フルリフォームとは、壁や床などを解体し、構造躯体を残した状態から住まいを全面的に改修することです。間取りの変更や配管の交換など、大胆なリフォームができるのが大きな魅力です。 一方で、フルリフォームは大規模な工事になるため、費用が高いのではと不安に思う方もいるでしょう。工事内容を変更したり、減税制度や補助金を利用したり、ポイントを押さえればリフォーム費用を安くできます。 近年は建材価格や人件費の上昇によりリフォーム費用も変化しているため、最新の費用相場を把握した上で計画を立てることが大切です。 当記事では、マンションでフルリフォームできる範囲、2026年最新の費用相場、建て替えとの違い、工事期間の目安、リフォーム事例、費用を安くする方法、マンションのリフォームに関する注意点について解説します。
INDEX
- マンションフルリフォームに関する基礎知識
・フルリフォームとは?
・マンションでフルリフォームできる範囲とは? - マンションのフルリフォームにかかる費用の相場
・フルリフォームと建て替えの違い - マンションのフルリフォーム費用を抑える方法
・予算オーバーのときは部分リフォームにする
・設備や建材などでコストダウンを図る
・リフォームローンを比較・検討する
・住宅ローン減税制度や補助金を活用する - マンションのフルリフォーム工事期間の目安
- マンションのフルリフォーム事例3選
・1.築44年のマンションがセンスのあるスタイリッシュな住まいに
・2.便利な大容量収納&モダンな和室でくつろげる自宅へ
・3.DIYで費用を抑えてブルックリンスタイルのおしゃれな住まいに - マンションのフルリフォームに関する注意点
・追加工事やリフォーム以外の費用も考慮する
・構造により間取りの変更が難しい場合がある
・リフォームの前に管理組合へ申請する必要がある
・リフォーム期間が延びる可能性がある - まとめ
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マンションフルリフォームに関する基礎知識
フルリフォームの基本的な工事内容とメリット、マンションでリフォームできる範囲について解説します。
◇フルリフォームとは?
フルリフォームとは、専有部分の天井や壁、床、住宅設備などを撤去し、構造躯体(コンクリートなど)が見える状態まで解体して全面的に改修する工事です。スケルトンリフォームと呼ばれることもあります。
部分リフォームとは異なり、壁や床の刷新、配管・配線の更新、間取りの変更など、大規模なリフォームが可能です。
マンションでフルリフォームをする場合、現在の住まいで実施する他に、新たに居住するために購入した中古マンションで実施する二つのパターンがあります。
近年は新築分譲マンションの価格が高騰しており、新築と比べて価格が安い中古マンションを購入し、フルリフォームを行う人も増えています。フルリフォームを前提として中古物件を購入すると、費用を抑えつつ理想の住まいを実現しやすくなる点が魅力です。
◇マンションでフルリフォームできる範囲とは?
マンションでフルリフォームできる範囲は原則として「専有部分」に限られます。
マンションの専有部分とは、区分所有者が単独で所有し、使用できる住戸内の空間のことです。建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)の第2条第3項において、専有部分は「区分所有権の目的たる建物の部分」を指しています。
したがって、専有部分とは「マンション構造部分のコンクリートの天井や壁の内側にある居住スペース」のことです。玄関ドア(外側)、窓、サッシ、バルコニーなどは共用部分であり、原則的にリフォームはできません。
マンションのフルリフォームにかかる費用の相場
▲画像提供:PIXTA
フルリフォームの費用相場は、1㎡当たり10万~20万円程度が目安とされています。たとえば70㎡前後のマンションでは700万~1,400万円程度が目安です。
フルリフォームでは壁や床、天井、住宅設備などを一新し、住戸全体を大規模に改修します。そのため、部分リフォームと比較すると費用は必然的に高くなります。あらかじめ費用の相場を把握しておき、理想のリフォームができるのか検討しましょう。
近年は建材や設備機器の価格、人件費の上昇を背景に、リフォーム費用も上昇傾向です。また、新築マンション価格も高騰しており、中古マンションを購入してフルリフォームする選択肢への関心が高まっています。
ただし、築年数が古いマンションでは、解体後に配管や下地の劣化が見つかり、追加工事が必要になる場合があります。築古物件をフルリフォームする際は、想定外の費用も考慮して総工事費の10~20%程度を予備費として見込んでおくと、想定外の出費にも対応しやすくなります。
マンションのフルリフォーム費用を抑える方法
