住宅価格が上がる今、マンションを買った30代の決断とその先にある暮らし

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30代でマンションを購入し、その選択に満足している3人。それぞれどんな思いで今の街や住まいに辿り着いたのでしょうか。子育てやローン、暮らしの質をはじめ、「買って良かった?」「こんなはずじゃなかった?」などの本音トークを展開。住まいと暮らしの実情を探ります。

――まずは、どんなマンションを購入されたのか教えてください。

 

尾山台さん(以下、尾山台):築7年、1億円ほどの中古マンションを2025年の3月に購入しました。世田谷区の玉堤という住宅街で、尾山台駅から徒歩12分くらい。広さは74㎡の2LDK、南西向きの5階、ルーフバルコニー付きの部屋に、妻と1歳の子どもと暮らしています。

 

 

――相場に比べると、手頃な価格だったんでしょうか。都内のマンションは本当に高騰していますから。

 

尾山台:ハザードマップに少しかかっている立地や、坂の下という条件もあって、相場より安く買えたと思っています。あと、前のオーナーがとある事情から早期売却を希望していて、うまくタイミングが合ったんですよ。

 

 

――初台さんはいかがですか。

 

初台さん(以下、初台):2022年に渋谷区初台の新築を購入しました。58㎡で7,500万円、倍率は3倍くらいでしたね。初台駅まで徒歩2分という立地で、夫婦と犬2匹で暮らしています。

 

18階建ての7階で、窓の外に緑が多くて。季節ごとに変わる木々の色が見えるのが何よりのお気に入りです。

 

 

――駅近で緑が見えるって、なかなか贅沢な環境ですね。有明さんはいかがでしょう?

 

有明さん(以下、有明):私は湾岸エリアの有明のタワーマンションです。2023年に2LDK(6階、50㎡、6,800万円)を買ったあと、より眺望の良い上層階に移りたくなってしまい、2025年に同じマンション内の21階に住み替えました。間取りは同じ50㎡、約1億円の部屋に妻と子どもの3人暮らしです。

 

 

――2年で買い替えは、かなり思い切った決断ですね。

 

有明:最初に買った部屋が想定外に値上がりしていたんですよ。それで「1部屋目を今売った場合の価格と新しく購入する部屋の価格差がそんなになさそうだな」と思えたので、値上がっていた1室目のマンションを売却しつつ借り入れを増やし、利益は資産運用に回そうと考えました。

 

 

――資産運用の観点からもあったのですね。

 

有明:妻も私も金融機関に勤めているので、運用や投資が好きなんです。初めこそ戸惑いを見せた妻も、最終的には納得してくれました。「どうせなら一度は景色がいいところに住んでみたい」という願望もありました。

世田谷、渋谷、湾岸エリアのマンションを購入した3名

▲(左から)会社経営 1985年生まれ 尾山台さん 。/ 教育関係勤務 1987年生まれ 初台さん。/ 金融関係勤務 1992年生まれ 有明さん。 ※所属・肩書きは取材当時のもの

――世間では、マンション価格が高騰しているといわれている時期に購入されていますが、決断の理由は?

 

有明:子どもが生まれたタイミングですね。それまでは会社の家賃補助もあったので、賃貸派だったんです。ところが先輩から「湾岸エリアは子育てしやすいよ」と聞いたのをきっかけにマンションを内見したら、分譲の造りの良さに驚いて。共用部分や室内仕様が、当時住んでいた賃貸とは全く違う。「こんな家に住んでみたい」と強く感じましたね。

 

尾山台:うちも子どもの誕生が大きかったですね。以前は中目黒と恵比寿の間の山手通り沿いに住んでいましたが、交通量が多く、騒がしくて。「ここで子育てしていくのか…」と思うと、将来のことが想像できなかったんですよね。家賃とほぼ同額のローン返済額であればもう買ってしまおう、と思い至りました。

 

初台:うちの場合は西日本出身の妻が結婚を機に関東に住むことになり、せっかくなら「都内で暮らしたい」という希望を持っていました。私自身も代々木公園が好きなことに加え、じつは代々木公園は、ふたりが出会った場所でもある。そこで、代々木公園周辺の初台に住むのもいいかなと考えました。

住宅価格高騰下にマンション購入を決断した理由

▲代々木公園のある環境と、35年ローンの逆算から購入を決意したという初台さん

――ロマンチックな理由ですね。

 

初台:もちろん現実的な考えもありました。購入当時は私は35歳だったので、ここで35年ローンを組めば70歳まで働く計算になります。そう考えると、ちょっとでも先送りにするとどんどん選択肢が狭まるなと。これは、ぐずぐずせずに今買うしかないとの思いもありました。

 

 

――物件探しはスムーズにいきましたか?

 

尾山台:思い立ってから3ヵ月ほどですね。最初は目黒にも近い不動前の新築を見に行きましたが、モデルルームに行くとやっぱりテンションが上がっちゃいますね。ただ、一度冷静になろうとそのマンションは見送りました。

 

それからポータルサイトでいろいろ検索したんですが、あまり良いものにヒットせず。そんな中でMeta(旧Facebook)の広告に出てきた今の物件を目にして「これだ」と直感し、内見に行って即決しました。2面採光で開放感があり、見た瞬間にピンときましたね。

2面採光がマンション購入の決め手

▲購入の決め手は開放感と2面採光だったという尾山台さん

有明:私も3ヵ月くらいで決めました。有明ガーデンがすぐそばで、商業施設が充実しているのが魅力で。じつは夫婦共に出身地には海がないので、海が近いことにある種の憧れがあったんです。

 

初台:私はマンション情報サイトや口コミ掲示板をずっと見ていました。最初に申し込んだ日本橋の新築物件は抽選で外れちゃった。そのあと代々木公園近くで新たに売り出しが出たタイミングですぐに申し込み、こちらは当選。タイミングってあるんだなと思いましたね。

 

 

――実際に住んでみての感想は?

