読めて探せる不動産エンターテインメントサイト「物件ファン」と、マンションプラスによるコラボ企画の第3弾。自分でマンションを購入した女性たち六者六様のお部屋とリアルな暮らしを紹介する本企画。今回は、神戸で暮らすタナカノゾミさんのケースをお届けします。
▲タナカノゾミさん(会社員)/ 神戸市出身。東京にあるデザインの専門学校を卒業後、就職。東京で約3年働いたのち、神戸に戻り転職。現在はWEBデザイナーとして働いている。30歳の年に住宅購入。オリジナルデザインの手ぬぐいをネットショップで販売もしている。HP https://tanakanozomi.com/
モザイクタイルが迎えるレトロマンションの一室
神戸のターミナル駅からバスに揺られ住宅街へ。バス通りから少し入った、ゆるやかな坂の途中にタナカノゾミさんのお家があります。どこか懐かしく、かわいらしい雰囲気が漂う築40年以上のレトロマンション。
▲三和土と廊下には丸いモザイクタイルが。オレンジ色の室内扉の奥にLDKが広がっています
扉を開けると、目の前に広がるのは、モザイクタイルが敷き詰められた三和土と廊下。色違いのタイルが花の形にあしらわれ、その愛らいデザインに思わず目を奪われます。
▲ガラス入りの室内扉は既存の建具を塗り直して再利用
室内扉の先にあるLDKにも、かわいい設えがたくさん。キッチンやリビングの造作棚の前で立ち止まり思わず「素敵!」「かわいい!」とつぶやきながら、あちこちに目移りしてしまいます。
▲メインスペースのLDK。本やCD、雑貨などが壁面にセンス良く並ぶ
神戸から上京して専門学校を卒業後、東京の印刷会社でデザイナーをしながら、ひとり暮らしをしていたタナカさん。勤務は朝から夜遅くまで、休みもない過酷な職場環境だったため、約3年働いたのち帰神して実家へ。しばらく身体を休めたあと、以前から住んでみたかった神戸の塩屋にて、ひとり暮らしを再開します。
「10帖くらいのワンルームで、いいお部屋ではあったんですが、何年か住んでいるうちに手狭に感じるようになって。だからといって『次は買おう』という発想があったわけではなく、もうちょっと広い部屋に住みたかっただけです。『買う』なんて、お金持ちのすることだと思っていたので(笑)」
▲キッチンはほぼ元の位置のままワークトップを拡張。高さや奥行きは実家のキッチンを参考にした
▲キッチンの棚にも「見せる収納」にふさわしい素敵な小物がいっぱい
漫画『プリンセスメゾン』に背中を押されて
そんなタナカさんがマンション購入に興味を持ったきっかけは、当時、愛読していた漫画『プリンセスメゾン』でした。『プリンセスメゾン』は、東京でひとり暮らしをしながらマンション購入に奔走する20代女性の主人公を中心に、現代を生きるさまざまな立場・世代の女性たちの「家」にまつわるエピソードが綴られた群像劇です。
タナカさんは、「心地よい住環境にこだわって、いわゆる高収入ではないのにマンション購入という目標に向かって突き進む主人公の姿に共感しました。マンション購入についての具体的な情報が網羅されているのも参考になった」と語ります。
▲リビングの棚に並ぶ本の中には『プリンセスメゾン』が
そうしてマンション購入に興味を持ち始め、情報収集を進めるうちに、後にリノベーションを依頼することになる大阪の会社「アートアンドクラフト」の存在を知ります。軽い気持ちで問い合わせたところ、ショールームへ招かれて、相談会に参加。具体的な金額や初期費用についての細かい説明を受け、マンション購入のハードルは自分が想像していたよりも低いことに気づいたといいます。
「要は、月々返済するローンの額が当時の家賃くらいに収まれば買えるのでは? と思ったんです。当時の家賃は月6万円くらい。初期費用は200万円ぐらいでOKって感じやったんで、そんなに無理な話でもないなって」
ちなみに、200万円の初期費用というのは頭金ではなく、購入の際に必要な手付金などの現金のこと。なんとタナカさんは頭金なしでマンション購入に臨もうとしたのです。
「もちろん頭金を払えば月々の返済額やローン期間が圧縮されるので、払うに越したことはないと思うんですけど、必須ではなくて。マンションの購入価格やリノベーション費用を抑えれば、頭金0円でも月々のローンの支払いはそれほど負担にならないんですよ」
▲音楽鑑賞が趣味とのことでCDがずらり
