西葛西と志村坂上が今、熱い? 不動産のプロが選ぶ、東京近郊の穴場と相場

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都心部のマンション価格高騰で注目される「東京近郊エリア」。人気YouTubeチャンネル「東京近郊不動産マニア」の皆さんに、東京近郊マンションの相場や魅力、穴場エリアを聞きました。

――「東京近郊」とは具体的に、どこからどこまでのエリアを指すのでしょうか?

 

すまいよみさん(以下、すまいよみ):明確に定義されているわけではありませんが、東京近郊不動産マニアでは「都心部の職場からドアtoドアで1時間圏内」を東京近郊としています。通勤に1時間半や2時間かかってしまうようではタイムパフォーマンスが低く、反対に都心部まで30〜40分となると相場が高くコストパフォーマンスが下がるということで、我々としては「ドアtoドアで1時間圏内」の東京近郊エリアを推しています。

 

2LDKさん(以下、2LDK):「東京まで1時間」と「新宿まで1時間」でも条件は変わりますし、通勤先やお住まいの駅までの距離によっても異なります。「ここまでが東京近郊」と明確に線引きできるものではなく、グラデーションのあるものと捉えています。

 

久保田宙さん(以下、久保田):コロナ禍以降、テレワークを導入する企業が増えたものの、都心部オフィスの入居率などを見ても、日本では「出社」の意義は依然として高い状況です。共働き世帯の増加も相まって、改めて「職住近接」の価値が見直されています。資産価値の観点からも、都心部に近いほど価値が落ちにくく、むしろ上がる可能性が高いというのは明白で、あらゆる面で都心部のマンションの価値は高まっています。とはいえ、一般的な収入の世帯には手の届きにくい水準まで住宅価格が高騰しているのも事実。コスパとタイパのバランスを考えたとき、「東京近郊」という選択が最適解になる世帯は少なくないでしょう。

東京近郊不動産マニア プロフィール

▲(左から順に)マンションを5回購入し、23区城東エリアに明るいマンションブロガーのすまいよみさん。X:@sumaiyomi。東京・埼玉・千葉・神奈川エリアを扱う、すんでの仲介営業マン、とりさん。X:@torimanshon2。都心部マンションを主に扱うKIZUNA FACTORYの不動産仲介エージェント、久保田宙さん。X:@kubota_kizuna。マンションブロガーとして幅広いエリアをカバーし、2026年4月に著書『絶対に失敗しないマンション購入の教科書』を上梓したばかりの2LDKさん。X:@2ldk18。※所属会社・役職は取材当時のもの

取材は、東京近郊不動産マニアのYouTubeチャンネル収録後に行った。マンション愛の強い4名のトークを引き出すMCとして、番組内で進行を務めていたのがぽぽちゃんさん

▲取材は、東京近郊不動産マニアのYouTubeチャンネル収録後に行った。マンション愛の強い4名のトークを引き出すMCとして、番組内で進行を務めていたのがぽぽちゃんさん

住まい探しの窓口 紹介

▲2026年3月に立ち上がったばかりの、東京近郊不動産マニアのYouTubeチャンネル。同チャンネルは、住まい探しをサポートするサイト「住まい探しの窓口」による情報発信の一環として立ち上げられた

――2026年2月時点の中古マンション70㎡換算価格は1億8,000万円超。東京近郊エリアも上昇基調にあるものの、都心部から離れるほど上昇率は緩やかなようです。検討層の動きに変化は見られますか?

