このたびの「令和8年熊本地震」によりお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
マンションは堅牢で地震などの自然災害に強くできている物件が多いものの、災害時にはマンション特有の問題が発生することがあります。近年、マンションは在宅避難が推奨されていますが、ライフラインが断絶した場合には問題が大きく、状況によっては避難所への避難を検討すべき場面も考えられます。
この記事では、マンションにおける災害発生時の対処方法や、必要な備えについて紹介します。被害を少なくするために、個人としてはもちろん、管理組合や住民同士でも防災対策に取り組みましょう。併せて、マンションの中でも地震に強い免震構造マンションについても紹介します。
INDEX
- マンションで大きな地震が起きたら?
・まずは自分の身を守る
・火元を確認し避難経路を確保する
・在宅が危険であれば避難する - 令和8年熊本地震・令和6年能登半島地震の教訓から考えるマンション特有の課題
・長周期地震動と高層階における家具の転倒リスク
エレベーター・立体駐車場の停止による移動の困難
停電・断水で即座に直面するトイレ問題 - 在宅避難か避難所か?マンション住まいの判断基準
・安全性を確認する3つのチェックポイント
・自宅の備蓄状況と家族構成 - マンションの防災対策として個人で備えておくこと
・自宅の安全対策
・避難経路の確認・確保
・地震保険への加入
・家族間の連絡方法を決めておく - マンションにおける災害備蓄ガイド
・【家族人数別】マンションで必要な災害備蓄品の種類と量
・収納課題を解決するローリングストック
・電源確保の重要性 - 管理組合と居住者で取り組むマンション全体の防災対策
・防災マニュアルの策定と実践的な防災訓練の実施
・共用備蓄と非常用電源の定期的な見直し
・住民の安否確認ルールの徹底 - 地震に強い免震マンションなら生活も資産も守れる
・地震への強さなら免震マンションが有利
・共用部分や専有部分の防災性能もチェック - まとめ
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マンションで大きな地震が起きたら?
▲画像提供:PIXTA
日本は有数の地震多発地帯であり、いつ大きな地震が起こるか分かりません。
防災対策の基本として、まずは大きな地震が発生した際の対処方法を紹介します。慌てず適切な行動ができるよう、覚えておきましょう。
◇まずは自分の身を守る
大きな地震が起きたら、揺れにより家具が転倒・落下したり、ガラスが割れたりしてケガをする危険性が高くなります。まず自分の身の安全を第一に考え、身を守る行動を取りましょう。
特に危険なのが、落下物が頭に当たってしまうことです。テーブルなどの下に隠れる、クッションで頭を覆うなどの行動を取って、身を守ってください。隠れる場所がない場合には、比較的落下物リスクの少ない玄関に避難し、窓ガラスのそばはガラスの破片が飛び散る危険があるため、できるだけ離れるようにしましょう。
揺れを感じたときに、反射的に倒れそうな電化製品や家具を支えようとする人もいますが、大変危険です。倒れてきたときに下敷きになってしまうおそれもあるため、倒れるものがない場所に移動しましょう。
エレベーターの使用中に地震が起きた場合には、速やかに全階のボタンを押し、停止した階で降りるようにします。閉じ込められたら、非常ボタンで外部に連絡してください。
◇火元を確認し避難経路を確保する
大きな揺れが収まったら、まず火の始末をしましょう。ガスの供給は強い揺れの発生により自動的に遮断されるケースが多くなっていますが、火を使用していたときは必ず消火を確認し、元栓を閉めてください。もし出火してしまった場合は、落ち着いて初期消火を行います。
火元の確認が済んだら、次に避難経路を確保しましょう。マンションでは、大きな揺れで玄関やドアの枠が歪んでしまい、ドアの開閉ができず外に出られなくなることがあります。初回の揺れでは開閉ができても、それ以降の揺れで開かなくなることもあるため、ドアなどはしばらく開けておいてください。
◇在宅が危険であれば避難する
マンションは基本的に災害に強い構造のため、地震などの災害が発生しても、在宅避難を選択できることが多いです。マンションの外に出るほうが危険な場合があるため、注意しましょう。
