【物件ファンコラボ企画 彼女がマンションを買った理由 vol.6】物件探しに1年以上。幸せを呼ぶレトロクラシックな部屋

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読めて探せる不動産エンターテインメントサイト「物件ファン」と、マンションプラスによるコラボ企画・第6弾。自分でマンションを購入した女性たち六者六様のお部屋とリアルな暮らしを紹介する本企画。今回は、神戸に暮らすAさんのケースをお届けします。

Aさんプロフィール

▲Aさん(会社員)/大阪府出身。大学卒業後、デベロッパーに就職。現在は建築部建築課の課長を務める。インテリアコーディネーター、カラーコーディネーター有資格者。40代で現在のマンションを購入

神戸にある、日本屈指の高級住宅街と呼ばれるエリア。洋館に和風建築、さまざまな豪邸が立ち並ぶ、ゆるやかな坂道を上がった先にAさんの住むマンションはあります。手入れが行き届いた植栽、重厚な応接セットが配された品格漂うロビー。築55年以上の貫禄ある建物ながら、その丁寧な管理ぶりはひと目で伝わってきました。

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▲ドアを開けると真正面に広がる絶景

ドアを開けて出迎えてくれたAさんにご挨拶すると同時に思わず見とれてしまったのは、お部屋のどこからでも見える窓の向こうのパノラマビュー。

 

「私も内見でお部屋に入った瞬間、景色に一目惚れしたんです」とAさん。遠くに見渡す海と空、目下には青々とした木々と多種多様な邸宅。海と山が近接する、神戸ならではの眺望です。

アンティークドア

▲Aさんが内見時に心奪われた、琥珀色の型板ガラスがはめ込まれたアンティークドア。天井のモールディングラインをそのまま残すことで内装のイメージが膨らんだそう

お部屋に視線を移して、またうっとり。アンティークのドアに飴色のモールディング、バリエーション豊富な昭和の型板ガラスがはまった室内窓。どこを切り取っても絵になる内装です。

 

Aさんがこのお部屋に出会ったのは2022年8月のこと。じつは今のマンションを購入する前、20代後半に大阪市内で新築分譲マンションを購入した経験があるそうです。

 

「当時、不動産会社で新築分譲ファミリーマンションを扱う部署に在籍していたので、“マンションを買う”こと自体への心理的なハードルは、人より低かったかもしれません」

 

このはじめてのマンション購入が、ある意味で住まいの大切さに気づくきっかけになりました。

 

 

大阪北部出身のAさんは、就職を機に大阪市内の賃貸マンションで新生活をスタート。その後、荷物が増えて手狭になり、広いお部屋を探し始めたものの、広さにこだわれば家賃は高くなるばかり。

 

「いっそのこと広い部屋を買ってローンを組んだほうが家賃より安くなるのでは?」と考え、マンションを買ったAさん。購入したのは大阪・梅田エリアにある新築マンションの、真っ白な壁に囲まれた一室です。

 

「広さは1LDKでしたが……部屋をまったく好きになれなかったんです」

 

Aさんが気に入らなかった理由。それは“真っ白な壁に囲まれた”空間だったのです。

ソファ

▲前の部屋に住んで7年目の頃に買ったグリーンのソファ。愛着が持てなかった空間に居場所ができたことで家にいるのが少し楽になったそう。「好きなものや空間で暮らす大切さを、このソファが気づかせてくれました」。新しい部屋でも絶景を眺める特等席に

「明るいのが苦手やから真っ白なのがとにかく落ち着かない。でも、建売やから内装は選べない。『ここしかないか~』という感じでした。いつかリノベーションできる部屋に住みたいと思っていたこともあり、5年くらい住んで賃貸に出すか、売却するつもりでいました」

 

ところがAさん、このマンションになんと15年も住むことに。

 

「『いつ出ようかな?』と思いながらも、リノベーションするにしても、年齢的にもパートナーと一緒にできたらいいな、という気持ちもどこかにあって。なんとなく決断できないまま、時間だけが過ぎていきました」

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▲ソファをはじめ、シェルフやテーブルも「自分の好きなもの」を買いコツコツ集めていたAさん。そのおかげで、新たにつくった「自分の好きな空間」にもしっくりとなじむ

しかし、そんな暮らしに終止符を打つプチ事件が起こります。

 

「住み始めて10年が過ぎたころから、家電が次々と壊れ始めたんです。まず洗濯機が壊れ、次に冷蔵庫、そしてエアコン。『これはいよいよやな』と(笑)。そう思うと以前は我慢できていた騒音にも耐えられなくなり、この部屋を出ようと決めて真剣に探し始めました」

 

 

Aさんがリノベーションへの思いをさらに強めたきっかけは、おばあさまのご自宅をリノベーションする際に相談した「シンプルハウス」との出会いでした。

 

