マンション売却で損しないために。プロが教える「出口戦略」

  • XX
  • facebookfacebook
  • BingBing
  • LINELINE

住まいは「一度買ったら終わり」ではなく、ライフステージに応じてマンション売却や住み替えなどを検討する方も増えつつあります。人気YouTubeチャンネル「東京不動産マニア」などで都心の不動産情報を発信する一心エステート代表・高田一洋さんに、マンション売却戦略のヒントを聞きました。

――マンションの住み替えを成功させるために必要なこととは?

 

高田一洋さん(以下、高田):まず重要なのは、現在の住まいをできるだけ高く、少なくとも住宅ローン残債を上回る金額で売却することだと思います。そのためには、物件選びの段階から「出口戦略」を練っておくことが大切です。つまり、購入の時点で売却することを想定しておくということです。

 

出口戦略という考え方は元来、不動産投資の分野で使われてきましたが、実需層においても永住志向を持っている方ばかりではなくなってきました。マンションを購入する時点で売却を見据え、流通性や資産性の高い物件を選んでおくことで、将来の住み替えの自由度や満足度を高めることができるでしょう。

 

 

――物件選び以外で出口戦略として考えておくべきことは?

 

高田:できれば「何年後に売却するのか」も想定しておいたほうがいいですね。もちろん想定通りとはいかないこともありますが、何年住むつもりなのかによって選ぶ物件の間取りや広さも変わってきますし、売却までの間に資産価値の上昇が見込めるエリアというのも変わってくると思います。

 

そういった意味では、住まいを購入する際にある程度ライフプランをシミュレーションしておくことも大切になってくるでしょう。たとえば、子どもは何人ほしいのか、私立校に通わせるのか、転職をするつもりなのか……といったことを想定しておくと、予算や物件に求めることが明確になります。

高田一洋さんプロフィール

▲高田一洋さん。大学卒業後、コンサルティング会社に4年、不動産事業を展開するリストグループに10年在籍。在職中に東京都心の高額不動産の売買・賃貸仲介の実績を重ね、2021年に都心6区を中心に扱う不動産会社の一心エステートを創業。著書に『住んでよし、売ってよし、貸してよし。高級マンション超活用術 不動産は「リセール指数」で買いなさい』『マンション売却の錬金術「マンションを売りたい」と思ったら最初に読む本』 X:@Takada_Issin YouTubeチャンネル:たかちゃん不動産

―現在は金利上昇局面にありますが、出口戦略によって住宅ローン選びにも違いが出てくるものなのでしょうか?

 

高田:固定か変動かということでいえば、どのような出口戦略を描いたとしても「変動金利」一択だと思います。住宅ローンの固定金利と変動金利の金利差は、現在2%ほどです。仮に1億円を金利1%と金利3%で借り入れた場合、35年ローンの月々の返済額には10万円ほどの差が生じます。この差額を投資に回したほうが資産形成につながりやすいはずです。

 

 

――流通性や資産性が高いマンションの特徴は?

 

高田:一言で言えば「都心・駅近」です。コロナ禍以降、都心回帰の動きが進み、共働き世帯の増加によって、職住近接の価値も改めて高まっています。日本では長期的に人口および世帯数が減少していく見通しですが、全国一律に減っていくわけではありません。国や自治体はすでにスマートシティ化やコンパクトシティ化を推進しており、都市機能を中心部へ集約する動きが進んでいます。全国各地で再開発が行われていますが、その多くは、やはり都心や駅近エリアに集中しています。

 

人口が減少していくからこそ、利便性の高い「都心・駅近」の価値は相対的にさらに高まり、都市部への一極集中は今後も加速していくものと考えられます。これは首都圏に限った話ではなく、地方都市においても都市部への一極集中が進んでいく構図は同様です。

 

ひとつ、わかりやすい指標として「新築マンションが分譲されるエリア」という点も挙げられます。これだけ建築費が高騰し、供給数が限られている中でも新築マンションが開発されるということは、それだけ需要が高く、事業としての採算が見込めるエリアだということです。新築マンションの供給が周辺の相場価格を押し上げるということもあります。

 

再開発も厳密にいえば、駅や商業施設の整備を中心とした開発と、新築マンションを含む開発の2つに大別されますが、資産価値の上昇がより期待できるのは後者です。

 

 

――マンションの広さについてはいかがですか。

 

高田:私はよく、住まいを購入される方に「ジャストサイズの物件を選ぶべき」とお伝えしています。多くの方は「大は小を兼ねる」「将来を見越して大きめの家を買っておく」といった価値観をお持ちですが、たとえば二人暮らしのうちから70㎡、3LDKが必要でしょうか。

 

現在、東京都区部の中古マンションの平米単価は130万円を超えています。50㎡と70㎡のマンションの差額は、平均価格でいえば2,500万円以上です。2026年度税制改正によって、中古住宅の住宅ローン控除の面積要件が「50㎡」から「40㎡」に緩和される見通しですので、最初に購入するマンションとしては40㎡台も狙い目だと思います。広さが必要になったら住み替えればいいのです。

高田一洋さん「住宅価格が高騰する時代においては、“今必要な条件”に焦点を充てるべきだ」

▲住宅価格が高騰する時代においては「“今必要な条件”に焦点を充てるべきだ」と高田さん

――高田さんは2025年に『マンション売却の錬金術 「マンションを売りたい」と思ったら最初に読む本』という書籍を出版されていますが、いざマンションを売却するという局面で大事になってくることは?