建物の被害が大きく、自宅にいるほうが危険と感じられる場合には避難してください。ラジオや防災無線、自治体の防災アプリなどを利用して、災害の規模や周囲の情報などを確認しましょう。火災などの二次災害を防止するため、避難する際には電気のブレーカーを落として、ガスの元栓も閉めてから出るようにしてください。
令和8年熊本地震・令和6年能登半島地震の教訓から考えるマンション特有の課題
▲画像提供:PIXTA
マンションは構造上強度があり、地震や災害で建物自体が大きな被害を受けるリスクは高くありません。しかし、マンションでは建物そのものだけでなく、エレベーターや給排水設備、立体駐車場などの共用設備が被災することで、生活に大きな支障が生じることがあります。
2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震では、マンションでエレベーターが一時停止した他、立体駐車場が故障して利用できなくなった事例も報告されています。また、トイレの確保も被災後の重要な課題となっています。こうしたマンション特有の問題は、2024年の能登半島地震でも顕在化しました。
ここでは、令和8年熊本地震と令和6年能登半島地震の教訓から、マンションで特に注意したい3つのポイントを紹介します。
◇長周期地震動と高層階における家具の転倒リスク
マンションは構造上、高層階ほど揺れが大きくなります。低層階に比べて、震度が大きく感じられるでしょう。低層階では室内の被害がなくても、高層階では家具の転倒が発生することも珍しくありません。
特に、マグニチュードが大きく震源が浅い地震では、2~3秒以上の長い周期で揺れる長周期地震動が起こりやすくなります。この揺れは、高層建物に大きな影響をおよぼすことが知られています。長周期地震動は階級1〜4の4段階で表され、階級3で固定しない家具が移動したり倒れたりするリスクがあるため注意が必要です。特に、キャスター付きの家具は大きく動くことがあるので、普段からストッパーで固定しておくなどの対策を講じておきましょう。
能登半島地震でも長周期地震動が発生し、能登で階級4、北陸各地や新潟で階級3、東京23区でも階級2を観測しました。このように、震源から離れた場所でも階級2~3の揺れが観測されていることから、高層マンションでは一層の注意が求められます。
◇エレベーター・立体駐車場の停止による移動の困難
マンション高層階からの移動は、普段はエレベーターの利用が一般的です。しかし、災害で停電しエレベーターが利用できなくなると、階段を使用して移動しなければなりません。実際、能登半島地震でも約1万6,000基ものエレベーターが停止したと報告されています。
令和8年熊本地震でも、マンションでエレベーターが一時停止した他、立体駐車場が故障して利用できなくなった事例が報告されています。高層階の住民にとっては、エレベーターが使えないことで外出や買い物、避難などが難しくなるだけでなく、立体駐車場の停止によって車を利用できなくなるなど、日常生活にも影響が及びます。
高層階からの移動は大きな負担となり、特にタワーマンションの高層階は、地上に出るのが難しいといわれるほどです。災害時に階段を使ってタワーマンションの高層階から地上へ出るには階数によっては1時間程度かかるとの試算もあり、ご家族に高齢者や妊婦、乳幼児などがいる場合には、さらに移動が困難になるでしょう。
また、災害で断水した場合には、給水車などを利用して水を確保する必要性が生じます。ただし、場合によっては往復で2時間以上かけて高層階の住戸から地上へ降り、重い水を持って自宅の階まで上がらなければなりません。生活に必要な水を繰り返し運ぶのは容易ではないため、特に高層階に住んでいる場合は災害に備えて飲料水や生活用水の備蓄も重要になるでしょう。
(出典)熊本日日新聞「<2026 年熊本地震>エレベーター停止「買い出しできない」マンション被災 生活に支障も」 (2026年8月2日付、2026年10月13日閲覧)
◇停電・断水で即座に直面するトイレ問題
非常用電源が備わっていないマンションでは、停電が発生するとマンションの給排水ポンプが動かなくなります。そのため、停電時にはトイレの水が流せません。
また、電気が使用できる場合でも、被災時にトイレを流すのは危険です。排水管が破損した状態で汚水を流すと、下の階で汚水があふれたり、室内の衛生状況が悪化したりするおそれがあるからです。そのため、大地震が発生した際には、排水設備の安全が確認されるまで水洗トイレの使用を控える必要があります。
令和8年熊本地震でも、被災地ではトイレの確保が課題となっており、マンション地震対応支援協会も、マンションでは停電・断水・エレベーター停止・トイレの使用制限などが生活の継続に大きな影響をおよぼす可能性があるとしています。
