読めて探せる不動産エンターテインメントサイト「物件ファン」と、マンションプラスによるコラボ企画の第4弾。自分でマンションを購入した女性たち六者六様のお部屋とリアルな暮らしを紹介する本企画。今回は、湘南エリアで暮らす小島智子さんのケースをお届けします。
▲小島智子さん(フリーランス)/ 東京都出身。都内の大学を卒業後、広告会社に就職。数度の転職を経てマーケターとして15年以上勤めた会社を辞め、現在はフリーランスのコンサルとして働いている。40代で湘南エリアにマンションを購入。現在は自宅と都内を行き来して働きながら、近くの海でサーフィンを楽しむ日々
テラコッタピンクの壁に囲まれた1LDK
神奈川県藤沢市。駅から続く閑静な住宅街の路上を、自転車にサーフボードを乗せた人がゆき、海の近さを感じさせます。程なくして、小島さんが暮らすマンションに到着しました。
シンプルなエントランスを抜けると、中央の吹き抜けにシンボルツリーがそびえる開放的な共用部が、突如、姿を現します。驚きを抱いたまま階段を上がり、小島さんのお部屋へ。玄関を開けた瞬間、目に飛び込んできたのは、テラコッタピンクで塗られた壁でした。
▲玄関土間と大容量のシューズボックス
▲ニュアンスあるピンク色の壁によく映えるミラー。アンティーク調のデザインが印象的
そのままリビングへ進むと、丁寧に整えられた空間の中で、3枚のサーフボードがひときわ存在感を放っています。ここは、小島さんが「サーフボードが置ける」ことにこだわり抜いて見つけ、作り上げたリノベーションルームなのです。
▲壁とサーフボードラックの色がぴったりと合っているのは偶然なんだそう。スイスの建築家、ピエール・ジャンヌレのデザインを再現したカッシーナのベンチ、手前のアンティークのソファの色も含め、すべてが調和した空間
心地よい場所に住みたい一心で、都心を離れて海のそばへ
小島さんが海の近くで暮らし始めたのは、就職してしばらくした頃。実家暮らしを経て都内で一人暮らしを始めますが、当時は日々の激務に疲れ切っていたといいます。
「広告系の仕事でかなり忙しく、徹夜で働くこともしばしば。休みがあっても、旅行の予定を立てる気力すら湧いてこない生活でした。そんなある日、ふと七里ヶ浜の海のほうへ行ったら、気持ちがわーっと明るくなって『生き返った』という感覚になったんです。鎌倉あたりなら都内に通勤できなくもないし、思い切って引っ越してみようかと」
▲2024年初冬、鵠沼海岸で撮ってもらったという写真 Photo by Shigeru Ishikawa
思いついたら行動あるのみ。小島さんはすぐに鎌倉へ引っ越し、その後、現在も暮らす鵠沼海岸へと移り住みます。
「だからといって仕事が楽になったわけではないので、通勤は本当に大変でした。でも、場所の魅力には代え難い。特に鵠沼海岸の部屋は、立地もお部屋の雰囲気も私好みで、とても気に入っていたんです。海の近くで暮らす中で、自分は土地の影響を受けやすいタイプだと実感しました」
▲一番上がファーストボード。ユーズド品で、前の持ち主の方はその後プロになられたんだとか。いわゆる「出世ボード」
しかしその後、まさかの転勤で関西へ。趣味のサーフィンは、その頃に始めたのだそう。
「湘南エリアに引っ越して以来、ずっとサーフィンに興味はあったものの、初心者にはハードルが高くて挑戦できず……。でも、帰省で鵠沼の海へ遊びに来たとき『こんなにいい環境にいたのに、なぜやらなかったんだろう』と思ってスクールに行ったのが始まりです。関西へ戻ってからは和歌山の海に通って続けようと決心しました」
ところが当時住んでいた大阪の中心地から和歌山の海は遠く、なかなか上達しなかったという小島さん。このまま関西で働き続けるのだろうし、和歌山の海近くにマンションを買おうか……そんな考えが浮かんだ頃、東京への帰任が決まります。
ロングボードが置ける部屋を探して奔走
▲洗面所の壁ももちろんピンク。優しいベージュのタイルがこの空間にぴったり
