です。なので、収納スペースが足りないというお悩みは本当によく分かります。
けれど、その視点を少し変えてみることが大切です。もしかしたら「収納スペースが足りない」のではなく、「スペースに対して物が多すぎる」のかもしれません。そこで大切なのが、私たち整理収納アドバイザーがお伝えしている「整理収納」の考え方です。
――「整理」と聞くと「しまうこと」をイメージしますが、違うのでしょうか?
やまがた:じつは、整理には「しまうこと」の前に「物を取捨選択する」という大切なステップもあります。つまり、本当に必要な物、使っていて心地よい物、大切な物を選び抜く作業です。
まずは、玄関にある靴を全部出して「この1年で履いた?」「サイズは合っている?」「本当に気に入っている?」と、ご自身の心に問いかけてみてください。
手放すのは勇気がいる作業ですが、しまったまま使われなければ物がかわいそうですし、何より大切な収納スペースが圧迫されてしまいます。
取捨選択が終わったら、選び抜いた大切な物だけを「使いやすく収納」していきましょう。このときに大切なのが、今ある収納スペースに収まるだけの量を持つこと。ギュウギュウに詰め込むのではなく、お気に入りの物たちが気持ち良く収まり、スムーズに取り出せる状態が理想です。
収納スペースが足りないと、つい「スペースを買い足そう」と考えてしまうかもしれません。ですが、まずは今ある物と向き合うことが大切です。必要な物を厳選してから収納を考えれば、不思議と「スペースが足りない」というストレスから解放され、スッキリした空間ができあがりますよ。
玄関収納を見直すときのポイント
――物が多いと、何から手をつけていいか分からない人も多いと思います。まずは何から始めるべきですか?
やまがた:物が多いお宅は、先ほどお話しした「整理収納」から始めましょう。本当に必要な物を見極めて、今ある収納スペースに収まる量に減らすことから始めてみてください。
――比較的物が少ないお宅はどこから手をつけたらいいでしょうか?
やまがた:物が少ない場合は、靴をしまう習慣をつけたり、物を浮かせる収納を取り入れたりするのがおすすめです。そうすると、たたきに物がなくなるので玄関の掃除が一気に楽になりますよ。
――玄関は砂や土の汚れがたまりやすく、傘立て周りなどの掃除に苦労している人も多いと思います。
やまがた:たしかに、玄関は「掃除が大変」という声をよく聞きます。玄関掃除を大変にしている原因の一つは、「たたきに物を置いていること」です。なので、まずは「たたきにできる限り何も置かない」ようにしてみましょう。
靴は、「汚れを軽く落とし、乾いたらすぐに下駄箱か決められた収納場所にしまう」ことを習慣にするのがおすすめです。
傘や子どものおもちゃといった小物類は、浮かせる収納を活用してみてください。たとえば、玄関の壁や下駄箱の扉、玄関ドアなどにバータイプの傘掛けやフックなどを取り付けます。おもちゃはネットに入れてフックに掛けるだけで片づき、傘立ては不要になるので、玄関が広くなります。
慣れるまでは、少し意識して行う必要があるかもしれませんね。
たたきに物が出ている時間が短ければ短いほど、結果として掃除の手間がぐっと減ります。一度「床に物がない」状態をつくると、そのスッキリ感と掃除のしやすさに驚くはずです。サッとほうきで掃くだけ、あるいは掃除機をかけるだけで掃除が終わるので、気持ちにも余裕が生まれます。
急な来客時にも慌てなくなり、何より毎日の「キレイ」が続きます。ぜひ、たたきの「床面クリア」と、物を「浮かせる収納」を目指してみてください。
散らかりやすい玄関やご家庭にみられる特徴
――散らかっている玄関に共通することはありますか?
やまがた:これまでお話ししてきたことの真逆をいく玄関ですね。物の量が収納のキャパシティを超えている、物の「定位置」が決まっていない、脱いだ靴をすぐにしまう習慣がないといった玄関は、どうしても散らかって見えます。
他にも、収納方法が使う人の都合に合っていない玄関も散らかりやすいです。たとえば、子どもの靴を高い位置に置くと、子どもが自分で靴を出し入れできず脱いだ靴もしまえないからです。
――玄関が散らかりやすいご家庭の特徴はありますか?
やまがた:片づけのルールを家族全員で共有していないご家庭は散らかりやすいと思います。また、玄関の片づけを担うのが一人だけのご家庭も同様の傾向です。
誰か一人が片づけるのではなく、家族全員でルールを共有して片づける意識を持つことが理想ですね。
収納アイテムや家具を選ぶときに気をつけるべきポイント
――収納アイテムや家具を選ぶときの注意点を教えてください。
やまがた:収納アイテムや家具を買う前に、まずは今ある収納に収めることを考えてみてください。その上で、どうしても必要な場合のみ買い足しましょう。
買い足す場合は、通気性が良く、たたきとの接触面が少ない家具がおすすめです。
――やまがた氏が収納アイテムや家具を選ぶときに気をつけていることはありますか?