「見積もりを取ってもらい、プランナーさんに自宅でプランを考えてもらったときに同席したんです。おばあちゃんの生活のことを一番に考えながら提案してくれ、しかもこちらの要望だけじゃなく“プラスアルファ”も考えてくれる姿勢がすごくよかった。結局、そのときは予算の関係でお願いできませんでしたが、『自分がリノベーションするときはシンプルハウスさんに頼もう』と、いただいたお名刺を取っておいたんです」

玄関

▲玄関の壁もベージュ×グレーの落ち着いた色調に。ペンダントライトはガラス作家の安土草多氏のもの。ネットで見つけ、大阪で扱っている店舗があることを知って購入

シンプルハウスにリノベーションを申し込んだAさんは、同時進行で物件探しにも力を入れました。理想は、人目が気にならない静かな立地。しかし大阪市内、しかも中心部だとそういう物件はそう多くありません。神戸方面まで範囲を広げて探したものの、理想のお部屋に巡り会えないまま1年以上が過ぎました。

窓際のタイル

▲寒がりのため内窓を設置し、複層Low-Eガラスを採用したところ、断熱性が大幅に向上。さらに内窓による空気層の効果で防音性も高まり、一石二鳥の効果を実感しているそう。床はヘリンボーン張りにしたかったが、床暖房に対応していなかったため断念。代わりにタイル部分にヘリンボーンのデザインを取り入れた

そんなある日、某不動産サイトでたまたま見つけたのが今の物件。

 

「お部屋を内見したとき、窓から海が一望できたのが衝撃で。立ち会ってくれた方は『この人、部屋見いひんのかな?』と不思議に思ったそうです(笑)。それくらいずっと窓辺に立っていました」

 

周辺は落ち着いた高級住宅街、ベランダ側は抜けた眺望で人目もないに等しい立地。まさにAさんの理想どおりでした。

 

もうひとつの決め手となったのはレトロクラシックな内装。LDKの天井を囲うモールディングやアンティークの建具など、Aさんが素敵と感じる要素があちこちに。

 

「こんなアンティークな扉はなかなか手に入らない。前の住人さんもすごく内装にこだわっていらっしゃったことがうかがえました」

ハイサイドライト

▲ドアの上部にハイサイドライトを設けたことで、ドアを閉めていても廊下や玄関にも十分に光が届く

第一印象は「まさに一目惚れ」だったと言うAさん。一方で、築年数には多少の懸念があったそうです。

 

「築50年以上と古く、いつまで住めるかな……と気になったんですが、実際にマンションに訪れたとき、すごくきれいに管理されているのがわかりました。購入後、マンションの管理組合の理事のみなさんが『100年マンションを目指している』とおっしゃっているのを聞いて、ここを買って本当によかったと思いました」

 

 

理想の住まいに出会ったAさんは、シンプルハウスのプランナーさんと二人三脚で思い描いていた理想をカタチにしていきます。

ダイニングテーブル

▲愛するヘリンボーン張りはダイニングテーブルにも。シンプルハウスのインテリアショップ『KAKERA』で見つけて即購入

「内装のイメージを膨らませてくれたLDKのモールディングとアンティークの扉はぜひ残したかった。あと、前の家はものがあふれていたので、片付けやすい間取りに。そして、“白”を排除しました。それが一番のこだわりだったかもしれません」

 

実際、壁や天井は、白いようでアイボリーだったりと、ほんのりニュアンスが加わっています。

ダイニングチェア

▲ダイニングテーブルに合わせて買った椅子は、京都のアンティークショップ「70B INC.」で見つけたイギリスのG-PLANチェア

「前の住まいの真っ白な部屋がとにかく辛かったので、落ち着く空間にしたいという思いが強かったです。この家で白いところはお風呂と洗面ボウルだけ。それくらい徹底しました」

ウォークインクローゼット

▲ウォークインクローゼットは中で着替えが済ませられるよう、床を絨毯張りに。3面の壁にそれぞれ違う壁紙を配した遊び心あふれる空間

また、片付けやすさを実現してくれたのが、何が入っているか一目でわかる「オープン収納」。ウォークインクローゼットやパントリー、靴収納に扉を設けず、ストレスフリーで出し入れできる仕様に。

ヌック

▲秘密基地のようなヌックスペースは幅約180cm×奥行き81cm。マットがあるためベッドにもなり、お母さまが泊まりにきたときはヌックで眠るのだそう

そして、Aさんがシンプルハウスに頼む決め手となった、設計の「プラスアルファ」。今回プランナーさんから提案されたのが、ヌックスペースでした。Aさん自身は、当初はくつろげる小上がり空間に憧れていたそうですが、提案されたヌックは、その思いをより満足のいくかたちで実現してくれるアイデアでした。

ヌック壁紙

▲インパクト大のエスニック柄の壁紙は、輸入壁紙専門ショップ「WALPA」で見つけたもの。Aさんは壁紙好きで、気に入った壁紙を購入してブックカバーを作ることも

「『ヌックをつくってみませんか』と持ちかけられて、『ヌックって、なに?』から始まりました。でも、こぢんまりとした空間は小上がりよりもくつろげるし、『めっちゃいいやん!』とすっかり気に入りました」

