マンションの固定資産税はいくら?3,000万・4,000万・6,000万・1億の新築マンションにかかるシミュレーションも紹介

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固定資産を所有する人に課されるのが固定資産税です。マンションも土地・建物それぞれの持分に対して課税され、所有者は毎年納めなければなりません。 マンションの資金計画にも影響を与える固定資産税ですが、具体的にどれくらいの金額を見込めばよいのでしょうか。 この記事では、固定資産税の概要と計算方法、マンションで適用される軽減措置、3,000万円・4,000万円・6,000万・1億の新築マンションを購入した場合のシミュレーションを紹介します。

 

固定資産税とは、土地や建物をはじめとする固定資産を所有する人が納めなければならない税金のことです。毎年1月1日(賦課期日)時点で固定資産課税台帳に登録されている人が納税する必要があります。マンションを所有する人も固定資産税を納めなければなりません。

 

固定資産税は所在地の市町村に納める地方税ですが、東京23区にあるマンションの場合は特例で東京都へ納めることになっています。

 

マンション所有者の多くは、固定資産税と併せて「都市計画税」も納めなければなりません。都市計画税は、都市計画法に基づく市街化区域のなかにある土地や建物などを所有している人が納税義務者です。

 

都市計画税の有無は自治体によって異なり、課税自治体は東京都をはじめとした全国の約1/3の自治体に限られます。ただ、新築マンションは市街化区域に立地するものが大半のため、都市計画税も納税するものととらえてよいでしょう。

 

固定資産税が税収の使い道が定められていない普通税に対し、都市計画税は目的税です。税収は納税先の自治体の都市計画事業や土地区画整理事業など、一定の事業を行なうための資金として利用されます。

 

毎年春頃に納税義務者へ納税通知書が郵送され、年4回の分割納付もしくは一括納付が選べます。細かな納期は自治体ごとに異なり、東京23区の場合、東京都から通知書が毎年6月1日に郵送され、分割納付の場合、6月・9月・12月・2月に納期が設けられています。

固定資産税額の基準となるのが固定資産税評価額です。マンションの場合、土地・建物の持分の評価額に応じて税額が決定します。総務大臣が定める「固定資産評価基準」に基づき、各市町村(東京23区は東京都)が決定します。

 

評価額は3年に1回行なわれる「評価替え」で見直され、以下、土地と建物それぞれの評価の方向性が決定します。

 

なお、新築マンションの場合、施工業者または販売業者から提示される建築書類をもとに評価が行なわれるため、購入時に個別で調査に応じる必要はありません。

 

<土地(宅地)>

地価公示価格などの7割を目安に評価額を算出。

<建物>

課税対象の建物と同じものを評価時点で新築した場合にかかる建築費(再建築価格)をベースとし、築年数による価値低下(経年減点補正率)などを踏まえて評価額を算出。

税率は原則1.4%ですが、市町村によって異なる場合があります。東京23区の場合は本則どおりの1.4%です。ちなみに、都市計画税は0.3%を上限に自治体ごとで定めるものとされており、東京23区は上限の0.3%に設定されています。

固定資産税の税額は原則、以下の計算式で求められます。

 

固定資産税額 = 課税標準 × 1.4%

「課税標準=固定資産税評価額」が基本ですが、マンションの場合、次の章で解説する「住宅用地の特例」により土地分を低減可能です。また、要件を満たす新築マンションは「新築住宅に係る税額の減額措置」が適用され、建物分の税額が低減されます。

 

なお、都市計画税の税額を求める基本の計算式は次のとおりです。

 

都市計画税額 = 課税標準 × 0.3%

上述のとおり、マイホームとして新築マンションを購入する場合、固定資産税の軽減措置が適用されます。具体的には、土地分について「住宅用地の特例」、建物分について「新築住宅に係る税額の減額措置」を適用可能です。

 

住宅用地の特例とは、戸建てやマンションなど居住用建物のために用いられる住宅用地について、固定資産税の課税標準を軽減する特例措置のことです。面積に応じて、以下のとおり課税標準が減額されます。

200平方メートル以下の住宅用地
(小規模住宅用地)
課税標準を1/6に減額
200平方メートル超の住宅用地
(一般住宅用地)
200平方メートル超過分の課税標準を1/3に減額

多くのマンションで敷地が200平方メートルを超えますが、固定資産税は各区分所有者の持分に対して課税されます。マンションは戸建てと比べて土地の評価比率が低いため、多くの場合で1/6の減額が受けられるでしょう。