▲画像提供:PIXTA
設備を含めて新築同様にフルリフォームする場合、費用が1,000万円を軽く超える可能性があります。リフォーム費用を少しでも抑えるには、以下のポイントを実践しましょう。
◇予算オーバーのときは部分リフォームにする
専有部分を管理規約の範囲内で自由にリフォームできるからこそ、理想を追求するあまり予算オーバーになることも少なくありません。予算オーバーになったときは、要望をすべて洗い出し、優先順位を決めることが大切です。
それでも予算的にフルリフォームが難しい場合は、部分リフォームに工事内容を見直すことをおすすめします。建材の老朽化や設備の故障箇所など、優先順位が高い場所を部分リフォームすると良いでしょう。
部分リフォームが可能な場所とリフォーム内容、費用の相場は次のとおりです。
| 場所 | リフォーム内容 | 費用相場(目安) |
|---|---|---|
| キッチン | システムキッチン(Ⅰ型)の交換 | 40~80万円 |
| 浴室 | システムバスの交換(マンション) | 50~100万円 |
| 洗面所 | 洗面化粧台の交換 | 20~50万円 |
| トイレ | トイレ全体の改装 | 20~100万円 |
| リビング | リビングの改修 | 200~400万円 |
出典:国土交通省「部位別リフォーム費用一覧(資料5-2)」
掲載金額は工事費の目安であり、実際の費用は工事内容や住宅の状況などによって異なります。
表は、マンションで行われることが多いリフォーム工事と、その費用の目安を部位ごとにまとめたものです。リビングではクロスやフローリングの張り替え、水回りではキッチンや浴室、トイレ、洗面所など、リフォームする場所によって費用の目安は異なります。
また、同じ工事でも、設備のグレードや工事の範囲によって費用は変わります。あらかじめ部位ごとの費用感を把握しておくと、予算に合わせたリフォーム計画を立てやすくなるでしょう。
◇設備や建材などでコストダウンを図る
フルリフォームの予算が足りない場合、設備や建材の仕様を見直して費用を安くする方法もあります。
水回りなどの設備や建材は、グレードによって価格が異なるためです。グレードの差は品質や機能、デザインなどで、ベーシックな商品は価格を抑えやすい傾向があります。
また、状態の良いドアや収納などは、そのまま再利用することも可能です。ただし、新しくした内装と色合いやデザインが合わないことや、使用年数によっては早期に交換が必要になる可能性もあります。見た目や耐久性も考慮しながら、再利用するかどうかを判断しましょう。
◇リフォームローンを比較・検討する
フルリフォームは多額の費用が必要になるため、リフォームローンを利用する人も少なくありません。金融機関ではさまざまなリフォームローンを取り扱っており、自分に合った商品を選ぶことで、毎月の返済負担を抑えられる場合があります。
リフォームローンは、大きく無担保型と有担保型に分けられ、それぞれ特徴が異なります。借入可能額と借入可能期間(最長)を比較した表がこちらです。※あくまで目安
| 無担保型 | 有担保型 | |
|---|---|---|
| 借入可能額 | 10万~1,000万円程度 | 10万~1億円 |
| 借入可能期間(最長) | 10年~15年 | 30年 |
無担保型のローンは小規模なリフォーム、有担保型は大規模なフルリフォームに適しています。無担保型は担保を設定しないため、比較的利用しやすい商品が多いですが、有担保型と比べて金利が高く設定されていることが一般的です。
借り入れできる期間と金額に関しては、ローン商品によって内容が異なります。複数の商品を比較し、無理のない返済計画を立てた上で、自分に合ったローンを選びましょう。金利は変動金利と固定金利から選べるため、返済金額を考慮して判断します。
◇住宅ローン減税制度や補助金を活用する
フルリフォームにかかった費用を確定申告すると、所得税などが減税される可能性があります。
償還期間が10年以上ある住宅ローンを利用してフルリフォームをした場合、所得税が控除される「住宅ローン減税」が適用されます。控除期間は10年間、控除率は0.7%で、一定の要件を満たすと住宅ローン残高に応じた所得税の控除を受けられます。借入限度額などの要件を満たした場合、最大で140万円が控除される仕組みです。
また、耐震・バリアフリー・省エネ・長期優良住宅化・同居対応・子育て対応のリフォームをすると、「リフォーム促進税制」が利用できる場合があります。同居対応と子育て対応は所得税、耐震・バリアフリー・省エネ・長期優良住宅化は一定の要件を満たすと所得税と固定資産税の軽減措置を受けられる場合があります。
リフォーム促進税制に関しては、ローンを使用していなくても減税の対象です。ただし、住宅ローン減税やリフォーム促進税制を利用するには、いずれも所定の要件を満たす必要があります。