排水管の安全確認が取れるまでには時間を要する場合があるため、長期間にわたり不便な生活を強いられることもあるでしょう。外部に仮設トイレが設置されたとしても、マンションの高層階に住んでいる場合、トイレのたびに時間をかけて地上まで行かなければなりません。災害時の負担を軽くするためにも、家族分の非常用トイレを十分に備蓄しておくことが大切です。
在宅避難か避難所か?マンション住まいの判断基準
▲画像提供:PIXTA
地震のように広い範囲に影響をおよぼす災害においては、「共助」の考え方が重要になります。災害時には避難所が開設されますが、これはあくまで「災害によって安全に暮らせる場所を失った方や支援を必要とする方が一時的に身を寄せるための場所」であり、本当に必要な方が使えるようにしなくてはなりません。自宅マンションの被害が軽微な場合は、避難所に向かうのではなく、在宅避難するのも共助の一つの形です。
ここでは、マンション住まいにおいて、在宅避難か避難所への移動かを判断するための基準を解説します。
◇安全性を確認する3つのチェックポイント
マンションは、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の比較的堅牢な建物が多く、耐震性に優れているケースが一般的です。そのため、被害が軽微であれば、震災時も基本的に在宅避難が推奨されます。
ただし、次の3つのいずれかに該当する場合は、避難所への避難を検討したほうがよいかもしれません。
1. 建物や共用部分に大きな損傷・変形などがある
2. 火災やガス漏れの危険性がある
3. 余震などによる二次被害のリスクがある
地震後に建物や共用部分にひび割れや破損が見られた場合でも、見た目だけで建物全体の安全性を判断することはできません。たとえば、建物の接合部に設けられたエキスパンションジョイントは、地震時などに異なる構造躯体の動きを吸収する役割があり、その部分が破損している場合でも、建物本体の構造安全性とは分けて考える必要があります。
そのため、ひび割れや破損が見られた場合には、自己判断で安全・危険を決めるのではなく、管理組合や管理会社、専門家などに確認してもらい、建物の安全性を判断することが大切です。大地震発生後には、自治体が「被災建築物応急緊急度判定」を行う場合があります。建物に「赤(危険)」「黄(要注意)」のステッカーが貼られるようなら、避難所への移動が推奨されます。
特に、築年数の古いマンションは耐震性が十分でない場合もあるため注意が必要です。建物に大きな損傷がある場合や火災・ガス漏れなどの危険がある場合は、無理に在宅避難を続けず、自治体などからの情報も確認しながら避難を検討しましょう。
加えて、居住地域に避難指示が出た場合や、警戒区域に指定されて立ち入りが制限された場合も在宅避難は難しくなります。
◇自宅の備蓄状況と家族構成
食料品や飲料水、非常用トイレなどの備蓄状況や家族構成も、マンションでの避難行動に影響してきます。
在宅避難を続けるには、建物自体の安全性が確保されているとともに、家族全員が一定期間生活できるだけの十分な備蓄があることが前提です。備蓄が足りないようであれば、無理せず避難所へ避難すべきでしょう。
ただし、避難所にはさまざまな方が集まります。家族に高齢者や乳幼児、ペットなどがいる場合は、避難所での生活が大きな負担になることもあるため、できるだけ在宅避難を選びたいところです。そのためにも、平常時からの備蓄が欠かせません。
マンションの防災対策として個人で備えておくこと
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マンションでの防災対策は、マンション特有の問題に対処できるように備えることが大切です。以下では、個人ができる備えや、そのポイントを紹介します。
◇自宅の安全対策
地震は高層階になるほど大きく揺れ、家具や家電が転倒・落下することでケガをするリスクが高くなります。家具が倒れても被害が最小限となるように、配置を工夫しましょう。転倒リスクの高い家具には、固定金具や突っ張り器具などを利用した転倒防止対策が有効です。
特に就寝中は無防備になるため、寝室には家具を置かないか、倒れても影響がない範囲に配置してください。落下の可能性があるペンダント照明やインテリア小物についても対策が必要です。