 

高田:まず、見た目の印象は非常に重要です。とはいえ、必ずしもお金をかけて改修などをする必要はありません。居住しながら売る場合はできることも限られますが、過去には、くすんだ窓をきれいに磨いただけで50万円高く売れた事例もありました。他にも、できる限り物を減らしてすっきり見せたり、水回りを丁寧に掃除したりするだけで、好条件で売れる可能性は高まります。

 

また、ポータルサイトなどに掲載する写真のクオリティーも非常に重要です。弊社ではプロのカメラマンに撮影をお願いしていますが、担当者がスマートフォンで撮影している不動産会社もあります。写真の印象ひとつで反響は大きく変わります。

 

共有部などの維持・管理状態も大切ですね。日頃からできる限り丁寧に住むというのはもちろん、適切なタイミングでマンションのメンテナンスや修繕を行い、その履歴を残しておくことで価値が高まることもあります。中古住宅は、物件の状態が十分に可視化されないまま販売されるケースも少なくありません。情報をしっかり開示できること自体が、物件の価値につながります。

 

 

――こうしたことを助言・実行してくれる不動産会社を選ぶということも大切になってきそうですね。

 

高田:売却を依頼する前に、しっかり不動産会社の担当者とコミュニケーションを取り、信頼できるかどうか見極めることが大切だと思います。担当者は、自社と売主、そして買主と買主側の不動産会社の間に立って仲介するため、良く言えば「調整役」、悪く言えば「八方美人」ともいえる立場です。

 

ただ売主の担当者には、やはり売主の利益を最優先に考えてもらわなければなりません。売主の声を聞き、物件の特性や状態を踏まえたうえで、適切な価格設定や販売戦略を具体的に提案してくれる担当者かどうかが大切です。口コミを見るのも良いですし、最近はSNSやYouTubeで個人の担当者が発信していることも多いので、こうしたものを参考にしてみるのも良いと思います。

 

加えて、担当者の「資格」も重視すべきでしょう。宅地建物取引士の資格を持っているのは当たり前です。たとえば私は、お客さまにお金やローン、管理、相続などに至るまで多角的に助言させていただくためにも宅建士に加え、賃貸不動産経営管理士や管理業務主任者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローンアドバイザー、相続診断士などの資格を取得しています。こうした保有資格の幅も判断材料になると思います。

不動産会社を選ぶ際は「担当者の名刺に記載されている資格にも注目したい」と語る高田さん

 

書籍「マンション売却の錬金術」

▲自著でもマンション売却の心得を詳しく解説している高田さんは、不動産会社を選ぶ際は「担当者の名刺に記載されている資格にも注目したい」と語る

――住まいの購入は一度でも大きな決断です。実際には「売りたいときに売れるのだろうか」「本当に資産形成につながるのだろうか」といった不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

 

高田:「デフレマインド」から脱却する必要があると思います。いまだに、失われた30年余りの間に定着した「不動産は経年によって価値が落ちるもの」「できる限り借り入れ金は少ないほうがいい」といった考えのままの方が多いように思います。90年代のバブル期は、実体経済とかけ離れた形で不動産価格が高騰していたことから、バブル崩壊後に急落してしまったわけですが、現在は国内外の需要やインフレを伴った上昇ですから、場外に出されるような暴落が起こることはないと考えます。

 

 

――昨今は金利が上昇局面にあるということもあって、借り入れに対して一定の不安を抱いている方もいると思います。

 

高田:住宅ローンはたしかに借り入れではあるものの「信用をお金に変える」という捉え方をすれば見方が変わると思いますよ。人が豊かになる方法は、労働と投資、そして信用の3つしかありません。たしかに金利は上昇局面にありますが、インフレ下では労働だけで資産を増やしていくことは難しく、信用をお金に変えて住まいに投資することが資産保全、資産形成につながります。

 

インフレ下において借り入れは目減りしていくものでもあり、インフレだからこそ金利が上がるのです。なおかつ圧倒的に金利の低いローンを利用でき、住宅ローン控除という手厚い税制優遇まで受けられるのは、マイホーム以外にありません。

 

暮らし方や働き方が多様化する中、現代はライフスタイルやライフステージに応じて「軽やかに住み替える」ことで住まいの選択肢が広がり、結果として暮らしそのものの豊かさにもつながっていくのではないでしょうか。

 

WRITER

亀梨 奈美
不動産ジャーナリスト。不動産専門誌の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

X:@namikamenashi

おまけのQ&A

Q.住み替えの検討に適したタイミングとは?
A.住み替えのベストタイミングは、結婚・出産・進学・離婚・子どもの独立の5つだと思います。前者4つは割と皆さん意識されるタイミングなのですが、最後の「子どもの独立」を機に住み替えを検討する世帯は少ないように思います。じつは子どもが独立する時期は、ご自身の仕事や暮らし方にも変化が出てくるタイミングと重なるので、住み替えに適した時期といえます。子どもが巣立ったタイミングで、夫婦2人のジャストサイズの家に住み替えるというのも良いと思います。ダウンサイジングすることで、より利便性の高いエリア、より生活動線が良い住まいに住み替えることも可能です。