ドコモSMTBネット銀行(旧:住信SBIネット銀行)は2026年6月、東京23区を中心としたマンションを対象に「期日一括返済併用型住宅ローン(ハイブリッド型の住宅ローン)」をリリースしました。住宅価格が高騰する中、月々の返済負担を抑えられる新たな選択肢として注目されています。同行の森山慧さんと足立翔さんに、仕組みや開発の背景などを伺いました。
住宅価格高騰の中で生まれた、新たな選択肢
――期日一括返済併用型住宅ローン、いわゆる「ハイブリッド型の住宅ローン」とはどのような商品なのでしょうか?
森山慧さん(以下、森山):一般的な住宅ローンは、元金と利息を少しずつ返済していきますが、元金を「毎月の支払い分」と「据置分」の2つに分けるのが、期日一括返済併用型住宅ローンの特徴です。元金の50%は一般的な住宅ローンと同じく元金+利息を毎月お支払いいただき、残りの50%はあらかじめ定めた期日に一括返済していただく方式です。期日に一括返済する50%は元金を据え置き、利息のみをお支払いいただきます。据置分の元金は借入中に返済する必要がないため、毎月の返済額を抑えられます。
取り扱いエリアは2026年9月現在、東京23区・横浜市・川崎市・大阪市です。対象物件は担保評価額1億円以上の新築・中古マンションで、完済時築年数65年以内と定めています。
▲担保評価額の50%に相当する元金を、あらかじめ定めた期日(最終回)に一括返済する支払い方式(期日一括返済型)と、残りの元金を通常のローンとして返済する方式(元利均等または元金均等)を組み合わせた、ハイブリッド型の住宅ローン
画像出典:ドコモSMTBネット銀行
――団体信用生命保険(団信)は、据置分も対象となるのでしょうか?
足立翔さん(以下、足立):団信は一般的な住宅ローンと同様、元金据置分も対象となっています。ただし、住宅ローン控除の対象となるのは毎月のお支払い分のみで、据置分は対象になりません。
――開発の背景を教えてください。
森山:近年、首都圏を中心に不動産価格が顕著に上がっており「月々の返済額が非常に高く、なかなか住まいを購入できない」という声が増えています。こうした声を受け、2023年に借入期間最長50年の住宅ローンを取り扱い始めました。現在、弊社の住宅ローンを利用される方の3〜4割ほどが、返済期間35年超を選択されています。
一方で、完済時の年齢は35年ローンと同じく80歳未満なので、40代・50代の方は返済期間を長くして月々の負担を抑えることができません。実際にそのような声もいただくようになっていましたので、期間を延ばすのではなく、別の方法で月々の負担を軽減できないかと考えて生まれたのが、今回の期日一括返済併用型住宅ローンです。
――期日一括返済併用型住宅ローンのリリースはメガバンク・ネット銀行初とのこと。業界に先駆けてリリースした理由は?
足立:自宅を担保にして借り入れ、亡くなった際に住まいを売却して一括返済する「リバースモーゲージ」に着想を得たのですが「もともとこういう仕組みがあったから商品化した」というより「こういう商品が欲しい」という思いから生まれた商品です。
50年住宅ローンは多くの方にご利用いただいていますが、期日一括返済併用型住宅ローンは対象が限られる、どちらかというとニッチな商品です。それでも、商品担当が提携パートナーなどとの対話を通じて日々リアルなコミュニケーションを重ねてニーズを把握し、「これならいける」という確証を得たうえで開発・リリースに踏み切りました。
▲(左から)足立翔さん。ドコモSMTBネット銀行 10X事業本部 住宅ローン営業部 副部長 兼 東日本営業グループマネージャー。大手ハウスメーカーを経て、2014年入社。以来、提携不動産会社を対象とした提携住宅ローンの推進に長く携わる。森山慧さん。ドコモSMTBネット銀行 10X事業本部 事業企画部 住宅ローン企画グループ プリンシパル。大手損害保険会社を経て、2026年入社。以来、住宅ローン事業の企画・立案に携わる。※所属先・肩書きは取材当時のもの
1億円のマンションを購入した時の返済額を比較
――従来型の住宅ローンと期日一括返済併用型住宅ローンとでは、返済額にどれくらいの違いが出るのでしょうか?
