本連載「佐藤健寿の奇になる住まい」ではこれまで、世界各地のユニークな住宅やその土地独自の“住まいのかたち”を紹介してきました。今回は趣向を変え、バンコクで暮らし働く日本人2組のリアルな日常に迫ります。変わった住居や建物ではなく、ごく普通の日本人がどんな住まいを選び、どんな毎日を送っているのか。 バンコクで出会った日本人の「奇になる住まい」後編をお届けします。
▲佐藤健寿(さとうけんじ):写真家。TV番組「クレイジージャーニー」でも知られる他、『奇界遺産』シリーズ(エクスナレッジ)は写真集として異例のベストセラーに。写真展は松任谷由実さんとの企画写真展「写真展 能登 20240101」他、過去、ライカギャラリー東京/京都、高知県立美術館、山口県立美術館、群馬県立館林美術館などで開催。「佐藤健寿展 奇界/世界」は全国6ヵ所を巡回し訳13万人を動員。5月15日より品川キヤノンギャラリー Sにて写真展「U.F.O. - Unknown / Forgotten / Overlooked」の開催
第二部 森さん夫妻――“旅するように暮らす” バンコク新婚生活
バンコクで働く日本人・前編の井澤さんに続いて、佐藤さんと訪れた2軒目は、森さん夫妻。新婚の彼らは“二人でどこにいても生きていける暮らし方”を目指してバンコク移住を決めた。
▲リーさん(左)、カナデさん(右)の新婚カップル
リーさん(27歳・京都出身)はIT企業のバンコク支社で働き、カナデさん(29歳・東京出身)はフリーランスとして日本の企業のアシスタントや食品関連の仕事を手掛けている。
「去年、思い切って東京の家も仕事も手放し、5ヵ月間東南アジアを“住むように旅”しました。ベトナムやマレーシアなど1カ国ずつ滞在する中で、一番しっくりきたのがタイ・バンコクでした」(リーさん)。
▲落ち着いた照明と木の質感が心地良いリビングダイニング
▲リーさん宅からの眺め。窓越しに広がるバンコクの高層ビル群と緑
バンコクの住まい事情――オンライン内見で探す理想の部屋
物件探しも日本とは大きく異なった。
▲コンパクトながら機能的にまとめられたキッチン
▲明るく清潔感のあるバスルーム
「条件は駅近・バスタブ付き・広いキッチン。ネットと現地不動産を駆使して、オンライン内見で決めました。約50㎡・2ベッドルームのコンドミニアムが家賃約2万4,000バーツ(約10万円)、ジムやプールも共用」とリーさん。
▲中庭の緑を眺めながら、ランニングやトレーニングに集中できる贅沢な空間
▲バンコクのビル群を望む、屋上プール
家具付き物件が多く、引っ越しもスムーズ。日本では当たり前のバスタブが見つからなかったり、水道水が飲めなかったり ⋯というギャップも、ひとつずつ現地流に適応していった。
▲仏像や象のオブジェ、マリオのフィギュアなど、さまざまな小物が並ぶデスクの一角
▲カラフルで個性的なクッションが並ぶリビングソファ
▲カラフルなタイ語のアルファベット表
また、マンションの共用スペースでは保護猫が自由に暮らしていたり、トゥクトゥクの無料送迎サービスがあったりと、日本では考えられないような日常も楽しんでいる。
「みんなで猫を可愛がる雰囲気や、徒歩10分でもバイクタクシーを使う文化には驚きました」とカナデさん。
▲ロビーの床にのびる猫と、クリスマスの飾り付け
▲トゥクトゥクの無料送迎サービスは、 管理人さんが親切に対応してくれる
バンコク生活は、毎日が新鮮な発見の連続だ
「飲み物は、甘さを0%〜200%で指定できる。30%で頼むと既に日本の“甘め”くらい。タイ人は甘党で、デフォルトがとにかく甘い」「交通渋滞がひどいけれど電車やタクシーが充実している」「日本食材やレストランが豊富で、時に日本以上に“日本っぽさ”を感じる」と二人は語る。
平日はリーさんがオフィス勤務、カナデさんは在宅ワーク、休日は二人でローカル市場やカフェ巡りなど、“旅するように暮らす”スタイルを満喫中。「どこでも働けるからこそ、今後もいろんな場所で暮らしてみたい」と、バンコクの他にも新しいエリアや国への興味も尽きない。
▲新しい土地での暮らしが、二人の毎日を彩っています。
お二人とも、言葉通り旅先で良く見るような日本人のカップルという感じで、そのままバンコクで暮らしていることが新鮮でした。建物もきれいで、日本のマンションとも似ているような感じがしました。一方で、共用部では猫が自由に寝ていたり、屋上に巨大なプールがあったり、そういうゆるさがタイっぽくて良いですね。ちなみに自分も撮影した雑誌を二人が何冊か持っていてくれて、自分がタイで撮影した仏像の写真を冷蔵庫に張っていてくれたのがうれしかったです。(佐藤)
佐藤健寿の奇になる住まい、次の取材先はどこになるのか。乞うご期待!
佐藤健寿の寄り道「チャトチャック・ウィークエンド・マーケット」
今回の寄り道は、バンコクで最も大きい市場「チャトチャック・ウィークエンド・マーケット」 。バンコク市街地とドンムアン空港のちょうど中間あたりに位置するこの市場は、15,000もの露店が軒を連ねる世界最大級のマーケットである。広大な面積があるのだが、商品ごとにセクションが分かれている為、買いたい商品が決まっていれば意外にも見つけやすいらしい。私達はプレゼント企画のお土産を探しにきたのだが、訪れたのが平日だった。さすがウィークエンドマーケットというだけあり、植木セクション以外のお店はほぼ閉まっていた。
「バンコク北部にあるマーケットですが、問屋街でもあり、日用品からお土産まで何でも揃うのでおすすめです。ちなみにこの市場に限ったことではありませんが、タイでは日本人向けの店でなくても日本語が使われているお店は美味しい、という印象があるためか、いろんな場所で奇妙な日本語を目にすることがあります。これは市場にあった看板ですが、店舗も閉まっていたので何の店かもさっぱりわからなかったです」(佐藤)。
解読不能度:★★★★★
撮影・取材:佐藤健寿 文:山忠
PHOTOGRAPHER
写真家。『奇界遺産』シリーズ(エクスナレッジ)は写真集として異例のベストセラーに。ほか著書に『世界』『PYRAMIDEN』『CARGO CULT』など。TBS系「クレイジージャーニー」ほか出演多数。写真展は過去、ライカギャラリー東京/京都、高知県立美術館、山口県立美術館、群馬県立館林美術館などで開催。「佐藤健寿展 奇界/世界」は全国6ヵ所を巡回し約13万人を動員。
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WRITER
マンションについて勉強中の旅好きライター。ランニング、和菓子が好き。
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