帰任後は、転勤前に住んでいた鵠沼海岸の賃貸マンションに戻りたかったそうですが、人気物件ゆえに空室なし。やむを得ず近くに借りた別の部屋がしっくりこず、1年後にふたたび物件探しをすることに。この頃から小島さんはマンション購入を意識し始めます。理由は、サーフボードの存在でした。
「サーフボードって、長いものだと3メートルくらいになるんです。エレベーターに入らないので低層階しか選択肢がなく、しかもロングボードを置けるスペースがある部屋という条件で探すと、賃貸ではなかなか見つからない。そこで購入も視野に入れることにしました」
▲リビングダイニングから眺める、光に満ちた寝室
それからは物件探しに奔走したという小島さん。当時住んでいた部屋の周辺で売りに出た物件はほぼすべて内見したのだとか。それでもピンとくる部屋に出会えず、藁にもすがる思いで頼ったのは、転勤前に住んでいた鵠沼海岸の賃貸を紹介してくれた鎌倉R不動産でした。そして、ついに運命の部屋に出会います。
「正直に言うと、部屋の内装は好みじゃなかったんです。棚や建具が派手な色に塗装され、けばけばしい印象でした。でも、立地と共用部は理想的。海に近いし、マンションの中央部に開放的な吹き抜けがあって、管理状態も良い。部屋の内装はリノベーションでいくらでも変えられるけど、立地や共用部は自分の力では変えられないですから」
ただし、予算オーバー。それが理由で購入に踏み切れずにいたところ、1ヵ月後、なぜか価格が大幅に下がったのだそう。リノベーション費を含めても予算内に収まることがわかり、小島さんは自分にGOサインを出しました。
▲お気に入りの絵。鮮やかなブルーが壁の色によく映える
▲以前住んでいた賃貸の無垢床がお気に入りで、家を買ったら絶対に無垢床にしたいと思っていたそう
アイデアゼロの状態から作り上げた部屋
購入後、さっそくリノベーションの準備に着手したものの、決めていたのは「無垢床にすること」くらい。その他の内装や間取りについては明確な構想があったわけではありませんでした。
「サーフボードが置ける家という条件で探したくせに、肝心のサーフボードをどこに置くかは決めていなくて。キッチンカウンターを撤去して、サーフボード置き場にしようかな……くらいにぼんやり考えていたところ、2DKの間取りを1LDK+WICに変更してリビングダイニングを広くとり、そこに置いたらどう? と鎌倉R不動産の担当者さんが提案してくれたんです。即、採用しました(笑)」
▲2DKから1LDK+WICへ変更したという小島さんのお部屋の間取り
具体的な間取りが決まると、部屋づくりにも熱が入ります。当初は「普通に白のクロスでいい」と思っていた壁も「カラーペイントしたい」「しかも珪藻土塗料で塗りたい」「一室ではなく全室の壁を同じ色に塗装したい」と、こだわりがどんどん強くなっていったのだとか。
「参考資料としていろいろな住宅やホテルの写真を見ているうちに、部屋のイメージができあがっていきました。たとえば壁のお手本にしたのは、大好きなハワイのホテル『ロイヤルハワイアン』。あのナチュラルで上質な風合いを再現するのに珪藻土塗料を使いたかったのですが、それだと少し予算がオーバーするとわかり、じゃあ、自分で塗ってしまおうと。真夏なのにクーラー未設置のなか、友人や、鎌倉R不動産の担当者さんにまで手伝ってもらって塗ったのはいい思い出です」
▲珪藻土には珍しいピンク。塗装ならではの質感が味わい深い。センス良く並べられたインテリアも相まって、「ちょっといいホテルに泊まるより、家のほうが心地いい」というのも納得
広々したキッチンはデザイン性も重視し、リビングの無垢床に似た素材のパネルと、ワインのような色のタイルをチョイス。タイルの深い色がピンクの壁にとてもよく似合っています。
▲家具のように部屋になじむ、すっきりとしたデザインのキッチン。家電類はダークトーンに統一し、生活感を抑えている
リビングに隣接した寝室の一角には、仕事部屋も兼ねたウォークインクローゼットがあります。あえて扉を付けないことで窓からの光がクローゼット内にも注ぎ、寝室と壁で仕切られた小部屋のよう。作業にオンラインミーティングにと大活躍だそうで、「これは大正解だった」と小島さん。