 

尾山台:「こんなはずじゃなかった」という点は一切ないです。“分譲の造りはやはり違う”と、日々実感します。二子玉川の花火大会をルーフバルコニーから見られるし、子ども用のプールも出せる。

 

 

――それは贅沢な環境ですね。

 

尾山台:唯一の懸念だったのはマンション内にはもう空き駐車場がなかったこと。近所でも空きがなく、駐車場を管理している不動産会社に直談判しに行ったら運良く空きが出るタイミングだったため、確保できました。

 

初台:うちはIoT対応の設備がとても便利です。外出先からエアコンやお風呂の操作ができますし、内廊下で各階にごみ置き場がある点も快適ですね。唯一の課題は、妻の持ち物が多くて1部屋を物置にしてしまったことくらい(笑)。間取りをフル活用できていませんが、こればっかりはマンションというより住み方の問題ですね。

 

有明:私は6階から21階に住み替えたことで、眺望の大切さを痛感しました。最初に住んでいた部屋は、前に商業施設があり視界が抜けていない部屋だった。じつは売却する時も眺望がネックになって見送られたケースが複数件ありました。見晴らしって、家探しや生活の満足度両方に影響するんだと実感しましたね。内装は変えられるけど、眺望は変えられないですから。

眺望はマンション購入を決めるのに欠かせない要素

▲有明さんは資産性と眺望を重視した結果、今のマンションに辿り着いたそう

過去記事「都心マンション駐車場が空いていない!? 管理と仲介のプロが実情を語り合う」ではマンション駐車場の課題と解決の糸口を紹介

 

 

――皆さん、まだ買ったばかりで気が早いように思いますが、今後の住み替えや将来の計画は?

 

尾山台:2人目ができたら確実に手狭になるだろうなとは思っています。リビングが広い部屋なので間取りを変えて住むこともできますが、子どもの成長に応じて買い替えになるかもしれませんね。

 

有明:2LDKマンションで子育てをする2LDKさんのブログなどを参考にさせていただき、最初の購入時には「2LDKでいいか」と考えていました。でも住宅価格がここまで高くなった今、「最初から3LDKにしておいても良かったかな」と感じています。

 

 

――最初の選択をもっと大切にすべきだったかもしれない。

 

有明:やっぱり、子どもが大きくなっていくことを考えると今の部屋もすぐに狭くなるのかなと。SNSでも「買えるなら初手から70㎡以上の3LDKを」という意見もありますけど、今振り返ってみると「確かにそうかも」と。

 

だからこそ、購入時は将来の買い替えも見据えて資産性や流動性を意識しておくことは大切だと感じますね。

 

初台:老後はマンションを売って、軽井沢みたいな自然の多い場所で暮らすのもいいなと考えています。都心にアクセスしやすい便利な場所が一番いいと思っていましたけど、自然環境が近いことの価値も分かってきました。

 

 

――マンションを買ったことで、選択肢が増えた?

 

初台:まさにそうです。むしろ、都心にマンションを買ったことで、住み方に対する選択肢がすごく増えた感覚がありますね。

30代マンション購入者による座談会

▲「マンション好きという共通項はあるけれど、ここまで深く自分たちの住まいについて話す機会はなかなかなかったから今日は楽しかった!」と会話が弾むお三方

――現状のローンや金利についてはどう考えていますか?

 

尾山台:私は経営者なので、将来のローン審査に向けて役員報酬を高くして、個人の収入を増やしていました。銀行は過去3年間の役員報酬の平均値を見るので、審査はギリギリセーフでしたね。

 

頭金は入れずフルローンです。住宅ローンの金利は安いので、手元にある資金は、むしろローン以上のリターンになるよう運用に回した方が効率的だと判断しました。

 

有明:日銀の方針を見ていても、今後も金利は一定水準まで上がる傾向が続くと思っています。世界的に見れば日本の住宅ローン金利はまだまだ低い水準。だから購入を迷っている人は、借り入れに無理が出すぎない範囲で早めに広い部屋を確保するのは合理的だと思いますね。

 

初台:変動金利で借りているので、金利上昇を見越して支払い計画を立てています。これからもっと金利が上がるかもしれませんが、それでも3年前のタイミングで買って良かったと思っています。

 

 

取材・文:小野悠史 撮影:ホリバトシタカ

 

WRITER

小野 悠史
不動産業界専門紙を経てライターとして活動。「週刊東洋経済」、「AERA」、「週刊文春」などで記事を執筆中。X:@kenpitz

おまけのQ&A

Q.マンションを選ぶ際、実際に参考にしたり影響を受けたりしたインフルエンサーやブロガーは?
A.初台:マンションマニアさんの発信(ブログX)には、自分の選んだ軸が間違っていないか確認しようという考え方があって。私の場合はその軸が「駅近・ブランドマンション・好きな街」でしたが、背中を押してくれる材料になったかもしれません。資産性を重視した発信をするインフルエンサーも多い中で、 「マンションに住むのは楽しいよ」というスタンスに共感しています。