食器棚などは、転倒防止対策をしていても揺れにより扉が開き、収納物が飛び出してしまう危険があります。棚に滑り止めを貼ったり、飛び出し防止ストッパーを設置したりしておくとよいでしょう。窓や扉のガラス部分には、ガラス飛散防止フィルムを貼っておくと安心です。
◇避難経路の確認・確保
災害が発生した際の避難経路の確認をしておきましょう。
一定規模以上のマンション建築基準法に基づき、2ヵ所以上の避難経路を確保する設計が義務付けられており、階段の他、バルコニーに避難ハッチが備わっています。玄関や階段が使用できないときは、避難ハッチから下の階に降りる必要があるため、避難ハッチの部分には物を置かないようにしましょう。
なお、避難ハッチは全戸に設置してあるとは限りません。11階以上では避難ハッチが設置されておらず、スプリンクラー設置などの火災対策がされていることが一般的です。自分の住む階では、どの部屋のバルコニーに避難ハッチがあるのかを把握しておきましょう。
各戸のバルコニーの仕切り板も、災害時には破って避難経路として利用するため、周囲は空けておいてください。避難経路上に障害物が置いてある場合には、管理組合に相談しましょう。
また、火災が起きた場合には初期消火が重要です。一定規模以上のマンションでは消火器が廊下などに設置されているので、使い方と併せて設置場所を確認しておきましょう。
◇地震保険への加入
万が一の災害に備え、地震保険への加入がおすすめです。地震保険は火災保険に付帯させて加入するもので、単体では加入できません。
マンションの場合、専有部分と家財については個人で加入します。地震保険の保険金額は火災保険の 30~50%(※)に限られるものの、生活の再建には十分に活用できるでしょう。なお、実際の補償額は、契約で設定された保険金額と認定された損害の程度によって決まる仕組みです。
共用部分の地震保険は管理組合で加入しますが、加入率は半数程度にとどまっています。
マンションが地震保険に未加入の場合、地震の被害を受けた際に共用部分の修繕がなされないリスクがあります。加入状況について管理組合に確認し、未加入であれば総会などで加入を検討するよう提案してみましょう。
▶(※)引用:一般社団法人 日本損害保険協会「損害保険Q&A|問67 地震保険の保険金額の設定にあたっては、どのような制限がありますか。」
◇家族間の連絡方法を決めておく
大きな災害の発生時には携帯電話や加入電話が使用できない可能性があり、外出中の家族と連絡を取るのが困難になります。家族間で話し合い、非常時の連絡方法を決めておきましょう。
災害で電話が利用できないときの連絡方法には、災害用伝言ダイヤル(171)や携帯電話会社が提供している災害用伝言板があります。また、電話はかかりにくくてもインターネット接続なら使えることもあるため、メールやSNSを通じて連絡できるようにしておくとよいでしょう。
自宅が危険な場合には避難する可能性もあるため、最寄りの避難所や家族の集合場所について共有しておくことも大切です。
マンションにおける災害備蓄ガイド
▲画像提供:PIXTA
災害時に在宅避難を続けるには、十分な備蓄が欠かせません。とはいえ、何をどれだけ準備すればよいのかが分からない方も多いでしょう。
ここでは、災害に備えて備蓄すべきアイテムの種類や量を家族人数別に紹介するとともに、ローリングストックや電源確保の重要性についても解説します。
◇【家族人数別】マンションで必要な災害備蓄品の種類と量
備蓄は最低3日分、できれば7日分用意するとよいとされています。以下は、自宅マンションで3日間在宅避難する場合に最低限必要な備蓄品の種類と量を家族人数別にまとめたものです。
【家族人数別】在宅避難に必要な災害備蓄品と量
| アイテム | 家族人数ごとの必要備蓄量(3日分) | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人 | |
| 飲料水 | 9L | 18L | 27L | 36L | 45L |
| 生活用水 | 30~ 60L |
60~ 120L |
90~ 180L |
120~ 240L |
150~ 300L |
| 非常食 | 9食 | 18食 | 27食 | 36食 | 45食 |
| 災害用トイレ | 15回分 | 30回分 | 45回分 | 60回分 | 75回分 |
(出典)アイリスオーヤマ
その他、汚れを拭き取るためのウェットティッシュや、水を使わずに使用できるドライシャンプーや歯磨きシートといった衛生用品もそろえておくとよいでしょう。また、災害時には最新情報を確認することも大切になるため、電池式や手回し式のラジオも備えておくと便利です。