 

建物部分についても、要件を満たせば「新築住宅に係る税額の減額措置」が適用されます。適用されると2024年3月31日までに新築されたマンションは、建物分の税額が一定期間1/2に減額されます。減額期間は一般マンションで当初5年間、長期優良住宅認定を受けたマンションでは当初7年間です。ただし、減額対象となるのは床面積120平方メートルまでであり、床面積120平方メートルを超える場合には120平方メートル相当分までが減額となります。

 

また、都市計画税にも「住宅用地の特例」があります。建物分には減額措置がありません。特例の内容は以下のとおりです。

200平方メートル以下の住宅用地
(小規模住宅用地)
課税標準を1/3に減額
200平方メートル超の住宅用地
(一般住宅用地)
200平方メートル超過分の課税標準を2/3に減額

 

ここまでの解説を踏まえ、新築マンションを購入した場合の固定資産税額を実際に試算してみましょう。まず、次の条件で新築マンションを購入した場合の税額を算出します。

所在地 東京23区内
購入価格 3,000万円
(うち土地分) 1,000万円
(うち建物分) 2,000万円
専有面積 40平方メートル
認定長期優良住宅 あり

税額を求めるには、この物件の固定資産税評価額を想定しなければなりません。計算の都合上、土地は購入価格の7割(公示価格に対する固定資産税評価額の目安割合)を評価額とし、建物の再建築価格は購入価格の6割とします。

 

土地の評価額:1,000万円×70%=700万円
建物の評価額:2,000万円×60%=1,200万円

上記の評価額を用いて、購入1年目と8年目の固定資産税額をシミュレーションしてみましょう。購入1年目は建物の減額措置が適用されるため、以下のとおり計算できます。

 

<購入1年目>
土地:700万円×1/6×1.4%=約1万6,300円
建物:1,200万円×1/2×1.4%=8万4,000円
合計:1万6,300円+8万4,000円=約10万300円

認定長期優良住宅マンションでは、当初7年間建物の減額措置が適用されます。減額措置終了後、購入8年目の税額を計算してみましょう。先述のとおり、建物は築年数によって「経年減点補正率」が加味されます。ここで用いるのは東京法務局管内における非木造築8年の値(0.7866)です。

 

 

<購入8年目>
土地:700万円×1/6×1.4%=約1万6,300円
建物:1,200万円×0.7866×14%=約13万2,100円
合計:1万6,300円+13万2,100円=約14万8,400円

3,000万円の新築マンションを購入した当初の固定資産税額は年10万円程度、減額措置終了後は年15万円程度と考えればよいでしょう。

 

併せて、都市計画税がいくらになるのかも試算してみましょう。購入1年目と8年目の税額は次のように計算できます。

 

<購入1年目>
土地:700万円×1/3×0.3%=約7,000円
建物:1,200万円×0.3%=3万6,000円
合計:7,000円+3万6,000円=約4万3,000円

<購入8年目>
土地:700万円×1/3×0.3%=約7,000円
建物:1,200万円×0.7866×0.3%=約2万8,300円
合計:7,000円+2万8,300円=約3万5,300円

固定資産税と都市計画税を合わせると、購入当初は年14~15万円程度、減額措置終了後は年18~19万円程度かかると考えられます。金額はあくまでも目安であり、土地・建物の価格比率などによって変わる点は十分認識しておきましょう。

 

4,000万円の新築マンションを購入した場合の固定資産税額も試算してみましょう。次の条件で物件を購入するものとします。

所在地 東京23区内
購入価格 4,000万円
(うち土地分) 1,680万円
(うち建物分) 2,320万円
専有面積 50平方メートル
認定長期優良住宅 あり

3,000万円のケースと同様、土地の評価額は購入価格の7割、建物の評価額は購入価格の6割と想定します。

 

土地の評価額:1,680万円×70%=1,17万円
建物の評価額:2,320万円×60%=1,392万円

上記の評価額を用いて、先ほどと同じく購入1年目の固定資産税額を計算してみましょう。当初から購入7年目までは建物の減額措置が適用され、次のとおり計算できます。

 

<購入1年目>
土地:1,176万円×1/6×1.4%=約2万7,400円
建物:1,392万円×1/2×1.4=約9万7,400円
合計:2万7,400円+9万7,400円=約12万4,800円

