鉄骨造とは?メリット・デメリット、快適に生活する方法などを解説

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この記事では鉄骨造とはどのようなものか、鉄骨造の種類、鉄筋コンクリート造などとの違い、鉄骨造のメリット・デメリット、鉄骨造のマンションで快適に過ごすコツなどを解説します。

鉄骨を組み上げる風景

▲鉄骨を組み上げる風景

鉄骨造とは、建物の柱やはりなどの骨組みに鉄を使った構造です。鋼鉄(Steel)の頭文字から「S造」と呼ばれることもあります。

 

鉄骨造は一戸建て住宅やマンション、アパートで多く採用されています。また、高い強度をもちながら比較的軽量であるため、工場や体育館など大規模な建物で鉄骨造が採用されているケースも少なくありません。

 

 

鉄骨がむき出しの倉庫

▲鉄骨がむき出しの倉庫

鉄骨造は軽量鉄骨造と重量鉄骨造の2つに分けられます。それぞれの違いを解説します。

 

 

 

軽量鉄骨造では、使われている鉄骨の厚みが6mm未満です。鉄骨が軽くなるため価格が安くなる他、地震の影響が小さくなる点がメリットです。2階建て程度のアパートまでの大きさであれば、軽量鉄骨造が採用されるケースが多いでしょう。

 

軽量鉄骨造は、主要な部品を工場で作り現場で組み立てるプレハブ工法が多く採用されています。プレハブ工法は工期が短いほか、品質が安定していることが利点です。

 

筋交いを使うブレース構造が採用されるケースが多く、筋交いが邪魔になり間取りの自由度が制限される点が軽量鉄骨造のデメリットです。

 

 

 

重量鉄骨造では、厚みが6mm以上の鉄骨が使われます。鉄骨に厚みがある分、強度に優れており、中層マンションなど大きめの建物で採用されるケースが多く見られます。軽量鉄骨造と比べると鉄骨や壁が厚いため防音性も高めです。

 

重量鉄骨造では、建物を柱とはりで支えるラーメン構造が採用される場合が多く、軽量鉄骨造のブレース構造のように筋交いがありません。そのため、柱同士の間隔が取りやすいほか、柱の本数を少なくできます。その結果、広い空間や大きな窓を採用できるなどレイアウトの自由度が軽量鉄骨造よりも高めです。

 

一方で、軽量鉄骨造と比べると建設費用が多くかかります。また、建物が重くなるため、地盤が軟弱な場合には改良工事が必要になる場合もあります。

 

 

建設現場の風景

▲建設現場の風景

鉄骨造と似たようなイメージがある構造に、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造があります。鉄骨造が鉄筋コンクリート造などとどのように異なるのか解説します。

 

 

 

鉄筋コンクリート造(RC造)は、はりや柱などの主要部分に鉄筋とコンクリートが使われている構造です。柱などの中心に鉄筋を組み、周囲を型枠で囲んでコンクリートを流し込みます。鉄筋コンクリート造は、中高層ビルやマンションなどで採用されています。

 

鉄筋は引っ張られる力に強く、コンクリートは圧縮される力に強いため、お互いの弱点をカバーできる構造で強度が高い点がメリットです。法定耐用年数は47年、実際の寿命は100年以上ともいわれています。

 

遮音性や耐火性にも優れますが、建築コストが高くつく点がデメリットです。

 

 

 

鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、建物の主要部分に鉄筋とコンクリートだけでなく、鉄骨も使用した構造です。鉄骨を骨組みとして鉄筋で囲み、コンクリートを流し込んで固めます。

 

鉄筋コンクリート造(RC造)よりも強度や耐火性、耐久性に優れていますが、工程が複雑になり費用も高額です。

 

鉄骨鉄筋コンクリート造は、強度が求められる高層ビルや大型施設など大規模な建物で多く採用されています。しかし、最近はコンクリートの性能が向上しており、鉄骨鉄筋コンクリート造の採用は減りつつあります。

 

 

鉄骨造には他の構造と比べてどのようなメリットがあるのでしょうか。ここではメリットを3点紹介します。

 

 

 

鉄骨造は、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造よりも建築費用がかかりません。木造と比べると鉄骨造のほうが高くなりますが、近年は木材の価格が上昇しているため、木造との価格差は縮まっています。

 

建築費用は購入費用や家賃にも反映されます。鉄筋コンクリート造の建物と比べると購入費用や家賃も抑えられるでしょう。

 

 

 

鉄骨造は木造と比べて強度が高い点もメリットです。地震の際、鉄は木材よりも強度が高いため揺れやすくはなりますが、倒壊しにくくなります。しなやかさと粘りで地震のエネルギーを吸収するのが特徴です。

 

 

 

木造は木材によって含水率などの品質にバラツキがあります。また、木造は鉄骨造と異なり現場での加工が多いため、職人の技術によって仕上がりの品質に差が生じる場合もあるでしょう。

 

鉄骨造は多くの工程が工場で行われているため、品質が安定しています。工場での工程が多いため現場の作業が少なく、工期が短い点もメリットです。

 

 

鉄骨造にはメリットのほかにデメリットもあります。ここではデメリットを3点紹介します。

 

 

 