価格推移の図

出典:東京カンテイのデータをもとに編集部で作成

▲2020年から2026年にかけて、都心部および東京近郊エリアで中古マンション70㎡価格は上昇している

すまいよみ:2024年3月に日本銀行がマイナス金利を解除して以降、住宅ローン金利も上昇傾向にあります。何度か金利の上昇を経て直近までは、年収1,500万円程度の世帯も台東区などの都心部が選択肢に入るケースが多かったように思います。価格帯にして、1億円前後から1億2,000万円程度のレンジです。ただ、今は都心5区・6区はもちろん江東区などでもこの予算でマンションを探すのが難しくなっており、東京近郊エリアを検討される世帯が増えています。

 

これまでは一定の含み益がある二次取得層が都心部のマンションを購入することも多かったのですが、金利が上がったことで、含み益があったとしても与信が足りないケースが増えていそうなのが現状です。

 

久保田:現在、都心部マンションの購入層は、パワーカップルや経営者、投資家、富裕層が中心です。パワーカップルもグラデーションがあって、かつて言われていたように世帯年収1,000万円以上を指すのであれば、その層でも都心部のマンションは検討しづらい状況です。やはり、一般的な会社員層が都心部でマンションを買うのは厳しいと感じています。

パワーカップルといってもその内実は幅広く、「世帯年収は1,500万円から3,000万円程度までさまざま」だ

▲パワーカップルといってもその内実は幅広く、「世帯年収は1,500万円から3,000万円程度までさまざま」だ

2LDK:都心部から1時間半〜2時間のエリアは価格がさほど上がっておらず、今でも購入しやすい水準です。ただ通勤負担が大きく、資産価値の維持という観点でも懸念が残ります。その点、東京近郊エリアは都心部ほどではないにせよ価格が上昇しており、今後の資産価値の維持・上昇も期待できる。コストとリターンのバランスという意味で、非常に合理的な選択肢と言えます。

 

 

――「都心部と比べて価格が安い」以外の東京近郊エリアの魅力は?

 

2LDK:まず、スーパーが充実しているのは非常に魅力的だと思いますね。東京近郊エリアは総じて、大きいスーパー、品揃えがいいスーパー、安いスーパーなどラインナップが豊富です。マンションの駐車場設置率も高く、車のある暮らしもしやすいですよね。都心部では機械式やタワー式駐車場が多いのに対し、東京近郊エリアは自走式や平置き駐車場のマンションが多い傾向があります。停めやすく使いやすいのはもちろん、維持・管理のコストや手間という面でもメリットがあり、大型車の制限も生じにくくなります。

 

すまいよみ:都心部は便利でエンタメ性があり、魅力的なエリアです。一方、東京近郊エリアは道が広くて安全で、子どもが水辺や公園、広場で思いきり遊べる環境があり、校庭も広い。「教育環境」とはまた異なる、「子育て環境」の良さが魅力となります。マンションのランドプランも空地率(敷地面積における建築物がない部分の割合を指す)が高く、子どもと遊んだり、立ち話したりできる中庭や公開空地、来客用駐車場や車寄せを備えた物件も多いため、コミュニティが育まれやすい土壌があると感じます。

「都心部では得がたい、子どもがどろんこになって遊ぶような体験は、東京近郊エリアならではの魅力」だという

▲「都心部では得がたい、子どもがどろんこになって遊ぶような体験は、東京近郊エリアならではの魅力」だという

とりさん(以下、とり):下層階に商業施設が入っていたり、共用施設が充実していたりするマンションは都心部にも存在しますが、広大な敷地に街のような機能を持たせる大規模レジデンス型マンションは、東京近郊エリアならではです。こうした物件は同質性の高い世帯が集まりやすく、コミュニティ形成においても有利です。

 

久保田:ファミリー世帯は、3LDKかつ70㎡以上が理想になってきやすいと思いますが、都心部では3LDKでも60㎡前後のマンションが多い傾向があります。特に近年は新築マンションが狭小化しており、単価も上がっているので、理想的な広さのマンションに出合うのはなかなか難しい状況です。

 

すまいよみ:ただ、東京近郊エリアも70㎡以上となるとそこまで物件数は多くなく、希少性は高いと思います。築年数によっても傾向が分かれるところで、1990年代や2000年代に建てられた物件では比較的多い傾向があります。

