【物件ファンコラボ企画 彼女がマンションを買った理由 vol.1 前編】はじめてのマンション購入からローン完済まで

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読めて探せる不動産エンターテインメントサイト「物件ファン」と、マンションプラスによるコラボ企画の第1弾。今回は、東京で暮らす沙東すずさんのご自宅を訪問します。

沙東すずさん

▲沙東すずさん(会社員・文筆家)/ 都内で会社員として働く傍ら、文筆や、昆虫をテーマにしたクリエーターイベント「昆虫大学」の学長など、多彩な活動を行う。メレ山メレ子名義での著書に『ときめき昆虫学』(イースト・プレス)、『メメントモリ・ジャーニー』『こいわずらわしい』(ともに亜紀書房)などがある。30代でマンション購入。X:@merec0 Instagram:@merec0

読めて探せる不動産エンターテインメントサイト「物件ファン」と、マンションプラスによるコラボ企画・第1弾。今回注目したのは、マンションを購入する女性たちです。SUUMOリサーチセンターの調査によると、2023年に首都圏の新築分譲マンションを購入した単身女性の割合は、購入世帯全体の11.0%。調査を開始した2001年の6.5%から2倍近く伸びています。

 

これは新築マンションにかぎった現象ではなく、とりわけ2010年代半ば〜後半にかけて、中古マンションを買って自由にリノベーションする単身女性をSNSなどで目にすると同時に、身の周りでもそうした事例を耳にする機会が増えた気がします。

 

自分でマンションを買うことは、自分の人生を主体的に選択すること。いま、女性たちはどんな理由でマンションを買い、どんなお部屋でどのように暮らしているのでしょうか。6名へのインタビューを連載形式でお届けします。

 

 

 

東京の、いわゆる城南エリアの南のほう。都心から電車でそう長くかからない駅で降り、下町情緒あふれる商店街を抜けた先に、沙東さんの暮らすマンションはありました。迎え入れてくれたお部屋は、土間付きの3DK。玄関扉と、それぞれ壁を異なる色で塗った各居室の窓を開け放つと、気持ちの良い風が部屋中をすーっとめぐります。

沙東すずさんが現在住むお部屋

▲沙東さんが現在住むお部屋

沙東さんが築45年のこのマンションを購入したのは2023年1月。ひとり暮らしにしては居室の数が多いので、間取りは変更しなかったのかと思いきや、意外にもスケルトンの状態からフルリノベーションしたのだそうです。

 

「自分でもなぜこんなに部屋数が必要だったのか分かりませんが(笑)、冷暖房効率や将来の売りやすさ、築古マンションに特有の構造梁などを考慮しているうちに3DKになりました。個人的には採光と風通しの良いこの間取りがとても気に入っていて、じつは初めて買ってリノベーションした以前の部屋もよく似た間取りだったんです」

 

そう、いまのマンションは沙東さんにとって二代目。初めてマンションを買ったのは2016年、沙東さんが30代前半の頃でした。

 

 

それまではマンション購入など考えたこともなかったという沙東さん。大分から上京してすぐの学生時代はもちろんのこと、就職後も、結婚後も、場所や広さは違えど賃貸マンションに住みつづけていました。しかし、パートナーとの同居を解消することになり、ひとり暮らし用のお部屋探し始めたものの難航。「住みたい」と思える物件がなかなか見つからなかったのです。

 

「ふたり暮らしとひとり暮らしでは、選べる部屋の幅がまったく違うことを痛感しました。自分ひとりで払える家賃では、こんな部屋にしか住めないのか……と。広い部屋での快適な暮らしに慣れてしまっていたことも大きかったと思います。そのとき不動産会社さんから『同じくらいの負担でも、賃貸ではなく購入するならもっと良いお部屋を紹介できますよ』と提案されたのですが、当時はまだピンときませんでした」

沙東すずさんが以前住んでいた分譲賃貸と景観

▲かつて住んでいた分譲賃貸と景観

そんな沙東さんがマンション購入に傾いていくきっかけとなったのは、大分の実家に住むお母様からのアドバイスだったそう。

 

「母は建築やインテリアが好きな人で、私が住む家についても以前からよくアドバイス……というか『そんな部屋に住んではいけん!』とダメ出ししてくれていたんですね(笑)。ある日、リノベ済みの1LDKの部屋の物件情報を送ってきて、『ここを買ったら?』と。『購入は考えてない』と伝えると、『生前贈与を頭金にして買えばいいじゃない』と言うんです。なるほど、その選択肢もあるのかとハッとしました」

