【いまこそ、二拠点生活。 vol.2】「まるで『魔女の宅急便』。都内から1時間、ふらり訪ねた大磯での心ほどける居場所づくり」

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読めて探せる不動産エンターテインメントサイト「物件ファン」と、マンションプラスによるコラボ企画第2弾は、「二拠点生活」をテーマに全6回で発信しています。シリーズ2回目は、都内の自宅ともう一つの住まいを行き来する、力石ありかさんのケースをお届けします。

力石さんプロフィール写真

▲力石ありかさん/デザイン・企画会社「A&C PLANNING」代表。デザイン・アートディレクション・イラストを手がけるほか、都内IT企業との業務委託契約を通じたプロジェクトにも携わる。また、社会課題に向き合う取り組みにも参画し、日本舞踊の師範としても活動。2020年より、大磯と都内の二拠点生活を始めた

品川から東海道線で約1時間。往年の宰相や財界人たちが別荘を構えた由緒ある邸宅地であり、今もなお、どこか上品で穏やかな空気が流れる街、神奈川県・大磯。

 

この街のアパートの一室に、力石ありかさんがもうひとつの拠点を構えたのは、コロナ禍の真っ只中のことでした。

 

「当時は都内の実家に住んでいたのですが、仕事がすべてテレワークになり、四六時中、家の中で過ごさなければならなくなって。収束の見えない閉塞感で、ストレスがピークに達していました」

大磯の清流

▲大磯の旧東海道を歩いていると、突如緑と清流が姿を現す

もともと、10年ほど前に「おいしい空気と良い環境」を求めて、東京から縁もゆかりもない京都へ移り住み、4年半ほど過ごした経験を持つ力石さん。フットワークの軽さと、心地よい場所を嗅ぎ分ける直感は、その頃からすでに備わっていたようです。

 

「コロナで外出できないのならば、またどこか緑が多くて空気がきれいな場所で暮らしたい。できれば海の近くに住みたくて、江の島や鎌倉あたりを検討しましたが、私、車の運転をしないんです。アクセスの良さや、津波の心配、冬の厳しさなどを現実的に考えていく中で、ふと目に留まったのが湘南の西側でした」

大磯駅舎

▲大磯駅前。レトロな駅舎は1923年に起こった関東大震災の翌年に再建された

きっかけは、力石さんの友人が二宮にオープンしたレストランの写真。そこに写っていたオーシャンビューの景色に心惹かれ、訪れてみることに。部屋探しをしてみたものの、単身者向けの駅近物件が少なく、収穫のないまま帰りの電車に乗ったのだそうです。

 

でも、せっかく1時間もかけて来たんだから、もうちょっと散歩してから帰ろう──。そう思い立って降りた隣の大磯駅で、運命の出会いが待っていました。

 

 

大磯駅で降りた力石さんの目に飛び込んできたのは、駅前の不動産屋の看板。そこに掲載されていた2LDKの賃貸物件を見た瞬間に、心が動いたといいます。

 

「都心では考えられないようなお手頃な賃料なのに、部屋が多くて、広くて。その場で内見を申し込み、部屋に入った瞬間に『わ、いいかも』と感じました」

リビングとストーブ

▲かわいいストーブが鎮座するキッチン。カウンターで過ごす時間が力石さんのお気に入り

案内されたのは、ちょっぴりレトロなデザインの、アパートの2階。そこには、力石さんが理想としていた日当たりの良さと空間の抜けがありました。

 

「キッチンカウンターから隣室まで視界が抜けている感じがすごく良いと思ったんです。古いけれど、建具はヨーロッパのアパルトマンみたいにクラシックだし、賃貸物件にしては珍しい天窓があって、陽当たりも良い。そして、有線放送とスピーカーが備え付けられていて、無料で音楽が聴ける。かつて有線放送が普及した際に大家さんが導入したらしいのですが、そのちょっとした遊び心が、私にはたまらなく魅力的に映りました」

有線のスピーカー

▲リビングの天井近くに備え付けられた有線放送のスピーカー

クラシックな建具

▲建具はクラシックな雰囲気が気に入って既存のままに

結局、翌日の朝に契約を決めたという力石さん。このようにして、事前の候補にはなかった「大磯」での二拠点生活をスタートします。

 

 

平成初期に建てられたアパートの部屋は、内見時はお世辞にもきれいとは言えない状態でした。前の住人が退去したあとのクリーニングが入っておらず、壁紙も天井も古さが目立つ状態。しかし、力石さんはそれを「自分で整える楽しさ」に変換します。

 

「入居前に、まずは一人でひたすら大掃除。壁も床も磨いて、気分は『魔女の宅急便』のキキでした(笑)。自分の手できれいにしていくうちに、どんどん部屋に愛着が湧いていきました」

キッチン

▲シックなカラーのタイルシート、ストーンや木目調のシートを貼りDIYしたキッチン。キャビネットの面材は「昭和なベージュ」だったそう

続いて着手したのはDIY。賃貸なので、大がかりな改装はできないけれど、キッチンやトイレ、洗面所には、自分好みのタイルシートや壁紙を貼り、お気に入りの空間に。バスルームには、大理石調のシートを貼りました。

 

「リビングの壁紙も『張り替えていいよ』と大家さんから言われているのですが、これ以上、手を加える必要はない気もしていて。お気に入りのパーフェクションストーブやトヨトミのストーブに点火して、ゆらめく火を眺めたり、煮物や焼き芋をつくったり。それだけで十分満たされた気持ちになります」