鉄骨造にはサビ対策が欠かせません。鉄筋コンクリート造では鉄筋をコンクリートが保護して腐食を防いでいますが、鉄骨造ではコンクリートなどで保護されていないため、塗料などでサビを防ぐ必要があります。

 

また、木造であれば湿度がある程度調整されますが、鉄骨造は湿度の調整がしづらく結露しやすい構造です。結露からはサビが発生しやすいため、換気設備などによる通気性の工夫も必要です。

 

 

 

鉄骨造で使われている鉄は熱伝導率が高いため、他の構造と比べて屋外の暑さや寒さが伝わりやすい点も鉄骨造のデメリットです。温度差によって結露も発生しやすくなります。そのため、冷暖房を使用する機会が増え、光熱費が高くなる可能性もあることから、断熱材や樹脂サッシなどで断熱性を上げる工夫が必要です。

 

また、集合住宅の場合1階は冷気が伝わりやすいため、寒さが苦手な場合は2階以上がおすすめです。ただし、最上階は逆に屋根の熱が伝わりやすいため、暑さが苦手な場合は最上階も避けたほうがよいでしょう。

 

 

 

鉄骨造は鉄筋コンクリート造のように防音性があるようにも思えます。しかし、鉄筋コンクリート造は壁や床にコンクリートがあるため防音性が高いのに対して、鉄骨造の壁の構造は木造と大差がないため、防音性は木造よりも若干高い程度です。

 

音が気になる方は、生活音が干渉しにくい間取りを選んだり、防音カーペットなどで工夫したりする必要があります。内見する際に壁をたたいてみるなど、実際の部屋でチェックしておくと安心です。

 

 

床のクッション材

▲床のクッション材

鉄骨造には断熱性が高くないことや音が響きやすいことなどのデメリットがあります。ここからは、鉄骨造のマンションに住んでいる方向けに、快適に過ごすための工夫を解説します。

 

 

 

防音性を上げるためには防音カーペット、防音シート、防音カーテンなどの防音グッズを使用するとよいでしょう。防音カーペットは階下への対策だけでなく、物を落としたときの緩衝材としても有効です。壁に貼る防音シートは隣室への対策になります。

 

また、室内で普通のスリッパを履くだけでも効果があります。小さな子どものようにスリッパを履いてくれない場合は、厚手の靴下でもよいでしょう。簡単に導入できて費用も安いためおすすめです。

 

 

 

家具の配置を工夫すると隣室へ音が響きにくくなります。例えば、隣室に面した壁にタンスなど大型家具を置くと、防音効果が期待できます。ただし、中身がない棚などでは効果が薄いため注意が必要です。

 

また、テレビやオーディオ機器など音が出るものは隣室に面した壁や窓から離すと効果的です。特にスピーカーが後ろについているテレビは、隣室に音が伝わりやすいため配置を工夫したほうがよいでしょう。

 

テレビの位置を変更できない場合は、テレビの音声を手もとで聞けるようになる「手もとスピーカー」を使うと音漏れを極力防げます。

 

 

 

断熱性を上げるには、窓への対策が欠かせません。冬は暖めた空気の58%が窓から流出し、夏は外から入ってくる熱の73%が窓からだといわれているからです。窓が多いと開放的で明るくなりますが断熱性は悪くなるため、断熱性を重視するのであれば窓の多い角部屋などは避けたほうが良いかもしれません。

 

窓の対策には断熱シートを貼る方法があり、これは窓の結露防止にも役立ちます。断熱シートがない場合は梱包材として使われている緩衝材(いわゆるプチプチ)でも代用可能です。

 

また、窓のレール部分など窓枠とサッシの間に隙間テープを貼ると冷気の流入などを防げます。

 

断熱シートや隙間テープに加えて、カーテンを厚手のものに取り換えるとよいでしょう。カーテンを取り換える際は、裾を長めにすると冷気の流入を防止できます。カーテンは寒さ対策だけでなく、夏に冷気を室内に閉じ込めるのにも役立ちます。

 

 

 

窓以外の寒さ対策として床の断熱も効果があります。暖かい空気は上に移動し、冷気は下にたまりやすいからです。

 

床の断熱にはカーペットを敷くとよいでしょう。生地が薄めのものよりも厚手のもので、ウールなど保温性に優れた素材を選ぶと快適に過ごせます。電気カーペットも比較的電気代が安くておすすめです。

 

また、こたつも手軽に導入できます。エアコンのように室内が乾燥しないことや、夏場はテーブルとしても使えることもメリットです。

 

さらに、カーペットの下に断熱シートやジョイントマットを置くと、断熱効果がより高くなります。

 

 

鉄骨造は柱やはりなどに鉄骨を使った構造です。鉄筋コンクリート造よりも建築費用が安い点や木造よりも強度が高い点などがメリットですが、断熱性や防音性があまり高くないことがデメリットです。

 

鉄骨造のマンションに住むのであれば、防音グッズを使ったり、窓や床の断熱を工夫したりすることで快適に過ごせるようになるでしょう。

 

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監修者

高槻 翔太

<保有資格>

  • 宅地建物取引士
  • FP技能士2級
  • 日商簿記2級

<プロフィール>

不動産・建設会社で土地有効活用のコンサルティング営業経験(6年)。売買や駐車場の活用、リフォームの提案などに従事。不動産・金融特化のライターとして不動産系メディアでの執筆実績多数。