東京都総務局が運営する「東京備蓄ナビ」では、家族構成を入力するだけで、必要な備蓄品の種類・量を確認できるリストを公開しています。自宅の災害備蓄の準備に活用してはいかがでしょうか。
▶︎参考:東京都総務局「東京備蓄ナビ」
◇収納課題を解決するローリングストック
前述の表からも分かるとおり、在宅避難に必要な水や食料品などをまとめて備蓄するには、相応の収納スペースが必要です。収納場所が限られることも多いマンションで日頃から効率良く備蓄するには「ローリングストック」が有効です。
ローリングストックとは、普段使いの食料品や飲料水、日用品を少し多めに購入し、古いものから順に使用しながら、消費した分を買い足していく備蓄方法を指します。普段の「買い置き」が災害備蓄を兼ねるため、収納や管理の問題をクリアしつつ、マンションでも必要量の備蓄を無理なく保てるでしょう。
◇電源確保の重要性
災害時には、被害状況やライフライン、支援に関する情報など、正確な最新情報を入手することが不可欠です。
総務省「令和6年版 情報通信白書」によれば、能登半島地震の発生直後、最初にアクセスしたメディアとして最も多く挙げられたのは「テレビ放送(64.2%)」でした。次いで「SNS(12.6%)」となっており、20代ではSNSを選んだ割合が30.5%に達しています。「ニュースポータルサイト・アプリ(8.8%)」で情報確認をした方も少なくありません。
スマートフォンは、自治体の防災アプリやニュースサイト、SNSによる情報収集に加え、家族との連絡や安否確認にも活用できます。しかし、停電によって充電ができなくなると必要なときに使えなくなり、在宅避難にも大きな影響が出かねません。そのため、スマートフォンは「インフラ」の一つととらえ、災害に備えて大容量のモバイルバッテリーや乾電池式充電器などを複数用意しておきたいところです。
▶︎引用:総務省「令和6年版 情報通信白書|第2章 情報通信が果たした役割と課題」
管理組合と居住者で取り組むマンション全体の防災対策
在宅避難の可能性が高くなるマンションでは、被災した際にはマンション全体での対策や居住者同士の「共助」が必要です。管理組合と住民が協力し、日頃から災害に備えておくことが、いざというときの被害や混乱の軽減にもつながります。
マンションではどのような防災対策が求められるのか、順番に見ていきましょう。
◇防災マニュアルの策定と実践的な防災訓練の実施
管理組合の防災対策としては、地震発生時に住民が冷静に行動できるよう「防災マニュアル」を策定することが重要です。後述する安否確認に関するルールも、このマニュアル内で決めておきましょう。
また、防災マニュアルで定めた内容を実践できるよう、定期的に防災訓練を実施することも大切です。消防法第8条により、居住者50人以上のマンション(防火管理者の選任が必要なマンション)では、訓練の実施が義務付けられています。同じ建物内に飲食店やコンビニが入居している場合には、「複合用途防火対象物」となり、居住者と店舗従業員の合計が 30 人以上で防火管理者の選任が求められ、訓練の実施も必要です。
マニュアルにしたがって防災訓練フロー図を作成し、それどおりに動けるかを訓練でしっかり確認してください。
なお、一定規模のマンションであれば「自主防災組織」を立ち上げるのも効果的です。自主防災組織とは、自助・共助の精神の下、自発的に防災活動を行う地域住民による組織です。地元の町内会や自治会で立ち上げている場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
▶︎引用:e-GOV法令検索「消防法」
◇共用備蓄と非常用電源の定期的な見直し
マンションでは、個々の住民による備蓄だけでなく、共用の防災用備蓄倉庫に住民向けの備蓄品を準備しているケースもあるでしょう。管理組合は、管理会社と協力して定期的に防災倉庫の中身を見直し、飲食物を計画的に入れ替える必要があります。
また、非常用電源設備が設置されている場合、消防法・建築基準法・電気事業法それぞれに基づく定期点検が義務付けられています。非常用電源設備のあるマンションでは、必要な点検が実施されているかどうかも今一度確認してください。
◇住民の安否確認ルールの徹底
災害発生時の安否確認も、マンションで課題になりやすいポイントです。特に都市部のマンションでは住民同士の関係性が希薄なケースも多く、隣に誰が住んでいるのかさえも分からないことがあるためです。