森山:1億円を借り入れた場合、下の表に設定した条件では期日一括返済併用型のほうが、月々の返済額は7万3,000円ほど安くなります。ただし、期日一括返済併用型の金利は0.35%上乗せとなり、据置分の元金は減らずに利息がかかり続けますので、総返済額は期日一括返済併用型のほうが1,900万円ほど高くなります。
| 借入金額 | 返済期間 | 借入金利 | 毎月返済額 | 毎月返済差額 | 総返済額 | 総返済額差異 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 通常住宅 ローン |
1億円 | 35年 | 1.20% | 291,702円 | ー | 1億2,255万0,890円 | ー |
| 期日一括返済 併用型ローン |
1億円 | 35年 | 1.55% | 218,902円 | -7万2,800円 | 1億4,198万5,698円 | +1,943万4,808円 |
※借入時より金利が変動しない前提での試算
※毎月返済額は2回目以降の返済額(初回は借入日により日割りの利息が発生するため)
――50年返済と期日一括返済併用型住宅ローンを比較した場合はいかがでしょうか。
足立:下の表における条件では、期日一括返済併用型のほうが月々の返済額は1万円ほど抑えられます。50年返済にする場合の金利上乗せは0.15%となりますので、総返済額は期日一括返済併用型のほうが高く、差額は440万円程度です。
| 借入金額 | 返済期間 | 借入金利 | 毎月返済額 | 毎月返済差額 | 総返済額 | 総返済額差異 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 通常住宅 ローン |
1億円 | 50年 | 1.35% | 229,287円 | ー | 1億3,761万2,902円 | ー |
| 期日一括返済 併用型ローン |
1億円 | 35年 | 1.55% | 218,902円 | -1万0,385円 | 1億4,198万5,698円 | +437万2,796円 |
※借入時より金利が変動しない前提での試算
※毎月返済額は2回目以降の返済額(初回は借入日により日割りの利息が発生するため)
残価設定型住宅ローンと期日一括返済併用型住宅ローンの違いは?
――期日一括返済併用型住宅ローンは、残価設定型住宅ローンと何が違うのでしょうか?
森山:残価設定型住宅ローンも、借入金額のうち一定額を差し引いた金額を返済していく点は期日一括返済併用型住宅ローンと共通しています。しかし、残価設定型住宅ローンは残価が保証されているのに対し、期日一括返済併用型住宅ローンの据置分は保証されているわけではありません。
▲残価設定型住宅ローンは、将来的な住宅の価値(残価)に着目し、借入金額から住宅の残価を差し引いた金額を返済する仕組み。残価は保証され、差額が生じても債務者に請求せず保険でカバーされる
画像出典:国土交通省
――期日一括返済併用型住宅ローンは、期日に元金の半分を一括返済しますが、これは売却が前提となるのでしょうか。
足立:売却して返済するというのは選択肢のひとつで、退職金で返済していただいたり、月々の返済額が抑えられる分を運用して返済の原資にしていただいたりすることもできます。一方で、売却して返済しようと考えていても、期日までに想定を上回るスピードで資産価値が目減りしていくリスクもあります。たとえば1億円借り入れた場合、期日には50%の5,000万円を一括返済していただく必要がありますが、マンションが4,000万円でしか売れなければ、1,000万円は持ち出しということになります。
資産価値の維持を見込んで対象エリアや対象物件を定めてはいるものの、35年後に取得時の50%の価値が維持される保証はありません。ただ、10年後や20年後に売却して据置分の元金を一括返済することも可能です。都心部のマンションは、資産価値の維持、あるいは向上を期待しやすいというところで、実際に中短期の住み替えを見据えて期日一括返済併用型を選択する方も少なくありません。
期日一括返済併用型住宅ローンが向いているのはどんな人?