※増改築に係る住宅ローン減税と、リフォーム促進税制の所得税控除は原則として併用できません。制度の適用条件や併用可否は、最新情報をご確認ください。
また、フルリフォームの内容によっては、以下の減税制度が利用できる可能性もあります。
・贈与税の非課税措置
・登録免許税の軽減
・不動産取得税の特例措置
さらに、省エネ性能の向上につながるリフォームでは、国が実施する「住宅省エネ2026キャンペーン」の補助金を利用できる場合があります。「先進的窓リノベ2026事業」や「給湯省エネ2026事業」「みらいエコ住宅2026事業」などが実施されており、断熱窓への改修や高効率給湯器の導入、断熱改修などが補助対象です。対象となる工事を行うことで、リフォーム費用の負担を軽減できる可能性があります。
また、各自治体でも、リフォームに対し補助金を支給しているケースがあります。
補助金は、所得税などから一定額が差し引かれる減税制度とは異なり、対象となる工事に対して費用の一部が支給される制度です。返済の必要がないため、条件を満たす場合はリフォーム費用を抑える有効な方法になります。
ただし、補助金には申請期間や予算上限が設定されていることが一般的です。予算に達した時点で受付が終了する場合もあるため、利用を検討している場合は早めに確認しましょう。
また、対象となる工事内容や住宅の条件は制度ごとに異なり、すべてのフルリフォームが補助対象になるわけではありません。補助金制度は年度ごとに内容が変更される可能性もあるため、最新の情報を確認することが大切です。
マンションのフルリフォーム工事期間の目安
▲画像提供:PIXTA
フルリフォームは、壁や床、設備などを一新する大規模な工事のため、部分リフォームと比べて工期が長くなります。一般的なマンションのフルリフォームでは、工事期間は1~3ヵ月程度が目安です。設計やプランニング、打ち合わせの期間も含めると、完成・入居まで半年以上かかるケースも珍しくありません。
また、マンションでは管理組合への工事申請や承認が必要になるため、工事開始までに時間を要する場合があります。現在住んでいるマンションをフルリフォームする場合は工事期間中に仮住まいが必要になるケースもあり、準備期間も含めて余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
納得できる住まいづくりにつなげるためにも、工事期間だけでなく準備期間まで含めて計画しましょう。
マンションのフルリフォーム事例3選
実際にマンションのフルリフォームを成功させた、3件の事例についてご紹介します。
◇1.築44年のマンションがセンスのあるスタイリッシュな住まいに
立地の良さで購入を決めた、築44年のマンションを約995万円でフルリフォームした事例です。
二人暮らしで約71㎡と広さにゆとりがありますが、二つの居室の仕切りを外したことでさらに広々としたリビング・ダイニングを確保しました。キッチンは白い壁によく映えるオールステンレスのものを採用しています。
築44年という古さを一切感じさせない、中古マンションにおけるフルリフォームのお手本といえるでしょう。
◇2.便利な大容量収納&モダンな和室でくつろげる自宅へ
設備の更新をきっかけにフルリフォームを決め、便利で暮らしやすい住まいに生まれ変わった事例です。リフォーム面積は約75㎡、工事費用は約1,340万円と理想を追求したことがうかがえます。
キッチンの向きを変えることで収納のスペースを確保し、広々としたパントリーを設置。玄関付近の洋室と廊下を大容量のウォークスルークローゼットに変更したことで、あらゆる荷物をまとめられる便利な空間も誕生しました。
リビング・ダイニングに接していた和室はモダンな印象にリフォームしたことで、いつでもくつろげる快適な空間を確保。さらに、居室のドアをすべて引き戸にし、和室は段差のないバリアフリー仕様に。将来を見据えた住まいになっています。
◇3.DIYで費用を抑えてブルックリンスタイルのおしゃれな住まいに
水回りの部分リフォームを検討していたところ、メーカーのショールームを見たことでフルリフォームを決意されました。DIYを取り入れたこともあって、約81.9㎡もの広さを約800万円でフルリフォームできた珍しい事例です。
和室をなくし、リビング・ダイニングに組み込むことで広い空間を確保。キッチンカウンターは、DIYが得意な施主の手作りというこだわりぶりです。また、施主の好みというブルックリンスタイルに合わせ、センスのある壁紙を数多く使ったことでおしゃれな居室を実現しています。
マンションのフルリフォームに関する注意点
▲画像提供:PIXTA
マンションでフルリフォームをする場合、以下のポイントに注意しましょう。予算や近隣住民との関係性にも影響するため、フルリフォームの際は細部にわたる検討が必要です。
