読めて探せる不動産エンターテインメントサイト「物件ファン」と、マンションプラスによるコラボ企画第1弾の後編。前編は、東京で暮らす沙東すずさんに、初めてのマンション購入からローン完済までの経緯を語っていただきました。今回は、沙東さんが現在暮らす“二代目マンション”を見ていきます。
もっとも長い時間を過ごすメインスペース

▲二代目マンションのリノベーション後の間取り
玄関から廊下が延び、室内扉を経てダイニングに。キッチンとひとつづきになったここが沙東家のメインスペースであり、リビング・寝室・書斎の3つの居室すべてにアクセス可能なハブのような空間でもあります。玄関側の壁の淡いピンクと寝室側の壁の淡いブルーは、沙東さんが自ら塗装したのだそう。
「おそらくみなさん『自分で壁を塗ろう』と思わないだけで、きちんと養生すれば意外と簡単に、きれいに塗れます。もしムラが出たら二度塗りすれば問題なし。不器用な私でもできたので、きっと大丈夫です。塗料は『ポーターズペイント』のものを使いました。どの色も陰影や質感がちゃんと出るところが気に入っています」

▲シンプルなステンレスのキッチンとホーローの壁は、不動産業者の提供する定額リノベパッケージからチョイス。写真右の冷蔵庫をすっぽり隠す袖壁も良い仕事をしています

▲ガラスの引き戸で仕切った左奥のスペースがリビング、右奥に見えるのが寝室。ともに壁の色を塗り上げたのは、もちろん沙東さん。寝室にぷかぷか浮かんでいるようなペンダントライトはデンマークのUMAGE(ウメイ)のもの
イエロー、パープル、グレー。色で満たされたリビング
ガーナでつくった棺桶のためのスペースもしっかり確保。設計時はリビングのつもりだったはずが、実際には「棺桶部屋」と呼ばれ、家族や友人が泊まりに来たときの客間として、あるいは沙東さんが磁器の絵付けを楽しむ際の作業スペースとして活躍する機会が多いそうです。

▲障子戸風の二重窓の外はベランダ。写真では見切れていますが窓際の壁に扉があり、そこからも隣の寝室と行き来できる回遊性のあるつくり

▲磁器の絵付けを嗜む沙東さん。ヴィヴィッドなイエロー×パープルという大胆なカラーリングで四方を囲まれた空間ながら、なぜかうるさく感じない
本が日焼け、お風呂が寒い……。前回の失敗の教訓を活かす
二度目のマンション購入とリノベーションをするにあたり、前回の反省を活かした箇所もあります。そのひとつが、本棚。初代のマンションでは、憧れていた「リビングの壁一面を本棚に」を叶えた沙東さんでしたが、じつは思わぬ落とし穴がありました。
「日当たりの良いリビングの壁を本棚にしたことで、本が日焼けしてしまいました。特に、赤や黄色などの原色は紫外線を吸収しやすいため、カバーからどんどん色が抜けていって……。その教訓を踏まえ、二代目のマンションでは窓のない部屋を独立した書斎に。もうひとつ、同じく以前は憧れていたタイル張りのお風呂もやめて、今回は一般的なユニットバスを入れました。前回のハーフユニットでは身体がまったく温まらなかったんです。やっぱりお風呂は普通がいちばんだと学びました(笑)」

▲大容量の本棚は造作ではなく「マルゲリータ」でオーダー。デスクは天板と昇降脚をそれぞれ別に注文して自分で組み立てた力作

▲冷暗所扱いの書斎は、15年来のペット・ムネアカオオアリの飼育場所でもあります。アリのほか、ヤエヤマアオガエルと餌のコオロギもいました
心地よい暮らしに欠かせない、風の通り道と導線への配慮
沙東さんのお家は玄関周りも特徴的。一見はオーソドックスな玄関ですが、たたき部分が奥行きのある土間になっています。土間には共用部の廊下へ出られる扉と逆側の書斎につづく扉があり、すべて開け放つと気持ちの良い風が吹き抜けます。