型板ガラス

▲使った型板ガラスは15種類。完成したあと、ガラスに「クローバー」や「この葉」、「ハイウェイ」などそれぞれ名前があることを知り、ますます愛おしくなったそう

こだわりの中でもAさんが何よりカタチにしたかったのが、型板ガラスを自分でコラージュした室内窓です。型板ガラスは長野県諏訪市にある、古材と古道具を販売する建築建材のリサイクルショップ「ReBuilding Center JAPAN」で購入。

 

「たまたま車で長野県に行く機会があったので、一緒に行った方に『寄ってほしい』とお願いし、車内で待っててもらって1時間で選びました」

窓框

▲あえて窓框を奥に配置し、小さな飾り棚に。これまで置く場所がなく、しまい込んでいた雑貨たちがかわいさを振りまいている

室内窓は知り合いだった「トトトクラフト」につくってもらったそう。Aさんも加わってDIYした思い出を、楽しそうに振り返ります。

 

「型板ガラスはサイズもバラバラだったから組み合わせるのが大変で。柄の配置にもすごくこだわって、『こっちのほうがいいかな?』と何度も並べ直して決めました」

キッチン

▲吊戸棚は、前のキッチンで使われていた引き戸に合わせてシンプルハウスが造作。サブウェイタイルはAさんが「大阪メトロの本町駅っぽいタイル」を探し回って見つけた

Aさんがここまで内装プランにこだわることができた理由のひとつは、マンションが築古で購入費用を抑えられたこと。

 

「予想していたよりかなり安く購入できたので、そのぶん思い切ってリノベーション費用に充てることができました。トータルで大阪市内のマンションを買えるくらいかな? という感じです。私は仕事柄、マンション購入が身近だったこともありますが、ローンを組めば家賃よりも安く済んで広い部屋に住めるし、買えば資産になる。買うのは全然“あり”だなって思います」

 

なお、1軒目に購入したマンションは現在、賃貸に出しているのだそうです。

 

 

LDKのソファはもちろん、ひとつづきになった寝室やヌック、どこにいても眺望が楽しめるのが、この部屋の魅力。Aさんはここに住むようになってから、空模様をスマホで撮ることが習慣になったそう。

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▲人目が気にならないため、普段からカーテンを全開にして眺めを楽しんでいるそう

「朝日に夕暮れ、夜は神戸の夜景も。雨の日はいつも見える建造物が見えないほど霧が立ち込めたり、ずっと見てられます。このあいだは雷光を撮影することにも成功しました(笑)」

 

環境が格段に向上した今の住まい。騒音や人目の問題が解消したのはもとより、自分の好きな空間をつくれたことに一番の充足感があるといいます。

 

「以前の部屋は収納に問題があり、片付けにくくて人を招けないくらいの散らかりようでした。そんな悩みをすべてリノベーションで解消し、自分の好きな空間が完成したのは本当によかったと感じています」

キッチン棚

▲造作のキッチンカウンターの下に設けた棚には、前の住人さんがキッチンで使っていた味のある開き戸を再利用

改めて、リノベーションの持つ魅力に気付かされたAさん。

 

「このお部屋は完成しちゃってるんで、これ以上手を入れるところはないんです。でもいまもリノベーション関連の記事を眺めるのが好き。もうちょっとDIYする余地を残しておいてもよかったのかな」

LDK壁

▲ダークグリーンに色調してもらった漆喰を、友だちと2人で塗った思い出の壁。手塗り感がいい具合に残り、陰影が出て美しい

じつは、いずれどこかへ移り住むことも考えているのだそう。しかも次はひとりではなく……。

 

「この家を購入してから、パートナーができたんです。相手もリノベーションが好きで、今の部屋も『すごく落ち着く』と言ってくれるので、次の住まいはプランを一緒に考えられるかなって」

 

パートナーと力を合わせて「ふたりの好きな空間」をつくる日も、そう遠くはないのかもしれません。

間取り

▲LDKと寝室、ウォークインクローゼット、そしてヌックがつながる回遊性のある間取り。もともとキッチンがあった場所にパントリーをつくり、収納力を強化

物件DATA
所在地:兵庫県神戸市
築年:1969年
面積:67㎡
リノベーション費:1120万円

 

 

取材・文:中野純子 撮影:東郷憲志

 

WRITER

中野 純子
大阪市在住のフリーライター。家と猫と芸人さんのラジオが好きです。

おまけのQ&A

Q.マンション購入で大変だったことは?
A.Aさん:全部ひとりで決めて動かなあかんのがしんどかったです。リノベーションにこだわりたいから打ち合わせ期間を長めに取ってもらったんですけど、ひとつずつひとりで決めるのは大変でした。同時にモノを減らして移りたかったから、不用品を買い取ってもらったり捨てたり、当然ですがそれも全部ひとりでやらないといけない。仕事も日常生活もあるなかで、今の家を買って引っ越すまでの約半年は気絶しそうでした(笑)。