マンションの修繕周期|大規模修繕の相場や周期における注意点を紹介

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マンションの修繕周期は、マンションの資産価値にかかわる要素の一つです。ただ、具体的な修繕周期はマンションによって多少の違いがあります。 この記事ではまず、マンションが大規模修繕を必要とする理由や修繕の概要、メリットを確認します。そのうえで記事の後半では、国土交通省の調査結果や法律などをチェックしながら、実際のマンションが大規模修繕を実施する周期がどのくらいかを見ていきましょう。記事の最後には、マンションの大規模修繕に関してよくある質問も紹介します。 マンションの修繕周期や修繕費用などに興味がある方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。

マンションの大規模修繕とは、経年劣化したマンションの建物本体や共用部分・設備に対して行なわれる、計画的かつ大がかりな修繕工事の総称です。

 

国土交通省が公開する「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」には、マンションにおける大規模修繕の手法や留意点などが書かれています。このマニュアル内で示されている以下の図より、分譲マンションの場合、管理組合が主体となって長期修繕計画に基づいた計画修繕を実施することが分かります。

なお、「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」では、マンションの大規模修繕について以下のように定義しています。

 

全面的な外壁塗装等を伴い、修繕積立金を充当して行なう計画的な修繕等

 

▶引用:改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル(国土交通省)

 

 

 

マンションの大規模修繕には2つの目的があります。目的ごとに、修繕による効果・メリットを解説します。

 

 

 

新築マンションも購入から数年経てば、設備や建物のさまざまな部分に劣化・汚れ・不具合などが生じやすくなります。具体的には以下のような状態が挙げられます。

 

・壁のタイルが剥がれ始めた
・階段の手すりが錆びつき始めた
・大型台風の影響でフェンスが歪んだ など

 

例えば、壁のタイルが剥がれて入居者を直撃すれば、事故につながる可能性もあります。また、錆びた手すりに住民が触れると、手指にケガを負うことがあるかもしれません。

 

大規模修繕をすることで、設備や建物の不備から生じる事故やケガを防ぎ、入居者にとって快適で安全安心な住環境を提供できます。

 

 

 

経年劣化によって生じる「外壁の剥がれ」「雨漏り」「設備故障」などは、マンションのイメージを悪化させる要因ともなります。劣化によって暮らしに支障が出るようなマンションの場合、なかなか購入希望者や入居希望者が集まらないため、販売価格や家賃を下げざるを得なくなるでしょう。

 

多くの人が購入(入居)を希望するような魅力的なマンションとしての価値を維持するには、不具合などを直して良好な状態を保つために大規模修繕が必要となります。

 

 

 

まず、マンションの修繕周期は、法律により具体的に規定されているわけではありません。ただ、国土交通省のマニュアルや調査結果などを見ると、マンション修繕周期の目安となる数字が見えてきます。

 

 

 

まず、国土交通省の「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」には、以下のように示されています。

 

通常は 12~15 年程度の周期で実施されます

 

引用:改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル(国土交通省)

 

 

 

次に確認しておきたいのは、マンション建築に関係する建築基準法です。平成20年4月1日の改正により、建築基準法第12条第1項(報告、検査等)に基づく検査では、全面打診等による調査の実施周期が明確化されることになりました。

 

この改正は、マンションが竣工あるいは外壁改修から10年を超えている場合は、全面打診等による調査を行なう必要があることを意味します。ただし、3年以内に外壁改修などが確実に行なわれる場合、全面打診等による調査は不要です。

 

全面打診等による調査対象は、以下のいずれかに該当するマンション物件になります。

 

・特定建築物定期調査の部分打診、目視などによって異常が認められた物件
・外壁改修から10年を超える物件
・竣工から10年を超える物件
・落下などで歩行者に危害を加えるおそれのある部分の全面打診等を行なったあと、10年を超える物件

 

このことから、1回目の大規模修繕をひかえた10年目に最初の診断を行ない、以下の図のようなサイクルで修繕に入ることが一般的な流れになります。

 

ただし、国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調
査」によると、大規模修繕工事の平均周期は13年とするマンションが最も多く、12年、14年、15年の順で続くことが分かっています。また、マンション全体の約7割が、12~15年周期です。

なお、マンションでは大規模修繕工事のほかに、日常的に発生した不具合・破損などを直す小修繕工事も行なわれています。

 

 

マンションにおける大規模修繕工事の周期などは、経年劣化の状況や修繕実績によって変わります。また、マンションの管理組合は、一定期間(5年程度)ごとに長期修繕計画を見直すことになります。

 

そのためマンション修繕は、必ずしも一定周期で行なわれるとは限らないことも知っておいたほうがよいでしょう。

 

 

 

マンションの大規模修繕に関するよくある質問とその答えを紹介します。

 

 

 

マンションの大規模修繕にかかる具体的な金額は、マンションの規模や所有者のニーズ、劣化状況などで変わります。そこで参考になるのが、大規模修繕の工事回数と工事金額に関する調査結果が公開されている「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(国土交通省)」です。

 

この調査結果によると、工事回数別で最も割合が高い工事金額は、以下のとおりです。

 

・1回目:「4,000~6,000万円」の割合が最も高い
・2回目:「6,000~8,000万円」の割合が最も高い
・3回目以上:「6,000~8,000万円」および「1億~1億5,000万円」の割合がともに最も高い

 

また、1戸当たりの工事金額を割合の高い順に並べると、工事回数1回目では以下のとおりです。

 

1. 100~125万円/戸
2. 75~100万円/戸
3. 125~150万円/戸

 

▶出典:令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(国土交通省)

 

 

実際の工事内容は、各マンションの劣化やそれまでの修繕の状況などで変わってきます。また、大規模修繕の工事内容は、回を重ねるごとに広範囲になるものです。

 

第1回は、建築基準法第12条の関係で外壁中心の修繕になるのが一般的です。第2回になると給水管交換のほかに、サッシ・手すり・玄関ドア交換などの細かなところが加わることが多くなります。第3回目以降になると、時代の流れに合わせた設備の更新・工事などが付随されることも多いです。

 

また、マンションの修繕箇所や修繕部位には、それぞれに目安となるメンテナンス周期があることを覚えておきましょう。

 

 

国土交通省の「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」では、マンションにおいて大規模修繕を実施する周期は12~15年程度であるとしています。また、国土交通省の調査結果を見ても、約7割のマンションが12~15年周期で大規模修繕を実施しており、先述のマニュアルと同様の結果であることが分かります。

 

ただ、具体的な周期は、マンションの修繕部位や使用している材料などによって変わってきます。修繕部位と周期の関係に興味がある方は、以下のマンション百科事典を確認してみてください。

 

▶関連リンク:老朽化マンション建替えの切り札になるか!? 法改正議論の行方を聞く

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監修者

高槻 翔太

<保有資格>

  • 宅地建物取引士
  • FP技能士2級
  • 日商簿記2級

<プロフィール>

不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。売買や駐車場の活用、リフォームの提案などに従事。不動産・金融特化のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。