トイレ

▲「ぜひ見てください」と案内してくれたトイレには、モリスの壁紙が。既存の壁もレトロなタイル柄で愛らしい

ここで暮らすようになってからは、部屋全体を見渡せるキッチンのカウンターで、お茶を飲んだりしながら過ごすのが至福の時間だそう。力石さんの言葉どおり、ビートルズが流れ、暖かな陽射しが差し込む昼下がりのリビングは、ゆったりとリラックスできる空気に満ちていました。

アトリエから見たリビング

▲お気に入りスポットのキッチンカウンターで仕事する力石さん

力石さんの職業は、一言では語れません。デザイン・企画会社の代表でありながら、社会課題に向き合うプロジェクトにも参画。そして、もうひとつの大切な顔が、日本舞踊の師範です。

日本舞踊を指導する力石さん

▲日本舞踊 坂東流 師範でもある力石さん。祖母に師事し、日本舞踊を学んできた 撮影:akikoyana

「3歳から始めた日本舞踊は、私にとって日常の一部です。ここ数年は、師範として母の稽古場を手伝いながら、定期的に舞台に出演しています。東京での生活は、常に動きがあり、刺激も多い。でも、それだけだと自分のバランスがうまく取れない気がするんです。豊かな自然のある暮らしも、都会の生活も楽しみたい」

日当たりの良い和室

▲リビングの横はゆったりした6畳の和室。どちらも窓から暖かな陽射しが差し込む

そんな彼女にとって、大磯の部屋は「アトリエ」であり、静寂を取り戻すための場所。この部屋で暮らすようになってから、高校生以来、再びキャンバスに絵を描くようになったのだそうです。

 

「長年絵を描きたい願望はありましたが、東京で忙しい日々を送っていると、なかなかそのための時間も、心のゆとりも確保できず。でも、ここに引っ越してきて『よし、アトリエにできる!』と思ったんです。それでもアートへのリスペクトが強すぎて描き出すまでに時間がかかりましたが、引っ越して2年くらいしてから、徐々に筆を持ち始めました」

アトリエ

▲アトリエとして使うお部屋には天窓があり、昼間は自然光が降り注ぐ

力石さん自作の絵

▲部屋に飾られた大きくてポップなカラーの絵は、ここに来てからご自身で描いたもの

週の半分は都会でアクティブに、残りの半分は大磯で静かに自分と向き合う。二つの拠点を行き来することで、伝統と現代、静と動のバランスが、力石さんの中で美しく保たれているようです。

画材

▲アトリエのラックに置かれた画材たち

大磯での暮らしに、不便がないわけではありません。

 

「Uber Eatsも来ないですし、買い物も車がないと不便な場所はあります。でも、駅前の小さなお店で地元の野菜やしらすを買ったり、美味しい揚げ物屋さんを覗いたり。そんな、手に届く範囲の豊かさを、大磯では感じられるんです」

風通しの良い間取り

▲キッチンカウンターから見た部屋の様子。風通しの良さを感じる

仕事がある日は、朝起きたら音楽をかけてストーブを点火。キッチンカウンターでご飯を食べて、パソコンを開き、仕事をこなします。午後は場所を変え、仕事部屋兼アトリエで作業を続けるのが、ルーティンなのだそうです。

 

「海も近くて、歩いて10分ほど。引っ越し当初ほど頻繁ではありませんが、いまも定期的に足を運びます。海辺にあるお店で地場野菜を買ったり、その2階にある海を臨むカフェでお茶をしたりすることが多いですね」

大磯コネクト

▲海の近くにある「大磯コネクト」(2026年3月で閉店)ではよく野菜を買う

力石さんはこれからも、ここ大磯の拠点をセカンドハウスとしてキープしていきたいと考えています。

 

「海と緑が近くにあって、空気や星がきれいで、人も温かい。ここでの暮らしは癒やしそのものです。コロナ禍が終わってからは仕事や日本舞踊の稽古で都内へ出ることが多くなったので、二拠点生活をやめようかと考えたこともありますが、大磯に帰ってくると、ふわっとやわらかな風を感じて癒やされる。ずっと大磯ではないかもしれないけれど、このような二拠点の環境を持ち続けられたらと思っています」

東海道

▲東海道の名残を感じられる松の並木道

大都会とは真逆の、ゆったりした時間が流れる街と、静かな部屋。なくてはならない大磯での二拠点生活を続けるにあたり、力石さんの目下の課題は「地元コミュニティーとの関わりをもっと増やすこと」だといいます。

 

ふらりと訪れた美しい街に移り住み、居心地の良い部屋を整えて、少しずつ新しい生活を築いていく。『魔女の宅急便』のキキが旅立つ前に抱いた「贈り物の蓋を開ける時みたいにわくわくしている」感覚をいくつになっても味わえることもまた、二拠点生活の醍醐味のひとつなのかもしれません。

こゆるぎの浜

▲越してきた当初は毎日通っていたという「こゆるぎの浜」。見渡すかぎり小石浜が続く

物件DATA
所在地:神奈川県中郡大磯町
築年:37年
間取り:2LDK

 

間取り

取材・文:つやまゆうこ 編集:岸良ゆか 撮影:赤澤昂宥

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WRITER

つやまゆうこ
幼い頃から物件チラシを眺め、間取り図を描いて遊んでた根っからの間取りスト。平屋、古民家、古い喫茶店、歴史的建造物、路地探検が大好き。障害者福祉に従事する三児の母。

おまけのQ&A

Q.大磯のおすすめは?
A.駅前の「ほっこり」で買う、しらすと地場野菜、「井上かまぼこ店」のさつまあげ。それと、駅近くの「ミートショップ」の唐揚げや串揚げ。自炊が基本ですが、ここのお惣菜にはいつも助けられています!