沙東すずさんがガーナでつくった棺桶

▲ガーナでつくった棺桶。詳細は著書『メメントモリ・ジャーニー』を参照

ちょうどその頃、副業の文筆のほうの仕事でアフリカのガーナへ行き、自分用の棺桶をオーダーメイドして顛末をレポートすることに。せっかく素敵な棺桶をつくって日本に持ち帰っても、そのとき住んでいた賃貸部屋には置く場所がない……。結果的に、棺桶の存在が決め手となってマンション購入に踏み切った沙東さん。都内の45㎡ほどの中古物件を購入し、フルリノベーションすることに決めました。

 

 

マンションを購入するにあたって、不安だったのはお金のこと。当然ながら、ローンを組むのは人生で初めての経験です。

 

「ローンはフラット35を利用しました。当初は審査が通るかも分かりませんでしたが、けっこう頭金を入れられたこともあって、月々の返済額はそれまでの家賃に比べてむしろ負担が軽くなったかも、くらい。ただ、当時は大きな借金を抱えている状態がこわかったので、せっせと繰り上げ返済にいそしみましたね。いま思うと、そんなに焦って返す必要はなかったんですけど」

沙東すずさんの初代マンションリビング

▲初代マンションのリビング

一方、お部屋づくりの面では金銭面の不安を補って余りある楽しさがありました。自分好みの住空間をしっかり自覚していた沙東さんは、以前から実現させたいと思っていたアイデアを次々と設計士さんに伝えていきます。

 

「いわゆる“田の字型”の間取りの壁の一部を取っ払い、リビングダイニングを広くとった1LDKに変更しました。リビングは、壁一面を本棚に。この壁一面の本棚と、タイル張りのお風呂は絶対にやりたかったことです。お風呂は腰上の壁をタイルで覆い、腰下部分にハーフユニットをはめ込みました。自分好みの家にできたのはもちろんのこと、リビングの壁など、内装の一部を友人たちに手伝ってもらって仕上げた楽しい思い出も相まって、満足度はかなり高かったです」

沙東すずさんの初代マンションバスルーム

▲初代マンションでは、長年憧れていたというタイル張りのバスルームを実現。タイルは、独特の風合いが印象的な名古屋モザイクの「コラベル」シリーズをチョイス

そうして理想の家を手に入れた沙東さんですが、その後、2017年夏~2020年冬まで中国にある子会社へ赴任。ただし、出向中も自宅を賃貸には出さず、一時帰国時の拠り所としていました。2020年の春節で帰国した際には、コロナのパンデミックが始まった時期と重なり、中国へ戻れない状況に。そのまま日本に帰任となり、コロナ禍に突入してからも「好きな家があることに精神的に助けられた」といいます。

 

「外出を自粛していた2年間は、とにかく家のカスタマイズが捗りました。『ここにも棚をつけよう』みたいな感じで、あちこちいじり倒していましたね(笑)」

 

 

沙東さんが二代目のマンションを買ったきっかけは、ローンを完済したことでした。

 

「当時の家は6年ほどのあいだに荷物が増えたことで手狭になっていたし、内装に手を入れる余白がなくなってしまった物足りなさもあって、三浦半島あたりののどかな場所に小さなセカンドハウスを持とうかと考えていました。まずは土地のことを知ろうと三浦へ通っているうちに、ローンを完済しまして。それなら買い替えして、もう少し広い家に住めばいいのでは? と」

 

2022年の秋、軽い気持ちで物件を探し始めたところ、内見2件目の中古物件を気に入ってトントン拍子に話が進み、2023年1月に契約。新物件については物件代と改装予定資金をあわせて融資を受け、旧物件についてはゆっくり売却する、いわゆる「買い先行」のスケジュールで進めることになりました。

沙東すずさんの二代目マンション間取り

▲二代目マンションのリノベーション後の間取り

初代マンションが45㎡ほどだったのに対し、新しいお部屋の広さは70㎡弱。リノベーションについては、今回も沙東さんのアイデアを全面に取り入れましたが、設計士は入れず、工務店と相談しながら細部を詰めていったそうです。内装のカスタマイズに慣れたこともあり、沙東さんが自ら仕上げた部分も前回より多め。気になるお部屋の詳細は、後編をお楽しみに。

 

 

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取材・文:物件ファン編集部 撮影:赤澤昂宥

 

WRITER

物件ファン編集部
読めて探せる不動産エンターテインメントサイト。駅から遠くても、古くても大丈夫。スペックだけではなく、その物件だけが持つ魅力に着目した記事を日々更新しています。 https://bukkenfan.jp/

おまけのQ&A

Q.マンション購入に際して、重視したことは?
A.沙東:予算を考えると古いマンションしか選択肢がありませんでしたが、私の場合、築浅よりむしろ古いマンションのほうが雰囲気が好きなんです。内装はリノベーションで変えるつもりだったこともあり、築年数は気にしませんでした。それよりも立地や周辺環境、マンションの管理状況、そして日当たりの良さを重視しましたね。