安否確認をスムーズに行うためにも、居住者名簿を整備するとともに、一人暮らしの高齢者や障がい者などの要配慮者・避難行動要支援者がどの部屋に住んでいるのか、明確にしておきましょう。名簿には個人情報が含まれるため、利用目的を伝えて本人の同意を得たうえで作成し、保管方法も決めておく必要があります。自治体によっては、協定を結んだ管理組合に「避難行動要支援者名簿」を提供している場合もあるため、確認してみるとよいでしょう。
とはいえ、実際に災害が発生すると、各部屋を訪問して回ることすらままならなくなる可能性もあります。そこでドアに貼るだけで安否表示ができるマグネットシールを用意し、防災訓練時に安否確認の手順を確認するなど、実践的な仕組みを整えておくことが大切です。
地震に強い免震マンションなら生活も資産も守れる
▲画像提供:PIXTA
災害対策として、地震に強い免震マンションを選択することも有効です。
地震で被災したマンションは、資産価値が下がります。震災に耐えるマンションを選ぶことは、安全だけではなく資産も守ることにもつながると覚えておきましょう。
◇地震への強さなら免震マンションが有利
マンションは、建築基準法の規制により耐震性が確保されています。1981年5月31日までの旧耐震基準では震度5程度の地震でも倒壊しないように、6月1日以降の新耐震基準では震度6強~7程度の地震でも倒壊しないように造られています。
耐震性の判断基準となる「耐震等級」は3段階で示されますが、等級が同等でも、地震の際の揺れ方はマンションの構造によりさまざまです。
地震に対応できる構造には、耐震構造・制振構造・免震構造の3種類があります。
▲画像:編集部作成
耐震構造:建物の柱や梁を丈夫なものにして、建物自体の強度を高めた構造です。強い揺れに対する強度はあるものの、地震の揺れが建物に伝わりやすく、家具の転倒や内装材の損傷などが生じる可能性があります。
制振構造:耐震構造にプラスして、地震のエネルギーを吸収する制振装置(ダンパーなど)を用いて揺れを軽減する構造です。耐震構造よりも揺れの軽減効果は高くなります。
免震構造:地盤と建物の間に免震装置を挟むことで、建物に揺れが伝わりにくいようにする構造です。地盤が速く揺れても、免震装置を挟んだ建物はゆっくりと揺れるため、室内の損傷を軽減できるとされます。
上記のように、免震構造は建物に揺れを伝えないため、耐震構造や、制振構造に比べると、少ない被害で済む構造といえるでしょう。
◇共用部分や専有部分の防災性能もチェック
地震などの災害に強いマンションを選ぶ際には、構造だけではなく共用部分や専有部分の防災性能をチェックすることも大切です。
長谷工のマンションでは、以下のような防災への配慮を行っています。
共用部分:地震時管制運転エレベーター、非常用飲料水生成システムや簡易トイレなどの防災設備、防災備蓄倉庫の整備
専有部分:ドアの対震枠や耐震ラッチ、ユニットバスの固定など
防災に配慮されたマンションを選ぶことで、災害発生時にも安心して生活できるでしょう。
まとめ
マンションの防災対策では、停電や給排水設備の破損などによって生じるマンション特有の問題を把握した上で、必要な備えを行っておかなければなりません。マンションの場合、基本的には在宅避難が推奨されているため、飲食物や生活用品などを最低でも3日分、できれば1週間程度分備蓄しておきましょう。
もし十分な備蓄がなかったり、建物自体に損傷があったりする場合は、避難所への避難も検討したいところです。
また、災害から身を守るためには、避難経路の確保や室内の危険性を減らすことも大切です。転倒する可能性がある家具を固定し、安全な場所を確保しましょう。何よりマンションでは、管理組合や住民同士のつながりによる「共助」が重要な役割を果たします。地震によるマンション全体の被害を減らせるよう、防災マニュアルの策定や防災訓練の実施などで万が一の事態に備えましょう。
監修者
竹内 英二(たけうち えいじ)
<保有資格>
- 不動産鑑定士
- 宅地建物取引士
- 賃貸不動産経営管理士
- 公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)
- 住宅ローンアドバイザー・中小企業診断士
<プロフィール>
不動産鑑定事務所兼宅地建物取引業者(株)グロープロフィットの代表取締役。大阪大学出身。
※所属会社・役職は取材当時のものです。
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