購入8年目以降は建物の減額措置が終了し、建物分が基本どおりの税額に戻ります。ただ、3,000万円のケースと同じように経年減点補正率(0.7866)をかけるため、建物の課税標準は当初より下がります。計算結果は次のとおりです。

 

<購入8年目>
土地:1,176万円×1/6×1.4%=約2万7,400円
建物:1,392万円×0.7866×14%=約15万3,300円
合計:2万7,400円+15万3,300円=約18万700円

4,000万円の新築マンションを購入した場合の固定資産税額は、当初が年12~13万円程度、減額措置終了後は年18万円程度と見込まれます。

 

3,000万円のケースと同様、購入1年目と8年目の都市計画税も試算してみましょう。

 

<購入1年目>
土地:1,176万円×1/3×0.3%=約1万1,800円
建物:1,392万円×0.3%=約4万1,800円
合計:1万1,800円+4万1,800円=約5万3,600円

<購入8年目>
土地:1,176万円×1/3×0.3%=約1万1,800円
建物:1,392万円×0.7866×03%=約3万2,800円
合計:1万1,800円+3万2,800円=約4万4,600円

固定資産税と都市計画税を合わせると、購入当初は年17~18万円程度、減額措置終了後は年22~23万円程度かかると考えられます。こちらの金額もあくまで目安のため、実際の数値は異なる場合があります。

 

不動産経済研究所の調査によると、2022年に首都圏で販売された新築分譲マンションの戸当たり価格は平均で6,288万円、中央値でも5,468万円となっています。これを踏まえ、首都圏での平均的な水準となる6,000万円の新築マンションにおける固定資産税額も試算してみましょう。購入する物件の条件は次のとおりです。

所在地 東京23区内
購入価格 6,000万円
(うち土地分) 2,100万円
(うち建物分) 3,900万円
専有面積 60平方メートル
認定長期優良住宅 あり

 

これまでのケースと同じく、土地の評価額は購入価格の7割、建物の評価額は購入価格の6割として計算します。

 

土地の評価額:2,100万円×70%=1,470万円
建物の評価額:3,900万円×60%=2,340万円

購入7年目までは建物の減額措置が適用されるため、購入1年目の税額は次のとおり計算できます。

 

<購入1年目>
土地:1,470万円×1/6×1.4%=3万4,300円
建物:2,340万円×1.4%×1/2=16万3,800円
合計:3万4,300円+16万3,800円=19万8,100円

購入8年目以降は建物の減額措置が終了し、建物分の税額が元に戻ります。これまでのケースと同様に経年減点補正率(0.7866)をかけるため、建物の課税標準は1年目よりも下がります。

 

<購入8年目>
土地:1,470万円×1/6×1.4%=3万4,300円
建物:2,340万円×0.7866×14%=約25万7,700円
合計:3万4,300円+約25万7,700円=約29万2,000円

6,000万円の新築マンション購入に際しての固定資産税額は、当初が年19~20万円程度、減額措置終了後は年29〜30万円程度と想定されます。

 

購入1年目と8年目の都市計画税も試算してみると次のとおりです。

 

<購入1年目>
土地:1,470万円×1/3×0.3%=1万4,700円
建物:2,340万円×0.3%=7万200円
合計:1万4,700円+7万200円=8万4,900円

<購入8年目>
土地:1,470万円×1/3×0.3%=1万4,700円
建物:2,340万円×0.7866×03%=約5万5,200円
合計:1万4,700円+約5万5,200円=約6万9,900円

固定資産税と都市計画税の合計で、購入当初は年28~29万円程度、減額措置終了後は年36〜37万円と想定されます。ただし、これもあくまで目安であり、実際の数値は異なる場合があります。

 

住宅価格の高騰により、東京23区では1億円を超える新築マンションも多く供給されています。以下の条件で、1億円の新築マンションにおける固定資産税額も試算してみましょう。

所在地 東京23区内
購入価格 1億円
(うち土地分) 3,780万円
(うち建物分) 6,220万円
専有面積 80平方メートル
認定長期優良住宅 あり

土地の評価額は購入価格の7割、建物の評価額は購入価格の6割とすると、それぞれの評価額は次のとおりです。

 

土地の評価額:3,780万円×70%=2,646万円
建物の評価額:6,220万円×60%=3,732万円

上記の評価額をベースに、建物の減額措置が適用される購入1年目の税額を計算してみましょう。

 