――期日一括返済併用型住宅ローンはどのような人に選ばれていますか?
森山:ご年齢的に40年や50年のローンが組めない40代以上の方が中心です。30代の方にもご興味を持っていただけますが、検討の結果、超長期の住宅ローンを選ばれる方が多い傾向にあります。また、現時点では新築マンション購入時のご利用が大半です。総じて、住まいの資産価値を重視している方が多い印象です。10~20年後に住み替える想定で利用される方もいらっしゃいます。
――具体的にどのような人に向いているとお考えですか?
足立:やはり「月々の返済負担を抑えられる」というのが期日一括返済併用型住宅ローンの一番のメリットです。たとえば、子育てやお仕事で忙しい時期は都心部のマンションで暮らし、お子さまが独立した後の住み替えを想定されている子育て世帯などにはぴったりだと思います。
――反対に、向いていない人の特徴は?
森山:期日には一括で据置分の元金を返済していただく必要がありますので、長い目でマンションの資産価値や資産運用を考えられない方には向いていないかもしれません。永住目的の方には向いていないのかというと、そういうわけではありません。永住目的でマンションを取得するのであれば、期日にどうやって一括返済するのか。住み替えるつもりであれば、いつ頃住み替えるのか。加えて、都心部のマンションは資産価値が維持されやすいとはいえ、立地や管理状態もさまざまですから、資産価値の推移を常に気にしていただく必要があります。
期日一括返済併用型住宅ローンには、総返済額がどうしても大きくなること、そしてマンションの資産価値が期日までに残債を下回ってしまう可能性があることがリスクとして挙げられます。この点は十分にご理解いただきたいと思います。
▲森山さんは「“出口”で困らないよう、仕組みを十分に理解し、将来を見据えて判断できる人に向いている」と話す
――商品の詳細を確認したい、他の商品と比較したいといった場合に相談できる窓口はあるのでしょうか。
足立:弊社はネット銀行ではありますが、じつはWeb上でのお申し込みは少なく、大半は代理店経由でのお申し込みです。代理店では対面でご相談いただけますので、各商品のメリット・デメリットを比較したり、シミュレーションを見比べたりしながら検討していただけます。
また、提携の不動産会社でご相談いただくことも可能です。期日一括返済併用型住宅ローンをリリースしてから不動産会社からのお問い合わせも非常に多く、「仕組みを詳しく教えてほしい」「勉強会を開催してほしい」といった声が寄せられています。おそらく、期日一括返済併用型住宅ローンをご提案の武器にしたいという思いが強いのだと思います。
期日一括返済併用型住宅ローンは、債務者さまに一定のリスクを負っていただく商品でもあります。お客さまにしっかりご理解いただけるよう我々も説明を尽くすとともに、説明会や研修会を通じて、不動産会社の皆さまにも正しくご理解いただけるよう努めていきます。
▲「複雑な商品だからこそ、丁寧な説明が欠かせない」と足立さん。そのため、現在のところ期日一括返済併用型住宅ローンは対面でのみ取り扱っている
取材・文:亀梨奈美 撮影:石原麻里絵(fort)
WRITER
不動産ジャーナリスト。不動産専門誌の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。
おまけのQ&A
- Q.期日一括返済併用型住宅ローンの、今後の展望をお聞かせください。
- A.森山:お客さまや不動産会社さまの反響を踏まえながら、対象エリアや条件、お申し込みのフローなどを適宜見直していきたいと考えています。中でも戸建て住宅への対応は、不動産会社さまからのご要望が非常に強いところです。戸建てはマンションに比べて担保評価が難しい面もありますが、検討を進めていきたいですね。将来的には、リバースモーゲージなどと組み合わせて、期日一括返済の「出口」までトータルでご提案できるとよいのではという声もいただいています。「50年ローンは組めないから」と住まいの購入を諦めていた方にも、月々の返済負担を抑えられる、新たな選択肢をご提案できるようになりました。今後も選択肢を広げ、お客さまお一人おひとりにしっかり寄り添っていきたいと思っています。
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