やまがた:通気性や接触面の他には、サイズや統一感、掃除のしやすさ、汚れの目立たなさなどです。
【タイプ別】ひと手間でスッキリする収納の工夫
――来客が多いご家庭は玄関収納でどのような工夫をしたらいいでしょうか?
やまがた:「いつでも人を招けるスッキリ感」と「おもてなしの心遣い」がポイントになります。そのために、たたきに物を置かないことが一番のおもてなしです。
来客用のスリッパは、収納扉の内側に隠して収納するとホコリを防げます。必要なときにサッと出せて、見た目だけでなく清潔感もアップします。
――子どものいるご家庭ではどんなことを意識すればいいでしょうか?
やまがた:子どものいるご家庭では、「子どもが自分でできる仕組み」と「増え続ける物への対応」、「安全性」の3つが重要になります。
「子どもが自分でできる仕組み」というのは、「自分でできた!」を応援する、子ども目線の収納のことです。下駄箱の一番下の段を子ども専用にして、靴の写真を貼って「ここだよ」と教えてあげたり、子どもの届く位置にフックを付けてあげたりしましょう。「自分でできた」経験は、子どもの片づけ習慣の第一歩になります。
また、子どもの成長はあっという間です。サイズアウトした靴や使わなくなったおもちゃは、定期的に見直して手放していきましょう。収納棚は可動式を選ぶと、子どもの成長や持ち物の変化に合わせて柔軟に対応できます。
――かさばりやすいベビーカーや三輪車はどうしたらいいでしょうか?
やまがた:ベビーカーや三輪車は、定位置を決めることが散らからないコツです。玄関たたきに専用の「駐車スペース」をマーキングするのもいいですね。
また、最初から折りたたみ式のベビーカーや三輪車を選んだり、壁掛けフックで縦に収納したりするのもおすすめです。
収納スペースが少ない場合の工夫やアイデア
――玄関をスッキリと広く見せたい人は多いと思います。収納スペースが少ない場合でも、広く見せる工夫はありますか?
やまがた:繰り返しになりますが、まずはたたきに物を置かないことです。
靴を置くスペースが足りない場合は、下駄箱の下に引っ掛けるタイプやキャスター付きのシューズラックが便利なので、ぜひ活用してみてください。キャスター付きなら掃除をするときにも簡単に動かせるのでおすすめです。
――他に便利なアイデアはありますか?
やまがた:たたきだけでなく、下駄箱の上もなるべく物を置かないことですね。下駄箱の上は小物や雑貨を置きたくなりますが、物を置くことで圧迫感が出てしまいます。
下駄箱の上をスッキリさせると、見た目の良さだけでなく、送られてきた荷物を置いたりサインしたりするのに活用できますよ。
玄関収納においての改善事例
――玄関収納において分かりやすい改善事例はありますか?
やまがた:玄関収納の基本は「たたきに物を置かない」「必要な物を見極めて使いやすく収納する」「物を浮かせる」の3つを意識すればどの家もキレイに整います。
具体的には、まず靴を下駄箱にしまい、あふれた靴は収納アイテムで下駄箱の下に引っ掛けるなどして浮かせて収納します。スリッパや傘などの小物は、壁や扉の内側にバーやフックを付けて引っ掛けましょう。これだけで、分かりやすく玄関の見た目が改善しますよ。
玄関収納を見直すことで得られるメリット
――玄関収納の見直しによって得られる“思わぬメリット”はありますか?
やまがた:「おうちの顔」である玄関がスッキリすると、自分の家が好きになります。毎日気持ち良く出かけて帰宅できるのは、玄関がキレイになって気づいた“思わぬメリット”です。
それから、意外かもしれませんが忘れ物が減りました。玄関が片づいたことでどこに何があるのか見つけやすくなり、忘れ物を防げるようになったのです。
――そういったことの積み重ねで、玄関の掃除の頻度も上がりそうです。
やまがた:その通りです。気持ちのいい空間を維持するために掃除をよくするようになりました。いつも清潔なので友達も気軽に呼べますし、運気も上がったような気がします。
それから、靴をしまう習慣がついたことで靴の汚れにも目がいくようになりました。そこから靴のお手入れ頻度が増え、毎日キレイな靴で出かけられるようになったことも“思わぬメリット”かもしれません。
選び抜かれた物だけが置かれた玄関は、きっと気持ち良く家族を送り出し、温かく迎えてくれる、おうちの素敵な「顔」になります。まずは下駄箱の中の一段でもよいので、「整理」を始めてみてください。
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