▲玄関のアクセントクロスも沙東さんが自ら塗装。古い抽斗に鳥を描いたオブジェはユカワアツコさんの作品

▲驚くほど奥行きのある土間には、なんと電気陶芸窯が置かれていました
さらに、玄関を上がってすぐの廊下に独立した洗面台が。洗面台を閉じたサニタリースペースからオープンなスペースへ出すことにより、お客さんにも気兼ねなく手を洗ってもらえるようになったそう。風の通り道だけでなく人の導線にも配慮した、沙東さんらしい設計です。

▲初代マンションのお風呂に使ったのと同じ名古屋モザイクのタイルを取り入れたデザイン
三軒目購入の可能性も? 「家づくり」という沼
食べる、寝る、書き物をする、絵付けをする。遊びに来た友人や同僚、家族をもてなす。それぞれカラフルに塗られ、大小さまざまな生き物たちのオブジェに彩られた4つの居室は、いまの沙東さんの暮らしにぴったりとフィットしているように見えます。

▲キッチンの壁に自ら取り付けた棚には、小さな生き物たちのオブジェが並ぶ
二代目マンションでもカスタマイズを繰り返すこと2年。そろそろ理想の家が完成したのではないかと訊ねると、「次はトイレのドアを何色に塗ろうか考えているんです」との答えが返ってきました。
「それに、すでに塗った壁も、また塗り直したくなることがあるかもしれません。海外の映画やテレビを見ていると、登場人物が『今週末は壁の色を塗り替えるの』とか言ったりするじゃないですか。壁や建具って空間に占める面積が大きく、部屋の印象を決定づけてしまうから、気分や嗜好の変化にともない色や柄を変えられればいいのですが、賃貸だとそれがむずかしい。だけど、買ってしまえばカジュアルにできるようになります」

▲ダイニングの一角に設けたサンルームは、沙東さんのお気に入りの読書スペース。ブラインドを開けると陽光がたっぷり差し込み、植物たちがすくすくと成長中
リノベーションや改装でお部屋にデザイン的な価値を付加するだけでなく、カスタマイズする行為そのものを楽しむのが沙東さん流。初代マンションも買ったときより高く売れたものの、そうしたことはあまり重視していないそうです。
「私は家づくりが趣味みたいなところがあるので『買ったほうがお得ですよ』と無責任に言うことはできないけれど、家に比重を置く生き方をしている人ならば、買ったほうがぜっっったい楽しい。自分自身、海の近くにセカンドハウスを持つ夢はいまも諦めていないし、今後もまたゼロから家づくりをすることがあるんだろうなとうっすら思っています」
沙東さんの家づくりは、これからもつづいていきそうです。

▲古い食器棚に天板を取り付け、タイルを貼っておめかし。天板の上には秋田犬「わさお」がいました!

▲食器棚やキッチン周りにはこだわりの器がずらり。素敵なペンダントライトは、能登の古民家宿「TOGISO」が廃棄される輪島塗漆器を活用してつくったもの
物件DATA
所在地:東京都
築年:1980年
面積:68㎡
リノベーション費:1,300万円(借入費用)
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取材・文:物件ファン編集部 撮影:赤澤昂宥
WRITER
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おまけのQ&A
- Q.沙東さんにとっての「家」の原風景は?
- A.沙東:母が自ら建築士さんに依頼してつくったという九州の実家です。かなりこだわって建てたようで、当時、建築雑誌に取り上げられ、屋根裏のような空間にあった私たちの子ども部屋も「ハイジの部屋」として紹介されました。私は幼くて覚えていないのですが、俳優の岸部一徳さんが見学に来たこともあるそうです。実際には暑さ寒さが過酷だったものの(笑)、現在の自分の居住空間へのこだわりに影響を与えているところもあると思います。