 

2LDK:良くも悪くも都心部のマンションは流動性が高く、将来的に住み替える目線の方が多いと思いますが、東京近郊のマンションに住む方の多くは長く住むことを前提にしており、その土地や建物に対する愛着も強い。愛着があれば維持・管理にも積極的になりますし、そういった居住者が多いほど管理組合の運営もしやすくなるでしょう。

 

 

――東京近郊の穴場エリアを教えてください。

 

すまいよみ:いろいろ良い場所はありますが、私のちょうど今の推しは「西葛西」です。荒川を越えるかどうかで需要が大きく変わりますが、西葛西は荒川以西の門前仲町から南砂町にかけて開発が進み、人気が大きく高まる中、荒川を渡った西葛西は近年の価格上昇率も限定的ながら、利便性が大きく落ちるわけではない。まさに穴場だと思います。

 

もうひとつ推したいのが「京成押上線」沿線です。たとえば青砥の隣の京成立石では大規模な再開発が進んでおり、将来性は非常に高いと思います。京成押上線は都営浅草線に乗り入れているため、押上だけでなく浅草・日本橋・新橋・品川などまで一本でアクセスできる点も魅力です。

 

2LDK:私は都営地下鉄三田線沿線、特に「志村坂上」をおすすめします。都心部からの距離を妥協することなく、価格も検討しやすい水準にあるため、穴場ではないでしょうか。ハザードリスクが低い点も評価できますし、価格がまだ上がりきっていない今が狙い目でしょう。

志村坂上駅は、都営地下鉄三田線において南側の起点(終点)である目黒駅まで約40分。その間に大手町駅などを擁し、価格と都心部への距離感が「ちょうどいい立地」と言える

▲志村坂上駅は、都営地下鉄三田線において南側の起点(終点)である目黒駅まで約40分。その間に大手町駅などを擁し、価格と都心部への距離感が「ちょうどいい立地」と言える

とり:私が明らかに割安だと感じるのは「浮間舟渡」です。JR埼京線で新宿まで約20分、池袋なら約15分というアクセスを考えるとポテンシャルは非常に高いものの、都心部から波及する価格上昇の波がまだ届いていない印象です。このポテンシャルに気づく人が増えれば、価格は自然と上がってくると思います。

狙い目のエリアは、「“発見”されるまでは目に触れる総数が少ないからこそ、現状は価格が上がりきっていない」

▲狙い目のエリアは、「“発見”されるまでは目に触れる総数が少ないからこそ、現状は価格が上がりきっていない」

2LDK:穴場って、見つかってしまったら加速度的に価格が上がってしまうんですよね(笑)。

 

久保田:私は自分の地元である「相模大野」がもっと評価されていいと思っています。駅直結の商業施設があり、スーパーも非常に充実していて、実際に住んでみると暮らしやすさを実感できるエリアです。

 

とり:相模大野駅徒歩4分の新築マンション「プラウドタワー相模大野クロス」は、3LDKで7,000万円台の部屋もありますから狙い目です。決して安くはありませんが、都心部と比較すると「手が届く」と感じる方は多いのではないでしょうか。

 

 

取材・文:亀梨奈美 撮影:宗野歩

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WRITER

亀梨 奈美
不動産ジャーナリスト。不動産専門誌の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

X:@namikamenashi

おまけのQ&A

Q.価格が顕著に上がっているエリアとまだ「穴場」と言えるエリアは何が違うのでしょうか?
A.2LDK:価格が大きく上がっているエリアは、再開発や注目される新築マンションの分譲など、外部から人を呼び込みやすい、目立つ「きっかけ」があります。こうしたエリアは注目が注目を呼び、価格が上がりやすい一方で、穴場と言えるエリアは目立つきっかけがないので価格上昇もまだ限定的なのでしょう。ですから、価格が上がるのは時間の問題と見られる穴場も多いですよ。