「じつはキッチンのタイルの色は、リノベーションを担当してくださったルーヴィスさんのアイデア。鎌倉R不動産さんからのご紹介です。物件探しに辛抱強く付き合ってくださったうえ、お部屋の設計にも壁の塗装にも協力してくださり、センスの良いルーヴィスさんにも助けられて。マンションを購入する際はパートナー選びが重要なんだと痛感しました」
▲もともとは2部屋あった場所を広々とした1部屋に。大きなベッドに、ソファを置いても余裕がある
▲壁で仕切られたウォークインクローゼットの一角が小島さんの仕事場
マンション購入で手に入れた理想のワークライフバランス
住宅ローンの年齢制限は45歳だといわれることもあるなか、46歳でマンションを購入した小島さん。ローンを組むことに不安はなかったのでしょうか。
「当時勤めていた会社がわりと大手だったので、周囲は『大丈夫でしょ』みたいな反応でしたが、私自身はそんなふうに思えず。自分の社会的信用なんてわからないですから、審査に落ちるのではと不安でいっぱいでした。でも本当に買う気があれば、仲介会社や不動産会社の方が知恵を貸してくれるんです。初めて知ることもたくさんあったけど、なんとかローンが組めた。だから、年齢や年収であきらめず、まずは一度動いてほしいなと思います。意外といけますから!」
▲リビングは日当たり良好で、植物も元気いっぱい。買ったときは自転車に載せて持ち帰れるサイズだったというから、すごい成長っぷり
ローン審査に通っても、この先ずっと返済していけるのかという不安は残りますが、人びとの生き方が多様化しているいま、「こうすれば安心」といえる選択などほとんど存在しないのも事実。小島さんの場合は、マンションを買ってから「不安の種類が変わった」のだそうです。
「マンションを買う前は、このままの生活でいいのか、この先どうなるんだろうかという漠然とした不安が常にありました。でも、マンションを買ってからの不安は明確で、『ローンを払えるかどうか』だけ。それならがんばって働けば不安を解消できる。不安の輪郭を捉えられるようになったことで、むしろ肩の荷が下りたような気がしています」
▲寝室の片隅に4枚目のサーフボードを発見
肩の荷をひとつ下ろした小島さんですが、その状態に満足せず、さらに一念発起。なんと会社を辞め、フリーランスになったのです。
「あまりにも新居の居心地がよくて、家で過ごす時間を増やしたいと思ったのがきっかけです。理想の暮らしを思い描いたことで、押さえつけていた自分の欲求が解放されたのかな(笑)。仕事とのバランスを探っていたら、会社勤めの頃のご縁でお声がけいただき、週に3日は仕事で都内へ行くことになりました。それ以外は自宅で仕事。いまのワークライフバランスは理想に近いと思います」
サーフィンがもたらしてくれた、理想の部屋と自由な生活。それすら小島さんにとってはゴールではなく、次の夢に向かうためのスタートなのかもしれません。
▲サーフボードのラックの上に並ぶ香水。サーフィン×ハイブランドという小島さんらしい組み合わせ
物件DATA
所在地:神奈川県藤沢市
築年:27年
面積:54.72㎡
取材・文:ほしりょうこ 撮影:赤澤昂宥
WRITER
散歩とビールと読書が好きな、元リフォーム屋さん。16年で9回の引っ越しを経験。もっぱら東京の西側にいます。https://twitter.com/hs_ryk
おまけのQ&A
- Q.いま叶えたいと思っている夢は?
- A.小島:部屋をもっとブラッシュアップしたいし、ここを拠点にしながら江ノ電沿いの海が見える場所に仕事部屋を持ちたい思いも。そこで女性の生き方や働き方についてのエッセイを書きたい! はじめの一歩ということで、最近noteで『鵠沼フリーランス日記』という文章を書き始めました。 もちろんサーフィンも続けたいです。なかなか上達しないのですが(笑)、もっとうまくなりたいので。
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