そこからタナカさんの物件探しが始まりました。当初はお気に入りの街・塩屋で探したものの、理想の物件に出会えず、範囲を広げることに。そんななかで出会ったのが、現在住むマンションでした。築40年ほどで価格は予算内でしたが、内覧に訪れると室内は傷んでボロボロ。にもかかわらず、「それまで内覧したどの部屋よりもピンときて」、最終的に購入を決意しました。
「自分が住む姿がすんなり想像できたんです。内覧に同行してくれたアートアンドクラフトの方も、『そういうイメージは大事ですよ』と言ってくれて。部屋の持ち主だったおばあちゃんが『足が悪くなったから引っ越すけど、できればここにずっと住みたかった』と言っていたのも印象的でした」
▲洗面台も造作。丸い鏡にタイルのあしらいもかわいい
「朝起きてトイレに行ったあとの行動全部教えて」
マンション購入と同時にリノベーションをアートアンドクラフトに正式に依頼すると、女性の設計士さんが担当に。設計士さんとやりとりをするなかで、タナカさんはプロの仕事に驚かされることになります。
「内装デザインを考えるにあたって、普通は『どんなお部屋にしたいですか?』とか聞かれると思うじゃないですか。でも、私の担当の設計士さんのヒアリングは『朝起きてトイレに行ったあとの行動、全部教えて』から始まりました。ほかにも、仕事から帰ってきたら鞄をどこに置くか、メイクする場所、CDの枚数に至るまで、質問攻めに遭ったんです。そんなこと普段は意識せずに生活してるから、どうやったっけ? と焦りました(笑)」
設計士さんの質問はすべて、タナカさんの生活動線を正確に把握するためのもの。そう、タナカさんが現在住む部屋は、ほかの誰でもない、タナカさん専用にオーダーメイドされた空間なのです。
▲寝室とリビングの間は扉を設けずオープンに。これもタナカさんの好み
▲寝室はアクセントにグレイッシュなピンクの壁紙を使用。ベッドの上には画家の植田陽貴さんに描いてもらった風景画が飾られている
ダイニングキッチンにまたがる「予算の境界線」
内装デザインのプランが具体的になってくると、「どうせならもっと素敵にしたい」といった誘惑に駆られるもの。タナカさんも例外でなく、少々予算をオーバーしてもいいから理想のお部屋にしたいという気持ちと、予算の狭間で揺れました。
「本当はLDKの床を隅々まで無垢床にしたかったんですが、予算に収めるためにはキッチン部分の床をビニールタイルにする必要がありました。迷いぬいた末、ローンのことを気にしながら生きていきたくなかったので、ビニールタイルを選びました。私にとっては無垢床とビニールタイルの境目が『予算の境界線』なんです」
▲タナカさんが「予算の境界線」と呼ぶ、キッチンとリビングの境目。結果的に、キッチンのビニールタイルが空間をゾーニングする役割を果たしてくれ、良いアクセントにもなった
予算内に収めることを遵守した結果、マンション購入とリノベーションにかかった費用は全部で約1,350万円。この広く素敵なお部屋に、月々の支払い6万円ほどで住んでいるというから驚きです。
「ここに住んで5〜6年経つんですけど、いまも毎日、仕事から帰ってくるたびに『うわー、かわいい家!』とうれしくなります。大げさでなく、住んでるだけでハッピー。私は30歳直前にマンションを買いましたが、もっと早く買っても良かったと思っています。途中でライフステージが変わったら、売ればいいわけですし。古いマンションは売れへん、みたいなことを言う人もいますけけど、自分がこんなに気に入っている最高の部屋が売れないはずないと思ってます(笑)」
▲L字型のバルコニーに囲まれた明るいリビング。杉の無垢床もすべすべしていて気持ちがいい
物件DATA
所在地:神戸市兵庫区
築年:1983年
面積:46.17㎡
リノベーション費:約790万円(税抜き/設計料含む)
取材・文:葱山紫蘇子 撮影:東郷憲志
WRITER
大阪で娘3人息子1人と暮らす独り身。元劇団維新派役者竹山らいち、元ミニシアター従業員、元介護職。建物と書き出し小説と漫画と毛布のヘリが大好き。 X:@sisokoex
おまけのQ&A
- Q.今後、別の部屋に住む可能性はあると思う?
- A.タナカ:いまのところ予定はありませんが、いつか誰かと一緒に暮らすことになったら部屋を売るかもしれないですね。そのときは、この部屋をつくったときと同じように2人分の「朝、起きてトイレ行ってからの行動」を確認して、2人の生活にぴったり合わせたオーダーメイドの家をつくってみたいです。
【物件ファンコラボ企画 彼女がマンションを買った理由 vol.2】 不思議な縁に引き寄せられたテラス付き1LDK。自由にのびのび、猫との暮らし