<購入1年目>
土地:2,646万円×1/6×1.4%=約6万1,700円
建物:3,732万円×1.4%×1/2=約26万1,200円
合計:約6万1,700円+約26万1,200円=約32万2,900円

続いて、建物分の減額措置が終了する購入8年目の税額を計算します。経年減点補正率(0.7866)を考慮して計算すると次のとおりです。

 

<購入8年目>
土地:2,646万円×1/6×1.4%=約6万1,700円
建物:3,732万円×0.7866×14%=約41万1,000円
合計:約6万1,700円+約41万1,000円=約47万2,700円

1億円のマンションを購入する場合、当初の固定資産税は年32〜33万円程度、減額措置終了後は年47〜48万円程度と試算できます。

 

購入1年目と8年目の都市計画税の試算結果は次のとおりです。

 

<購入1年目>
土地:2,646万円×1/3×0.3%=約2万6,500円
建物:3,732万円×0.3%=約11万2,000円
合計:約2万6,500円+約11万2,000円=約13万8,500円

<購入8年目>
土地:2,646万円×1/3×0.3%=約2万6,500円
建物:3,732万円×0.7866×03%=約8万8,100円
合計:約2万6,500円+約8万8,100円=約11万4,600円

2つの税を合わせると、購入当初は年46~47万円程度、減額措置終了後は年58〜59万円程度と想定されます。ただし、あくまで目安であり、実際の数値は異なる場合があることに注意してください。

 

 

固定資産税はマンション所有者が毎年納め続けなければならない税金であり、前章のとおり納税額は決して小さくありません。マンション購入時には以下の注意点を確認し、固定資産税への理解を深めることが大切です。

 

タワーマンション(居住用超高層建築物)は高層階になるほど人気が高く、取引価格が高くなるのが一般的です。同じマンションでも低層階と高層階では資産価値に差があるにもかかわらず、以前は固定資産税評価額に反映されなかったため、税負担の公平性を欠いているのではないかと疑問視されていました。

 

これを受けて2017年度税制改正により、同じマンションでも高層階になるほど税額が高くなるよう、固定資産税の計算方法が見直されました。具体的には「階層別専有床面積補正率」と呼ばれる階数に応じた補正率が定められ、1階を100として、階層が1階上がるごとに約0.25%(10/39)の補正をかけるというものです。都市計画税も同様の取り扱いで、高層階になるほど税額が上がるため、注意しましょう。

 

次に注意したいのが、先ほど紹介した「新築住宅に係る税額の減額措置」についてです。新築マンションの建物分の固定資産税が減額となる優遇措置ですが、適用されるのは当初5年間(長期優良住宅認定マンションは当初7年間)に限られます。措置終了の翌年からは本則どおりの税額となります。「特例で下げられていた税額がもとに戻る」だけですが、所有者からすると相対的に税額がアップしたと感じられるため、要注意です。

 

マンションを購入したら、固定資産税と都市計画税は毎年必ず納めなければなりません。3,000~4,000万円のマンションを購入した場合は年10~20万円単位、6,000万円超のマンションともなれば年30〜40万円以上の単位で定期的にかかる支出ととらえ、マンション購入時の資金計画に忘れず盛り込むようにしましょう。

 

マンションの所有者には固定資産税と都市計画税の納税義務があります。

 

要件を満たす新築マンションの場合は土地・建物それぞれに優遇措置があるものの、購入価格3,000万円のマンションで合計年14~15万円程度の税負担が見込まれます。固定資産税と都市計画税の税額は評価額によって決まるため、購入価格4,000万円のマンションだと合計年17~18万円程度、6,000万円のマンションでは合計28〜29万円程度が目安です。1億円のマンションを購入すれば年46〜47万円程度と大きな負担が生じます。また、建物の減額措置が終了すると税額アップが想定されます。

 

今回紹介した税額の目安を参考にしつつ、マンション購入に際しての資金計画には、固定資産税・都市計画税の支払いを必ず盛り込みましょう。

 

監修者

赤上 直紀(あかがみ・なおき)者

<保有資格>

  • 1級ファイナンシャル
  • プランニング技能士

<プロフィール>

元銀行員。資産運用やローンを通じて、多くのお客様のライフプランニングに携わる。現在は、編集者として金融機関を中心に、ウェブコンテンツの編集・執筆業務を行う。