◇追加工事やリフォーム以外の費用も考慮する
現在住んでいるマンションをフルリフォームする場合、別の仮住まいが必要になることがあります。賃貸物件へ一時的に引っ越す場合は、引っ越し費用の他、敷金や礼金、家賃などの費用も見込んでおくことが必要です。
また、フルリフォームでは壁や床を解体して初めて分かる劣化や不具合が見つかることもあります。 配管や下地の傷みなどが確認された場合は、追加工事が必要になるケースも少なくありません。
予想外の出費に備えるためにも、リフォーム費用とは別に予備費を確保しておくと安心です。一般的には、工事費の10~20%程度を目安に見込んでおくと良いでしょう。
◇構造により間取りの変更が難しい場合がある
構造躯体を残して行うフルリフォームでは、撤去できる壁であれば間取りを変更できる場合があります。しかし、マンションの構造によっては、間取りの変更が難しいケースがあります。
特に、壁そのものが建物を支える壁式構造では、耐力壁を撤去できないため、間取りを大きく変更できない可能性もあります。
一方、柱と梁で建物を支えるラーメン構造は、壁式構造と比べて間取りの自由度が高く、壁の位置を変更しやすいことが特徴です。ただし、柱や梁、パイプスペース(PS)、配管などは移動できないため、希望どおりの間取りに変更できない場合もあります。
フルリフォームで間取りを変更したい場合、自宅マンションの構造や管理規約を事前に確認し、リフォーム会社に実現可能か相談すると良いでしょう。
◇リフォームの前に管理組合へ申請する必要がある
フルリフォームを検討する時点で、マンションの管理規約にあるリフォームのルールを確認しておきましょう。マンションの専有部分をリフォームするには、管理組合に工事申請を出し、管理組合の承認や確認を受ける必要があるためです。
工事が始まるまでのリフォーム前の基本的な流れは次のとおりです。
1.フルリフォームの内容が規約違反に該当しないか、管理規約を確認する
2.リフォーム会社に工事を依頼する
3.リフォーム工事の申請書類、添付書類を準備する
4.申請書類一式を、管理組合に提出する
5.管理組合での承認後、工事の許可が下りる
6.工事の前に、両隣、上下の階の住民に挨拶をする
なお、必要書類に関しては、リフォーム会社が用意してくれることが一般的です。許可が下りるまで時間がかかるため、少なくとも工事開始の1ヵ月前を目安に書類を提出しましょう。
◇リフォーム期間が延びる可能性がある
マンションのフルリフォームでは、事前の打ち合わせに2ヵ月~3ヵ月、工事期間に1ヵ月~3ヵ月程度の時間がかかります。
そもそもフルリフォームは、壁や天井を解体して構造躯体だけを残す大規模な工事です。数日で工事が完了する部分リフォームと比べ、工期が圧倒的に長くなります。
さらに注意が必要なのは、マンションならではの事情でリフォーム期間が長引くことがある点です。リフォーム期間が延びる要因は、以下のものが挙げられます。
・管理組合で定められた手続きに時間がかかる
・工事時間や作業内容に制限が設けられる
リフォーム期間が延びると、工事代金や仮住まいの費用がかさみます。工期の遅延を防ぐために、管理組合への申請は早めに行いましょう。また、工事中の騒音などによる近隣トラブルを防ぐため、着工前に近隣住民へ挨拶しておくことも大切です。
まとめ
構造躯体を残して行うフルリフォームは、間取りや内装、設備を一新し、自分たちのライフスタイルに合わせた住まいを実現できます。しかし、部分リフォームと比べて費用が高く、工事期間も数ヵ月はかかるため、あらかじめ費用相場や工事期間を把握し、無理のない資金計画を立てることが大切です。
費用を抑えたい場合は、設備や建材の仕様を見直したり、住宅ローン減税や補助金などの制度を活用したりする方法があります。利用できる制度がないか事前に確認しておくと良いでしょう。建物の老朽化が著しい場合は、管理組合の建て替え計画なども確認しておきます。
また、マンションのフルリフォームでは、管理組合への工事申請や近隣への配慮も欠かせません。管理規約で定められた手続きや申請期限を確認し、仮住まいの準備も含めて余裕を持ったスケジュールで進めることが、リフォームを成功させるポイントです。
監修者
矢口 美加子
<保有資格>
- 宅地建物取引士
- 整理収納アドバイザー1級
- 福祉住環境コーディネーター2級
<プロフィール>
不動産ライティング事務所 Room.M 代表。不動産売買や不動産投資、リフォームなど不動産関連の記事を複数の大手メディアに寄稿。署名記事の実績は410本以上。モットーは「初心者にも分かりやすい不動産記事の執筆」。家業で不動産投資をしており、契約管理を担当。
※所属会社・役職は取材当時のものです。
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